作業評価における定義、目的、目標

作業評価における定義、目的、目標

Definitions, Objectives, and Goals in Work Evaluation

Charles L. Roberts

著者について……

 Mr. Robertsは、Rocky Mountain地域では最初のリハビリテーション・センターであるDenverのCraingリハビリテーション・センターの開設、その後にはJohnstownのPennsylvaniaリハビリテーション・センターの長、というように二つのリハビリテーション・センターの運営管理を手がけた。1966年には、Association of Rehabilitation Centersの会長に就任した。この協会は1969年11月に、Nationa Association of Sheltered Workshops and Homebound Programsと合併し、International Association of Rehabilitation Facilitiesとなっている。

 1969年3月、Stout州立大学は作業評価に関する会議を3日間にわたって開催した。約20名の実践従事者、教育者、研究者その他この分野に関心を持つ人たちが招かれ、新しく発展しつつあるこの領域における論点について討議した。

 このグループが必要と認めた多数の論点項目がリストされたのち、これらは<理論>か<実践>かに分類され、討論を深める必要性の高いものから順位がつけられた。

 本稿では<理論>の部のうちの最優先順位を得た2項目「目標と目的」「用語の定義」について述べている。<実践>の部の最優先項目は「作業評価における方法・モデル」であったが、これについて本稿では「用語の明確化」「用語の使用状況」という観点からとりあげた。

定義

 この領域における実践者、教育者、研究者は数多くの用語をとりまぜて用いているが、実際問題としてこれらは、われわれ全員に対して同じ意味を伝えていない。最もショッキングな例と思われるのは、今論じているこの領域を認識しようとしてわれわれ自身が用いている下記三つの用語の意味が混同していることであろう。(人によっては「この領域」というものはなく、むしろ、一つまたはより多数の既存の領域にまたがる「活動」であると論ずることさえある。)

 1.<職業前>評価(Pre-Vocational evaluation/assessment/testing/appraisal)

 2.<職業>評価(Vocational evaluation/assessment/testing/appraisal)

 3.<作業>評価(Work evaluation/assessment/testing/appraisal)

 1953年~57年時の初期の文献では、<職業前>という用語が用いられている。Whitehouseは1953年の「リハビリテーション」に関する文献の中でこれについて述べているが、彼はニューヨークのICDにおいて後継者・同僚といっしょに行った経験から、この用語を作り出したようである。1957年のMoed, Klincewicz, Usdaneによる文献では、職業的と職業前的と二つの評価の違いを注意深く区別している。この中では、職業前評価を「作業標本または小型作業課題を通じて行われる職業的探求」としている。さらに、職業前評価を、歴史的には医学的場面で発生したものであり、普通は作業療法士の監督下で行われたものとしている。

 ところで、1957年当時の主論点は「だれが行うべきか」であり、作業療法、産業諸科学に加えて、第三の専門領域を設定する文献があらわれた。この第三の専門領域は職業カウンセリングまたはリハビリテーション・カウンセリングと名づけられた。13年前のこの論点をわれわれがいまだに解決に近づけ得ないでいるということは、興味深いことである。

 現在使われており、多分誤解されているいくつかの用語があるが、これらの定義ができてのちにはじめて、<職業的>と<作業的>との差異・関係は明らかになるのであろう。ここでとりあげられる用語には次のものがある。作業標本(work sample)、職務標本(job sample)、模擬作業標本・模擬職務標本(simulated work/job sample)、現実作業標本・現実職務標本(real work/job sample)、性能別作業標本・性能別職務標本(isolated-trait work/job sample)、作業課題(work task)、作業場面(work situation)、作業環境(work environment)、職業的探求(vocational exploration)、職務実習試行(job tryout)、リハビリテーション評価(rehabilitation evaluation)、精神測定(mental testing)、職務分析(job analysis)、場面設定法評価(situational assessment)、評価モデル・方法・システム・接近法(evaluation model/method/system/spproach)、作業人格、(work personality)作業潜在力(work potential)、作業適応訓練(work adjustment training)。

