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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年2月号

当事者の声

夢への鍵

橋本紗貴

突然の別れ

私は2010年5月25日(月)に何不自由ない身体と突然お別れをしました。

あれは、中学2年生の体育大会。あと少しで体育大会終了という時に、私は突然、意識がなくなり倒れました。救急車で病院に運ばれ、さまざまな検査をする中でギラン・バレー症候群という病気であることが分かり治療が始まりました。しかし、治療薬に対するアレルギー反応で途中で治療を辞めざるを得ない状態になりました。意識が戻り、気付けば盲ろうと肢体不自由の世界になっており、7年経った今も同じです。両足と右手はまったく動かず、左手は親指と人差し指以外に力が入らず、味覚も触覚もほとんどありません。視覚は、サランラップの穴から覗いたような視野でぼんやりとしか見えないので、ヒトなのかモノなのかの区別がつきません。聴覚は、補聴器を外すと何も聞こえませんが、装用すれば、ある程度大きな声は聞き取りが可能です。

一番大切なパートナー

私の一番大切なパートナーは支援機器などです。現在、主に使用しているのは、パソコン、タブレット、視線入力、コミューン、ロジャーマイクです。これらの支援機器があることによって、私は希望を見失わずに勉強することができていますし、命をつなぐことができています。もちろん、支えてくださっている周囲の方々がいなければ、私はさまざまな支援機器に出会うこともありませんでした。学年が上がるごとに障害の程度が重くなっていき、見ることや聴くこと、動かすことへの困難が多くなってきていますが、それ以上に、「教師になる」という夢を叶えるにはたくさんの困難があります。しかし、この困難という扉を開けるためにたくさんの方が、さまざまな「鍵」を見つけてくださったり、一緒に見つけたりしてくださっています。だから私は、夢へとつながる扉の「鍵」をくださったみなさんに感謝しています。

夢見る世界

これからの将来、たくさんの技術が発達し、完全自動運転で好きな時に外出したり、二足歩行のロボットで走り回ったり、音を光や振動で認識できる世界になったり、カメラと点字ディスプレイや音声機器が連動して目の前にあるモノの名前や対象物の距離を教えてくれるものが開発されたらいいなと思います。自動車は車いすや二足歩行のロボットのまま乗降ができて、周囲の風景を点字や音声でフィードバックしてくれるモノがあれば、視覚に障害があっても自由に外出ができるようになると思うので、こういう世界になるように夢見ています。

(はしもとさき 九州ルーテル学院大学3年)