Miriam E. Lane, M. D., Esther Dorfman, M. Ed., James T. Demopoulos, M. D. **
大漉憲一***訳
1965~70年の間に、Hospital for Joint Diseases and Medical Centerで行った身体障害者に対する職業リハビリテーションの最終結果を見ると、必ずしもすべてが就労に到達してはいなかった。そこで、複雑な要因に関する更に突っ込んだ分析を企画し、また、この問題に関する文献を考察した。そして、我々が取り扱った患者の職業的な結果に影響した要因は、大きく次の三つに分類し得るという結論に達した。すなわち、人ロ統計学上の要因、身体障害に関する要因および社会的不利を特徴づける要因である。
1970年7月、職業的な結果を予見するのに価値のある9項目の要因について研究する目的で、実験的プロジェクトが結成された。ここでは、予見可能な指標として使用できる、数量化されたスコアリング・システムを確立させる可能性についても検索した。
50名の患者のうち、職業リハビリテーションの結果、成功したものが19名、失敗に終わったものが31名であった。職歴、動機づけ、身体障害、知的障害、および技術・熟練度(work level)の諸要因は、両群間に有意な差があることがわかった。成功群と失敗群とを数的に分ける分岐点は19点であった。
この定量化の試みは、一見職業的成功に疑問があっても、最終的には成功するであろう人々を排除してしまうという危険を回避したり、あるいは、むだな努力のために要する経済的な支出を回避したりするのに有用な客観的予見法をもたらすものと思われる。
1965~70年の間に、Hospital for Joint Diseases and Medical Centerで行った身体障害者に対する職業リハビリテーションの最終結果を見ると、必ずしもすべてが就労に到達してはいなかった。そこで、複雑な要因に関する更に突っ込んだ分析を企画し、また、この問題に関する文献を考察した。
そして、年齢、性別、社会的・心理的能力、障害の程度、職歴、技術・熟練度、動機づけ、および知能指数が、就労を決するときの最も重要な要因であるという結論に達した。
上記の諸要因は、大きく次の三つに分類することができる。すなわち、人口統計学上の要因(年齢、性別)、身体障害に関する要因および社会的不利を特徴づける要因である。文献を調べると、身体障害者に影響を与える既知の諸要因を主題にした研究はいくつかあり、また、最近の研究には、不利と考えられている人々の職場復帰問題に取り組んでいるものもあるが、身体障害と社会経済的な地位の低さとを結びつけた結果に関する文献は皆無であった。
LesserとDarlingは、ニューヨークにおける身体障害者の研究の中で、次の諸要因が雇用を達成するのに役立っていることを明らかにした。すなわち、障害の発生が30歳以前であって、しかも後天性であること、身辺自立能力を有すること、平均またはそれ以上の知能があること、および、少なくとも高校程度の教育を受けていること、であった。これらの諸要因が欠落すると、比較的軽度な障害であっても、雇用の機会は減少することが判明したと述べている。
McPheeとMaglebyは、Montana Bureau of Vocational Rehabilitation出身のクライエントたちを研究した結果、高い教育歴(2年以上の高校教育)があること、家庭生活が安定していること、熱意があること、選んだ職種に満足していること、健康であること、および、比較的若いことが成功のカギを握る要素であるという結論を得ている。
West Virginia Research and Training Centerで行った研究の中で、Tsengは、意欲だけが成功を予見するのに有効な要因であり、興味、作業態度がそれに次ぐ重大な要因であるとしている。一方、脳損傷の存在、IQおよび教育程度は、予言するのにさほど重要な要因ではないという知見を得ている。
我々の研究に関連したものでは、社会経済的要因、例えば、教育水準の低さ、非行を引き起こすような環境条件、嗜癖、貧困家庭、情緒の不安定さ、文化程度の低さ、などのために就労の際困難を来している人々があることを述べた論文がある。
