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〈心理〉

重度・最重度遅滞者の心理的評価

Psychological Assessment of the Severely and Profoundly Retarded

Judith A.Faris, Robert M.Anderson, and John G.Greer*

木村 玲子**、久芳美恵子***

 重度・最重度遅滞児の心理学的評価は複雑なプロセスである。これらの子供は、一般に受容と表出技能に困難があり、知覚や運動の欠損、さらにしばしばはなはだしい身体的異常を伴っている。こうしたことのすべてが正確な評価をひどく複雑にしうるという事実にもかかわらず、これは伝統的に大きな関心をよぶ問題とはならなかった。目的のある教育にというよりも、主として保護することに重点が置かれたので、評価は一般にIQ得点を得るだけに限られた。それ以上の評価はなされないので、遅滞児の分類と配置にはこれで十分であったのである。

 現在広く知られているノーマライゼーションの考えと、多くの重度遅滞者を社会に戻して再統合したいという我々の願いからすると、この外面的な形式だけの評価ははなはだ不適切である。公立学校または寄宿舎つきの施設でこれらの子供の教育を託されてきた者が様々な教育的決定をするためには、確かな理論的根拠を示してくれるようなずっとわかりやすい手順を用いる必要がある。IQはまだ広く用いられ、疑う余地なく管理的な価値をもっているが、それは規範の個別指導をする際には、ほとんど役立たない分類のためのデータを主としてもたらしている。従って、Leland(1972)が述べているように重度遅滞者の評価とは、「自分の生存に全く関係のないことができる能力についての抽象的な評価に基づくよりも、特定の場面での生存に必須の特定の諸活動の中で子供がなしていることの総合的な所見に基づくべきである。」

 この意見に多くの人が同意している。最近の文献についてのある調査は、伝統的評価手順への不満が増大し、直接的・行動的測定により一層の重点が置かれていることを明らかにしている。分類プロセスへの長年の信頼が、それ自身の結果として機能的でないとか、さらには有害であるとかさえ言われ、しきりに反駁されている(Itkin,1972;Throne,1972a,1972b;Hunt,1973;Ross,1974)。知的または原因論的分類が一般的になんら特定の教育方法を導き出せないことは、多くの者が認めるところである(Neisworth,1969;Stuart,1970;Neisworth & Greer,1975)。従って専門家たちは、子供の現在の行動と行動が生ずる条件についての詳細な評価にのり出すようしきりに勧められている。

 この考えに従って、重度遅滞者にかかわりを持つ人々は適応行動尺度(ABS)により強い信頼を置いている。というのは、適応行動尺度が子供の能力と欠損についての明確な描写をもたらすからである。分類よりもむしろリハビリテーションを強調した評価と測定が回答となる問いは、「どのようにその人は分類されるか」よりも「彼は現在どの段階にあるのか」、「彼はここからどこへ行ったらよいのか」である。例えば、子供が自分で服を着られなかったり、トイレに行けなかったり、単音節で話したり、他の子供に八つ当たりすることが測定されるならば、彼個人のニードは何か、治療においてどんなステップがとられるべきかという考えが獲得されうる。

 行動測定の有効性を悟って、多くの現在の研究のつっ込みはそれらの弱点の除去へ向かっている。一般に、様々なABSの著者たちは研究が以下の目的で行われていると報告している。「検査-再検査の信頼性と訓練のもとで縦の行動変化を測定するために、また異なった状況下で異なった評価者による評価を比較するために、そして個々の得点パターンの類型論的分析やさらにまた項目レベルでの尺度の因子分析を実行するために」(Semmel,1972)である。

 Bhattacharya(1973)は尺度自体にいくつかの改善が必要であると言ってきた。すなわち、1)各下位次元の各尺度の得点数が均等化され、2得点間の間隔がほぼ等しさを保つことにより尺度の各得点の記述がより明確にされるであろう。2)ABS尺度をよりわかりやすくするために適応行動の新しい次元のいくつかが加えられると思う。3)パーソナリティの変数の項目のいくつかを再配列・再編成することにより別の改善がなされるであろう。4)各変数に関してそれぞれの遅滞が相対的な立場に立った情報のプロフィールは個々の包括的映像を獲得するために適した方策であろう。

