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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年2月号

ウォッチング自治体の独自施策

小中学校のバリアフリー化が育む相互理解
~バリアフリー基本構想策定を通じて~

杉戸代作

1 北区の高齢者・障害者の動向とバリアフリー化の取り組み

現在、北区の人口は約34万人で東京23区中第11位の区であるが、高齢化率は25%を超え、23区中第1位となっている。また、将来人口の推計結果では、65歳以上の高齢者人口や障害者数は増加傾向にあり、区内の移動円滑化、バリアフリー化の推進が課題となっている。

北区では平成14年度以降、交通バリアフリー基本構想を策定し、駅周辺のバリアフリー化を推進してきた。その結果、高低差がある道路上へのエレベーターの整備や点字ブロックなどの設置が進み、移動の利便性が向上している。しかし一方で、バリアフリールートが一般的な移動経路と比較して迂回距離が長いことや案内情報が不足していること、困っている人への声掛けによる支援が充実していないことなど、新たな課題も生じている。

バリアフリー法の制定以降、障害者差別解消法による合理的配慮に関する取り組みがなされ、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けユニバーサル社会の実現が求められていることなど、社会情勢の変化を踏まえ、北区では、さらにだれもが利用しやすい生活環境づくりを目指し、バリアフリー基本構想の策定を進めている。

2 小中学校の生活関連施設への位置付け

バリアフリー基本構想は、駅や生活に必要な施設や経路を連続的、一体的に整備するために、区民の意見を取り入れながら、計画的にバリアフリー化を進めていこうという取り組みである。

策定にあたっては、[「気づき」を共有し、カタチにするまち 北区~だれもが健やかに安心して生活・移動できるユニバーサル社会を目指して~]を基本理念として、だれにとっても公平なバリアフリーのまちづくりの実現を目指していくこととしている。

このような考えのもと、生活に必要な施設については、駅や公共施設や医療機関や金融機関などをリストアップしている。また、小中学校については、障害の有無にかかわらず、児童生徒が学習・生活できるように施設を整備するとともに、地域住民の生涯学習の場、地域コミュニティの拠点、さらには災害時の避難所としての役割を担っており、児童生徒、教職員、保護者や地域住民などの多様な人々との連携や利用への配慮が求められていることから生活関連施設として位置付けている。

3 小中学校のバリアフリー化の取り組み状況

平成26年3月に、38校の小学校と12校の中学校を対象とした公立学校の老朽化に伴う改築や改修を計画的・効率的に推進する「北区立小・中学校改築改修計画」を策定した。使用年数に応じて順次、改築やリフレッシュ改修で、エレベーターの整備や出入り口のスロープの整備、各階への障害者用トイレ設置など計画的に進めている。また、改築やリフレッシュ改修の予定が定まっていない学校については、社会福祉協議会による福祉教育プログラムによる相互理解を深めるソフト面の取り組みを進めている。

4 相互理解を深めるコミュニケーションの重要性

今年度、東洋大学と連携し、特別支援学校に通っている保護者を対象に「外出先でうれしかった手助けやことば・困ったり嫌な思いをしたりしたこと」に関するアンケート調査を実施した。その結果、「うれしかった」といういい側面と合わせて、障害のある人や家族の生活のしづらさの状況も見えてきた。たとえば、「兄弟の授業参観時は階段しかないので、先生方に手伝ってもらうことになる」「階段を一時的にも占領してしまうので、遠慮してしまう」という意見などがあった。利用しやすさの向上のため、できる、できないという技術的な検討を踏まえるだけでなく、わかりやすい丁寧な表現の工夫や、別の手段を選択するなど相互理解を深められるコミュニケーションの充実に向けた心がけが重要であることを浮き彫りにすることができた。

5 スパイラルアップの実現に向けて

バリアフリー基本構想の重要性はスパイラルアップにある。当該構想で定めた取り組みの着実な推進を図るため、進捗状況を確認し、計画や設計段階での区民参加、施設の継続的な改善、区民、事業者、行政等による充実したコミュニケーションにより、引き続き各種取り組みを推進していきたい。

(すぎとだいさく 東京都北区まちづくり部都市計画課)