これからのリハビリテーションの挑戦に直面するワークショップの新たな方向

これからのリハビリテーションの挑戦に直面するワークショップの新たな方向

New Directions for Workshops Meeting the Rehabilitation Challenge of the Future

 William Gellman, Ph. D.*

小川孟**

本稿は、1966年12月9日シカゴにおいて、DePaul University 管理学部および米国職業リハビリテーション庁が共催した会議において発表された原稿に、手を加えたものである

 何ごとかを予言するということは困難な仕事である。常に変転きわまりない状態の世界において、ワークショップの将来を予測することは、とりわけ困難なことである。米国の政府は職業更生改正法(Vocational Rehabilitation Act Amendments of 1965)によって、ワークショップの発展拡充を急速に進めたのであるが、私たちはワークショップが職業更生の分野で主要な役割を果たすようになることを確信する一方、そのワークショップが将来どのような形をとるものであるかはよくわかっていない。しかし、現在リハビリテーションに影響を与えているさまざまな要素が、将来のワークショップを形づくることは疑いないのである。

 私はこの論文の中でワークショップの歴史を振り返り、ワークショップの将来のコースを描き出すためのひとつの出発点として、リハビリテーションの実践においてさまざまな変化を起こしている諸要素を簡単にながめてみることにする。

ワークショップの歴史

 ワークショップには長い過去と短い歴史がある。私たちが障害者のリハビリテーションの可能性について調査し始めたのは、つい最近のことである。たいていの場合、典型的なワークショップは、終身的(terminal)か、あるいは障害の重い者のための安息所としての庇護作業所(sheltered workshop)であった。

 米国において、最初のワークショップとして設立されたのは、盲人のためのパーキンス学校で、それは1829年マサチューセッツ州ウォータータウンで開始された。その終身的ワークショップの運営はひとつの定義を生むことになったのである。すなわち、1954年になって、ワークショップに対するリハビリテーションのアプローチが示された同年施行の職業更生改正法がそれである。

 それによると、「“ワークショップ”という語は、なんらかの製造あるいは手工業が行なわれている場所を意味し、また競争的労働市場に吸収され得ない重度の障害を持つ人びとのために、有給の雇用を与えるという根本的な目的によって運営されるところを意味する。」

 終身的ワークショップはその数も増加し、リハビリテーションのすぐれた一部門として現在も存在している。Chouinard と Garrettは次のように指摘している。

「ワークショップは、本質的には競争的雇用の対象ではないが、なんらかの生産的能力のある障害者が作業活動に従事する特別な場所である。」しかし、多くのワークショップは、その名称がなんであろうと現実には依然として終身的な場所となっている。

 現在、終身的ワークショップは二つの方向へ分化しつつある。一つは作業活動センター(work activity center)になりつつあり、他の一つは一時的ワークショップ(transitional workshop )へと変わりつつある。作業活動施設またはセンターは、学校制度のわくに組み入れられない精神薄弱の青少年のために、なんらかの援護を与えることに関心を持つ父母の会の出現によって顕著になってきた。作業活動センターは、育成を助けるために計画された社会的・レクリエーション的・教育的プログラムを提供するものであり、こうした分野においては育成に重点をおいているにもかかわらず、ほとんどの活動センターは保護を行なっているのが実情である。1966年の公正労働基準改正法(Fair Labour Standards Amendments of 1966)は、作業活動施設(work activity shops )を「身体的または精神的障害が彼らの生産能力を著しく阻害するほど重い障害者のために、治療的活動を中心に計画されたセンター」と定義した。

 一時的ワークショップの名称の意味するところは、障害者が庇護雇用から競争的雇用へ移行することができるように計画されたところということである。無期限にいられる終身的ワークショップと比べて、一時的ワークショップは一定の期限があるという点で違っている。たいていの一時的ワークショップは、作業評価、いくつかの作業経験のプログラム、およびカウンセリングを行なっている。ワークショップの職員はまず第一に生産面について工業関係の訓練を経た者であり、クライエントの問題行動を和らげるおもな要因は、カウンセラーとクライエント、またはケースワーカーとクライエントとの人間関係である。しかし、毎日のワークショップの生産活動とカウンセリング、ケースワークは分離されたものとして取り扱われる傾向にある。