 行動技術の改善のもう一つの見地は、観察自体の改善である。行動の微妙な相違にさらに敏感になると、より詳細な尺度とその後のより個別化される治療プログラムとを生み出す可能性が出てくるであろう。このような観察研究の一つがKravitzとBoehmによってなされてきた(1971)。彼らは、障害をもつ新生児ともたない新生児の律動的な習慣パターンの順序、開始、頻度について観察して2グループ間の有意差を見い出した。研究された行動は、頭部をまわす、身体をゆらす、頭をたたく、親指や他の指をしゃぶる、足のけり、唇をかむ、足先をしゃぶる、歯ぎしりである。彼らの発見の重要な点は、グループ間を識別する測定能力にあるばかりではなく早期治療にも関係がある点である。

 次の項目で、重度遅滞者に最も頻繁に用いられた診断具が述べられている。診断具のいくつかは、一般に知能レベルまたはIQ得点を測定するために用いられる。表面的にはこの論文の行動的テーマに反するとはいえ、それらが重度障害児に大変によく用いられてきたので含められた。指摘されているように、たとえこれに基づいて分類したり、他児と比較したりすることが価値のないものであっても、子供の行為と機能レベルを洞察しうる独立した項目が各診断具にある。適応行動尺度は比較的新しく、さらに多くの変遷を経るであろうことは明らかであるが、適応行動尺度が重度遅滞者に現在用いられうる最適な評価道具であるというのがこれら著者たちの意見である。

 明らかに、特定の個人にテストを行う際に検査者が行うテスト選択は、個々のテストの独自の長所、短所の知識に加えて、子供の生活年齢、特有の欠損(言語、視覚、聴覚、運動等)、さらに以前の経験のような要因によってなされるであろう。何のために評価をするかという評価の目的(選抜、分類、配置またはプログラム作成)もまた、どんな道具が用いられるかを左右するであろう。適切な多種多様な測定を用いて、検査者が個人についてできるだけ多くの情報を得るように試みることが理想であろう。

標準知能検査

<Stanford-Binet知能尺度改訂版、Form L-M、言語性・非言語性>

 Stanford-Binet尺度改訂版(Terman & Merrill,1973)は、重度・最重度遅滞者の一般的な知能発達を測る最も一般的に用いられている単独尺度である。肢体に不自由のない子供は検査用具を扱ったり自分の理解範囲内で言語応答したりするのに、ほとんど困難を感じないであろう。しかしながら本検査は、言語・視覚・聴覚またははなはだしい運動障害をもつ児童には用いられるべきではない。特定の欠損をもつこのような子供のための尺度の各検査項目の修正についての示唆が、Allen & Cortazzo(1970)によってなされている。本検査は、生活年齢2歳から18歳までの規準が「Ⅱ歳」から「優秀成人Ⅲ」にまで及ぶ年齢レベルによって分類されている(Terman & Merrill,1973)。「Ⅱ歳」から「Ⅴ歳」までは6か月間隔で検査が進んでいる。この年齢の普通児の発達は非常にはやいので、より短い間隔で測定することが望ましいと考えられたからである。

 本検査では、最年少レベルでは主に複雑な感覚運動の課題が、そして段々と高いレベルになるに従って言語的課題が累進的に含まれている。低年齢レベルの課題例というと、フォーム・ボードに型を入れたり、事物の絵の名前を言ったり、ビーズ通し、積木、幾何学図形の模写などがあげられる。基底年齢(basal age)は、子供があるレベルのすべての検査に合格することにより定められ、上底年齢(celling age)は全検査項目が不合格のところで定められる。精神年齢(MA)は、合格した各項目に与えられる点数(credits;月数で与えられる)の合計により計算される。MAと規準表の生活年齢とを照合することにより、IQ得点の偏りがひき出される。IQ得点よりもむしろMAを支持することは、教育やリハビリテーションのプログラム作成において、より意味があると言ってよいだろう。

<Cattel 幼児知能尺度>

 Cattel幼児知能尺度(Cattel,1960)は2か月から4歳半までの子供たちに対して標準化された。本尺度はStanford-Binet尺度の下限延長として役立ち、さらにその行動がこの年齢レベルにおちていそうな重度・最重度遅滞児を評価するために用いられうる検査である。年齢レベルは1歳までは1か月間隔、2歳までは2か月間隔、2歳半までは3か月間隔である。本検査は感覚運動課題を最小限度にするよう特に努めて、言語発達、知覚機能、操作技能を評価するよう企画された項目からなる。諸項目はクリニックでの観察や、確かな筋からの情報、そして検査項目の実施によって採点される。月数が増してくると、項目は日常経験に関連した問題解決能力を評価するが、はじめのころの項目は神経学的、身体的発達を評価する。肢体不自由児または視覚・聴覚障害児には本検査の使用は勧められない。22~30か月レベルでは、Stanford-Binet項目が他の課題と混合されている。これ以上になるとすべての項目がStanford-Binet尺度からのものである。本検査の望ましい特徴は、実施平均時間が20~30分であるとはいえ、時間制限が賦課されていないことである。精神年齢とIQとが計算される。