教育の欠如、家庭の貧困および酒や薬の嗜癖は、雇用の達成に対し、明らかに障害となっている。国民一般の教養水準からかけ離れた低水準のために引き起こる葛藤という問題は、あまり明白にはなされていない。Turnerは、障害と、報酬体系が環境によって異なるという傾向との関係を指摘した。中流のアメリカ人の生活水準ということに動機づけされていないクライエントは、単に、彼らの属しているグループの文化を反映しているにすぎないかもしれない。これらの相違をなくそうとしても、最近の雇用情勢の現実ではうまくいかないことが多い。彼らに適していて、報酬の高い仕事は容易には探し出せないのである。従って、患者が生活様式を変えようとするならば、好機をのがさないようにと激励しなければならない。彼らにとっては、通常得ているものよりも高い報酬が必要なのである。
もう一つの問題は、憤慨に満ちた、受動性に凝り固まっている生活様式からくる、かの有名な「福祉症候群」(welfare syndrome)である。自力の収入が確保される前に、福祉の手当という保障を失ってしまうと困るという不安感があって、それが多くの障害者に職業訓練や就職を探すことをちゅうちょさせてきた。しかしながら、この不安を解消すべく、職業リハビリテーション機関と福祉機関の活動を調整する努力はなされつつある。
福祉からの独立を更に複雑にしているのは、福祉から離れようとするとき、生活できる給料を得られる職業、あるいは、公的援助による収入と同程度または少しでも高い給料を得られる職業につくことができる人が、余りにも少ないという事実である。WilliamsとEdwardsは、テキサス州オースチンにある黒人地域の人々を研究して、大部分の貧困ケースは、教育をあまり受けていないために、不十分な収入しか得られない低水準の職業に就労している結果であると結論づけている。それによると、教育が低ければ低いほど、Office of Economic Opportunityが定めた貧困境界線(poverty line)以下に落ち込んでいる世帯の割合が多くなっている。1970年度ニューヨーク市労働奨励計画(Work Incentive Program)によると、雇用を妨害する頻度の最も高いものは教育の欠如であって、健康、年齢、その他の要因は頻度が低いといっている。また、興味深いもう二つの事実は、合計8,542名の対象者のうち、4,691名は黒人で、3,248名はプエルトリコ人であったということである。この対象者グループの人種構成は、我我の対象にしたグループのそれと類似している
文献を考察した結果、我々の対象にした人々は、先に研究されてきた諸々の欠陥要因を持ったものを「不利益を被るもの」(disadvantaged)と定義したときの代表的なサンプルになっていると思われる。
これらの要因のほとんどが、我々が対象にした人々の職業的な成果に影響を与えているように思えたので、それぞれの要因の欠陥度を組み合わせて作った等級が、予見尺度として使えるという仮説を立てた。さらに、我々の扱った対象者においては、身体的および精神的障害の程度、意欲および年齢が最も予見性の高い要因、家族状況、職歴および技術・熟練度は最も予見性の低い要因、そして、IQおよび教育がその中間であるという仮説を立てた。さまざまな要因の組み合わせをもとにして数量化したスコアリング・システムを作り、成功・失敗の予見に役立てることが我々の目的であった。
対象
1970年7月1日から1972年4月1日までの間に職業リハビリテーションを受けた合計98名の患者の中から、50名を選び出した。いずれも身体障害があり、ほとんどゲットー(ghetto)の居住者で、すべてのケースが職業的に成功または失敗という形で、処遇を「終了」したものばかりであった。我々の病院に来る患者の大部分かゲットーの居住者なので、ここに選び出したケースも、患者全体の代表的サンプルとなるようにした。対象者の障害状況は表1の通りである。性別、年齢による分類は表2の通りである。すなわち、50名のうち49名が20歳から65歳までの間で、1名が65歳以上であった。男子35名、女子15名で、また、27名が黒人、15名がスペイン語系、8名が白人であった。
診断名 | 患者数 |
切断 | 13 |
脊椎疾患 | 9 |
中枢神経系疾患 | 9 |
股関節障害 |
6 |
手部障害 | 4 |
関節炎 | 3 |
その他 | 6 |
年齢 |
男 | 女 |
20未満 | 0 | 0 |
20~40 | 12 | 4 |
41~55 | 18 | 8 |
56~65 | 4 | 3 |
65以上 | 1 | 0 |
計 |
35 | 15 |
対象者は、職業復帰に成功したグループ(N=19)、および失敗したグループ(N=31)の2群に分けられた。特別な診断による分類は行わず、各個人の欠陥度による分類を行った(付表1)。
要素 | 基準 | 段階 |
年齢 | 20~40 | 1 |
41~55 | 2 | |
56~60 | 3 | |
20未満、60以上 | 4 | |
