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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

雇用・就業、経済的自立の支援 障害者雇用

酒井京子

平成30年の精神障害者の雇用義務化及び雇用率の引き上げにより、企業における障害者雇用は堅調に進んでいる。また、平成28年4月に施行された「障害者差別解消法」により、企業における障害者への合理的配慮に向けた取り組みも急速に進んでいる。働くための多岐にわたる制度が整備され、平成30年度からは働き続けることを支えるための就労定着支援事業が創設される。

このような状況のなか、基本計画においては「障害者の経済的自立」に向けて取り組むこととしており、その達成に向けて職業安定と障害福祉の連携を図ることとされている。これまで大きなハードルであった一体的な支援を可能にするものであり、大いに期待が持てる。また、ハローワークを中心とした精神障害者の就労・雇用支援の取り組み、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センターの就労・雇用支援がこの動きを支えている。

障害者雇用においては、今後、質の在り方がこれまで以上に問われることになろう。大企業では雇用の拡大を図られているが、キャリアアップが見える働き方への展望を示していくことが求められる。また、これまでの「障害者=低賃金」からの脱却も課題の一つである。特例子会社制度を活用することにより、今以上に「働きづらさ」がある障害者に対し、働く機会を提供する責務が特例子会社にあるといえる。

「障害者の経済的自立」を達成するためには、企業単独での取り組みには限界があり、障害基礎年金の受給認定等と連動した支援も必要になるであろう。また、中小企業では早くから障害者雇用の下支えをしているが、障害者雇用に関する各種助成金の情報が行き渡る仕組みが必要である。

今後、より重度の障害者雇用を促進するためには、現行法における雇用率制度の見直しが必要だと考える。現行法では重度とそれ以外に分かれているが、今後、より重度の障害者を雇用する場合にこの2分類では対応が困難ではないかと思われる。現行法の雇用率のポイントは必ずしも「働きづらさ」を反映していない。より重度の方が理解され雇用される方策が必要になる。

最後に、一般企業において障害者雇用は「経済的自立」を含めて取り組むこととされる中、行政機関における障害者雇用(精神・発達・知的)がチャレンジ雇用に限られていることに違和感を覚える。行政機関においては、積極的に正職員としての採用に向けたさまざまな取り組みを模索すべきだと思われる。多様な働き方で一人ひとりの力が発揮できる社会の実現を期待する。

(さかいきょうこ 特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク事務局長)