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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年2月号

当事者の声

笑って過ごせる頸損生活のために

鈴木太

頸髄を損傷して20年、電動車椅子3台、電動ベッド・マットレスを2回更新する間に、小さな自助具から天井走行型のリフトまでさまざまな福祉機器に支えられながら生活しています。今では生活に無くてはならないものばかりで20年で技術は進歩し、日常生活を送るためには欠かすことができません。

頸髄損傷者の多くは受傷後、病院やリハビリセンターでリハビリを行い、新しい生活をスタートします。リハビリ期間中に医師・作業療法士・理学療法士・福祉機器を扱う業者とともに、当事者に合わせた福祉機器を準備します。ここで生活しやすい環境をどう整えるかが、その後の生活に大きく関わってきます。在宅での生活が始まると、病院で起こっていたようなトラブルにもすぐに対応することが難しくなります。私の場合、最寄り駅が無人駅で普通列車が1時間に1本というような地域です。リハビリスタッフに相談、業者を呼んですぐ対応、ということにもできなくなります。

この問題からも分かるように、新しい生活がスタートすると新しい技術や自分が利用するもの以外の福祉機器と接する機会が激減してしまいます。インターネットが普及し誰もが自分で探せるというのも、頸髄損傷者にとってはインターネットを始めることが大きなハードルとなっていることが少なくありません。ましてや本当に自分に必要かどうかも体験してみなければ判断すらできません。しかし、新しい技術や機器に触れる機会が無い訳ではありません。毎年開かれる、東京での国際福祉機器展、大阪でのバリアフリー展、各地で行われる福祉機器展なども新しいものを発見する絶好のチャンスとなります。大きな都市では機器を常設展示している場所も多くあります。私自身、新しい技術を求めて展示会を巡ることがライフワークになっています。

頸髄損傷者にとって本当に必要なものが本当に必要な方へ届くことが一番の願いですが、現状では必要な方々が利用できず地域差もあります。電動車椅子は電動チルト・リフト機能が公費対応となり必要な方への対応が始まっていますが、縟瘡や低血圧に苦しみながらも利用できていない方が多いです。情報が当事者にもリハビリスタッフにも届いていない現状です。頸髄損傷者は首から下に障害が残り、障害をサポートするさまざまな技術が必要です。トラブルの多い縟瘡や排泄の問題から解放され、毎日を笑って過ごせる新技術を皆が待ち望んでいます。誰もがその技術・機器に触れることができる10年後であってほしいと願っています。

(すずきふとし 愛媛頸髄損傷者連絡会事務局)