ヨーロッパにおける民間団体の事業活動

ヨーロッパにおける民間団体の事業活動

神谷[あきら]*

はしがき

 リハビリテーションの発達水準は、その国の経済的水準ではなく、社会的水準によっている。わが国においては、心身障害者福祉対策の関係法律は一応整備し、施設もかなりの程度普及している。しかしその割には、リハビリテーションの過程がスムーズに流れていない。

 ヨーロッパにおいては、リハビリテーションの発達が、民間団体の役割に負うところが大きい。1968年フィンランドにおいて、その感を深くした。又昨年(1975年)の冬に、民間団体の組織と運営の調査を目的として、英国と西独を訪ねたが、同様の感想を持った。この小稿では英国脳性マヒ協会、西独脳性マヒ協会、および西独障害者団体連合会の事業活動について述べる。

 なお、この調査に当たっては、英国はわが国のBobath法のメッカ、聖母整肢園の梶浦園長、西独はVojta法のわが国への紹介者である、在Mu-nster、富雅男医師に多大の配慮を得た。

 英国脳性マヒ協会(The Spastics Society)

 1.沿  革

 この協会は1951年に創立し、当初は親たちの小さな団体として、固い決意のほかには何もなくて出発し、自来20数年を経た今日まで、約25,000人の脳性マヒに種々のサービスを実施し、輝かしい業績を残している。しかもその業績に甘えることなく、先駆的開拓精神と、変化する社会情勢に対応して、力強く前進する団体として有名である。

 その間、(1)治療と訓練と教育を実施する学校、(2)在宅の脳性マヒに治療その他各種のサービスを行うデイセンター、(3)重度障害の収容施設、(4)勤労者の居住施設、(5)母親を休養させるための子ども一時預かり施設、(6)200万ポンドの脳性マヒ研究基金、(7)60万ポンドの脳性マヒ教育者の養成基金など、その活動の内容は大きい。

 2.組  織

 協会の本部はロンドンに在り、イングランドとウェイルズに、180の地域支部団体(Local Group)を持っている。

 本部の理事会は15人の理事で構成されている。理事は半数又は3分の2が、脳性マヒの子を持つ親であり、1人は自身が脳性マヒであり、他は専門家である。この比率は固定したものではない。理事は毎年3分のlが総会において改選される。この総会では180の地域支部団体が、各l人の代表を送り、理事の選出を行う。

 執行機関として理事会の下に、(1)管理部門、(2)施設部門、(3)財務部門、(4)広報募金部門がある。そのほかに医学助言委員会と教育助言委員会がある。

 各地域支部団体は、例えば Bristol Spastics AssociationとかPortsmouth and District Spastics Societyという名称を持つ協会であって、各各独立した団体である。各地域において独立した活動をするが、本部又は所属のリージョンに対して、助言や財政援助を求めることができる。

 イングランドとウェイルズを8リージョン(Region)に分けて、各リージョン(地区)に地区主任者(Senior Regional Officer)を配置している。各リージョンには連絡委員会が設置され、リージョン内における各地域団体相互の問題を討議し、共同事業活動をしている。

 3.事  業

 (1) 相談と評価事業(Family、Personal Advisory & Assessment Services)

 家族サービス・評価センターがロンドン市内に設立されている。障害というものは、単に障害のある者自身だけでなく、その家族全体が、身体的にも精神的にも影響があるという観点から、家族全員が宿泊し相談をすることができるように設備されて、25人の宿泊施設が併設されている。

 評価部門は、医師1人、心理専門家1人、ソーシャルワーカー(以下、SWと略す)1人で構成され、脳性マヒの専門家を配置して、児童とその家族を含めて、面接、テストを実施して年間400人の児童、青年、成人の能力の評価をしている。

 又OTを置いて、外来の個人の相談を受けて、日常生活の指導もしている。

 (2) 社会事業サービス(Social Work Services)

 協会では有資格の経験のあるSWが、地方および国の行政機関と密接な連絡をとり、サービスを実施している。毎年約1,000人の脳性マヒの子どもとその家族が、協会にサービスを求めに来ている。乳幼児の比率が増加しているが、これは協会の情報と援助サービスが、親たちに浸透してきていることを示すものであろう。

