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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年2月号

知り隊おしえ隊

電動車いすアクセス・マニアの「私」が選んだ
2017年「東京であった交通バリアフリー・エポック」お勧めファイブ!

今福義明

1 西武鉄道・斬新な新型通勤車両を運行開始

3月25日から営業運行を開始した「西武鉄道・新型通勤車両「40000系」(S-TRAIN)」の車いすやベビーカーの利用を想定した「パートナーゾーン」は、とてもユニークな車内仕様でした。「パートナーゾーン」車両に乗車した日は、土曜日の夕方だったせいか、横浜駅から池袋駅まで「パートナーゾーン」にいたのは私(電動車いす利用者)だけだったので、何回もぐるぐると回り放題でした(笑)。

運行開始日、私は西武秩父駅(埼玉県秩父市)から乗車して石神井公園駅(東京都練馬区)で降車したら、なんと知人の電動車いす使用障害者のアクセス・マニアとバッタリ遭遇したのでした。知人は横浜駅から同型の車両に乗車して来たのでした。お互いに運行開始日に、同車両に乗れて、とても満足でした。

2 東武鉄道・新型特急車両に、初のフリースペース方式の「車いすスペース」座席設備

2017年の春、東武鉄道に新型特急「リバティ」(500系)が登場しました。私は運行開始日の4月21日に、東武スカイツリーラインの浅草駅から春日部駅まで初乗車しました。

「リバティ」(500系)には、東武鉄道初の「フリースペース方式の車いすスペース座席」が整備されました。これは関東圏における特急車両のバリアフリー化整備としては、電動車いす乗客的には、2008年3月15日運行開始の小田急電鉄「MSE」(60000形)、2010年7月17日運行開始の京成電鉄「Skyliner」(新AE形)以来の画期的な設備なのです。

この「フリースペース方式の車いすスペース座席」が、なぜかくも電動車いす乗客には、待望かと言いますと、自らの電動車いすに乗ったまま車窓を眺められるという、特急車両の当たり前の楽しみを得られるスペース設備なのだからです。現在、JR6社の特急車両及び新幹線車両のすべてにおいて今なお、このフリースペース方式の「車いすスペース」座席が設備されていないために、多くの電動車いす乗客は、デッキ内乗車を強いられているのです。

新型特急「リバティ」の車内多機能トイレは、自動扉・大型で電動車いす対応(トイレ内回転ができる)なので、浅草駅から東武日光駅や東武ワールドスクウェア駅までの2時間弱の長旅でも安心でした。

3 流し用のトヨタUDタクシー登場

10月に販売開始された【トヨタ「新型 JPNタクシー」(横扉・組み立て折り畳みスロープ)】は、一部の電動車いす使用障害者にとって、次の点で衝撃でした。

それは、販売開始に先立ち、“とある集会で、同タクシーの試乗会に参加した電動車いす使用障害者らが乗車できなかった!”という問題提起情報が電動車いす使用者の仲間の間で報じられたのでした。従来の「流しタクシー」の車いす乗客は、一般座席に移乗してから運転手に車いすを折りたたんでトランクに積んでもらっての乗車でした。これに対して、折り畳みできない電動車いすを使用している者は、2010年12月販売開始の「日産NV200バネットUDタクシー」(後部扉からスロープ乗降)なら乗れるようにはなったのですが、「日産NV200バネットUDタクシー」は、「流しタクシー」としてのシェアは少ないため、また、同型の車両でありながら、車いす対応でない車両も多くあり、「流しタクシー」のシェアが多いトヨタ車両の「JPNタクシー」への置き換え化で乗れないのは、とてもショックなのでした。たとえば、電動車いすのバッテリーが切れた時や、自らの電動車いすでは自走できない距離へのアクセスに大変困る!との不安の声が各地で噴出したのでした。

そんな中、9月に開催された「第44回国際福祉機器展 H.C.R.2017」にて、トヨタ「JPNタクシー」が展示されていたので試乗してみたところ、なんと私の電動車いすも横乗りから前向きに車内回転できなかったのでした。そのため、車いす固定も不可となり、実際の流し運用時の「乗車拒否」も現実味を帯びてしまったのでした。

