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論説

重症心身障害児施設の現状と問題点

旭川児童院院長 江草安彦
旭川児童院副院長 末光 茂

 1.重症心身障害児福祉の推移

 重症心身障害児問題は人類の歴史と共に存在していたはずであるが、積極的にとりあげられることはなかった。

 わが国の心身障害児教育・福祉は明治・大正期に萌生したが、重症心身障害児にまでは及ばなかった。しかし、昭和20年代にはいると小林提樹博士、草野熊吉氏を中心として重症心身障害児をもつ家族の努力により、重症心身障害児福祉は具体的に展開をはじめた。

 小林博士は勤務されていた病院の一棟で重症心身障害児の療育を始めた。そして家族によって「両親の集い」―後の全国重症心身障害児(者)を守る会―が結成され、活発に活動し、その後の重症心身障害児・者福祉の具体化、体系化に大きな役割を果たしてきた。

 昭和42年に公法人立重症心身障害児施設は13施設であったが、昭和54年には48施設となり、国立療養所委託ベッドも80余療養所となっている。そのベッド数は13,000余である(表1)。

表1 重症心身障害児施設整備状況(病床数)
 定員
年度 
国立療養所 公・民営 定数合計
54 8,080 5,501 13,131
53 8,080 4,867 12,947
52 8,080 4,539 12,619
51 8,080 4,389 12,469
50 8,080 4,309 12,389
49 7,520 4,259 11,779
48 6,330 4,249 10,579
47 5,290 4,202 9,490
46 4,600 3,842 8,442
45 2,994 3,238 6,232
44 2,880 2,872 5,752
43 1,920 2,437 4,357
42 1,040 1,849 2,989
41 480 1,201 1,691
40 757 757
39 570 570
38 320 320
37 140 140
36 50 50

 このように昭和42年からの10年は重症心身障害児福祉イコール施設整備の立場でベッド拡充に力がそそがれた。ところがこの数年来は在宅援護(ホームケア)が注目され、在宅を可能にする社会保障施策の充実、重症心身障害児施設を拠点としての外来相談、外来医療、訪問看護・指導、緊急一時入所、通園指導などによって、一人一人の重症心身障害児者のさまざまなニードに対応する方向にすすんできている。

 重症心身障害児施設は15年余の歴史をもち、運営は財政問題、専門職員不足、職業病、療育内容などの多くの課題をかかえてすすめられてきた。重症心身障害児者福祉の総合対策のなかで施設をどう位置づけるべきか、福祉圏の中でどう配置すべきか、どのような規模で、どのような療育専門性を展開すべきか等の諸問題を明らかにすることが急がれている。日本重症児福祉協会の資料を中心に検討をしてみることにする。

 2.ベッドの配置とその偏在について

 昭和55年4月1日現在の全国の重症心身障害児の入所ベッドは13,257であり、人口1万人あたりのベッド数は1.2である。重症心身障害児は日本のどこに住んでも良質の福祉、医療、教育サービスを平等に提供されるべきであり、この観点にたってこれを可能にするベッドの配置を検討してみた。本来は生活単位としての福祉圏を中心に検討するのが適当であるが、ここでは府県別に検討した(表2)。人口1万人あたりベッド数の最低は大阪府の0.3、最高は佐賀県の3.8であり、そのアンバランスは驚くばかりである。大都市の所在する府県に不足が目立っている。著者の経験では1.5~2.0程度は確保しなければならないと思っている。重症心身障害児の生涯、新たな需要なども考慮して、必要ベッドを予測、算定した上で整備をすすめたいものである。