 熟練し、専門的知識を持っている協会のSWは単に障害者に対してばかりでなく、地方自治体の福祉行政職員にも、サービスを提供している。自治体職員は、障害者に対する業務の経験が浅く、職員の配置替えが多く、又法律は寄せ集めでちぐはぐな点も多いので、業務の遂行が満足にできない。こうした自治体職員に対して、協会のSWは、熟練した技術と継続性と安定性をもって助けている。しかし協会でも、このような熟練したSWは不足しているので、専門職員とボランティアの結びつきの強化が必要となり、地域支部団体の家庭訪問員その他のボランティアに対して講習を実施している。

 (3) 治療と訓練

 治療と訓練とその他のサービスのためにデイセンター(Day Centre)が設置されている。デイセンターは在宅の障害児者に対する昼間の利用施設であって、各地域に設立され、範囲の広いケアがなされている。又、早期治療については、協会はBobath博士夫妻の脳性マヒセンタ-(The Western Cerebral Palsy Centre、現在 The Bobath Centreに変わっている)に事務室を置いている。 

 (4) 教  育 

 協会は、障害児をすべて特別学校に入学させなければならないという考え方は持っていない。障害を持つ児童にとって、最も有益な教育の場は、一般の普通学校であり、健常児と共に教育を受けることであると信じている。しかし、非常に重度の場合には、寄宿舎を併設し、教育設備のある、特別学校の必要性も認めている。

 協会の特別学校は、治療と訓練も併せて行い、教育当局は、協会経営の特別学校、再教育センター、家族援助施設の教育に対して交付金を出している。協会経営の学校は7校あり、すべて公認学校である。学童の年齢は5歳から16歳が多く、学校の定員は28人から120人の間で、大部分は50人~60人である。入学はまずロンドンとマンチェスタにある評価センターで児童と親と双方面接し、推薦書が居住地市町村に送られ、市町村長が許可すると、学校長がその児童を受け入れることになっている。

 ハンガリーの故Peto教授によって開発された、脳性マヒに対する教育学的治療法(Conductive Education)は教師、セラピストおよび親に熱烈な支持を受けている。近年協会は、協会経営のIngfield Manor校およびCraig-y-Parc校に実験グループを作り、Ingfield Manor校にはConductive Education Unitの建築を始めた。これはPeto教授の理論により、就学前の重複障害児に対して、独立して日常生活ができるよう治療訓練を実施する場である。目的は入学後の訓練の必要を無くするために早期治療をしてしまうことである。このユニットの職員は、理学療法士、保母、寮母である。このユニットには診療所が併設され、外来の母子通園により早期治療ができるよう考えられている。更にこのユニットには国の内外から来る研修者のための宿泊設備がある。

 最近教育分野の中で、言語障害児の増加という重要な傾向が出てきている。200人の児童がテストを受けたところ、その3分の1に言語障害があった。協会の学校は言語障害児に対する教育に積極的に取り組んでいる。

 教育の統合の問題については、教育研究所の研究ユニットの協力の下に、研究プロジェクトで進められている。

 ほかに再教育センター(Further Education Centre)が2校ある。これは学校終了後更に学習を希望する重度障害のための学校で、自分の欲する学科を選択して、教育を受けることができる施設である。

 (5) 家族援助施設(Family Help Units)

 24時間重度児を家庭で介助しているために、過労になった母親を休養させることを目的として、短期間児童を預かる施設である。この施設には公認の学校が併設されており、baby-sitterも置いて、障害児ばかりでなく、兄弟姉妹もいっしょに預かり、医療も配慮されている。母親は子どもたちを預けて、休養をとって過労をいやし、美容院に行き、買物に行ける。1施設の定員は10人程度であって、一時12施設あったが財政難のため、現在は4施設か開設されている。

 (6) 職業相談と就職あっせん

 協会では職業相談員と職業あっせん員を配置して、評価と相談とあっせんを行っている。担当職員は、地方自治体および国の関係機関と密接な連格をとり、各学校を訪問し、工業商業その他の産業団体と接触して職業あっせんの拡大に努めている。又、相談の写しの一部を青年雇用サービス部(Youth Employment Service)に送付し共同で業務を進めている。

 (7) 作業センターおよび職業訓練センター(Industrial Work and Training Centre)