<Minnesota就学前尺度>

 生活年齢18か月から5歳までの範囲の子供たちで標準化されたMinnesota就学前尺度(Goodenough, Maurer, Van Wagenen,1940)は、注意保持を促進するように意図された遊戯活動の雰囲気を利用している。題材は、言語領域として理解・記憶検査、非言語領域として形の認知・なぞり・絵の完成・積み木・簡単なパズルからなっている。A形式がより一般的であるが、この検査は似たような二つの形式で利用できる。検査項目がはいっている封筒に印刷してある指示によって実施が簡易化してある。身体・視覚・聴覚障害者には本検査は不適である。IQ得点が与えられる。

<Merrill-Palmer精神検査尺度>

 現在広範囲な改訂過程にあるが、Merrill-Palmer尺度I(Stutsman,1931)は18~71か月の子供を評価するのに年齢尺度を用いたものである。本検査は、より言語的なStanford-Binet尺度の良き補助検査となるように、動作性項目が優位を占めている。検査の利点の一つに実施時の弾力性がある。つまり、子供の興味を様々にひくために項目の順序が検査者によって変えられるのである。検査自体が全く多様で本質的に興味深い本検査は、個々に鮮かな彩色のほどこされた様々な形の箱に入れて提示される。もう一つの利点は、拒絶や省略を勘定する調整が評価組織に備えられていることである。Stanford-Binet尺度と同じように基底年齢が定められ、上底が与えられねばならない。結果は、MA、IQ、標準偏差値、パーセンタイル段階としてあらわされる。この検査の大きな弱点は、年少の子供にとって一般に意識的目的とはならない速度に信頼が置かれていることである。基準の表現、標準化された標本の不適当な規模と表示、基準の最新化の必要性というような技術的欠陥は改訂で改善されるにちがいない。さらに、身体、視覚または聴覚的障害を伴う子供たちに本検査を使用する際には慎重になるべきである。

個別式標準動作検査

 以下に述べられている検査は、事物操作を必要とする非言語性の手順である。これらの検査は聾や言語をもたない者の評価には適切に用いられる。が、はなはだしい肢体不自由者の場合には、実施時の修正が有効であるほかは避けられるべきである(Katz,1954)。

<Leiterの万国動作尺度とArthur修正>

 2~18歳を評価するLeiter尺度(Leiter & Arthur,1955)は、ほとんど完全に指示をなくしているという特色をなす。すなわち、課題理解が検査の一部としてみなされる。絵つきのカードが貼りつけてある枠が基本的刺激である。その枠に積木を入れることで、カードに表示されてある問題を解決するのが課題である。絵の完成、数の判断、類推、系列の完成、色・灰色の陰影・形、または絵のマッチング、ブロック模様の模倣、空間関係、年齢の違いの認知、足跡の認知、配列記憶、生息地による動物の類似と分類という能力が評価される。IQ得点の比率の正確性と信頼度が疑問とされてきているので、精神年齢得点の使用がむしろ選ばれている。いくつかの弱点があるので、Arthur(1952)が本尺度の年齢段階2~12歳に対する修正と再標準化を公表した。AllenとJefferson(1962)、AllenとCortazzo(1970)は、肢体不自由児に有用な反応方法を論議している。

<Columbia知能検査;第3改訂(第3版)>

 100項目からなるColumbia尺度(Burgemeister, Blum,Lorge,1972)とは、カードに3~5個の絵が描かれていて、そのうちの一つだけ異なった絵があり、それを選び出すよう子供に求めるものである。3~12歳まで困難度が分類されてある。本検査には制限時間がなく、精神年齢41~167か月の子供に適用できる。得点は精神年齢、IQ比としてあらわされる。年少の遅滞児の中には、この課題の本質を理解しそこない一番右または一番左の絵を指したりするという位置に強く反応する習慣をあらわす子供もいるとの批判が出ている(Robinson & Robinson,1965)。