表2 重症心身障害児施設の人口割り定床数
都道府県 人口 自治省しらべ
54年3月末
重症心身障害児施設の定床数
55年4月1日現在
人口1万人当たりの病床数
55年4月1日現在
国立 公法人立
北海道 5,517,325 400 688 1,088 2.0
青森 1,542,141 160   160 1.0
岩手 1,433,751 280   280 2.0
宮城 2,031,551 200   200 1.0
秋田 1,271,236 160   160 1.3
山形 1,251,414 200   200 1.6
福島 2,024,713 200   200 1.0
茨城 2,505,353 120 40 160 0.6
群馬 1,835,002 80 200 280 1.5
栃木 1,774,616 200   200 1.1
埼玉 5,219,038 80 260 340 0.7
千葉 4,554,034 240 40 280 0.6
東京 11,366,077 80 672 752 0.7
山梨 805,561 120   120 1.5
神奈川 6,724,865 120 120 240 0.4
新潟 2,438,451 280 70 350 1.4
長野 2,072,903 280   280 1.4
富山 1,098,796 200   200 1.8
石川 1,105,529 160 60 220 2.0
岐阜 1,937,010 120   120 0.6
愛知 6,115,311 160 200 360 0.6
静岡 3,428,444 320 46 366 1.1
福井 791,261 200   200 2.5
三重 1,674,467 160   160 1.0
滋賀 1,050,630 80 230 310 3.0
京都 2,483,960 120 143 263 1.1
奈良 1,162,344 160   160 1.4
大阪 8,239,939   262 262 0.3
和歌山 1,097,304 160 100 260 2.4
兵庫 5,066,356 200 240 440 0.9
岡山 1,877,712 120 215 335 1.8
広島 2,705,513 200 80 280 1.0
山口 1,576,026 200   200 1.3
鳥取 602,229 160   160 2.7
島根 786,044 80 50 130 1.7
香川 994,717 200   200 2.0
徳島 833,119 160   160 1.9
愛媛 1,516,357 240   240 1.6
高知 839,035 120 100 220 2.7
福岡 4,442,339 320 260 580 1.3
佐賀 866,645 280 50 330 3.8
長崎 1,593,171 80 370 450 2.9
熊本 1,773,801 160 390 550 3.1
大分 1,228,013 120   120 1.0
宮崎 1,140,586 200   200 1.8
鹿児島 1,782,702 120 230 350 2.0
沖縄 1,109,384 80 80 160 1.5

合計

115,286,775 8,080 5,196 13,276 1.2

 施設福祉、在宅福祉を統合したいわゆる地域福祉の単位である福祉圏の設定をはかり、その中での重症心身障害児施設の役割を検討すべきであろう。重症心身障害児施設は立地条件から都市型と郊外型にわけることができる。都市型施設はその交通システムを利して、多くの社会資源を活用しながら重症心身障害児者のために、さらに多くの心身障害児者のための総合療育活動のセンターの役割を果たすことが期待されている。

 3.重症心身障害児のライフサイクルと施設の役割

 昭和55年4月1日現在の施設入所者の年齢構成は表3のごとく21歳から29歳にピークがある。これを6年、10年前に比較すると年長化が明らかであり、今後は年長化、加齢化問題が大きな問題となるだろう。

表3 年度別・年齢別分布
年度   0~2歳 3~5歳 6~8歳 9~11歳 12~14歳 15~17歳 18~20歳 21~29歳 30歳以上 合計
49年
36施設
合計 22 180 451 673 624 549 494 558   3,551
比率 0.6 5.1 12.7 18.9 17.6 15.5 13.9 15.7   100.0
50年
38施設
合計 20 185 403 653 673 580 476 627 162 3,779
比率 0.5 4.9 10.7 17.3 17.8 15.3 12.6 16.6 4.3 100.0
51年
39施設
合計 27 190 371 557 679 622 523 789 155 3,913
比率 0.7 4.9 9.5 14.2 17.2 15.9 13.4 20.2 4.0 100.0
52年
41施設
合計 30 199 334 481 688 620 553 947 210 4,062
比率 0.7 4.9 8.2 11.9 16.9 15.3 13.6 23.3 5.2 100.0
53年
45施設
合計 27 182 327 467 652 657 603 1,112 311 4,338
比率 0.6 4.2 7.5 10.8 15.0 15.2 13.9 25.6 7.2 100.0
54年
47施設
合計 25 184 325 422 569 716 614 1,282 423 4,560
比率 0.5 4.0 7.1 9.3 12.5 15.7 13.5 28.1 9.3 100.0
55年
48施設
合計 24 188 306 379 496 721 634 1,401 588 4,737
比率 0.5 4.0 6.4 8.0 10.5 15.2 13.4 29.6 12.4 100.0