家族状況 | 協力的 家族は協力的だが、地域機関の援助が多少必要。 |
1 |
協力的だが要援助 家族と共に居住しているが、地域諸機関の幅広い援助が必要。 |
2 | |
非協力的または破壊的 家族の結びつきの欠落、あるいは破壊的な働きかけの存在。 |
3 | |
教育水準 | 高校以上 | 1 |
6年~8年 | 2 | |
6年未満 | 3 | |
職歴 | 上 堅実雇用。転職もほとんどなし。 |
1 |
中 転職多く、しばしば失業。 |
2 | |
下 雇用期間僅少または雇用経験なし。 |
3 | |
技術・熟練度 | 専門的、技術的。 | 1 |
熟練的、半熟練的。 | 2 | |
非熟練的。 | 3 | |
意欲 | あり 職業上のプランを持って、または持たずとも、自己を信頼している。職業的プランニングに積極的に参加する。 |
1 |
ややあり ティーム・メンバーに依存。協力的で、やや積極的に参加。指示を守り、時間を守る。 |
2 | |
なし ティーム・メンバーに依存。関心の示し方は不十分で、受動的。多くの指示を失し、弁明もしない。 |
3 | |
身体障害 | 軽度 四肢すべて使用可。ADL自立。交通機関利用可。 |
1 |
中度 一肢または体幹障害が重度。ADL自立。特定の交通機関利用に限定。 |
2 | |
重度 二肢以上または体幹障害。ADL部分介助。車いすまたは非常に限定された交通機関のみ利用可。 |
3 | |
知的障害 | 軽度 抑うつや不安の反応が身体障害の程度に比例。 |
1 |
中度 抑うつや不安が異常段階にあるか、またはテスト結果に異常所見がある。カウンセリングによるサポートがあれば可。 |
2 | |
重度 知的状況は機質的障害を呈し、幅広いセラピーを要す。 |
3 | |
IQ | 平均以上 | 1 |
境界線 | 2 | |
平均以下 | 3 |
対象者の見通しを予見するために、年齢、家族状況、教育水準、職歴、技術・熟練度、意欲、知的障害およびIQの9要因をチェックした(表3)。
種類 | 段階 | 種類 | 段階 |
年齢 | 家族状況 | ||
20~40 | 1 | 上 | 1 |
41~55 | 2 | 中 | 2 |
56~60 | 3 | 下 | 3 |
20未満60以上 | 4 | ||
教育水準 | 職歴 | ||
高校以上 | 1 | 上 | 1 |
6年~8年 | 2 | 中 | 2 |
6年未満 | 3 | 下 | 3 |
技術・熟練度 | 意欲 | ||
専門的・技術的 | 1 | あり | 1 |
熟練的・半熟練的 | 2 | ややあり | 2 |
非熟練的 | 3 | なし | 3 |
身体障害 | 知的障害 | ||
軽度 | 1 | 軽度 | 1 |
中度 | 2 | 中度 | 2 |
重度 | 3 | 重度 | 3 |
IQ | |||
平均以上 | 1 | ||
境界線 | 2 | ||
平均以下 | 3 |
*付表1参照
リハビリテーション・プロセスの実施中は、すベての対象者を医師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー、職業カウンセラーが観察した。ティーム・カンファレンスを開き、処遇開始時およびその後の定期的な再評価を行った。
基礎としたデータは最初の診療記録とその後のティームによる評価の記録である(付表2)。各対象者について、9項目それぞれに1点から4点までのいずれかの得点を与えた。採点は、筆者らのうちの2名と、後日このプロジエクトに参加した1名のティーム・メンバーが、別々にブラインド採点で行った。採点者には、各要因の評価基準(付表1)が配付された。障害程度が最も軽度な場合、または、個々の要因について最も好ましい様相を呈している場合に1点、障害の最も重い場合に3点、1項だけは4点に評価した(表3)。採点者ごとの採点が終わると、その結果を出し合って比較し、討議して最終得点を決めた。そして、対象者ごとに9要因の合計得点を計算した。考え得る最低点、すなわち最も好ましい場合の得点は9点で、最高点、すなわち最も好ましくない場合は28点となる。
要素 | 方法 |
年齢 | 面接 |
家庭状況 | |
教育水準 | |
職歴 | |
技術・熟練度 | |
意欲 | 面接、職業的・社会的サービス評価およびフォローアップ |
身体障害 | 医学判定、理学療法、作業療法、検査 |
知的障害 | 心理テスト*(WAIS) |
心理テスト*(MMPI) | |
心理テスト* (TAT) | |
神経学的相談 | |
IQ | 心理テスト(WAIS) |
*WAIS,Wechsler adult intelligence scale.