 協会は、障害者はすべて、授産施設に入るという考えは持っていない。障害者は一般企業において健常者と共に働くべきだと考えており、それへの努力をはらっている。例えば工場新設計画の情報が入ると、工場主に対して、障害者を受け入れやすいように、工場内設備の企画を提供するとか、新しい地域開発、ニュータウンの企画がある場合には、障害者の新しい職場を考えるよう申し入れをするなどの努力をしている。このように一般企業へ働きかけると同時に、職業訓練センター、作業センターの設置も実施している。

 職業訓錬センターは、入所定員60人~100人、訓練種目は工業部門、事務部門とか、機械工業、木工業、塗装業等がある。

 作業センターは、入所定員25人~50人、作業種目には子どもの遊具の組立、包装、印刷等があり、そのほかに下請作業として機械工業関係がある。

 インフレが高進し、産業が後退し、協会の作業センターの下請部門の受注は激減した。協会はその対策として下請センター(Contracts Centre)を設立した。このセンターの活躍で、景気後退による赤字を克服することかできた。

 (8) 家内作業サービス(Homework Services)

 作業センターの仕事も不可能な重度の脳性マヒのために、Homework Sectionを設置し、家内作業を実施している。現在宝飾品の組立と印刷作業が、在宅の重度障害者に提供されている。協会はこれらの作業の訓練を実施して、現在62人の在宅障害者が家庭内で生産に従事しているが、それらの宝飾品は、全国的に販売されている。

 (9) レクリエーション・サービス

 協会はレクリエーションの必要性を認め、各シーズンの新しい休暇プランを作成し、提供してきた。又、障害者が広く社会に接触するように、クラブ活動を推進してきた。現在36のクラブと1,500人の会員が、会議、研修コース、グループ休暇等の活動を続けている。

 更にレクリエーション・サービス部を新設し、新しくレジャーとレクリエーションの研究を開始した。この目的は身体に重度の制約があるために、家庭内でも、居住センター内でも、日常生活が制限されている人たちにまで範囲を拡大することにある。同時にこの事業が、一般の健常者と共に活動を分担し、通常のクラブに受け入れられ統合されていくように目標を置いている。

 英国においても、一般観光地のホテルは、重度障害者を受け入れるように設備されてはいないので、利用できない場合がしばしばある。協会は休暇用ホテルを設立し、重度の人たちか楽しく旅行ができるよう、設備を配慮している。

 (10) 居住センターとホステル(Adult Residential Centre and Hostel)

 居住センターは、重度の肢体不自由の男女に、住いを提供する施設である。プライバシイを保持できるよう個室とし、またできる限り地域の健常者と交流できるよう努力している。どの施設も脳性マヒを主として、30人~50人を収容定員とし、医療の配慮もあり、作業施設も付設し、施設により理学療法、言語治療、更に再教育もできるようにしている。

 ホステルは、一般企業および作業センターに通う人たちの寄宿舎であって、各地域に多数設置され、収容定員は5人から15人の小規模のものである。

 新しく開設された居住センターは既存の民家を協会が購入し改造したために「施設的様相」が無く、そのため近隣にとけこんでいる例がある。又あるセンターでは、当初周囲近隣の反対があったが、購入した2戸建のl戸を改築して居住センターとし、1戸をつぶして庭園として環境を良くしたために、反対は消えて入居者は近隣に多くの友人ができた場合がある。

 最近の傾向は、入居者の重度化である。これは入居者の個々の要望、必要性が質的に変化し、職員の比率の増加をもたらしている。そして職員の特別研修が必要となり、各居住センター間におけるアイディアの交換、運営の心構えとか、方法論の再検討を目的とする会議や現任訓練が増加している。

 (11) 建築サービス(Architectural Services)

 協会に建築技術者を置き、新築の居住センター、作業センター、その他の施設の設計をする一方、地域支部団体や親に知恵をかし、各種の障害に適切な家づくりヘの助言をしている。また既存の建物や、公共の場所の改造、工場新設のとき、障害者を雇いやすいような工場設計の提案をしている。

 (12) 肢体不自由者の店(Spastics Shop)

 Charity Shopは協会の大きな財源のひとつである。肢体不自由者の店は94に増えている。主な商品は寄付物品と中古品であったが、暗い感じがともずれば店を沈滞させることがあったので、店内の感じをよくするため、新品をも置くことに切りかえた。主として、化粧品、服飾用の小間物を陳列し、店の外観を美しくしている。更に不用になった家庭用品をも取り扱うようになって、経営は順調になってきている。

