音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年2月号

当事者の声

鏡に映し出される夢

竹内智美

私は先天性の緑内障で、7歳までの視力は色と光覚でした。よく折り紙をしていたので、赤や黒などの原色は今でもはっきり覚えています。ただ、それ以外の微妙な色、たとえばグレージュ、ターコイズなどは思い出すことができず、説明されてもピンときません。全盲になっても、子どもの頃は特に困ったとも思わず、のんきに過ごしていました。日常生活動作が困難な祖父母の手伝いを自然にしていた家庭での経験があったためかもしれません。さすがに大人になって就職した頃からは、物理的にできないことを実感し、見えないのは不便だと感じることも増えました。それでも、誰かの協力を得ながら物事を進める楽しさを覚え、見えないからこそ得られる喜びがある、と考えられるようにもなりました。

とは言え、自分の力だけで何とかしたい、と思うものもあります。それは、ファッションや髪型、お化粧などのトータルコーディネートです。

それをサポートしてくれるアイテムとして、「しゃべる鏡」があったらいいなあ、と。仮に「ミラリン」と呼ぶことにしましょう。たとえば、ミラリンに顔を映してお喋りボタンを押すと「今日はお肌の調子が良いですね」とか「顔色がいつもより白いです」など、自分の状態を教えてくれます。そして化粧をした後は「ファンデーションが薄付きのナチュラルメイクです」とか「唇の右端の方に口紅がはみ出しています」などと喋ってくれます。いくつか合わせるコートを持って行くと「今日のスカートにはピンクのコートが良く似合います」とか「そのベージュのダウンも悪くないけれど、やはりピンクの方が引き立ちます」などと、事細かに教えてくれます。

ミラリンはデパートの各売り場などそこかしこに置いてあって「店員さんはこのセーターを勧めているけれど、サイズ感が微妙です」とか「今店員さんにしてもらったメイクは、あなたの普段のメイクよりもかなり濃いです」のように正直なコメントをくれます。イヤホンも使えばいろいろと安心です。

ミラリンがあれば、見えなくても自分の感覚で服を選んだり、お化粧をしたりできて、なおかつ周りの人の意見を聞けば、どれだけ自分の感覚と違いがあるかも分かって、今まで以上におしゃれが楽しくなります。そして、自信を持って、自分自身をコーディネートできるようになります。こんな魔法の鏡を持って、自分を磨き、素敵に輝きたいものです!

(たけうちともみ 埼玉県立特別支援学校塙保己一学園高等部専攻科2年)