社会 精神病患者のリハビリテーションと社会的援助

<社会>

精神病患者のリハビリテーションと社会的援助

Rehabilitation and Community Support for Mental Patients

Bertram J. Black*

高島和子**

 我々は精神病患者や障害者に対して社会的な治療を施さなければならない時代に入っている。化学療法のような新しい方法によって長い入院生活による治療を必要とする患者の数も減り、中には入院を全く必要としない例もあるということがわかってきた。その上、病院で治療を受ける必要がある患者でさえも、その期間が非常に短いためいわゆる「施設病」と呼ばれる特殊な動作を身につけることが防げるようになった。

 入院のかわりとなるものの研究も進み、州立精神病院以外の地域診療所や通院専用病院、地域精神衛生センターでも治療が受けられるようになってきた。しかしながら慢性患者に必要な州立病院で受けられるレクリエーション、職業、創造芸術訓練だけでなく、寝食を含めた総合的な治療に比べると、これらの施設で受けられるものはわずかに部分的なものでしかない。州立病院にいる患者のほとんどが精神病治療施設の外で生活するためには、精神医学治療以外の治療を必要とすることが様々な面から明らかにされてきた。ほとんどの患者にとって、特定の病院で治療を受ける必要があるのでなく、患者の生活の場に応じて外来治療を受けるだけで治療として十分である。

 しかし多くは病院の外で生活していくために社会的な援助や我々が「リハビリテーション・サービス」と呼ぶような援助を必要とするのである。このリハビリテーション擁護制度については解説が必要であろう。

表1 DMH病院退院患者用
リハビリテーション・プログラムの構成
 

必要時期・期間

初期 特定期間 継続
準備と評価      
 総合評価(職業適応を含む)    
 地域社会適応への準備と訓練    
住宅保護      
 自宅    
 ホーム  
 レジデンス  
社会復帰      
 デイ活動プログラム      
  デイ病院    
  デイ・センター    
 社会活動とレクリエーション(社交クラブを含む)      
  公式    
  非公式    
医療・精神病学的ケア      
 体力回復  
 看護    
 継続観察・後療法(アフターケア)    
 個人・家族のカウンセリング    
職業的ケア-教育的      
 職業及び教育カウンセリング    
 職業一般評価と準備    
 職業技術訓練    
 職業適性評価    
 作業活動オリエンテーション    
 ワークショップ適性評価    
 リハビリテーション・ワークショップ    
 治療教育    
福祉援助      
 経済援助    
 法的援助    
 交通    

 表1は州立病院を退院した患者のリハビリテーション・プログラムの内容を必要時期及び期間で表したものである。このうちのいくつかの項目は理論的にいえば、精神衛生関係以外の社会施設で行われるべきものであることは明らかである。事実、精神衛生制度の各専門施設よりも一般の人々のためにつくられた施設の方が、精神病から回復した人々に対して、福祉、収入維持、住宅、教育、職業カウンセリングや職業斡旋、レクリエーション、社会復帰等の面でより良い援助が与えられるという例が多く見られる。

 しかしまた同時に、社会の中で援助を必要とする人たちのことも忘れてはならないのである。それは、神経衰弱にかかり短期間の入院生活の後、家庭やもとの職業に戻りながらも、外来通院を続けているという人のことではなく、もっと不利な立場にいるハンディをもっている人たちのことである。その多くは、精神に異常をきたし知能や知覚に欠陥が見られ、教育を受けているものは少なく職業経験も基本的な作業程度以上のものはほとんどない。その多くが社会活動において大きな障害を示し、社会的、レジャー活動にかなりの支障をきたしている。何かを恐がっているようであったり、ひっこみ思案であったり、まわりの人に奇妙な印象を与え特別な目で見られたり、虚弱そうであるため競争の激しいこの社会に飛び込んで突き進んでいくことは期待できない。かといって、まわりの人々に忍耐強く彼らと接してもらうためのものももち合わせていないのである。

 このような人々が退院後も通院を続け社会活動に参加できるようにするために必要なことは、彼らの生活上基本となる次の四つの面を検討することである。すなわち、住む場所、衣食の手に入れ方、地域社会への生産的な職業的社会的参加の仕方、そして続けて必要とする医療や精神病に対する手当ての受け方、の四つである。これらは四つとも患者によって一人一人違った答えが与えられなければならない。患者に対するサービス制度を企画するにあたっても、このような問題全体を考慮しなければならないのである。そして、そうすることによって患者やその家族にも興味をもたせ、期待や希望を抱かせなければならない。そして、それに加えて、このプログラムは社会の1メンバーとしての患者の権利や尊厳を守り、精神障害者よばわりされる悪習から患者をまもらなければならない。

