医学、職業、教育、社会のリハビリテーション主要4分野に関する将来のための指針 医学的リハビリテーションの将来のための指針(ガイドライン)

医学、職業、教育、社会のリハビリテーション主要4分野に関する将来のための指針

医学的リハビリテーションの将来のための指針(ガイドライン)

Guidelines for the Future in Medical Rehabilitation

1. 従来、医学的リハビリテーションは、おもに病院、センター、専門施設内において、主として筋肉・骨格症状や感覚障害を対象にして発展してきた。しかし1970年代においては、リハビリテーションの範囲を拡大し、障害症状を持つすべての人びとを対象としたコミュニテイ保健サービスの欠くことのできない一部として、発展させなければならない。

2. リハビリテーションは、ハンディキャップを持つ人びとのために総合的なヘルス・ケアを実施し、以下の規準を満たさなければならない。

(a) 普遍性(universality)──問題全体に対する適切なサービス

(b) 容易性(accessibility)──必要とする者ならだれでもが利用できること

(c) 柔軟性(flexibility)──変化する疾病やハンディキャップ症状、テクノロジーの進歩、および変動する社会機構にも常に対応できること

(d) 総合性(comprehensiveness)──リハビリテーションのあらゆる側面を網羅し、効果的に調整・指導されること

(e) 継続性(continuity)──疾病、障害の始まりと同時に開始され、継続的に実施されること

(f) 完全性(completeness)──障害者が社会に統合されるまで、完全に実施されること

3. リハビリテーション専門部は、大規模の病院、特に教育病院(teaching hospitals)において設置されなければならず、その他の病院やセンターにおいては、適切な施設を設けなければならない。開発途上国においては、全国を対象にするかまたは地域単位でもよいが、教育・デモンストレーションを目的としたセンターを設置する必要がある。

4. 保健サービスと教育・職業・社会サービスとの間に適切な連絡調整態勢を整え、これらすべてが、全国、州、地域レベルで調整されなければならない。

5. 利用可能なあらゆる健康診断システムを活用し、また、教育・社会機関などからの照会によってケース発見につとめ、要注意(at risk)のケースやその他の登録者を注意深く分析し、評価しなければならない。

6. リハビリテーション医学という新しい専門分野が数多くの国々で開発されつつあり、1970年代には、リハビリテーション医学(rehabilitation medicine)と、物療医学(physical medicine)、および関連分野との関係を明らかにしなければならないであろう。医学的リハビリテーションでは、患者に対する直接的ケアがその焦点となっており、医学および外科分野における広い経験を必要としているが、また、その他の医学専門分野や保健職員によって実施されるサービスを理解・調整し、教育、職業および社会サービスとの適切なる連携態勢を伸ばす能力も要求されている。

7. 保健に関与しているすべての国際機関は、リハビリテーションの概念にもっと力を入れなければならない。この種の国際機関は、すべての国々において適切なプログラムを開発する機会を設けられるであろう。

8. リハビリテーション分野に関与するすべての国際的医療機関は、密接な協力態勢のなかで事業を進めなければならず、世界中にリハビリテーションプログラムを促進するために必要とあれば、組織の再編成を図らなければならない。

9. 障害やハンディキャップを国際的に分類するために、損傷(impairment)、機能障害(disability)、ハンディキャップ(handicap)等の定義の統一化が緊急に必要とされ、リハビリテーション用語辞典を国際的に体系化しなければならない。

10. 1970年代における難問題の一つは、リハビリテーションに従事するすべての職員の募集・養成である。

11. 研究事業および評価をより促進しなければならず、医学委員会は、これらの促進をその重要課題とすべきである。

12. 各国における国際障害者リハビリテーション協会加盟団体は、これらの指針をそれぞれの国に適した形に編成しなおし、各国内においてその具体的実施につとめなければならない。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1975年7月(第18号)3頁~4頁

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