 最近いくつかの一時的ワークショップは、作業適応の社会心理的側面と、より改善された作業経験プログラムに重点を置くようになってきた。最も新しいワークショップの定義としては、全米ワークショップ基準研究所によるものがあり、次のように述べられている。 

「シェルタード・ワークショップは、調整された作業環境と個別化された職業的ゴールを備えた仕事を中心としたリハビリテーション施設である。それは、障害者が通常の生活と生産的な職業的地位に向かって進むことを援助するために、働く経験を与え、関連する諸サービスを提供するところである。」

 職業適応ワークショップは、クライエントが競争的雇用の場で働くことができるようにするため、その作業形態と人格を発展させるリハビリテーションの手段として、ワークショップを活用するのである。職業適応ワークショップは、職業的カウンセリングや個人的カウンセリング、一般工場における試験的就労、および競争的雇用へのギャップを埋めるための職業あっせんなど、広範囲なサービスの一部分である。それが重視されるのは、クライエントに仕事の意義を理解させ、作業態度を身につけさせるために、作業のもつ社会心理的な要素が有効に使えるからである。そして、専門的職業カウンセラーは、ワークショップのプログラムの中で、個人的および社会的諸要素を総合する職長(foremen )として働くのである。

 Bitter および Bolanovichは、ワークショップのもう一つのタイプを、作業経験センターとして次のように説明している。

 すなわち、ワークショップは一般社会における企業経営が備えている産業上の緒条件とほぼ同じものを持つことに重点を置く。ワークショップの職長は、産業界における経験が豊かな人物であるべきであって、生産、時間および動作研究についての知識を持ち、契約、雇用関係、管理などにも詳しい人物が望ましい。職長の基本的役割は、ワークショップのマネージメントと生産管理、すなわち材料、機械、労働、時間、品質、数量、コストなどの管理である。

 作業経験センターにおいては、職業カウンセラーはクライエントのケースマネージャーとして働く。カウンセラーはひとりひとりのクライエントの計画の遂行にあたって、将来の雇用のために教育的、心理的、社会的な成長を促すのに適当と思われるさまざまな手段を利用することができる。リハビリテーション・ワークショップはカウンセラーが利用するこれらの手段の一つである。もう一つの重要な手段は企業の面からみた雇用主の役割である。雇用主が提供してくれる職場は実際の仕事と直接結びついた環境の中での評価と訓練のために役だつのである。協力を申し出た雇用主は特定の訓練目標のために、あらかじめカウンセラーによって指示されたとおり、クライエントによってそれぞれ異なった期間、仕事に従事させて訓練する。このような一般企業の職場は仕事の内容だけでなく、責任の度合い、社会心理的な複雑さ、あるいは仕事による圧迫度もそれぞれ異なっているのである。

 この短いワークショップの歴史を振り返ってみると、ワークショップの持つ柔軟性というものが目だっていることがわかる。その発展の過程の中で特に目だった特徴の一つとしてまず指摘できることは、終身的ワークショップが、労働市場に対して働く障害者を準備する一時的ワークショップへ移行していることである。この一連の変化は、より詳細に検討された作業評価と適応のためのプログラムを発展させた。次にあげられる特徴は、終身的ワークショップから仕事という概念を除外して、重点を雇用の可能性の乏しい重度障害者の生活を充実させる諸活動においたことである。

リハビリテーションおよびリハビリテーション・ワークショップの将来の方向に影響を与える諸要因

 ワークショップの進む将来の方向は、リハビリテーション分野の発展と切り難して考えることはできない。そこで、リハビリテーションに影響をおよぼす4つの要因と、それらがワークショップにおよぼす影響について簡単に述べることとする。その4つの要素とは政府の方針、経済社会の変化、クライエントの変化、および方法論の変化である。

