特集/職業リハビリテーションの諸問題 リハビリテーションの10年

特集/職業リハビリテーションの諸問題

リハビリテーションの10年

宣言

 世界人権宣言は次のように主張している:

 すべての人間は生まれながらにして自由であり、人として尊ばれ、諸権利を与えられ、平等である。

 すべての人びとは社会保障を受ける権利、働く権利、休養をとり余暇を楽しむ権利、適切な生活を営む権利、教育を受ける権利などの諸権利および自由を保障されている。身体および精神の障害をもつ人びとにも同じ権利が与えられているが、しかしこれらの権利を実現するには、その人自身、家族、地域社会において特別の努力が必要とされている。

 この目的を達成するために適切なサービスを完全に実施しているといえる国は1か国もない。多くの国ぐには、これらの目的を達成するに必要な技術を習いはじめ、諸施設をつくりはじめたばかりである。すべての国ぐには、この問題の解決を優先的に行わなければならない。

 障害者に役立つ援助を行うには、医学・教育・職業・社会諸事業を実施するよい施設が必要であるが、このような諸施設は現在の障害者人口に対しては不足状態である。予想される人口増加、人間の長命化、自動車およびその他の機械類の使用の増加などにより、より複雑な問題をかかえる障害者は年々増加している。現在はすべての障害者のもつ権利を保障できていないが、また将来、すべての家族、地域社会、国家が直面すると予想される危機に対拠する用意ができていない。

 この危機に対拠するための世界的キャンペーンを促進するために、国際障害者リハビリテーション協会は、1970年代を「リハビリテーションの10年」と定めた。この10年間およびその後もひきつづいて、すべての国ぐにで障害者の権利が守られすべての人びとが自分の熱望を実現できる公正な機会をもてるようにすることが、われわれの望みであり願いである。これらの目標を達成するために、国際障害者リハビリテーション協会は次の項目を主張する。

 障害に伴う諸問題、およびそれを解決することによってもたらされる経済的・社会的利益をより多くの人びとに理解させること。

 各国政府は、その国の障害者を援助するに必要なすべてのサービスを拡張するために、緊急に対策をとること。

 各国がリハビリテーション・サービスを発展させるために必要な、指導を行うこと。

 リハビリテーション・プログラムに従事する職員および補助職員の養成に力をいれ、これらの重要な仕事を献身的に行える有能な人材を確保するために、じゅうぶん、報酬を与えられるよう財政を改善すること。

 障害者の立場にたったサービスを行えるよう、より簡潔、より経済的、より効果的な方法を探求すること。

 1970年9月24日、テヘランで開催された国際障害者リハビリテーション協会理事会は、上記の課題を達成することを宣言し、またすべての国ぐにの政府および首脳陣が世界的キャンペーンに参加し、障害者にも尊厳と諸権利を保証できるようよびかけた。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1971年4月(第2号)2頁

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