 表4に年齢別の処遇課題とサービス内容を示した。乳幼児期には主として医療および専門性の高い療育が期待され、学童期にはこれに加えて教育が求められている。成人、老齢期には充実した生活が期待されている。年齢の推移によって処遇課題が変わっていく。障害や年齢を異にする障害児を統合することによる効果も指摘されているが、障害の複雑さ、年齢の広がりを背景とした幅広い処遇を求める人々に満足してもらえる療育を展開する能力を一つの施設に求めることの困難さも同時に指摘されている。

表4 ライフサイクルと処遇課題

処遇課題サービス内容
ライフサイクル

医療 専門性の高い療育 教育 生活  
乳児期 在宅・通院
幼児期
学童期 短期入院
成年期 居住施設
老年期

  ●◎○は必要度の高さを示す。

 重症心身障害児の全ライフサイクルを見渡し、隣接する諸施設、医療機関との連携が求められているのもここに理由がある。それぞれの重症心身障害児施設は総合対策のうちでの位置づけ、個性化をはかることが必要であろう。

 4.施設入所児の病態像

 重症心身障害児施設入所対象の選定基準は昭和38年の厚生省「重症心身障害児療育実施要綱」により、表5のように定められている(表5)。

表5 重症心身障害児施設入所対象選定基準

(昭和38年 厚生省次官通達)

1.高度の身体障害があって、リハビリテーションが著しく困難であり、精神薄弱を伴うもの。ただし、盲またはろうあのみと精神薄弱が合併したものを除く。

2.重症の精神薄弱があって、家庭内療育はもとより、重症の精神薄弱児を収容する精神薄弱施設において、集団生活指導が不可能と考えられるもの。

3.リハビリテーションが困難な身体障害があり、家庭内療育はもとより、肢体不自由児施設において療育することが不適当と考えられるもの。

 昭和42年の児童福祉法の改正により「重度の精神薄弱および重度の肢体不自由が重複している児童」を重症心身障害児と規定している。

 昭和50年から55年までの公法人立施設入所児の病態像(表6)をみると、厚生省分類のⅠ型(重度精神薄弱プラス重度肢体不自由)が46.2~50.2%であり、Ⅱ型(重度精神薄弱を主とするもの)38.0~43.1%、Ⅲ型(重度肢体不自由を主とするもの)6.0~9.2%、Ⅳ型(精神薄弱、肢体不自由がいずれも重度でないもの)1.4~4.3%であった。

表6 年度別病型分布
    年度
分類
50 51 52 53 54 55
Ⅰ型(人) 1,694 1,899 1,867 2,024 2,165 2,190
比率(%) 47.9 48.4 49.4 50.2 48.1 46.2
Ⅱ型(人) 1,465 1,491 1,501 1,616 1,854 2,040
比率(%) 41.5 38.0 39.8 40.0 41.2 43.1
Ⅲ型(人) 327 354 317 310 375 287
比率(%) 9.2 9.0 8.4 7.7 8.3 6.0
Ⅳ型(人) 48 166 91 86 108 125
比率(%) 1.4 4.3 2.4 2.1 2.4 3.0
その他(人) 0 13 0 0 0 0
比率(%) 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0
合計(人) 3,534 3,923 3,776 4,036 4,502 4,642
比率(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 98.3

Ⅰ型 重度精薄(IQ35以下あるいは推定その程度)+重度肢体不自由(強度四肢まひ。ただし寝返り躯幹移動および介助座位程度可能)
Ⅱ型 重度精薄が主で肢体不自由は下記程度
 a.上肢まひはあるが、下肢まひはないか、あっても軽い(いざり歩き程度以上可能)
 b.下肢まひはあるが、上肢まひはないか、あっても軽い(自力摂食、車椅子移動程度可能)
 c.四肢まひはないか、あっても軽い(上肢b程度、下肢a程度以上可能)
Ⅲ型 重度肢体不自由が主で精薄は下記程度
 1.IQ35~50 あるいは推定 その程度
 2.IQ50以上 あるいは推定 その程度
Ⅳ型 精薄、肢体不自由ともに重度でない。肢体不自由程度、精薄程度はⅡ型(a,b,c)Ⅳ型(1,2)に準ずる。

 施設開設の年次により、これらの構成に相違があるのは理解できる。昭和43年以前開設の13施設では表7のようにⅠ型、Ⅱ型が47.3%、Ⅲ型4.7%、Ⅳ型0.6%である。また、府県別配置率を人口1万人あたり1.0未満、1.0~2.0未満、2.0~3.0未満、3.0以上の4群に分けて比較してみると配置率の低い府県ではⅠ型の比率が高く、配置率の高い府県ではⅠ型の比率が低く、むしろ、Ⅱ、Ⅲ型が高率の傾向を示している。