 このほかにも用語はあるが、いくつかのものは明らかに時代遅れとなっており、またその他のものは他専門領域の難語の部類として知られたものである。「ガイダンス・テスト・クラス」は1936年にICDで設置されたものだが、その当時は、どの職業訓練科目が利用できるかの発見をクライエント自身に行わせ得る中心的なユニットを意味した。これも今は時代遅れとなっている。今では、治療者が精神医学的または心理学的臨床の過程における一技術を表現するときには、「リアリティ・テスティング(現実認知)」という用語のほうがよりひんぱんに使用されている。

 上述の用語のうち一部は明らかに同意語であるが、その他のものは、はっきりとした差異を述べている。<作業標本>も<職務標本>も互換性があるようであるが、これも下位概念に分類される。

 1.<模擬作業標本>

 Neffが1963年に、作業標本を「実際の産業活動の一模型であり、それは作業上の必須条件──作業者としての潜在力を持つものならば当然行わなければならない──は実物と差がないもの」と定義したもの。

 2.<現実作業標本>

 現在遂行されている職務(通常は直接している地域社会にある)の中からのサンプルであって、同じ材料、同じ道具、同じ器具を用いる。実物との違いといえば作業場面の設定という差だけである。(Walter Pruittの論文参照*

 3.<性能別作業標本>

 指の器用さとか、分類能力等多くの職務に共通する特定性能を評価するものである。

 心理学者が使用している伝統的な<パーフォーマンス・テスト>の多くのものは、この3番目のタイプの作業標本に類似している。しかし、現実性の程度と要因には欠けている。

 Hoffmanは1969年2月の文献で、作業能力評価者が用いている方法・概念を述べるに際し三つの用語を用いている。

 1.<作業課題>クライエントに遂行させる特定の作業題で、心理学的検査における器用さの検査、適性検査、作業標本における組立作業やボール盤作業、シェルタード・ワークショップや職務実習試行における作業場面での課題がこれである。

 2.<作業場面>上述の課題に<加えて>課題を成功させるのに関係する諸条件を含んだもので、時間に関する要請、生産という要請、いっしょに作業する仲間や監督者との人間的関係等が含まれる。

 3.<作業環境>リハビリテーション施設あるいは職務が置かれている場所の全体的環境で構成される。この場合には、時間遵守、身だしなみ、昼食時や休憩時間の社会性等に焦点が当てられる。

 関連する用語で、広く用いられており、区別される必要があるにもかかわらず、今までに定義づけられていない用語が二つある。

 1.<職業的探求>職業興味や今までの知識等に関係しており、「仕事の世界」について学んでいく過程である。<職業情報>の使用、事務所や工場の見学、実際の職務実習試行がこれに関与する(多くの人にとって、この用語は職業評価とされるが、私は上述の使用法をすすめたい。)

 2.<職務実習試行>クライエントを職業訓練学級かまたは見習職員レベルの職務にしばらくの間置いて、観察と自己評価を行う。

作業評価と職業評価の定義

 この二つの用語は広く使われており、どんな文献にも見出される言葉であって、多くの定義がなされている。しかし、この2語の明確な区別はどこにも表れておらず、それぞれの著者間にも望ましい使用法に関しての同意がほとんどない。それぞれがどのように用いられているかを概観したとき、<作業評価>と<職業評価>、さらに第三の関連する用語<リハビリテーション評価>の三者の関係と差異を知るためには、概念的なワクをはめてみることが有効なことは明らかである(図参照)。

図 リハビリテーション評価、職業評価、作業評価の実施面での関係
図 リハビリテーション評価、職業評価、作業評価の実施面での関係

 図にもとづき、以下のように定義づけることができる。

1.<リハビリテーション評価>

 クライエントが持っているもの、それが機能する場合の制約に関しての、医学的・肉体的、心理的・社会的、職業的・教育的それぞれの観点からの全体的評価。これにはそこのリハビリテーション・チームのすべての専門領域が包含され、外部からのデータも包含される。

2.<職業評価>

 最近および遠い将来にわたっての<雇用潜在性>および適応性を予測するために、個人個人の肉体的、精神的、情緒的能力と制約、耐久性を評価する過程。これは専門領域の相互作用の中で行われ、データはリハビリテーション・チームのすべての領域および外部から得る。

