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職業

企業とリハビリテーション機関の協同プロジェクト訓練方式

Projects with Industry:A Marketing Approach

Frank P.Hadley*

久保耕造**

 企業とリハビリテーション機関の協同プロジェクト訓練方式(Projects with Industry,以下PWIと略す)は、最近5~6年の間に発展してきたシステムである。PWIの特にめだった成果は、企業が必要とする技能をこなしうる、訓練がゆきとどき、就労の準備が整った障害者を提供してきたということである。

 過去数年間にわたって、障害者の窮状と、そのリハビリテーションに必要な援助は大きな関心の的であった。また、長年リハビリテーションの分野では、障害者に社会的マナーを身につけさせるようにし、それから雇用の機会を見つける―もっとも、多くの場合それは将来雇用してくれそうな事業主の慈善的ジェスチャーに頼ってのものであったが―ということに力をそそいできた。しかし、ある製品を売るのに、その製品の特性によってではなく、むしろその欠点によって売りこもうとするなどということは、ひとりの実業家としての私の製品流通の概念とは反するものである。だからここではPWIの方法について分かってもらえれば十分である。すなわち障害をもった人々を通常の仕事につかせ、なおかつ、彼らの障害がその仕事がうまくゆくことを何ら妨げないようにするためにPWIのプログラムはできたのだということが分かってもらえれば十分である。

 PWIは職業リハビリテーションに類似しており、そこでは当該リハビリテーション機関の存在する地域にある産業や企業が必要とする職業的な技術を身につけさせようとするのである。しかし実際上は、PWIのプログラムとリハビリテーションのプログラムは全く異なったものである。PWIのプログラムはまさに企業のそれであり、そこで生み出されるものは、訓練のゆきとどいた労働者であり、彼らは様々な企業が必要とする技術や課題に喜んで応えるのである。

 PWIの成功には次の3つの要素が必要不可欠である。つまりその地域の様々な企業での雇用にたえるような規準に達するまでの訓練をうけることができる障害者、その地域にある企業から提供してもらうことができる仕事、必要とされる操作を行えるように障害者を訓練するための手段、の3つである。もし、このうちのひとつでも欠けることになれば、PWIの成功は覚束ないことになるだろう。

 PWIにとって欠くことのできないのは諮問委員会(Advisory Committee)である。この諮問委員会が主に企業とリハビリテーション分野の間をつなげる役目を果たすことになるのである。それだけでなく諮問委員会は、障害者の選考および訓練、あるいは、その障害者のもっている障害がある仕事においては、もはや障害になりえないという認定を行うための専門的なプログラムの指導が行われるよう、そのリハビリテーションの面にも指導と勧告を行う。諮問委員会(諮問協議会―Advisory Council―とも呼ばれる)の構成委員は産業界から選ばれるのであるが、特に、仕事が効率的に行われるためにはどうしたらいいかということについての細かい知識の持ち主が選ばれる。産業界で首尾よく職を得るためには、これから就職しようとする者、とりわけ障害をもった者は、企業が現に必要とする職務をやりこなしえなければならない。もはや存在しないような仕事の訓練を行っても意味がないのである。例えば、ある障害者に家具製造業者になるように訓練を行ったところで、過去数年間にもわたって、家具製造業に対する需要がなかったなら、その訓練は明らかに意味がないといえるだろう。またリハビリテーション施設が、ある特別の訓練コースを行う時の理由が、そのコースで訓練する仕事に対する需要があるからというのではなく、単にその施設が習熟している訓練課目であるというだけであったならば、その訓練を受ける者に果たして意味のあるサービスが行われているかどうかは疑問である。

 PWIを導入し、実施するのにひとつの方法論がある。PWIの過程というのは、障害者と訓練とそして一般雇用がひとつになったものである。だから、この方法論は、PWIのもつメリットが具現化するように次々と適用されていくことが重要である。

 PWIの方法論とは以下のようなものである。

・職業的にどんなものが必要とされているか、また、何人位雇用されることができるかということを明確にする。

・障害者の数を確認し障害者の特性を明確にする。

・そのうえで職業的な需要と障害者の特性を比較して、ふさわしい職業や技術を選択する。

・諮問委員会に、企業から人を募って入ってもらう。

・障害者の選択および、その障害者に最もふさわしいと思われる仕事への訓練計画をたてる。

・色々なものを準備する。職員、施設、設備それに訓練器具などである。

・計画を実施する。訓練を行い、その訓練をうけた仕事に障害者を就労させる。そしてそのフォローアップとそれの訓練へのフィードバックなどである。

 PWIの考え方の基本的なねらいは、リハビリテーション機関の活動を、当該地域に存在する企業の職種上の需要や技術ニードといったものに歩調をあわさせるということである。これがPWIの存在理由ともいうべきものである。従って、どんな地域でPWIを始めるにしても、まずやるべきことは次のことである。すなわち、対象とする企業が必要とする技術は何かということを見定めること、および企業の職種上の需要について有効かつ正確なプロフィールを常時つかんでおくことである。