 これらの条件を満たすために数多くの提案や企画が出され、多くのリハビリテーション・センター、ハーフウェイ・ハウス、コミュニティ・レジデンス、精神医療センター、過渡的プログラム等によってその主張の妥当性が証明されている。しかも残念なことに需要を満たすとなるとあまりにも莫大な資金が必要なのである。従って、地域社会全体のためにある既存の機構を十分に活用することが考えられるのである。もしそれらに何らかの形で精神医療網とのつながりをもたせれば、新しく専門のプログラムを用意するよりもずっと安く対応することができる。

 米国各地をはじめ特に英国やスカンジナビアの諸国ではすでにそのようなつながりの役目を果たす機構は生まれており、「デイ・センター」と呼ばれている。表2は精神医療活動におけるデイ・センターの占める位置を示している。住居の世話や治療を利用者に施すと同時に、近くにレクリエーションや教育施設などがある場合にはデイ・センターは地域社会と利用者とのつながりという点で重要なかけ橋となることができる。これらはまた、作業活動センターや管理のゆきとどいた授産施設など、患者のための職業施設とのつながりを普通の臨床治療施設よりもたやすくもつことができる。

表2 リハビリテーション・システム

表2 リハビリテーション・システム

デイ・センター

 デイ・センターの設置は、場所があり最小限のボランティアと職員がいれば比較的簡単にできる。医師の指示等で設備の整った通院専用病院・通院専用診療センターへやって来る慢性患者にとって、そこは社会活動の場であり様々な治療法や社会復帰のための治療法が企画・準備されている所である。実際、デイ・センターのプログラムの基本的な目的はしっかりとした企画のもとに出会いの場をつくるということであり、外の社会とのつながりをもつために利用してもらうことである。デイ・センターは下記のような点で社会復帰に重要な役割を果たすであろう。

 (1)治療を継続して受けることができる。

 (2)アドバイスや指導を受けることができる。

 (3)全快後の患者との接触が続けて可能となり、その行動を観察する機会を与えることができる。

 (4)患者によっては必要な場合特別の直接的な援助を与えることができる。

治療の継続

 治療の継続という問題は総合コミュニティ精神衛生センターの発展という問題と関連づけて十分の研究がなされてきた。しかし、どんなにすぐれた衛生センターでも継続治療の責任を明確に規定しているセンターはほとんどないのが現状である。すぐれた臨床治療を与えても、回復後患者自身の判断にすべてを任せてしまうようでは十分とは言えないし、思いもよらない様態になって患者がまた治療にかけ込んで来るというようなことになりかねないのである。デイ・センターのゆきとどいた企画のもとに組み立てられたプログラムでは患者たちの名をリストにし、家庭訪問や専門家との面接を通して常に接触を図り、患者側も治療する側も何らかの治療の必要性が出てきた時それを敏感に感じることができる。

擁護

 社会の中にいる慢性患者を責任をもって擁護するセンターを作るという考えはそれ程新しいものではない。精神衛生センターよりも古い形の施設には社会の中での、時には法的な擁護というものを活動計画にくみ入れたものもあった。デイ・センターでは患者が生活上の必要から大きな組織に助けを求めてゆかなければならない時、カウンセリングや指導を行い直接手をさしのべることができる。デイ・センターは患者が助けを求めている時に役に立つ所であるということをわかってもらう必要がある。デイ・センターでどのような詳しい情報が用意されなければならないかは、そのセンターを利用する地域社会の特性や対象となる患者の構成によって決めるべきである。