<Seguin-Goddard型板>

 動作検査の最も初期のものの一つである。Seguinフォーム・ボードは、現在Merrill-Palmer尺度やArthur点数尺度などの他の動作尺度に含められている。規準は5~14歳の子供に適用できる。断片は10の断片に取りはずし可能な板からなる。検査者は、規準の配置でその断片を積みあげ、それからそれらをできるだけはやくもとに戻すよう子供に求める。3試行が与えられ、最短試行時間が得点となる。本検査は臨床的に有用である。さらに肢体不自由児の場合は、幾何学的図形に対する適切なさし入れ物を検査者に合図するようになっていて、時間的要素は排除される。

<Hiskey-Nebraska学習適性検査>

 Hiskey-Nebraska検査(Hiskey,1966)の12の下位検査のうち、三つだけは重度・最重度遅滞者には難しすぎるとみなされている(Johnson & Capobianco,1957)。聾や難聴の子供を対象として開発され、標準化された本検査は、3~16歳に適用される。言語が除去され、さらに伝統的な動作尺度においてみられるよりも、より多種多様な課題が含まれている。九つの適切な下位検査は、ビーズ・パターン、色の記憶、絵の同一視、絵の組み合わせ、折り紙、ブロック・パターン、数の記憶、そして空間的推理である。本検査は実施に多くの時間を要し、2度に分けて行われることが提案されている(Johnson & Capobianco,1957)。下位検査のいくつかは運動障害を伴う子供に適している。

標準適応行動評価

<Vineland社会成熟度尺度>

 Vineland社会成熟度尺度(Doll,1965)は、はっきりとは標準化されていない資料提供者との面接の形式をとる。資料の提供者とは、大抵、親、その子と関係のある大人、教師、随行の人、または子供のことをよく知っていて信頼できるような人である。検査者は、資料提供者がもつかもしれない何らかの偏見を評価するようにしなければならない。本尺度は、自分の実際の要求を求めたり、責任をとったりという個々の習慣的社会的活動についての情報を調べる発達一覧表である。本尺度は主に年少レベルに利用されるが、その117項目は出生から25歳以上にまで及んでいる。施設に収容されている者には、あいにくと多くの項目が不適当である。行動の8カテゴリーが選ばれている。すなわち、一般的自立、着衣の自立、食事の自立、意志交換、自己志向性、社会化、移動、職業である。点数が粗点に加えられ、総得点が社会生活能力年齢(SA)と社会生活能力指数(SQ)とに換算される。本尺度の標準化の際の標本は大変に小規模で、標準偏差はあまりよく確立されていない。従ってVineland社会成熟度尺度は、分類の道具としてよりも個々の能力と欠陥を評価するための道具として、また発達を評価するための道具としてよく利用される。

<Cain-Levine社会生活能力尺度>

 Cain-Levine尺度(Cain,Levine,& Elzey,1963)は、知的欠陥をもつグループについて標準化した非常に数少ない試みの中の一つであり、最終的には子供を環境にうまく適応させるような学習技能の発達の程度を評価しようとするものである。その基本的仮説は、「子供の社会生活能力の発達は、1)子供の操作能力の増加、2)他人に指示されることから自己志向的活動への移動、3)自己中心的行動から他者中心的行動への変化、4)自分自身を理解してもらう能力の増加により、もたらされる」ということである(Hiskey,1965)。四つの各下位検査尺度は、「自立」「率先」「社会的技能」「意志交換」である。尺度には、それぞれに様々な段階をあらわしている五つの説明書きと共に44の活動がかかげられている。検査者は資料提供者の返答にどの説明書きが最も近いかをつきとめるよう求められる。記録の空白は、順序正しい面接をするために整えられ、さらに総得点を各下位検査のパーセンタイルに転換するために表が与えられている。本尺度は、IQ25~59、年齢5~13歳の訓練可能な精神遅滞児について標準化された。得点は従ってこのグループとの関連で解釈されねばならない。本検査は、精神年齢3歳以下の重度・最重度遅滞者には適しているとは言えない(Gardner & Giampa、1971)し、さらには他者との比較に用いるよりも個々の発達の評価または認知として用いられる方が望ましい。ある領域においては別の領域よりも迅速に発達するという子供の傾向をより明確に評価する方法であるので、本検査がVineland社会成熟度尺度の総得点以上に登用されるだろう(Congdon,1969)。この二つの尺度は高い相関関係にあることが知られている(r;O.77;Congdon,1969)。