しかしながら、12月に開催された「UDタクシーから、これからのタクシーを考える」という集会で、参加タクシー事業者の積極的な試乗会協力で、「トヨタJPNタクシー車両」に横乗りした後、助手席がスライドされていたため、私の大型電動車いすでも前向きに90度回転できて、しかも装備されている車いす固定器具で、私の電動車いすも固定できたのでした。要するに、「私の大型電動車いすでも乗車できる」ことが分かったのでした。

このことから、なぜ、「トヨタJPNタクシー」に乗車できない電動車いす使用者がいたのか、という疑問の一つが解けたことになりました。それは、「トヨタJPNタクシー」は、助手席が前向きにスライドして、なおかつ同席の背もたれも前向きにかがめる仕様になっていることが、タクシー事業者の運転手に周知されていなかったことによるものだと考えられるのでした。

いずれにしても、東京都は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「トヨタJPNタクシー」「日産NV200バネットタクシー」(スロープ付き車いす対応版)等のいわゆる「流しのUDタクシー」を導入、補助金を付けて都内に1万台走らせたいと公表しています。

そうなると、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、電動車いすのまま乗れる流しタクシーが珍しくなくなり、電動車いす使用者の移動状況が大きく変わっていくことでしょう。

4 「バスタ新宿」から「リフト付き羽田空港リムジンバス」運行開始

東京空港交通は、12月21日「新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)~羽田空港国際線ターミナル」間において、電動車いすのままでも乗車可能なリフト付きバスの運行を開始しました。同バス会社は、2016年4月「東京シティエアターミナル~羽田空港国際線ターミナル」間に、1台のリフト付き大型空港リムジンバスを運行開始していました。同路線に続いて、2台目です。

私はいずれも運行開始日に乗車しました。「バスタ新宿」(新宿南口交通ターミナル)は、東京シティエアターミナルよりも、アクセスしやすい電動車いす使用者が多いと予想されるので、たくさんの電動車いす使用者に周知されてドンドン利用してほしいと思いました。

5 自動運転バスの公開試乗会に2回参加

7月21日、プリンス芝公園で開催された「自動運転バス一般公開試乗会」に参加しました。自動運転バスに電動車いすでも乗れるのか?を知りたかったので応募参加しました。

やはり、電動車いす使用者の「単独自力乗降」可能化は、まったく想定されていませんでした。そして、おもしろかったのは、結局のところ、車両自体は小型ノンステップバスだったので、無人運転のはずなのにスタッフ対応で、従来のスロープを使用しての乗降でした。6人乗り対面式座席の小型車両なので、「車いす座席スペース」の位置取り設定も当然想定されていなくて、ただただ無人自動運転低速走行の小型車両に電動車いすでも乗れたという感慨だけの試乗体験でした。

また、12月22日〈『自動運転バス試乗会 in 丸の内仲通り』~東京23区内の公道で初の試乗会~〉にも応募参加しました。使用車両は、プリンス芝公園の時とまったく同じで、電動車いす乗降及び車内位置取りスペース設定も、やはり円滑・安全・快適乗降までは想定外だったようです。

今後の課題として、近未来どこかで本格的な運行が計画される際は、同車両は小型ノンステップバスなので、バス停はマウントアップ化プラットホームにして、完全自動正着できるようにプログラムして、電動車いす使用者でも「単独自力乗降」可能化されることが必要だと思いました。

6 小説家の夏目漱石ファン待望の「新宿区立漱石山房記念館」開館

9月24日に開館した「新宿区立漱石山房記念館」は、2012年11月1日に開館した「文京区立森鴎外記念館」、2016年11月22日に開館した「(墨田区立)すみだ北斎美術館」よりも、私には、どの点からしても、良かったです。

『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『三四郎』『こころ』などの小説が親しみやすく、開放的な空間も設置されている建物で、隣接している「新宿区立漱石公園」で、ゆっくりとくつろげるのもなお良かったです。

(いまふくよしあき 電動車いす使用者)