 ある地域でどんな仕事が必要とされているかを知る手掛りは沢山ある。例えば州の職業安定所や新聞での求人広告によって知ることができるのである。また、日刊経済新聞(Commerce Business Daily)で紹介される、新規あるいは継続の官需の発注(これは確認行動***(affirmative Action)を行った企業と人間に発注するのであるが)などによっても、具体的な求人先を知ることができよう。産業界との連けいがうまく生み出されていない時でも、ある地域で必要とされる仕事を知ろうとしておくことは、ひとつの投資としても必要であり、また、企業に協力を求めるうえでは、事前に知っておかなければならないことでもある。

 この予備的な調査の結果を分析してみると、リハビリテーション施設で障害者が普通うける訓練の中にはないような仕事がたくさんあることがよくわかるであろう。しかし、近い将来には、その仕事に就く障害者もでてくるだろう。そこでほとんどの障害者には不適当だと思われるものを除いた残りの仕事を科学技術や企業の分野によって分析し、グループわけする(その分析には地理的な要素が加わることも考えられる)。それによって、PWIが職業紹介を目指す会社のリストができあがってくるのである。

 この過程のひとつの例としてカリフォルニア州のサンホセにあるグッドウィル・インダストリーズがあげられる。このグッドウィルがあるのはサンタ・クララ・バァレイという所で、そこは電子関係の仕事をしている企業がたくさん集まっている。この業界で必要なのは、技術者、電気関係専門家、電気組立工、保管業務、それに食事を提供する人々である。グッドウィルにいる障害者のほとんどは、よほどのことがない限り技術者にはなれなかった。しかし、その他の仕事に就けるようになれるものは多数いた。この結果、グッドウィルの選考規準と訓練コースは、電気関係の仕事の需要を満たすように変えられたのである。

 次の段階では、企業に諮問委員会のメンバーとしての協力を要請し、そしてPWIをすすめるうえでの専門的な指導を行ってもらわなければならない。その際、諮問委員会は、企業のニードに応えるための専門的な委員会であることが強調されるべきである。諮問委員会のメンバーにPWI全体の運営と管理にじかにたずさわってもらうのは、その地域の企業の要求に責任をもって応えていくためにも絶対必要なことである。諮問委員会は単なる名前だけの役員会のようなものではないのであり、そのメンバーが持ちよった科学技術や実務上の知識によって自らうごく集団であり、専門的なレベルでの指導や協力を行うのである。

 PWIは企業の側にとって価値あるものでなければならない。PWIのプログラムが、諮問委員会をつうじて企業のニードに適応させられることがなかったならば、PWIの一番大事なところがぬけおちてしまうことになるであろう。しかしリハビリテーション機関の人間は、企業が必要とするものや技術的なニードに関する細かい特別の知識をもつことはおそらくできない。それは、事情に通じた諮問委員会によってはじめて与えられるものである。だから、諮問委員会を、効果的かつ継続的に活用することが非常に重要なことなのである。

 PWIの成否を決するのは、通常の仕事に何人の障害者をきちんとつかせたかということによるのである。この観点からひとつ言えることは、うまく就労できる十分な可能性を保障できるようにすることが非常に重要であり、そのためには、訓練を経たのちに適職を見い出せそうな障害者だけを考える必要があるのである。訓練をうける障害者の選考の規準は、究極的には、将来の雇用主が求める才能、生産性、品行や技術を反映していなくてはならないのである。そこでここではPWIの効果とは次のようなものであると断言できるのである。

 つまり、リハビリテーション機関によって評価され、選考され、そして、雇用を準備してもらう障害者は、雇用主が望む特別のものをもつように訓練されるのであるが、それを通過した障害者はこれを読まれている読者諸氏でも、雇う気になる者であろうということである。ここにおいても、諮問委員会は仕事に要する技能や雇用主が求職者の評価につかう採用規準を反映するような道具の開発に取り組むのに強力な援助を与えるのである。ここには別の問題が含まれている。すなわち最重度障害者へのサービスの提供という任務に忠実であろうとするならば、評価の過程というのは、障害者の残存能力及び仕事の場所を、これからつこうとする仕事の実際に要求される技術にあわせるという作業を含んでいなくてはならないということなのである。

 必要なのは障害者とその仕事の場所とのコンビネーションということである。これは、特定の仕事を毎日行ううえで具体的にもち上がる要求を解決してゆくことで発展させられる。だから評価を行う者は他の心理判定員だけが解釈できる心理レポートという象牙の塔の中にとどまるのではなく、職業開発および職業紹介担当職員と密接に協力しなければならないのである。

