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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

行政等における配慮の充実
―選挙等における配慮

白沢仁

第4次障害者基本計画(案)では、行政等における配慮の充実として「選挙等における配慮」について明記されています。配慮すべき内容としては、1.政見放送への手話通訳・字幕の付与など、障害特性に応じた選挙等に関する情報提供の充実に努めること、2.移動に困難を抱える障害者に配慮した投票所のバリアフリー化など、投票環境の向上に努めること、3.投票所での投票が困難な障害者に対し、不在者投票制度などの投票機会の確保に努めることの3点があげられています。

この3点については、第3次基本計画でも全く同様の計画として記載されており、主権者である障害者が政治に参加する上で引き続き重要な課題であると言えます。それだけに、第3次の5年間でそれぞれの課題がどのように推進されたのか、その進捗状況を踏まえた第4次基本計画の策定にすべきことをまずは強調しなくてはなりません。

障害者の選挙をめぐっては、政見放送における手話通訳・字幕は、すべての選挙で認められている訳ではありません。点字の選挙公報は認められず、不十分な「選挙のお知らせ版」の発行に止(とど)まっています。多くの投票所で段差があって車いす利用者が投票所に入ることすらできません。知的障害者など候補者名を書けない場合の代理投票制度では、慣れない環境の中で家族の付き添いを求めても認められず、投票に至らなかった事態もうまれています。

こうした現実は、単に障害者基本計画に基づく施策推進の遅れだけでなく、障害者権利条約の第29条「政治的及び公的活動への参加」に明記されている政治的権利の保障、その権利を享受する機会の保障に違反していると言わざるを得ません。また障害者の社会参加における「合理的配慮」の促進を求める障害者差別解消法にも抵触する問題として捉える必要があります。さらにいえば、権利条約では情報提供や投票環境の向上というだけでなく、障害者自身が立候補し選挙される権利と機会の保障、あるいは選挙活動への参加も政治参加の権利として強調されていることを軽視すべきではありません。

最後に、公職選挙法に基づくわが国の投票方式は、「投票所での投票」と「投票用紙への自筆による候補者名の記載」が原則ですが、選挙管理委員による自宅への出張・巡回といった「動く投票所」やネットを活用した不在者投票など、自由な投票行為を可能とする法改正を第4次基本計画の実施期間中に実現するよう特に強く期待するものです。これによって、前記3点の計画課題は間違いなく推進されるものと考えます。

(しらさわひとし 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)