<総合的行動チェックリスト>

 総合的行動チェックリスト(Gardner,1970)について公表された情報はほとんどないが、この検査は認めるに値するものである。というのは、本検査が重度・最重度遅滞児のために特別に開発され、標準化されたものだからである。本検査は行動変容の枠組の中で計画され、チェックリストは八つの下位検査(食べる飲む、排泄、移動、着衣、脱衣、身体の衛生、コミュニケーション)に分割される100項目からなる。総得点と個々の下位検査の得点とが算出される。早い段階で本尺度を用いると、個人内の長所と欠点を確認すると共に、個体間を区別できることがわかる(Gardner & Giampa,1971)。個々の下位尺度の得点は、配置や治療のプログラミング、行動変容の評価にとって有益である。

<AAMD適応行動尺度(改訂版)>

 社会的、個人的発達の4領域が、AAMDの定義に従って精神遅滞者の分類を容易にするよう開発されたAAMD適応行動尺度(Nihira, Foster, Shellhaas, & Leland,1969)の111項目にあらわされている。適応行動尺度(ABS)は、精神遅滞のすべての段階にそして3歳以上のどの年齢にも適用できる。個々の項目としては、ABS尺度はVineland社会成熟度尺度よりも徹底的ではあるが、総合的行動チェックリストには及ばない(Gardner & Giampa,1971)。本尺度は主に収容施設用の用具であるが、親の監督下での通院治療を計画することにも利用される。2部門はそれぞれのレベルからなる。第1部は、日常生活の個々の自立保持にとって重要な領域での技能と習慣とを評価する10の行動領域からなる。第2部は、パーソナリティと行動の障害に関連した不適応行動を測定するために作られた14領域からなる。第1部の領域は、自立機能、身体的発達、経済的活動、言語発達、数と時間、家事、仕事、自己志向性、責任感、社会性からなる。第2部の14の不適応領域は、暴力及び破壊的行動、自閉性、常同的行動と風変わりな癖、適切でない応答の仕方、不快な言語的習慣、異常な習慣、自傷行為、過動傾向、異常な性的行動、心理的障害、薬物の使用である。

 一つは12歳以下の子供のために、もう一つは13歳以上の子供のために、2部形式が用意されている。知的レベルと性別とによる平均得点が、10の技能・習慣領域では3歳から60歳以上に、また12の不適応尺度では3歳から41歳に対して示されている。

 ABS尺度の有用性は広範囲に認められてきた。しかしながら現在、得点解釈時に認められるべき経験的な性質についていくつかの弱点がある(Sammel,1972)。標準化された標本には、年少レベルと知的には比較的高いレベルの事例をほとんど含んでいない。従って代表としての規準に限りがある。信頼性と妥当性の研究は乏しく、将来の研究の必要性を示している。

<最重度遅滞者のために修正されたAAMD適応行動尺度>

 標準化とそれに続く発表の間でのLincoln州立学校でのABS尺度の実施は、特に最重度遅滞者に用いるためには構成上変更の必要性を示した(Congdon,1973)。ここで述べられる修正とは、多くの項目の高度な能力レベルを除外し、数項目を全く削除することである。第1部は46項目からなっている。多肢選択項目の「もし…の時」という前提条件は、どの項目が完全にまたは部分的に申し分のないものであるかを知るのに困難を伴うので、こういう項目は「適切なものをチェックしなさい」と言い換えられる。本尺度は厚紙にはめられ、プラスチック加工されている。使用の初期の段階で、時間を超えた個人またはグループの発達を測定するのに本尺度が有効であるとわかるが、「個々の行動訓練プログラムのベースラインデータとして必要な細かいデータは本尺度では満足すべきものは得られない」という(Congdon,1973)。行動パターンの実際的な検査がなされねばならない。

<重度・最重度精神遅滞者のためのBalthazar適応行動尺度>

 AAMD適応行動尺度とほぼ同じころに開発されたBalthazar尺度(Balthazar、1973)は、重度・最重度遅滞者に用いるために特別に作られた。本尺度は2部構成の項目からなり、評価者が「典型的」な活動や「日常の」場面で個々を観察し、項目を採点していくものである。第1部は機能的自立(食事・着衣・脱衣・排泄)を反映する項目からなり、第2部は社会適応カテゴリー(適切でない自己志向的行動、適切でない対人行動、言語的意志交換、遊戯活動、指図への反応、身辺処理)を含んでいる。本尺度は5~75歳の重度・最重度遅滞者で標準化されていて、さらに様々な粗点にパーセンタイル段階が与えられている。しかしながらこのパーセンタイルは、評価された集団がもとの集団標本に匹敵しないかぎり大まかな指標としてのみ用いられるべきである。