表7 昭和43年以前の開設施設の病型分布
  Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型
合計 830 830 83 11 1,754
比率(%) 47.3 47.3 4.7 0.6 99.9

 3.0以上の府県ではⅣ型が9.2%を占めている(表8)。ベッドの適正数、関連施設との関係を検討するのには重要な資料であろう。

表8 人口1万人当たりの病床数と病型の分布
人口1万人当たりの病床数   Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型
1.0未満 合計 862 600 126 17
比率 53.7 37.4 7.8 1.1
1.0以上 2.0未満 合計 455 365 106 21
比率 48.1 38.5 11.2 2.2
2.0以上 3.0未満 合計 619 647 88 19
比率 45.1 47.1 6.4 1.4
3.0以上 合計 229 260 36 53
比率 39.6 45.0 6.2 9.2

 5.加齢とこれに伴う問題

 公法人立施設入所児の年度別、年齢別分布を表3に示した。昭和49年には9歳~11歳がもっとも多かったが、昭和54年には21歳~29歳がもっとも多く、その急激な加齢には目をみはるものがある。療育内容の検討、施設の物的環境の改善、省力機器の導入、家族関係の維持などの多くの問題が横たわっている。

 体重別分布を表9に示したが、昭和49年には15㎏~19㎏にピークがあったのが昭和55年には35㎏~39㎏へ移動しているのも加齢を反映しているものといえよう。

表9 年度別・体重別分布
年度   10㎏未満 10~14㎏ 15~19㎏ 20~24㎏ 25~29㎏ 30~34㎏ 35~39㎏ 40~44㎏ 45㎏以上 合計
49年度 合計 79(人) 418 611 573 459 440 383 261 327 3,551
比率 2.2(%) 11.8 17.2 16.1 12.9 12.4 10.8 7.4 9.2 100.0
50年度 合計 71(人) 398 593 535 482 441 412 310 407 3,649
比率 1.9(%) 10.9 10.3 14.7 13.2 12.1 11.3 8.5 11.1 100.0
51年度 合計 65(人) 364 596 590 508 508 482 360 450 3,923
比率 1.7(%) 9.3 15.2 15.0 12.9 12.9 12.3 9.2 11.5 100.0
52年度 合計 65(人) 360 562 555 509 547 539 396 529 4,062
比率 1.6(%) 8.9 13.8 13.7 12.5 13.5 13.3 9.7 13.0 100.0
53年度 合計 72(人) 344 561 550 534 641 621 428 587 4,338
比率 1.7(%) 7.9 12.9 12.7 12.3 14.8 14.3 9.9 13.5 100.0
54年度 合計 90(人) 356 509 560 594 636 681 507 627 4,560
比率 2.0(%) 7.8 11.2 12.3 13.0 13.9 14.9 11.1 13.8 100.0
55年度 合計 69(人) 380 478 550 606 691 710 553 700 4,737
比率 1.5(%) 8.0 10.1 11.6 12.8 14.6 15.0 11.7 14.8 100.0

 6.重症心身障害児施設の医療

 重症心身障害児の急性疾患への罹患率は非常に高く、健常児の数倍から十数倍である。重度精神薄弱児と比較してみると罹患率が高いことが明らかである(表10)。ことに小児内科系疾患のうちで呼吸器や消化器の疾患、皮膚科系疾患が多い。

表10 年間ひとりあたりの罹患件数(件)
受診科 小児科
内科
皮膚科 外科 歯科 耳鼻科 眼科 精神科 泌尿器科 その他
精神薄弱児一般棟 1.7 1.3 0.5 0.4 0.3 0.2 0.02 0.02 0.01 4.4
重度精神薄弱児棟 2.6 0.4 1.0 0.1 0.3 0.01 0.08 0.0 0.0 4.3
重症心身障害児施設 5.2 3.3 1.5 0.07 0.04 0.4 0.1 0.3 0.2 11.2

  (江草・末光 1977)