 1.政府の方針

 1965年の職業更生改正法はリハビリテーションの範囲を拡大した。すなわち、同法は重度の障害者ならびに競争的雇用に受け入れられるための手段として職業訓練や作業経験をする必要のある人びとのために、新たな分野を拡大する基礎を作ったのである。同法によってワークショップの新築、増築の補助金が増加し、ワークショップの数が増え、設備、規模が充実した。また訓練や広範囲の評価、技術援助のためにも基金を設けてワークショップの機能の改善を助成したのである。

 職業更生改正法はワークショップをリハビリテーションの分野に統合する方向へ進めていくであろう。さらに多くの長期的評価プログラムが継続されることによって、重度障害者の潜在的作業能力が成長することを期待している。連邦職業更生局からの補助金は、職業訓練プログラムの育成に拍車をかけるであろう。そうなれば当然の結果として、障害者の一般的な作業態度の進歩といったことにのみ固執してきたワークショップは、その数が減少するであろう。そして、ワークショップにおけるビジネス面がより重要性を増すものと思われる。同法の技術援助の条項には、受注価格の見積り、契約の獲得、生産、安全、職員の活用などに関するワークショップの運営改善のための基金や奨励金が設けられるであろう。

 2.経済社会の変化

 ワークショップを含めたリハビリテーションの進路は、労働市場における経済社会の変化と政府の貧因者対策のあり方によって大きく左右される。

 労働市場は第二次産業革命の結果、大きく変化した。オートメーションとサイバネティックスは、社会の産業、工業技術および商業の構造を変えつつある。また産業および職業における廃退が急速に起こりつつある。Millerは、産業界で要求される技術や教育の程度が常に上昇していることを強調し、リハビリテーションのクライエントによって象徴されるような、限られた教育と訓練しか持たない一群の人びとの価値が低下し、産業界から排除されてしまうという間違いない事実を強調しているのである。

 Wolfbeinは、労働市場を「職業構造の中に起こっている高度化の変化と、広範囲にして複雑な訓練の増加という二重の変化に対応するもの」として見ている。同時に「増加する工業生産高と一般的な経済成長に対応して、大量にして高率の失業者の動かしがたい実在がある。」といっているのである。

 リハビリテーションとワークショップの持つ重大な意義は、長期的に何世代にもわたって存在する貧困の再発見にあるといえよう。地域社会からの援助や経済的自立の機会を障害者に与える計画などによって、従来ともすれば他に依存することのくり返しであった障害者を、その生活から脱皮させようとする努力は、労働市場に結びつく人びとや長い年月の貧困や失業に比較的傷めつけられていない人びとに対してはよい成果をあげている。

 しかし、このような計画は、一方において多くの機関が孤立している貧困者に対しては、手をさしのべることについてほとんど無力であり、他方、老人、障害者その他の恵まれない人びとは、これら施設、機関を利用することに関して無力であることを示している。

 貧困対策の失敗は、リハビリテーションが貧困に打ちのめされた障害者にまでゆきわたらないことを示し、またリハビリテーションの機関は、社会のさまざまな恩恵を利用できるような、よりよい生活に立ち直れるきわめて限られた貧困者にしか有効な援助をおよぼすことができない態勢にあることを示している。

 労働市場の変化は、貧困労働者をはっきりと二つの階層に分化させる傾向にある。その一つは雇用であり、他は失業である。もちろん雇用される層は労働市場にやとわれ得る人びと、すなわち、現在就職している人びとあるいは短期間の雇用状態にある人びとである。雇用可能な人びとは雇用に際して、教育や訓練の程度、有用な技術の有無、年齢、品行、態度、経歴、会話、人種、宗教などについて必要な条件が要求されるのである。