 (13) クリスマスカードの販売

 クリスマスカードの販売は、協会運営資金となり、社会に対して、協会の名をPRすることになる。しかしインフレーションによる用紙価格の高騰、景気の後退、高額の郵便料金等により、事業の後退を余儀なくされている。

 (14) 出版物の刊行

 脳性マヒの子どもを持つ親への心得、療育技術者教育の参考資料、および社会に対する啓発のため、数多くの出版物の刊行や映画の製作頒布を実施している。

 4.財  政

 協会の1974~1975年度決算書によると、収入総額は352万2千ポンド(約18億9千万円)、支出総額は344万9千ポンド(約18億5千万円)である。これは前年度に比し、収入が8万3千ポンドの増、支出は91万ポンドの増である。この支出の異常な増は、英国経済を悪化させているインフレーンョンによるものである。

 協会の収入財源は、(1)募金、(2)寄付金、(3)事業収入である。郵便募金(Mailing Appeals)も実施している。協会本部に対して国の補助金は無い。しかし募金力というか資金集めは非常にすばらしい。

 協会が設置経営している学校と施設の運営経費は別途会計で、その支出総額は369万1千ポンドである。その中で地方行政機関が支弁する額は222万6千ポンドで経費総額の60%である。各施設への直接寄付金が32万9千ポンドなので、差引113万6千ポンドの赤宇となり、これを協会本部が負担している。

 協会は本部、学校、施設等で総数1,926人を雇用し、その中1,619人が医師、教師その他の技術職員、307人が管理部門、募金部門の職員で、人件費総額は経費総額の約47%である。

 協会は最近、財政危機に直面し、その克服に非常な努力を払っている。財政危機の原因はインフレーションである。インフレーションは募金した金の購買力を低下させてしまう。建築費は値上がりし、新規事業計画の実現はますます遠ざかってしまう。これの克服としてとられた方策は計画実施のスピード化を考えている。もうひとつの克服の努力は経営技術の改善で、運営経費の引き下げに向けられている。しかし障害者自身の福祉の水準が下がることのないように留意している。

 協会は対策として、行政機関に対して、運営費全額を負担するよう要望している。協会は行政機関の財政困難は認めているが、これが協会の財政難克服のための理想的な方法であると思っている。

 西独脳性マヒ協会(Bundesverband fur Spastisch Gelahmte und andere Korperbehinderte e.V)

 1.組  織

 この協会は1959年に設立された。脳性マヒとその他の肢体不自由の親の団体であって、全国に16,000人の会員を持つ法人である。

 理事会は7人の理事で構成され、そのうち3人が親、2人が医師(1人は親、1人は小児科医)、2人が自身肢体不自由である。

 別に協会が指名依頼した専門家グループがあり、医師グループと教育グループが協会に対して、助言をしている。

 協会は下部組織として11の州支部協会(Landesverband)と、153の市町村支部協会(Ortverein)とを持っている。

 本部には理事会の下に事務局を置き7人の職員がいる。

 2.事  業

 (1) 施設づくり

 協会は親の運動として発足し、その運動はまず施設づくりであった。153の市町村支部協会は、地域に治療訓練施設、肢体不自由児幼稚園、学校、保護授産施設等を設立してきた。

 (2) ケースワーク

 市町村支部協会では、専門のケースワーカーと研修を受けた親とがそれを担当している。親はすべての相談に協会に来ている。

 (3) 早期発見と早期治療

 協会の活動は基本的には医療が先行し、その残ったところを福祉活動として実施している。協会は医療に対して発言力を持ち、医療と児童の間に立って、具体的に児童の医療について、医療機関に発言している。

 早期発見と早期治療は協会の大きな関心事である。協会は最新の治療法を受け入れることに努力している。西独においては、治療法としてBobath法やVojta法の教育を受けたセラピストは多数にのぼり、CPセラピストとして、他のセラピストよりも高給である。

 治療の場所は大学、開業セラピストの診療所、協会の治療訓練施設およびセラピストの車での家庭訪問治療である。

 (4) 統合の問題(Integration)