3.<作業評価>

 作業を評価の手段、媒体、焦点として用い、クライエントの強さ、弱さに関して行う評価。これは評価専門者が行うものであるが、シェルタード・ワークショップの職長や職業訓練指導員または職務監督者からのデータを利用することもある。

 上記のものはすべて<クライエント自身の>評価に言及したものである。このほかに、「クライエントの」ということでなく用いられる用語がある。それは<職務分析>である。これについてNeff(1963)は、職業評価の接近法を述べている中で、以下のながれの中に位置づけている。(a)<精神測定法>-心理学的検査の使用、(b)<作業標本法>-前述、(c)<職務分析>-職務の内容を分析するもの。多分この過程の中で、職務と人間の諸要素とをマッチさせるということが起こる。

 職務内容または職務機能の分析は、依然として多くのリハビリテーション施設において職業カウンセリング過程の主道具である。特に、同職務あるいは同雇用主への復帰の機会が大きい、労災補償関係のクライエントが多い施設においてはこれが著しい。

 Neffはまた、(d)<場面設定評価法>-作業技能よりも作業人格に焦点を当てた方法-もあげている。

作業評価のモデル

 われわれは、方法、システム、接近法、<モデル>に言及したものを耳にする。これら4つの用語はすべて評価過程における特定の<活動群>に関したものである。われわれのうち何人かは、数種の作業評価モデルを記述することが可能であると考えており、さらに、ある種の人にとってはそういうものがあったほうがより適切であろうと考えている。モデルというものでわれわれは何を意味しようとするのだろうか。すぐれた作業評価プログラムの道具とか中身とかを見ると、次のような七つの内容が存在することがわかる。

 1. 受け入れ前の職員間の打ち合わせ

 2. インテーク面接

 3. 心理学的検査

 4. 職務標本

 5. 実習試行

  (a)ワークショップ

  (b)職業訓練クラス

  (c)実際の職務

 6. 場面設定評価

 7. 職務と人間の照合分析

 一つの<モデル>を考えるとき、上述のもののあらゆる組み合わせが可能であろう。この場合1と2さらに多分3も基本的な核となろう。

 作業評価の目標と目的に移る前に、すでに定義づけられている用語に言及している三つの別の用語に触れておく。

 1.<作業人格>

 1968年Gellmanが定義づけたもので、作業場面において個人が発揮する作業活動での性格的な型。これは作業態度、作業時の行動型、価値観、誘因、作業場面で機能するのに必要と見なされる能力、の合体したものである。

 2.<作業潜在性>

 Pruittはこれを作業人格と区別し、その差はしかるべき訓練ないしはオリエンテーションがなされた後のもの、という点だとした。私はこれに<作業適応訓練>を加えたい。この言葉は最後に定義づける。

 3.<作業適応訓練>

 作業人格に対し望ましい変化をもたらそうとする一サービスで、治療的または行動変容指向のもの。

 <作業適応>と<作業評価>はしばしば同じ場面でもち上がるという事実が、われわれを目標と目的についての議論へ導入する。この二者には大きな違いがあるために、両者を同一部門で実施することは望ましくなく危険でさえあるということがたいへんに気にされている。

目標と目的

 Association of Rehabilitation Centersは“Standards for Rehabilitation Centers”(1965)の中に目標という章を設けた。この基準は、National Association of Sheltered Workshops and Homebound Programsの“Standards for Sheltered Workshops”とともに現在ではCommission on Accreditation of Rehabilitation Facilitiesの基本書となっている(スタイルは多少変更されているが)。

 この基準は、目標の例示はあげていないが、クライエントに対するプログラムとサービスの結果を測定するには、正確な目標設定が必須であるという理由を概略述べている。上記の基準が基本的に述べている評価ユニットの目標は以下のとおりである。