<Gesellの発達スケジュール、1940年版>

 Gesell尺度(Gesellら、1949)は、幼児と就学前児童(生後4週間~6歳)の行動発達の源を測定するために作られており、大きな4領域を検査している。すなわち、1)運動行動(姿勢反応、頭部バランス、坐位、立位、はうこと、歩行、事物に手を伸ばし・つかむこと、事物の操作)、2)適応行動(事物に手を伸ばして操る際の目と手の協応、現実にある問題の解決)、3)言語行動(表情、ジェスチャー、姿勢の移動、前言語的発声、話しことば、受容言語機能)、4)人格的・社会的行動(食事、排泄訓練、遊戯、対人相互関係)である。本尺度の4領域のうちの3領域が観察的情報的チェックリストである。適応行動の部門が、本人に刺激を与える際に検査者の積極的参加を求めているのである。諸項目はある場合には「+」、ない場合には「-」と記録される。絵を描くような詳細な言語記述をする場合には、検査者は主観的判断をできるだけ抑えることが望ましい。この尺度は、非常に年少の子供及び非常に低レベルの遅滞者の行動評価に大変に有益である。本尺度は、小児科医が神経学的欠陥と器官的にひきおこされた行動異常を確認する際に、日常行っている綿密で念入りな質的観察に近いものである(Donofrio、1965;Knobloch & Pasamanick,1966;Anastasi,1968)。

<Bayley乳幼児発達尺度>

 Bayley尺度もまた、極く早期の行動的発達(生後2か月~30か月)に焦点をあてている。本尺度は、情緒的社会的行動、活動レベル、事物への反応、興味の感覚領域、注意集中時間、持続性、持久力面に反映する赤ん坊の日常体験の特質を測定する標準化された面接からなる。本尺度のもう一つの役割として、精神発達の測定がある。検査者は、視覚的聴覚的刺激への反応、操作、形の弁別、記憶または事物の恒久性、簡単な問題解決、より抽象的な能力(事物の名前を言うこと、前置詞の理解、1という数の概念など)を測定する。81項目が運動尺度を含んでいて、すわる、立つ、歩く、階段をのぼるなどの粗大運動能力の発達を評価している。微細な協応運動は、様々な大きさの事物をにぎることによって評価される。この尺度は、行動的な測定に向けられる大きな批判の対象にはなっていない。すなわち、本尺度はよく標準化されていて、検査の信頼性という要求に十分にかなっているのである。しかしながらこの検査は、将来の知的発達を予言するようには作られていない。

結論

 この論文は、重度・最重度遅滞者の心理学的評価を吟味してきた。この簡単な概観からいくつかの重要なまとめがなされうる。

 1)重度・最重度遅滞者の心理学的評価は、はなはだしい身体の異常、奇妙な行動、神経学的損傷そしてこれらの人々により示されている重複障害によって、非常に複雑化されたプロセスである。

 2)伝統的な評価手順への不満が増加し、より機能的な行動測定の要求の声が高まってきている。

 3)分類よりも療育に現在強調が置かれているが、それは特定の能力と欠損についての教育的に適切な記述をもたらす適応行動尺度をより主要と認め、それにかなり依存するという結果を招いている。

 4)研究は、現行の適応行動尺度の弱点をなくし、評価手段としての有効性を高める方向で現在行なわれている。

 的確な評価は、教育プログラムを探るための必須条件である。もし我々がノーマライゼーションという一連の考えにそって重度・最重度遅滞者を援助しようとするならば、彼ら一人一人の長所とニードを確認するためのより適切な手順の開発を優先しなければならない。

(Educating the Severely and Profoundly Retardea,1976から)

原著は冨安芳和訳監修により日本精神薄弱児愛護協会から近く発行の予定です。

参考文献 略

*Educating the Severely and Profoundly Retarded,1976,pp.43-54.
**筑波大学大学院
***東京都立調布養護学校教諭


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1979年1月(第29号)10頁~17頁