 教育については、肢体不自由児学校がある。統合の問題については、西独においても、特別学校に重点を置くか、一般学校にすべきかは、わが国と同様教育者も親も意見が2分されている。しかし、方向として統合に進んでいる。Koln市のある肢体不自由児幼稚園を訪問した時、その点について園長は、「この幼稚園は2グループで、1グループは8人の園児(保母3人)で全員肢体不自由のみ、他のグループは8人の園児の中で、3人が健常(親の理解)である。西独では、いまだ一般の幼稚園で肢体不自由児を全員入れるという段階ではない」と述べていた。

 (5) 職業

 協会は「職場を作る運動をしている」。この運動は①職業訓練所を作ることと②会社を作ることである。簡易な印刷業は商業ベースに乗っているが、企業として成り立たないにしても会社を作る運動をしている。この場合本人の収入に対する基礎は、社会援助法、生活保護法によっている。機械器具の設備購入費には労働省の補助金がある。保護授産施設は市町村支部協会が持っているところもある。

 重度の脳性マヒで、保護授産施設の利用も不可能な場合には収容施設があるが、これは協会は持っていない。教会か他の福祉団体か市町村自治体が持っている。これらの収容施設は身よりの無い老人も含めた施設であるが、今後は身体障害者のみにする考え方になってきている。

 (6) 対社会活動

 本部および州支部は、社会への啓蒙、刊行物の出版、行政機関への陳情、他団体との協力等の活動を実施している。

 3.財  政

 (1)、協会本部の経費は、年間50万マルク(約6千万円)である。この財源は、①国民年金保険基金、②青年家庭保健省の交付金、③寄付金(郵便募金)、④会費(支部から)、⑤交通罰金等である。

 (2)、市町村支部より本部へ送金する会費は、会員1人当たり年額9マルクで、それを2マルクを本部運営費、5マルクを定期刊行物(Das Band)の購読料、2マルクを州支部へ配分している。

 (3)、市町村支部は、各支部独自に会費年額12~30マルクを徴収し、その中9マルクを本部に送金する。

 (4)、協会のデイセンター、学校その他の施設の運営経費は全額行政機関が負担している。

 (5)、一般の後援会員は定期刊行物のみ受ける。

 西独障害者福祉団休連合会(Bundesarbeitsgemeinschaft“Hilfe fur Behinderte”e.V.)

 1.組  織

 この団体は、自助を目的とする障害児の親および障害者の22の団体の連合会である。1968年に設立されたが、設立に当たってはサリドマイド児の親が強力に推進した。この連合会を組織している会員の団体は次のごとくである。

 (1) 二分脊椎 Arbeitsgemeinschaft“Spina Bifida und Hydrocephalus”

 (2) 筋萎縮症 Bekampfung der Muskelkrankheiten“helft dem muskelkraenken Kind”

 (3) サリドマイド Bundesverband der Eltern korpergeschadigter Kinder“Contergankinder-Hilfswerk”

 (4) 脳性マヒ Bundesverband fur spastisch Gelahmte und andere Korperbehinderte.

 (5) 自閉症 Bundesverband Hilfe fur das autistische Kind e.V.

 (6) 教育遅滞 Bundesverband zur Forderung Lernbehinderter.

 (7) 精神障害 Bundesvereinigung“Lebenshilfe fur geistig Behinderte”

 (8) 視覚障害 Bund zur Forderung Sehbehinderter.

 (9) 膵臓線維症 Deutsche Gesellschaft zur Bekampfung der Mucoviscidose.

 (10) 難聴言語障害 Deutsche Gesellschaft zur Forderung der Hor-Sprach-Geschadigten.

 (11) 血友症 Deutche Hamophiliegesellschaft zur Bekampfung von Blutungskarankheiten.

 (12) 人工肛門 Deutsche Ileostomie-Kolostomie-Vereinigung.

 (13) 多発性硬化症 Deutsche Multiple Sklerose Gesellschaft.

 (14) リウマチ性疾患 Deutsche Rheuma Liga.

 (15) てんかん Deutsche Sektion der Internationalen Liga gegen Epilepsie.

 (16) 全盲 Deutscher Blindenverband.

 (17) 糖尿病 Deutscher Diabetiker-Bund e.V.