MMPI,Minnesota multiphasic personality inventory.
TAT,Thematic apperception test.
次いで対象者を成功群と失敗群とに分類した。有給で雇用されたもの、または、訓練プログラムをすでに終了しており、短期間のうちに雇用が期待されたものは19名で、職業リハビリテーションとしては終了したが、雇用されなかったケースは31名であった。各個人の要因別得点を累計して、群別に、要因別の平均点と全要因合計の平均点とを計算した。これらの10対の平均点(各要因別得点9対と合計点1対)について、統計的に有意差検定を行った。後日10番目の要因として援助の方法もとりあげたが、スコアリング・システムには含めなかった。
年齢以外のすべての要因において、成功群の平均と失敗群の平均との間に予想された通りの差が見られた。もちろん、失敗群の方が高得点であった(図1)。表4は、要因ごとの統計的有意差の水準を示している。群の平均点が統計的有意差を示している要因は、職歴、意欲、身体障害、知的障害および技術・熟練度であった。両群間に高い有意差を示しているもう一つの要因は、援助の方法であった(図2)。成功群では、対象者の33%が公的援助を、67%が家族の援助を受けていたのに対し、失敗群では、80%が公的援助を受け、20%が家族の援助または障害年金を受けていた。その差は統計的に有意であった(表5)。
図1. 個人別諸要因の平均点分布
図2. 成功群・失敗群における援助の方法の分布
成功群 | 失敗群 | ||
要素 | 平均点 | 平均点 | T |
知的障害 | 2.0 | 2.6 | P=0.01* |
身体障害 | 1.7 | 2.3 | P=0.01* |
意欲 | 1.2 | 2.4 | P=0.01* |
技術・熟練度 | 2.4 | 2.7 | P=0.02* |
職歴 | 1.2 | 1.6 | P=0.05* |
家族状況 | 1.8 | 2.1 | P=0.1 |
IQ | 2.1 | 2.4 | P=0.1 |
教育水準 | 2.0 | 2.1 | P=0.6 |
年齢 | 1.7 | 1.7 | P=0 |
*0.05以下で有意
援助方法 | ||
成功群 | 福祉 | 33% |
家族 | 67% | |
失敗群 | 福祉 | 80% |
家族 | 20% | |
T |
4.4(P=0.0006) |
群平均で有意差を示さなかった要因は、年齢、家族状況、教育水準およびIQであった(表4)。成功群および失敗群の合計点の平均には、有意差があった(表6)。このことは、職業リハビリテーション対象者の成功・失敗を予見する数量化されたスコアリング・システム作成は可能だという筆者らの仮説を裏づけた(図3)。同時に、成功群と失敗群とを数的に区別する分岐点が19点であることも判明した。成功群の中には18点以上になった対象者は皆無であったし、失敗群の中での最低点は17点であった(図3)。
図3.成功群・失敗群における各要因別得点の合計点
成功群平均 | 失敗群平均 | T |
X=20 | X=16 | P=0.001 |
この研究の結果は、いくつかの要因と職業リハビリテーション成功との間に関係があることを示している。この研究の対象者は、相互に比較的似かよっており、New York State Employment Serviceで処遇された障害者とほとんど類似している。概して彼らは高校教育を受けておらず、技術・熟練度の低い職歴しかなく、かつ身体的には中程度の障害者になったという、社会の中では少数グループに属する人たちである。心理・社会的な問題が、しばしば対象者の医学的・職業的進歩を妨害している。対象者たちは、深刻で変化に富んだ問題を持ってはいたが、我々は38%を職業的に成功させることができたのである
各個人について要因別に得点化し、その合計点を個人別に求めるという方法は、これまでいろいろな調査で使用されてきた。例えば、TomsとBrewerは、職業的に予見をし、その結果を実現させ得るような明確な分析方法を用いた。