行動の観察

 精神病患者が社会に戻った時よく言われることは、彼らの奇妙な風変わりな行動によって問題が起きたり、まわりの人たちを驚かせることで、そうしている内に治療も間に合わず危機を迎えてしまうことである。その点、すぐれた機能をもったデイ・センターでは続けて患者の観察ができ、社会にいる患者との接触を続けることができる。このセンターを利用する人はセンターに登録している患者についていつでも知ることができるという意味で情報センターとなりうる。その上、ボランティアの協力を得て気軽な訪問や他の形で患者との接触をはかり、それを通じて比較的簡単に危機が起こりそうな状態について事前に情報を得ることができる。そのような場合には非常緊急対策チーム、指導員、あるいはその地域の社会施設に知らせ、その患者の必要とする医学治療や他の方法で援助することができる。デイ・センターの重要な役割の一つには、患者以外の人々のためにも役立つということがある。たとえば患者の家族や患者の行動に気をつけていなければならない雇い主などにも役立つのである。別の言葉で言えばデイ・センターは情報源であって、矯正委託業務または精神衛生委託業務の形式をとったり、レッテルを貼られたりしてはいけないのである。

特別援助サービス

 デイ・センターでは、ある種の訓練を特別援助サービスとして企画することができる。それは社会復帰に役立つ職業訓練の前の段階のものを与える最適な場所となりうる。その中には教育の面から興味を引き出したり、職業適応準備への興味をひき起こすということも含まれている。あるいは回復後の患者がその地域社会の中にある一般のレクリエーションや社会活動をより十分に活用できるように社会に入っていくことや休暇というものに興味をもたせることも含まれる。

デイ・センターの構造

 デイ・センターの構造を詳しく説明する前に、患者が生活上必要とする公共施設等の様々な援助(社会学的な意味で)とセンターがどれ程関連をもっているかということに目を向ける必要がある。どんな人にとっても生活の中でそのような援助と関連している部分といえば、住居、社会参加、レクリエーション、教育、職業、あるいは経済的援助、医療、精神学的治療などである。

1)住居:住居に関して回復後の患者の必要とする援助と実際なされる援助との間にはかなりのくいちがいがある。まず第1に、精神病院から退院する患者の約60%は自分の家に戻るか家族と一緒に住むかのどちらかである。色々な理由でそのままずっと一緒にいるということがないのは確かであるが、それでも住宅の選択は患者自身でなされるべきもので、治療する側の施設が事前に簡単に指示したり変更したりできるものではない。

 家族や親戚もなく戻る所のない患者で特別な住居の手配の必要な3分の1の人にとって、与えられる住居の数はあまりにも限られている。普通の家に似たホームもあることはあり、ホステルやハーフウェイ・ハウスも建てられるかもしれないが、これらはみな社会復帰の非常に大切な要素であるにもかかわらず、社会に戻ってくるわずか一部の人たちのためにしか役立たないのである。

 家族用ホームやホステル、ハーフウェイ・ハウス等の特別な住居プログラムは病院のプログラムの延長であり、もしこれらを理想的に設計して建て、患者が必要とする治療サービスを受けられるようにするとなると非常に多くの費用が必要となるであろう。従って、患者の行動やその特性にぴったり合った住居を選ぶことはできないものだということを念頭に入れておかなければならない。

 精神病患者のための専有住居の数も最近増えてきているが患者の需要に見合うものではないと思う。住居の問題に関して間違った点が強調されてきた。精神衛生センターの係員は退院した患者にまともな住居を与えるということよりも、彼らが患者たちと十分なつながりをもちつづけ、必要な時に必要な援助を与えるということの方が大切である。実際、このような患者、あるいは衣・食・住を必要とする貧困家庭の人々や他の不幸な人々のために、住居の世話をするのはほかの社会施設の仕事であるはずである。精神病院の代わりとなるものを地域の中に作るというのはあまり良い考えだとは言えない。時がたつとそれが巨大な州立病院を模倣したものとなるか、精神病のための村のようなものになるかは予測しにくいが、患者が精神病院から追い出されることがあれば、結果は別の形の集団機構が生まれるだけのことである。

 リハビリテーションの立場からいうと、精神病患者の住居を建てるよりも、むしろ下記の事柄に努力をはらうべきだと思う。

 (a)患者に必要なサービスを保証する。

 (b)地域の社会的援助制度や住居援助制度に協力し、精神病患者だけでなく住居を必要としているより不利な立場にいる人々や障害者のためにまともな住居を与える。

 住居に関して精神衛生庁が果たしている大きな役割は、資金や情報を法的に認められた非営利住宅団体や公営住宅事業に提供し、貧しい人々や障害者のための住宅政策を拡大して、精神病患者のために余地を残すようにしていることである。デイ・センターはこのような地域社会のレベルで協力関係をつくり出すのに役立つのである。