 失業者の層は、リハビリテーションの分野で取り扱うような人びとから成り立っている。働いた経験のない者、重度の障害者、労働市場で認められる技術を何も持たない者、競争的雇用の場にいまだかつてなんらの足がかりを持つことができなかった貧困地域の居住者たちなどが失業者層である。

 この失業問題も、労働市場の変化によって、ますます不利な状況に追いやられることになりそうである。少数民族や障害者、正規の教育や訓練を受けていない青少年、老人や重度の障害者たちは、労働市場の求人率が高かろうと低かろうと、就職口を捜すことがますます困難になってくる。失業者たちに対する就職への道はますます狭くなり、彼らの能力を引き出して訓練するためのプログラムが、最近ではあまり効果をあげていない現状からみると、一般の労働市場に吸収され得ない人びとに対するプログラムは、非競争的な作業訓練をするものへと移行することが必要になるであろう。

 3.クライエント

 ワークショップにおいて、リハビリテーションを受けている人びとの構成も変化してくるであろう。重度障害者の数が急激に増加してきたことは周知の事実である。これらの障害者の多くは、一般の競争的雇用に加わることは困難であり、一般企業や政府機関での雇用に適応できるレベルで生産に従事することはとうていできない。

 ワークショップの対象者には心理的社会的問題を持った者が増加するであろう。現在ワークショップで働いている者の大部分は複合的な障害者である。最近のワークショップ運営に関する調査報告など関係書に述べられているところによれば、ワークショップのクライエントの大部分は情緒的な問題を抱えており、障害に起因するさまざまな心理的問題が現われている。そこには貧困などいくつかの原因が存在しているのである。

 現在および将来にわたって、ワークショップのクライエントの多くは、労働市場との安定した結びつきの得られない雇用対象外の者になってしまうであろう。長期間にわたる失職あるいは不安定な就労が、マイナスの結果として彼らの働く意欲を失わせている。多くの雇用対象外の者はさまざまな問題を提示している。すなわち、仕事の責任感の欠如、働くことに向かない性格、役にたたない技能あるいは技能の不足、保証のない就労、作業環境の中でどのように作業し、仕事を遂行するのかを習うことを妨げ、あるいは抑制するようなゆがめられた労働評価、などがそれである。彼らは雇用対象外の人間から生産労働者に転換するという、非常に困難なことを経験することになるのである。

 以上のように、リハビリテーション施設やワークショップにおいては、重度障害者、情緒障害者、社会的落伍者といったいろいろなクライエントの間の釣り合いが大きく変わることが予想されるのである。これらのグループの多くは、中産階級的なカウンセリングや心理テストには順応しないと思われる。またこれらのグループに対する潜在能力の評価も、就労準備に必要な効果的プログラムを発展させることも困難なことであろう。

 4.方法論の変化

 リハビリテーションとワークショップ活動における最も著しい発展は、従来隔絶されていた両者の関係が統合され、専門的サービスが共同で行なわれるようになったことであろう。この数年来、カウンセリング、ケースワーク、就職あっせん、グループワーク、ワークショップ技術は、クライエントの個別的プログラムの開発のために統合されてきたのである。こうして将来のワークショップは、リハビリテーション施設の一部門として増加するであろうし、孤立した単独のワークショップは消滅する傾向にある。そして、雇用主と社会と保健福祉の機構とが基本的連携を持った職業リハビリテーション施設の複合体の一部として再現されるであろう。

 ワークショップはクライエントの行動、態度、パーソナリティーを調整するための専門的な環境設定として非常に有用なものである。より広い範囲においては、ワークショップそれ自体、生産面を助長するという特質の発展に役だつものとなるであろう。またワークショップは臨床の場として使われることが多くなることが予想される。こうしたワークショップは作業環境、クライエントとスタッフの役割の調整、指導について必要な態勢を整えるであろう。