実験的研究方法として我々が試みた方法は、明確な分析方法を確立するところまで達してはいない。しかしながら、黒人やプエルトリコ人居住地域に住んでいる対象者については、職歴、意欲、身体障害、知的障害、技術・熟練度および援助の方法が、成功群と失敗群とを明確に区別する要因になることを、我々は証明することができた。我々の扱った対象者について、成功群と失敗群とを区別し得ない要因は、年齢、家族状況、教育水準およびIQであった。年齢が予見できる要素に含まれなかったのは、サンプリングのやり方によると思われる。1例以外は20~65歳のグループに含まれているが、大部分は40代、50代であった。Weisbroth、EsibillとZugerの研究でも、年齢は要因から外れている。教育水準およびIQは、ウエスト・バージニアにおけるTsengの結果では、やや意味のある要因になっているが、一方、LesserとDarlingおよびMcPheeとMaglebyは、教育歴および家庭の安定性は重要な要因になっていると言っている 。
これらの諸研究で使用された要因と全く同じものをゲットー居住者にあてはめて、2群を区別するのは不可能であった。しかしながら、我々の研究で意味があるのは、要因別得点を個人ごとに合計した得点を、職業的な成功を予見するものとして使用できる方式を確立したことである。これは非常に喜ばしいことで、個人のプロフィールはさまざまであり、また、ある対象者には有力な要因でも、他の対象者は全く役に立たないというような場合があるからである。合計得点には、個人内の変化を考慮したり、職業的可能性を比較・評価したりすることまで含まれてしまうのである。我我の知見の中でもう一つ明確になった事項は、2群の合計点を分析する際に、成功・失敗の分岐点が明らかになったことである。その点は19点である。失敗群では、対象者の81%が19点以上をとっており、19%がそれ未満であった。成功群では19点以上をとった対象者は皆無で、100%が、19点未満あった。
成功・失敗を区別する手段として、数字で表される分岐点を利用できることは、非常に実用的である。これは、個人が達成し得るリハビリテーション水準を見極めて、計画を立てるのに役立つ。これを利用すれば、不必要に金のかかる方法や、人的資源の浪費が避けられる。総合的なリハビリテーションのプロセスがうまくいかないよう妨害している要因が何であるかを、我々が確立したスコアリング・システムによって証明することは、それらの妨害要因改善の具体的方法を見い出すのに役立つのである。
職業リハビリテーションの結果を予見し、同時に、改善し得る妨害要因を早期に発見することは、我々が対象にしている患者にとって特に意味がある。彼らの大部分は、社会経済的に不利な背景を持っているからである。
職業的な成功・失敗に関係する要因として次の九つ、すなわち、年齢、家族状況、教育水準、職歴、技術・熟練度、意欲、身体障害、知的障害およびIQを選び、それらが、結果を予見できる要因であるか否かについて研究した。各要因ごとに1~3点の得点を与え、職業的な成功を見い出すための客観的指標として、分岐点が確立された。得点は、低い方が「健常者」に近いことを意味している。
この研究の対象者50名のうち、職業リハビリテーションに成功したのが19名で、失敗したのが31名であった。合計19点の点が、両群を分ける得点であることが明らかになった。両群間に有意差があることが明らかになった要因は、職歴、技術・熟練度、意欲、身体障害および知的障害であった。
この定量的なアプローチは、客観的予見の方法となると思われる。早期に客観的な予見をすることは、自分の職業について疑問を持っているクライエントの不安を除去し、最終的に成功に導くのに役立つ。同時に、高価な物的・人的資源の浪費を伴う非現実な、むだな努力もまたしないで済むことになるのである。
(Archieves of Physical Medicine and Rehabilitation, Fed. 1974から)
参考文献 略
*本論文は1972年8月25日、コロラド州のデンバーで行われたアメリカリハビリテーション医学会の第49回年次総会で発表されたもの。
**ニューヨーク市Hospital for Joint Diseases and Medical Centerリハビリテーション医学部、Mount Sinai医学校
***東京都心身障害者福祉センター職能科
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1976年10月(第23号)18頁~24頁