 重症心身障害児にみる三大急性症状として、①てんかん重積症、②周期性嘔吐様発作、③高熱症候群があげられている。死亡率の高いことも注目しなければならない。複雑な病態、身体的劣弱などから生命の維持と健康の援助が療育活動の基礎であることは言うまでもない。医師、看護婦を中心とした医療体制の充実が求められ、重症心身障害児施設が児童福祉施設であると共に医療機関であるゆえんはここにある。

 公法人立施設の看護基準は特Ⅱ類10施設、特Ⅰ類4施設、Ⅰ類25施設である。無類も1施設である。特掲診療科をみると各種臨床検査やレントゲン検査などがほとんど見当たらない施設も存在している。

 重症心身障害児施設の医療はどんなものであったらよいのか、見直しの必要があろう。

 著者の属する旭川児童院では小児科、精神科を中心に、内科、眼科、歯科、皮膚科、耳鼻科を診療科として設け、外科、整形外科は隣接する肢体不自由児施設に期待し、重症心身障害児の医療需要にこたえている。考えてみれば200人の入院中の重症心身障害児だけに専門医集団を確保するのは今日のわが国ではやや困難である。しかし、一方では心身障害児にとってはこうした医療体制が必要であるという現状がある。

 著者等はこうした二つの事情を満足させるためにも、施設の所在する福祉圏である人口約60万人の岡山市をエリアとしての外来医療、相談事業を心身障害児専門医によって実施すると共に、在宅心身障害児者のホームケアに訪問療育指導、通園指導を実施している。

 7.個人差と療育

 重症心身障害児を包括的、概念的にとらえた療育は適当でない。一人一人の障害の原因、程度、発達の段階、背景となっている生活などが十分に考慮された療育プログラムが用意されねばならない。

 集団生活を営む施設ではいくつかの年齢、発達段階、病態像などにより小集団が形成されている。入所するとどの小集団に所属するかをまず決める必要がある。起居をする病棟での医療、看護面からのグループわけ、リハビリテーション、保育、学校教育からのグループわけなどにより個人差にこたえている。どのグループに属するのがもっともふさわしいかは専門家による評価、それらを総合的に判断するためのケースカンファレンス、評価会議によることが必要であろう。医療、看護、心理、保育、教育などの専門家である職員が一人一人の重症心身障害児者のかけがえのない人生の実現を願いながら一致した見解を得て、自己実現の援助をつづけたい。家族との十分な連絡のもとにすすめていくのは言うまでもない。

 8.学習、リハビリテーション

 昭和53年8月の学校教育法施行令及び学校保健法施行令の改正により重症心身障害児の学校教育は大きく前進した。

 昭和55年4月現在の公法人立重症心身障害児施設で義務教育年齢の者で養護学校本校へ通学するもの9施設、養護学校分校へ通学するもの7施設、訪問教師によるもの32施設、特殊学級分教室3施設、非常勤訪問教師によるもの3施設、施設職員によるもの4施設となっている。全施設の義務教育年齢児1,684名中59.9%にあたる1,009名が学校教育をうけていることになる。公教育は教室、教材、教員が公的に保障されるのが原則であるが、現状では教室が施設側からの提供によるものが多い。早急に改善される必要があろう。また重症心身障害児教育の内容が明らかにされる必要があろう。生涯教育の観点からの青年期以後の教育プログラムは重要である。

 旭川児童院では青年文化教室を開設し、毎週3回にわたり、話しあい、映画、レコード・コンサート、社会見学、クラブ活動、学習活動の5部門が好評を得ている。重症心身障害児のリハビリテーションは未開拓の分野であるがきわめて大きな意味をもっている。

 公法人立施設のすべてで機能訓練を、42施設で言語訓練を、19施設で心理療法が実施されている。発達の未熟な重症心身障害児にとって感覚器官と知覚認知能力への評価と適切な訓練は言語、機能訓練の基礎であり、生活指導の基本である。しかしながら系統的な感覚訓練と感覚重視の生活指導がさしてとりあげられていないのは残念である。

 これらのリハビリテーションは生活の場面で配慮されながらすすめていくと共に、特設された場所と時間で抽出して、体系的に実施し、日常生活にとけこませるようにすすめていくことが大切である。リハビリテーション開始にあたっては現状の適切な診断、評価とともに、到達目標をあらかじめ想定し、計画的なプログラムが用意されねばならない。