 1. 職業評価の一般的(定義)前述と矛盾しないこと

 2. 協働的関係にある憲章、法令等と矛盾しないこと

 3. きちんとしたていさいを持った公式の記録があること

 4. 下記各方面へ配布することが可能であること

  (a)職員

  (b)クライエント

  (c)クライエントの依頼者

  (d)サービスを利用しようとするもの

  (e)その他

 さらにこの基準は、評価ユニットの目標は下記事項について明確でなければならず、関連したものになっていなければならないとしている。

 1. 評価ユニットが評価しようとしている人間の諸要因

 2. それによって行われる評価の手段

 3. サービスを受け得るクライエントとサービスの範囲

 また、ニードの変化につれ、今までにはなかったクライエント群が現れ、新しい方法が出現しているのが常であるから、年ごとにふりかえって見るべきだと示唆している。

 このことはすべて、CARFによる75以上にわたる施設の調査の結果、ギャップまたは弱点とされる主論のうちの一つは上記のような「記載された方針」が<欠けている>ことがわかったために述べられているものである。

 さてここで、作業評価の<目標>として必須なものまたは望ましいものは何か、ということが少しばかり混乱し明確化されていないのではないかということがちょっと問題となる。

 Bregman(1967)は職業評価の「目的」として下記のものをあげている。そしてこれは、方法としてとられるものが、作業標本、職務実習試行、治療的環境設定のいずれであっても変わりないとしている。

 1. 行動を視察すること

 2. 職業訓練、就職のあっせん、その他のリハビリテーション・サービスに対する潜在性を決定すること

 3. 職業的自己概念の変容に効果のある治療的環境設定として

 4. 診断の道具として

 5. 予測の道具として

 人によっては3番目の目的には同意しないかもしれない。そして、行動の変容はむしろ作業適応訓練の目的としてのほうが適切だと提案するかもしれない。彼らは、評価と適応訓練両者の目的のこの混同がことを面倒にしているといっている。

 一方、もっと定式化し、特定の理論的ワク組の中に置く人もある。Gellman(1968)は職業評価を理論的に考察し、「人生の社会経済的目標を伴った期間の中にあり、生産活動方向に計画された行動に関しての情報を入手する方法」としている。

 Gellmanは同時に、評価のいくつかの「原則」を述べている(多くはBregmanの「目的」と似ている)。

 1. 職業評価は将来に指向している─予測的である。

 2. 職業評価は定期的でなければならない─クライエントは変化すると想定している。

 3. 職業評価は訓練に関するものと、クライエントの援助に利用可能なリハビリテーション資源に関するものと両方を通じた知識を必要とする。

 4. 職業評価は、リハビリテーション過程と併行するものである─それをもって始まり、ずっと継続するものであり、就職後でさえも続く。職業評価は、そこにいるクライエントに投げかけられた質問に答えるために、他の専門領域をも包括活用する。

 彼はこの過程を「内部的および外部的観点から、作業パターンを観察し、定義づけ、分析する」ように計画されたものと要約する。内外両方が必要とされる。

 目標と目的について論議している過程で、今までにいくつかの方法、モデルが提案され、論争され、そして明確に結論へと形成されてきていることが認識される。現在ある方法がどういう理由で作り出されたのかを問うて見ることが有効で、そうすることにより、以前の方法よりも利点を持った方法を作り出すのに作用しているいくつかの要因があることがわかる。

 1.<時間の経済論>

 実習試行の予測に関する有効性は高いが時間がかかりすぎる。

 2.<障害者に対して持つ心理学的検査の弱力さ>

 われわれのクライエント群で標準化されたテストがない場合の問題点の一つは、適正検査やアチーブメント検査で障害者は不合格になることが多すぎることである。古典的な例は、U. S. Employmemt Servicesの一般職業適正検査バッテリーである。リハビリテーション過程のクライエントが、このテストでいう「必要なパターン」に合致するような高い得点をあげることはまれである。しかしながらこの場合も、テストの粗点によりクライエントが持つ<相対的>な弱さ、強さを知ることはできるので、そうすればカウンセリング過程の助けとして使うことはできる。