2)社会復帰及びレクリエーション:デイ・センターは利用者にレクリエーションやレジャー活動を提供することができると同時に、患者に様々な地域センターや社会的レクリエーション活動を紹介するということもできる。かねてから私は、このような人々を援助する目的でコミュニティ・センターが利用されていないことをずい分気にかけてきた。社会復帰やレジャー活動等のプログラムを切実に必要とする精神障害者がいる地域にかぎって、古くからセンターがあったり、「Y」プログラムがあったりし、それにもかかわらず全く利用されていないということがよくあるのである。

3)教育:教育の一番の問題は、長い病院生活が短期治療にかわったために精神衛生センター等の後援による教育プログラムが一貫して行われなくなったことにある。ある種の治療や短期間の教育評価を除くと、入院患者に教育的なものを与える機会はわずかしかなく、外来患者の場合も精神衛生関係者が昼間の子供用プログラム以外の教育プログラムを組み立てることは難しい。しかし、デイ・センターを通じて地域社会内の成人教育の場とつながりをもつことはできる。例えば、そのような場として高校、職業訓練学校、あるいはコミュニティ・カレッジ等が考えられる。デイ・センターは参加可能なプログラムの情報を社会復帰した患者にわたすためのかけ橋となり得るし、職業教育や高校の夜間コースやコミュニティ・カレッジで開かれる教育及びレクリエーション・プログラムに関する指導やカウンセリングを与えることもできる。

4)職業:職業の問題は一般に最も難しい問題である。何故なら、我々がここでとり上げている人たちが社会で仕事についた場合、満足に生産的なみかえりを示すという保証はほとんどないからである。しかし適切な援助さえあれば不十分ではあっても、その多くが長期雇用やパート・タイム雇用の仕事に適応することができるということもわかってきた。米国各地の「泉の家」のようなプログラムによって地域在住の精神病患者に様々な種類の長期的な仕事を与えることができるということも明らかにされた。デイ・センターは、既存の様々なワークショップとの間のかけ橋にもなり、職業リハビリテーション事務所との接点にもなりうる。このような機能を考えると、職業リハビリテーションに関する限り、デイ・センターは病院や精神病診療所よりもずっと良い情報源となると言える。

 慢性精神病患者にとって、過渡的な性質のリハビリテーション・ワークショップよりも、ゆき届いた世話の受けられるワークショップや作業活動センターの方がより重要である。残念なことにわが国の都市周辺には回復後の患者の利用できるこのようなセンターはほとんどなく、知恵遅れの人々用のものが少しあるだけである。この種のワークショップやわが国で発展が望まれるその基礎となるものについては後程また述べることにする。

5)継続治療と精神病治療:継続治療と精神病治療の問題は複雑な問題である。まず第一に、退院する患者のほとんどが薬の治療を受けており、彼らにとって薬の治療を続けて受けるということは、外来患者としての地位を保つための必要条件であるとも考えられる。しかし、退院患者は医療サービスを受けなければならないと指図することはだれにもできない。薬を飲む飲まないも、医療サービスを受ける必要を感じる感じないも本人次第である。もし必要を感じれば治療を受けに現れるであろう。我々にできることは、そのような医療サービスを用意しておくことであり、デイ・センターの家庭訪問や社会内での観察を通じて患者との接触を続け、検査や治療を必要とする人たちに病院に戻るよう勧めることである。医師は外来患者や退院する患者に与える指示の一つとして、次に再検査に来なければならない時期を告げることが必要である。これはまたデイ・センターにも知らされ、もしその期日が過ぎた場合には検査に行くように勧めるため、患者との連絡をとることが必要である。肺結核のリハビリテーションでは「早期の1針で9針セーブできる」とよく言われるが、ぶり返す可能性のあるものをくい止めることができるということはリハビリテーション・サービスにとって意義あることとされてきた。精神病について全く同じことが言えるわけではないが、薬の飲み方や養生の仕方を見直したり、単に医師をかえてみるというだけで悪くなるかならないかの大きな違いを生むという例が数多く見られる。

構造上の問題点

 デイ・センターが、患者をはじめその家族やまわりの人々にとり、地域社会の情報源となりうるということがわかるには簡単な説明だけで十分であろう。デイ・センターは医療センターと呼ばれるべきではない。医療センターでは現に今、精神病にかかっているというレッテルを患者に貼られるからである。デイ・センターは病気というイメージを前面に出さないような呼び名でなくてはならない。デイ・センターは開設する際払われた努力をずっと上まわる良い結果を生み、十分にその役目を果たすであろう。

