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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

教育の振興:インクルーシブ教育

下坂千代子

はじめに

日本教職員組合では、「インクルーシブ」をスローガンに掲げ、共生社会の実現に向け取り組んでいる。本年3月にはインクルーシブ教育をすべての教職員で考えようということから「インクルーシブのつぼみ~ともに育ちあい、学びあうための10の提言」を発刊し学習を深めているところである。

「9.教育の振興」について

今次基本計画は、障害者の学校卒業後も含めた制度設計を示している点や高校における教育環境整備等、共生社会に向けて進めていこうという姿勢が伝わってくる。しかしその一方で、全体を通して感じたことは、障害者権利条約の理念である「地域で共に学ぶことは権利である」ということが明確に述べられていないということだ。原則は地域の学校、そして通常の学級での学びである。インクルーシブ教育をどう進めていくのかの「柱」が明確になっていないために、今次基本計画に書かれている細やかな事柄を各自治体が丁寧に進めていくと、違った方向に進む可能性があるのではないかと危惧する。

(1)インクルーシブ教育システムの推進

共に教育を受けるためには、「特別支援教育を通じて」とある。障害のある幼児児童生徒への合理的配慮は義務であるのだから、この「前置詞」は必要ないのではないだろうか。また、「障害の有無に関わらず可能な限り共に教育を受けられるとともに」とある。この「可能な限り」という言葉があるがゆえに、インクルーシブとは逆のとらえになってしまわないだろうか。いずれの表現も、共生社会を進めることにとても消極的になっている感を受ける。

現在、特別支援教育とインクルーシブ教育の関係性が明確に示されていない中で、「特別支援教育=インクルーシブ教育」と理解している教職員がいる。障害を「医学モデル」から「社会モデル」でとらえることが、現場の教職員には浸透しきれていない。すべての教職員・関係者がインクルーシブについて理念や法制度を理解することが重要ではないだろうか。

(2)教育環境の整備

「合理的配慮」が保障されることを進めるための文言が不十分である。共に学ぶために必要不可欠な合理的配慮は最優先事項であるだろう。

まとめ

教育はインクルーシブな社会を築くうえで根幹となるものであるからこそ、明確に「柱」を打ち出し、それに向けて各方面のすべての関係者で取り組んでいくという道筋を示してほしいと強く願っている。

(したさかちよこ 日本教職員組合インクルーシブ教育部長)