 3.<クライエントが洞察をするのに役だつ非言語的体験としての価値>

 多くの障害者は、特に知識が制約されていたり軽度の遅れがある場合は、テスト結果やテストで体験したことと職務に要求されることとを関連づけることをしない。実習試験や職務標本法はクライエントに自分の遂行能力についての洞察をもたらすことが多い。同時に職務がもつ性質を明らかにする効果も持つ。この性質というのは、未経験のときの観点とはずいぶん違ったものであるはずである。彼が気づかなかったいろいろの要素があって、あるものは非常に大きなプラスの作用があり、あるものはマイナスに作用するものだということを知ることになろう。

 4.<身体的・心理・社会的評価>

 「これは最も妥当な職業目的の決定」をもたらすのが普通だが、それと同時にほかにもいくつかの利益をもたらすものである。

作業評価の単純化した目標

 要約して最も簡単な用語でいうと、作業評価の目標は以下の四つの質問に答えるべく資料を整えることである。

 1. クライエントは職務領域または職業訓練領域を決定する準備ができているか

 2. できているならそれは何か

 3. できていなければそれはどうしてか

 4. この決定が<できる>ようにするために行うべきクライエントに対する処遇計画と環境の変更は何か

 リハビリテーション諸機関が、このワク組の中で作業評価目標を設定し記述する必要性は非常に大きい。サービスの提供というニードが先行し、サービスの明確な目標設定に関する熟慮がないままに新しい部門ができ、技術や諸方法がならべられるという結果になっていることが多すぎる。

 「何がわれわれの目的なのか」の答えがない前に「それをどのように行うか、そしてどんな道具を用いるのか」という質問が出されてしまうことがあまりに多すぎる。

 ある施設での作業評価目標は他の施設のものとは異なっていよう。それは、サービスする対象、利用しようとする人のニード、その他の条件が異なっているからである。外科手術後の者を対象とする身体的回復センターでの目標と目的は、受刑者の施設(そこでは、意に反したリハビリテーションを行う中で、そこの収容者を評価したいわけだが)のものとはかなり違ったものになる。

作業評価と作業適応

 作業評価と作業適応が同じ場面設定の中で起こるということを前のほうで触れてきた。これら二つのものは、非常に関係は深いにもかかわらず、違った目的を持った別の過程である。前者は測定し予測しようとするものであり、後者は行動(作業人格)を変容しようとするものである。

 多くの場合、作業評価業務を用意し得る施設が必ずしも作業適応訓練を行うのに適した職員・設備を備えているとはいえない。作業適応訓練を用意しているといっている多くの施設でも、現実には大綱としてのプログラムもなく、きちんと定めた目標がない。練習は完全への一つの道かもしれないが、単に作業活動に継続して直面しているからといって必ずしも作業行動が変容し、向上するという結果はもたらさない。

 目標が異なるにつれ、方法も異なり、したがって要求される職員の技術も異なる。ある程度の「役割の融通性」は作業適応訓練職員には必要とされるが、作業評価の場合には不必要であったり望ましくなかったりする。作業ふんい気や監督関係を、変化に富ませたりいろいろと入れかえたりすることは、<適応訓練>の場合には必要とされるが、<評価>の場合にはプロセスの非標準化という効果をもたらしてしまう。同時に、役割の融通性はすべての人が同水準では行い得ないということは明らかである。作業評価者が二つの帽子─評価者と作業適応訓練者のと─をかぶることは可能ではあっても、それはあまりにも多くを要求し期待しすぎていることになろう。

 最後に、作業評価の目標としてはたして古典的科学でいう二つの相─<観察>と<推測>─の両方を包みこんでいなけらばならないのかを問うてみよう。われわれは、作業評価の基本的焦点は観察─実施期間中の資料収集─であるといった。しかし次のステップ─これらの観察にもとづき推測する─はどうであろう。作業評価者は単独でこれを行い得るだろうか。ここでわれわれは、リハビリテーション・チームによるほうが結局は強力だと認めるのである。作業評価者は、観察した行動の分析にもとづいて結論と予測を構成する過程に<援助することはできる>,しかし彼は職業評価、リハビリテーション評価の過程においては、チーム内の多くの他メンバーの援助を必要とし、実際に援助を受けることになろう。

(池田 勗訳)

*Pruitt, W. 1970. Basic Assumptions Underlying Work Sample Theory. Journal of Rehabilitation。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1971年4月(第2号)18頁~24頁

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