 デイ・センターでどれだけのことがなされるかは、米国や英国での例、そしてスカンジナビアの例を参考にすると良いであろう。おおまかな計算では、一つのデイ・センターは人口25万人の地域で150人に対応できる。150か所のデイ・センターには、デイ・センターとつながりをもつ授産施設、診療所、地域のリハビリテーション・プログラムの施設が含まれていない。

 患者のために週7日、毎日24時間開けておく必要はなくとも、デイ・センターは少なくとも1週間のうちの主な日には開けておかなければならない。いつ必要になるかはわからず、利用者にとって5時以降は必要ないとか、土曜、日曜は必要ないとかは言えないのである。職員に要求される勤務時間は夜間や週末には最小限で良いが、プログラムの中でも特に社会参加に関するものは親戚、友人、隣人たちが活発なレクリエーションに参加している間、行く所もなく寂しい思いをしている者たちにとって非常に大切である。同じような悩むをもち、お互いに同情し合える仲間と集まるということだけでも、彼らの社会生活の中では大きな意味をもつのである。また、このような集まりの場として、専有ホーム・ハーフウェイ・ハウス、ルーミング・ハウス、ホステル等の半分組織化されたような場所は適さないので選ばない方が良いと思われる。

 デイ・センターの規模はそこで行われる活動の範囲による。私自身、1人の専門員を中心に3~4名のボランティアが60人もの人に対応している非常にすぐれたデイ・センターを見たことがある。コツは参加者の能力を上手に活用することにある。その活動模様は普通の団体活動で見られるものとそう変わらず、コミュニティ・センターなどからヒントを得ることができる。必要となるスタッフの数はある程度他の施設とのつながりによって違ってくる。例えばデイ・センターの利用者が大部分中年から老人の年代層であれば、必要な特別プログラムのある市民老人クラブや老人ホーム、養育院、それに他の特別プログラムとつながりをもち、センターに申し出て専門員を呼んでもらうことができる。同様にして多数の十代の人々がセンターのプログラムに参加している場合には、まったく違った専門員たちが必要となる。他の社会団体や施設とのつながりや共同スタッフをアレンジするということを考慮すると、可能性は無限となる。何が必要かといえば関心をもち、すすんでやろうとする指導力であり、また資金でもある。

 そこで出てくるのが後援の問題と資金の問題である。後援の方は地元の精神衛生当局かあるいは民間の非営利団体から得ることができると考えられる。地域社会とのつながりをもつ機会を得たりプログラム用の資金を得るためにはどのような後援者が最も適しているかということには、まだ再検討する余地が残っている。

 予算の問題は常にみにくい様相を呈するようである。ここでとりあげたようなプログラムにかかる費用はそれ程莫大なものではない。きわめてすぐれたデイ・センターで地域社会を基盤に150人を対象にした場合、1人につき1年200ドル以上かかることはなく、全体で無論30万ドルになることはない。ニューヨーク州位の地域に一度に必要な数のデイ・センターを作った場合には相当の額の資金が必要となるであろう。しかし、部分的ではあってもデイ・センターの機能を備えたものは全米各地に存在しているのであるから、わずかな資金を足して拡大することができるのである。

 デイ・センターの設立ということについても限界や束縛があり、少なくともそれに触れないわけにはゆかないであろう。政府からデイ・センターに特別施設として予算を得るということは非常に難しいことのように思われる。デイ・センターがリハビリテーション・プログラムの主要プログラムと見なされるのが無理のようである。

 また事務手続上から言っても、デイ・センターのプログラムの開始、継続は難しい。デイ・センターは後療法プログラムや地域診療所とある意味で張り合う形になってしまうからである。デイ・センターを規格化し、デイ・センターをも含めたこれらすべてを行政の下に一つにまとめようとする動きも見られる。しかし、私は決してそのための調査や基準の設定に反対するものではないが、もしすべてのものが一つの型にはめられるとしたら、本当の目的が見失われるのではないかと思うのである。

Rehabilitation Literature, Feb. 1976 から)

参考資料 略

*ニューヨーク・ブロンクスにあるA.アインスタイン医科大学の精神病理学(リハビリテーション)の教授、ブロンクス精神病センター精神衛生リハビリテーション科のディレクターでもある。
**横浜YMCA講師


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1979年7月(第31号)11頁~17頁

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