 ワークショップは、より洗練された教育訓練の技術を用いるようになる。従来使われたような作業サンプルはもはや使われなくなり、それに代わって、評価のために心理テストを行なったり、評価と訓練のために実際の工場で行なわれている作業をまねたものを行なうのである。ワークショップや工場における実習経験は、計画された学習によってさらに生かされる。またビデオテープを使うことによって、クライエントが作業者としての自分を見直すことができ、実習にあたって直面している問題を明らかにすることができるのである。現場の環境に中にクライエントをおいて、その行動を適性にする方法はますます重要になってくる。

 もう一つの傾向としては、ワークショップにおける作業に段階的な順位を設けることによって、クライエントがワークショップの運営に積極的責任をとるようになることである。貧困者対策に用いられるこの方法は、作業の段階に応じた具体的な報酬、地位の向上、昇給などの保証によって、クライエント自身が仕事の進歩と将来の可能性を確認することができるのである。

これからのリハビリテーション

 いままでに4つの要素、すなわち、(1)政府の方針、(2)経済社会の変化、(3)クライエント、(4)方法論、について論じてきたが、これらの要素はリハビリテーションおよびワークショップに変化をもたらすものである。リハビリテーションの分野のこれからの焦点は、雇用対象外とされる者をなくすことである。その範囲は、現在対象としている身体的、精神的、情緒的障害者から、高齢者、貧困者、犯罪者、仮釈放者その他競争的雇用に受け入れられない人びとにまで拡大されるであろう。

 これからのおもなリハビリテーションの方策は、競争的な仕事と非競争的な仕事を平行させて行なうような形態がとられるであろう。こうした非営利事業の形態は、ワークショップや英国のレンプロイのように、一般工場の形態を備えたものや公的あるいは民間の施設として運営され、そこにおいて働く機会を提供することになる。働くことを通じてクライエントは生産活動に必要な基本的諸条件を身につけるのである。このような体系は、特別な職業的技術を修得したり、他の仕事をやるためにも役だつ基本的な技能を学ぶ教育と訓練を従来よりも一段と強調する。再訓練は継続的なサービスとしてより重要な要素となるであろう。政府からの賃金補給はこのようなプログラムに組み入れられ、報酬は仕事の遂行度と生産高によって決められることになる。そのほか保健、教育および福祉サービスの組織網も充実されることになるであろう。

これからのワークショップ

 以上述べた議論の傾向が、現在および将来にわたって重要な意味を持っているとするならば、これからのワークショップに対する見解はどのようなものであろうか。

 私たちの知っている終身的ワークショップは姿を消し、それらは作業活動センターおよび非競争的な作業形態のものにとって代わられるであろう。作業活動センターは生産能力が著しく限られた重度の障害者のためのものであり、そこから非競争的な仕事あるいは一般の競争的雇用体系への移行はほとんど可能性がない。学校は学齢の障害者に対して大きな責任を持っているから、作業活動センターは学齢以上の障害者を取り扱うようになる。

 一方私たちの知っている一時的ワークショップは、作業適応と作業経験が組み合わされたワークショップに発展するであろう。クライエントは実際の仕事の遂行に参加するのである。彼らは階段的に分けられた作業を順序に従って経験することによって、持てる能力の最高に達するまで進歩する。それぞれの作業部門は、その環境においての評価や治療の技術を包含した態勢を整えるのである。重要な点は、作業というものを手段として、クライエントの働く性向を育て、そこで修得する新しい技能を通じて、働くことの意味の理解を助けることにある。こうして、クライエントは一時的ワークショップからそれぞれの能力適性によって、作業活動センターや競争的あるいは非競争的作業体系へと移行するのである。

 おもな一時的ワークショップは、現在あるような町の店舗的なものから、スーパーマーケットのような性格をもったより大規模なものになるであろう。そうなれば、そこではカウンセリング、心理テスト、ケースワーク、就職あっせんなど、あらゆる関連サービスが行なわれるようになるであろう。整備された訓練プログラムの実施に当たっては、専門の指導員が配置され、クライエントが就労する工場や非競争的作業体系において行なわれる仕事と同じような作業が行なわれるのである。このようなスーパーマーケット的な一時的ワークショップは、その地域の中に戦略的に配置された関連ある小規模の一時的ワークショップや作業活動センターの要請に応じて協力することになる。

