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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

教育の振興:特別支援学校の教育環境整備

児嶋芳郎

インクルーシブ教育システムの推進が強く打ち出された中で、特別支援学校の教室不足解消及びバリアフリー化に言及していることは、障害児の教育権を保障する上で重要である。

2003年の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」では、「量的な面において概ねナショナルミニマムは達成されている」と述べているが、特別支援学校に在籍する子どもの数は、当該報告が出されて以降も急激に増加し、2016年には約1.4倍にも達している。

この間、文部科学省は2008年3月に「特別支援学校の在籍児童生徒等の増加に伴う大規模化・狭隘化への対応について(通知)」を出し、1.特別支援学校の新設、2.対象障害種の拡大、3.小・中・高等学校への分校・分教室の設置を打ち出し、全国で100校超の特別支援学校が新設された。しかし、文部科学省の調査によれば全国の特別支援学校では、2016年度に3,430教室が不足している状況である。特別教室の普通教室への転用、一教室をカーテンなどで仕切って二教室として使用するなどが当たり前のように行われており、子どもの生命に危険が及ぶような実態が各地から報告されている。根本的な対応が求められる。

現在、全国的な規模で、特別支援学校の過密・過大化解消を求める運動が展開されており、そこで訴えられているのが、特別支援学校に対する設置基準の策定である。幼稚園から小中学校、高校、大学、専門学校まですべてに策定されている設置基準が、特別支援学校だけにはない。このことが、現在の特別支援学校の過密・過大化の大きな原因である。子どもたちの教育権を保障する行政の義務として公的責任を果たすべきである。

また現在は、小・中・高等学校の廃校や余裕教室を利用した分校・分教室の設置によって、特別支援学校在籍者増に対応しようとする傾向が色濃い。障害のある子どもたちが使いづらい校舎をバリアフリー化することは当然必要である。だが逆に言えば、インクルーシブ教育システムの構築を謳(うた)っておきながら、通常学校がバリアフリーでないことが問題である。小・中・高等学校等の余裕教室利用による分校・分教室の設置が進められている状況において、特別支援学校はもとより、それに留(とど)まらず通常学校のバリアフリー化が強く求められる。

(こじまよしお 広島都市学園大学子ども教育学部)