 (18) Camphill 後援会  Freundeskreis Camphill.Gemeinnutziger Verein zur Forderung behinderter Kinder, Jugendlicher und Erwachsener in den Camphill-Einrichtungen in Deutschland, Sitz Uberlingen.

 (19) 人工透析 Interessenverband der Dialysepatienten Deutschalands(Kunstliche Niere)

 (20) 注射障害 Schutzverband fur Impfgeschadigte.

 (21) 重度重症身体障害 Sozialhilfe-Selbsthilfe Korperbehinderter e. V.

 (22) 喉頭欠損 Vereinigung der Kehlkopflosen in der BRD.

 この連合会の目的は次のごとくである。

 (1) 障害者の要望を社会に出すこと。

 (2) 社会の人々の心の中に社会的責任感を強めさせること。

 (3) 経験の交換、諸活動の組織化。

 (4) 参加各団体の州および市町村段階での活動促進。

 (5) 国、州、市町村各行政機関の障害者関係の立法計画への参与。

 (6) 同一目的の公私の組織との共同運動。

 理事会は7人の理事で構成される。その中3人が会員である団体の代表者より、4人が専門家である。理事会は年3回開催される。総会は年1回開催され、投票権は各団体1票で、団体の大小には関係ない。

 会の運営は理事会の決定により、事務局長が執行する。事務局職員は12人で、いずれも専門分野、①行政機関関係、②法律関係、③福祉関係を担当する専門家である。事務局長および職員1人は弁護士で専任している。

 2. 事  業

 事業は事務局が下記事業を実施している。

 (1)、法規の整備をはかること(例えば法規上の差別の撤廃をはかること)。

 (2)、会員団体から各々の問題の通告を受け、国会の障害者関係の委員会に働きかける。

 (3)、国の関係機関に働きかける。

 (4)、全国11の州の州議会の議事録を調査し、障害者問題の掲載分を文書にして会員団体に配付する。

 (5)、特別事業として別途補助金をもって、各種出版物を刊行する。

 3. 財  政

 会の経常経費は年額60万マルク(約7千2百万円)である。この財源は3分の2が国の青年家庭保健省からの交付金で、3分の1が会費、寄付金と事業収入である。事業収入はクリスマスカードの販売である。全国組織の団体であるが、建物の借損料と事務局長の人件費は、本部の所在地であるNordRhein Westfalen州から補助されている。支出の80%が人件費で、その他は事務費である。

 会の財政状況は苦しいとのことで、西独でも寄付を依頼する場合、管理運営費ではなかなか寄付してくれない。この会の事務局長が言うには、管理運営費については長い間どうしたらよいかを考えてきたが、結局よい処方箋は無かった。運営費は国の補助金によらなければやれないという結論に達した。したがってその場合自由は制約されることはやむを得ないということであった。

 なお参考までに、西独では民間で施設を設立する場合、経費の80%は国の補助がある。残りの20%をテレビのチャリティ募金と寄付金によっている。テレビの募金はAction Sorgenkindといって祉会福祉施設の建築資金の募金制度である。郵便局窓口に番号付の振込用紙を置いてあり、申し込みにはテレビで宝くじの発表がある。

 施設の運営費の財源は複雑で、その施設の対象者の原因別の各種の基金から出るようになっており、全額国の負担である。

 会員各団体の財源は、補助金を主として会費と寄付金と交通罰金である。交通罰金は、裁判所で処理した交通法違反に対する罰金で、これは裁判官の裁量により福祉に配分される。

むすび

 ヨーロッパでは、障害者の団体は、まず、障害児の親又は障害者自身が、自助(Self help)の団体として発足し、その必要にせまられた問題解決として施設づくりを始めて今日に至っている。その事業活動の基本をリハビリテーションのプロセスにしたがって発展させている。この点が非常に重要だと思う。わが国民間団体の今後の活動にとって必要なことは、場当たりのものではなく、リハビリテーションの基本にのっとって、進展させることと、リハビリテーションの不可能な場合に対する援護を同時併行して実施することである。もちろんヨーロッパの団体は国の事情、団体の沿革も異なり、そのまま持ちこめるものでは無いが、他山の石とすることには努めるべきであろう。

資料 略

*社会福祉法人大阪府肢体不自由児協会常務理事/事務局長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1976年10月(第23号)2頁~9頁

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