 これからの一時的ワークショップは自分のところのクライエントだけでなく、作業活動センターや非競争的作業プログラムのクライエントに対しても定期的評価を実施するのである。その評価は現在の能力の評価と同時に潜在的能力の評価に重点をおく。一時的ワークショップはまた、心理的圧迫感や緊張のため競争的あるいは非競争的な仕事に適応できない人びとのために、職業的回復センターとしての役割も果たすのである。このような人びとは限られた期間一時的ワークショップに戻り、その間仕事の上だけではわからないような心理的、環境的問題の是正を援助されるのである。

 作業活動センターおよび一時的ワークショップのクライエントは、その生産に応じて賃金の支給を受けるであろう。そして国は補助金によってクライエントの最低賃金に満たない分を保障することになろう。賃金の上昇は生産の増加との関連において行なわれ、クライエントが最低収入のレベルから脱却することができるようにするのである。

 ワークショップのスタッフは、職業教育、人間関係、生産技術について、あるていどの知識を持った専門的カウンセラーによって構成されることになるであろう。ワークショップの発展は、職業カウンセラーの役割に新たな分野を加えることになるであろう。カウンセラーは地域社会に出かけて行き、工場で働いているクライエントや非競争的な仕事に従事しているクライエントの評価を行なうのである。これによってクライエントは働く期間の延長や、仕事上の問題が起きてワークショップに戻すことなどについて、組織的なフォローアップを受けることができるようになるのである。

 ワークショップについて、私の印象的、個人主義的なやり方で論じてきたが、非競争的な作業形態あるいは競争的作業いずれにおいても、特別プログラムの訓練あるいは一般雇用での訓練の方向へ向かって、ワークショップは橋渡しの働きを持っていることを強調してきた。全体としてこのシステムは変わりやすいであろうし、従来の伝統的なワークショップから、作業活動センター、訓練所、競争的雇用および非競争的作業形態へと展開していく可能性を広げていくであろうと思う。ここにおいて職業カウンセラーはさまざまなシステムとワークショップとの間を組織化していくであろう。

 別のいい方をすると、将来ワークショップのアンテナは、すでに組織されているリハビリテーション体系のすべての面に到達するであろう。職業リハビリテーションのサービス全体は、雇用対象外の人びとや障害者のために、彼らが生産するための能力や可能性をすべて生かして、社会の生産人口の一員となることができるように、その援助をする役割をになうようになるのである。

要 約

 私はワークショップの歴史とリハビリテーション、およびワークショップの将来に影響をおよぼすであろう諸要因について述べてきた。

 私たちの知っている終身的ワークショップはおそらく作業活動センターあるいは非競争的な作業プログラムにとって代わられるであろう。

 将来の一時的ワークショップはリハビリテーションの欠くことのできない部門として、教育的要素と作業経験のプログラムを組み合わせたものになるであろう。

 評価はクライエントが作業活動センター、一時的ワークショップ、および非競争的な作業において働く期間を通じて継続的に行なわれるであろう。

 ワークショップのおもな機能は、クライエントの技能が進歩するような訓練または作業プログラムを提供することにある。限られた期間での職業的回復を行なうことは、一時的ワークショップの責任になってきている。

 これからのワークショップにかけられた期待は大きい。その期待にこたえるのは、避けることのできない産業界の諸問題に取り組む新たな方法を展開させる私たちの能力にかかっているのである。ワークショップの将来のあり方は、リハビリテーション達成のかなめ石である。

(Rehabilitation Literature,September 1967から)

参考文献 略

*Jewish Vocational Service of Chicago の常務理事であるとともに、米国イースターシール肢体不自由児・者協会研究財団理事長である。
**日本キリスト教奉仕団アガペ授産所長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1973年1月(第9号)41頁~48頁

menu