 9.職員問題

 重症心身障害児施設の職員は病院としての職員と児童福祉施設としての職員の二つに大別することができる。しかし、どの職種においても施設の性格から福祉のわかる医療職員、医療のわかる福祉職員でなければならない。

 昭和55年4月の実態調査によると医療スタッフは医師、看護婦、保健婦、薬剤師、理学療法士、作業療法士、感覚訓練士、言語訓練士、臨床検査技師は2,817名(52.6%)である。

 一方、福祉職員は指導員、保母など1,447名(27.0%)である。

 昭和55年4月1日現在の全国48の公法人立施設の入所者実員数は4,737名であり、これと比較すると、常勤総職員5,357名は入所者一人につき職員1.13人となり、総直接介護職員3,891名は、入所者1.2人につき介護職員1人となる(図1)。

図1 職員部門別分類(公法人立施設)

図1 職員部門別分類(公法人立施設)

 これは重症心身障害児施設が発足した当初に比べると大きな改善といえる。しかし、詳細に見ると、看護部門と育成部門において非有資格者の比率は施設間において顕著な相違を示している。近代看護の基本であるチームナーシング制を取り入れ、総合的にグループとして看護にあたるには、有資格者の充実に努め、質量共に努力内容の向上をはからなければならないといえよう。

 常勤医師の総数は、131人であり、その内小児科医64名(48.9%)、精神神経科医31名(23.7%)が多く、ついで整形外科医7名(5.3%)、その他内科医、眼科医、歯科医などで占められている。専任の常勤医0ないし1人という施設も少なくない。理学療法士、作業療法士、言語訓練士、心理療法士などの訓練士になると、常勤の訓練士をもつ施設が少ない。

 いずれの職種においても、卒後教育(現任教育)の充実により、重症心身障害児の療育にふさわしい能力を持ちうるよう努めたいものである。

 職員の腰痛・頚肩腕症候群は、昭和49年は5.9%の有病率であったのが、昭和51年には4.3%、昭和53年には3.0%と減少している。腰痛を取り上げ、年度別、職種別分布を表11に示した。昭和49年の4.0%から昭和55年の2.0%まで減少している。なお一層の努力を望みたい。

表11 腰痛者の年度別・職種別分布
年度 49 50 51 52 53 54 55
実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者 実人員 申請中 認定者
看護婦 17/3.4
499
3 14 19/3.4
552
3 16 15/2.5
610
3 12 15/2.2
677
  15 19/1.8
1,043
1 18 15/1.3
1,141
1 14 20/1.8
1,122
4 16
0.6 2.8 0.5 2.9 0.5 2.0   2.2 0.1 1.7 0.1 1.2 0.4 1.4
准看護婦 20/5.5
367
4 16  / 
436
    10/2.0
516
2 8 11/1.9
577
1 10 10/1.5
678
3 7 11/1.5
735
5 6 9/1.1
786
  9
1.1 4.4     0.4 1.6 0.2 1.7 0.5 1.0 0.7 0.8   1.1
保母 26/8.6
305
9 17 13/3.7
357
1 12 9/2.2
412
2 7 7/1.5
477
1 6 8/1.3
600
  8 9/1.5
600
2 7 9/1.4
660
1 8
3.0 5.6 0.3 3.4 0.5 1.7 0.2 1.3   1.3 0.3 1.2 0.2 1.2
指導員 15/6.3
238
7 8 2/0.8
268
1 1 1/0.3
334
1   4/1.1
370
1 3 13/2.4
545
1 12 17/3.5
477
2 15 12/2.4
486
6 6
2.9 3.4 0.4 0.4 0.3   0.3 0.8 0.2 2.2 0.4 3.1 1.2 1.2
助手 19/1.9
976
6 13 20/1.9
1,055
5 15 22/2.0
1,133
1 21 21/1.9
1,113
4 17 21/1.8
1,171
2 19 32/3.0
1,064
7 25 23/2.1
1,098
2 21
0.6 1.3 0.5 1.4 0.1 1.9 0.4 1.5 0.2 1.6 0.7 2.3 0.2 1.9
その他 2/2.0
103
1 1 1/1.1
91
1   3/1.2
265
1 2 2/1.2
174
  2 4/3.2
122
  4 5/2.1
238
1 4 15/8.2
183
  15
1.0 1.0 1.1   0.4 0.8   1.2   3.2 0.4 1.7   8.2
99/4.0
2,488
30 69 55/2.0
2,759
11 44 60/1.8
3,270
10 50 60/1.8
3,388
7 53 75/1.8
4,159
7 68 89/2.1
4,255
18 71 88/2.0
4,335
13 75
1.2 2.8 0.4 1.6 0.3 1.5 0.2 1.6 0.2 1.6 0.4 1.7 0.3 1.7