 ここで短くまとめてみると、こういうことである。障害者に対して行われる訓練は、その地域にある企業の職種上の需要にきちんと応えるものでなくてはならず、そのためには、訓練の目的は将来の雇い主の要求する技術を反映したものとして設定されなくてはならない。そして、その技術は、実際に企業の中の仕事としてやっていけるものでなければならない。障害者は、企業が必要とする特別の技術を身につけなくてはならないのだが、それは、他の人と競ったうえで、うまくその仕事を手にいれるためである。リハビリテーション施設の中で、ある特定の技術の訓練をうけていても、単に、その施設はその訓練課目に対して習熟しているからという理由だけで、その訓練が行われているのだとしたなら、それは、企業の必要とするものに真に応えていくことにはならない。PWIの評価には、訓練と、関連分野について十分な知識をもった諮問委員会のメンバーによりつくられ、よしとされた職種のプロフィールからえられた企業のニードとの関係をはかる尺度が含まれていなければならない。

 訓練プログラムの準備には、詳細な訓練目的の作成、指導員の準備、教室や訓練生の時間割、必要な設備の準備、最も適した指導媒体の決定等が含まれていなくてはならない。訓練プログラムを、その開始に先立ち、最小限の準備しかしなくても、開始することはできる。しかし、そのプログラムを終えた者たちのフォロー・アップをする時に、書類がきちんとそろっていなかったなら情報の整理がつかないことになるだろうし、また次のことは心にとどめておくべきだろう。すなわち、そのプログラムを受ける者の中には、その指導員が(企業からきた人なら)初めて出会う企業の人間の例になるという人もいるということである。だから、指導員が専門的でビジネスライクな態度で振る舞うことは重要なことである。何故ならそれが、その障害者たちが見ならうひとつのモデルとなるのであるから。諮問委員会のメンバーが講師や面接担当者としてしばしば採用されるが、それも、このことと同じ目的を果たすことになっているのである。

 企業によって表明される職業的な需要、あるいは技術的ニードということから一般的にいえることは、障害者は、ある特定の仕事に焦点をあてて訓練を行い、働く用意をする必要があるということである。企業をよく知っている人の知識というのは、各障害者にどんな技術訓練を行ったらよいのかを決定するうえで不可欠であることはいうまでもないことである。企業にとって価値のあるものでありうるためには、職業開発および職業紹介の機能がPWIのほぼあらゆる場面に徹底していなければならない。

 リハビリテーション施設が、企業の要求するような技術の細かいことについてはあまりよく知っていないという場合もあるだろう。それは、リハビリテーション施設の職員が、今までは、その地域の職業開発とか、企業の仕組みについての知識などに対して無関心であったということがそのことをよく示している。多くの者が、実際のところ、こうしたリハビリテーション施設の役割を何かしら専門外のことと見なしてきていたのである。それに企業の中にいる信頼に足る人物を雇うということは、施設の予算ではまかないきれないことかもしれない。たまに、リハビリテーション施設にとって可能なのは、関連分野の企業から出向してもらうことである。その企業に要求すれば、その企業の、それなりの人を、ある場合は時間を区切ってのこととなるかもしれないが、特定の仕事や課題のために、一定期間出向をさせてもらえるだろう。

 このようにしてきてもらった人に一番やってほしいのは企業の職種を明確にすることであり、そして諮問委員会のメンバーを募り、実際に委員会に人を招集することであるが、このことは、明らかにされた職種に取り組む計画をたてるときに役に立つことになる。このような仕事は、普通、常勤で可能でない場合はパートタイムで行ってもらうこともできるだろう。

 企業との間に周到で持続したつながりを作り、その企業の人にPWIの管理にもたずさわってもらうということの重要性は大いに強調されなくてはならない。PWIは企業にとって価値あるものとして信頼にたるものだということがはっきりさせられなくてはならないのである。企業からの人間をリハビリテーション施設の中にいれるということは2つの意味でコミュニケーションの輪をひろげることになるだろう。ひとつには、地域の企業のニードを明確にし、第二にはリハビリテーション施設からえられるものの価値を企業に伝えるということにおいてである。

 PWIの成否は、その訓練を終了した者が企業の必要とする特定の仕事を身につけているか否かにのみかかっているのである。企業の中の代表が諮問委員会にいることにより、将来の雇用主は、実際に雇用する前に、仕事に適応するかとか、必要な技術を身につけているかを評価する機会を持つことができるわけである。これは企業にとっては“危険がない(no-risk)”状況である。実際、PWIはそれに参加するすべての者にとって意味のあることである。いいかえるならば、企業、障害のあるもの、そしてリハビリテーション施設にとって役に立つものである。さらに、PWIは成功することの約束されているプログラムであるということができるのである。

(American Rehabilitation,March-April 1979から)

*Mr.HadleyはIBMからGoodwill Industries of Americaに出向中である。
**東京コロニー書記
***Affirmative Action
 1973年の改正リハビリテーション法503条では連邦政府と2,500ドルを超える契約を結ぶすべての企業は、障害者の雇用、昇進について確認行動(Affirmative Action to Employ and Advance in Employment)をとることを義務づけている。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1980年3月(第33号)14頁~18頁