 10.地域福祉問題

 重症心身障害児施設のベッド拡充に伴い、緊急入所を要する在宅重症心身障害児は、一部の地域を除くと、顕著に減少した。しかし、今なお、相当数の重症心身障害児が家庭で生活しているのも事実である。

 一方、近年地域ケアや開かれた施設への要請の高まりの中で必要以上に施設処遇に期待するのではなく、施設ケアと在宅ケアが車の両輪のごとく共存し、必要な時に適切に用意されることこそ望まれる方向にあるといえよう。重症心身障害児緊急一時保護事業や、通園外来治療、在宅訪問指導事業などへの要請が、期待されているといえよう。旭川児童院での緊急一時保護事業を行った9例について、障害度分類、期間、緊急保護の理由等を表12に示した。重症心身障害児の年長・高齢化に伴い、両親や祖父母を中心とする家族の疾病や死亡など、緊急保護への要請は、近年、急速に高まっているといえよう。それに対する施設の受け入れ体制と行政的なバックアップが一層充実するよう望みたいところである。

表12 緊急一時保護事業の対象者(旭川児童院)
  年齢 性別 障害度分類 期間 緊急保護の理由
5歳児 15 7日 祖母の事故
3歳児 25 13日 祖父の病気(母付添い)
12歳児 25 4日 祖父の死亡
3歳児 25 20日 母の出産
16歳児 25 14日 父の病気(肺ガン)
19歳児 5 3日 姉の結婚
13歳児 25 3日 父の病気(ベーチェット病)
14歳児 14 5日 祖父の死亡
17歳児 25 5日 祖母の危篤、死亡

(障害度分類は昭和41年の文部省重症心身障害児研究班の分類による)

 重症心身障害児施設が要する専門的な療育技術を在宅児にも提供するよう要請が高まっている。旭川児童院では、岡山市の委託事業として在宅重度・重症心身障害児に対する訪問療育指導事業を昭和52年より行っている。その事業は、主として3つの事業から成り立っている。①在宅訪問指導…医師、看護婦、保健婦、各種訓練士、児童指導員などの専門家による訪問指導を行う。内容は医学的診断、発達検査、機能訓練、感覚訓練、コミュニケーション訓練、日常生活の指導、栄養指導、家庭看護技術の指導、生活環境改善指導などを行う。②母子療育指導…親子ピクニック、療育キャンプ、クリスマス会などの行事を通じて在宅児の生活経験の拡大及び相互の親睦をはかり、あわせて家庭療育の指導を行う。③テレフォンサービス…家庭での療育上の問題について電話により専門家が相談に応じる。

 この事業による効果は表13に示す通りである。

表13 効果判定
  区分 人数(%)
治療開始 4(6.8%)
通園・通学・入所 9(15.2%)
家族が積極的に努力し、効果が認められている。 8(13.5%)
家族が積極的に努力しているがあまり効果が認められない。 7(11.9%)
目標に向かって努力中 9(15.3%)
その他 22(37.3%)
 

59(100%)

 その他:あきらめ3 家庭に問題あり7 病状悪化4 死亡2 日数浅く評定困難6

 11.おわりに

 わが国の児童福祉施設においてもっともその歴史が浅く、施設運営のあり方を形づくるには時間が不足しているのが重症心身障害児施設である。また施設の性格が、児童福祉施設であって病院であるという性格の二面性、発展、充実すべき時期がわが国にとっていまだ経験したことのない経済変動の時期に一致していたこともあって、その運営はきわめて困難であった。

 しかし、15年余の歳月は重症心身障害児施設のあり方をほぼ明確にしつつあると思われる。ニーズに応じてその機能を見直すのが、福祉施設のあり方の原点であるので、敏感にニーズにこたえるべく、ソフトな面での充実に努めねばならない。

引用文献 略


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1980年7月(第34号)2頁~11頁