特集/第14回世界リハビリテーション会議 80年代憲章宣言(草案)

特集/第14回世界リハビリテーション会議

80年代憲章宣言(草案)

 この「国債障害者リハビリテーション協会80年代憲章」(the Rehabilitation International Charter for the 80’s)草案は、80年代の国際優先行動に関する基本的コンセンサスとして、国際障害者リハビリテーション協会の世界計画グループ(委員長Alfred Morris氏)で論議を重ね、1980年6月の当協会世界会議に提出されたものである。

 80年代憲章は、二つの部分から構成されており、それは、政府首脳及び一般市民向けに作られた宣言(Declaration)と、4大目標及び地域、国内、国際レベルにおける活動勧告を基本とした憲章(Charter)とである。

 世界会議で更に検討・修正を加えられた80年代憲章は、近いうちに発表される予定である。

 ここでは宣言文草案全文及び憲章についてはその構成のみを記す。

 今日、世界には5億人を越える障害者がいる。

それぞれの国においても、少なくとも10人に1人 は身体的、精神的もしくは感覚的機能障害をもっている。障害をもつ人々は、すべての人権、すなわち成長し学習する権利、労働し創造する権利、愛し愛される権利を共有しているのである。しかしながら、障害者の住む社会は、いまだ障害をもつ市民の人権を十分に保護していない。障害者に当然与えられるべき機会と責任は、無視されることがあまりに多いのである。

 3億5千万人以上の障害者が生活を十分に享受するために必要な援助が得られない状態に置かれている。障害者はすべての国に、世界中あらゆるところに住んでいる。しかしその圧倒的多数は経済的社会的発展が初期段階にある地域に住んでいる。この地域では、障害に加え貧困が、児童、成人及びその家族の希望を傷つけ、生活を狭めている。

 障害のために能力の十分な発揮が妨げられている人々は、あらゆる地域社会において住民の25%と推定されている。これには、障害者自身の他、家族及び障害者を助け支えている人々も含まれる。この問題に有効な回答を出し得ない社会は膨大な人的資源の損失を被るのみならず、人間の可能性を残酷にもむだにすることになるのである。

 歴史を通して人類は身体的または精神的差異により異質とみなされる人々を、地域社会への安全参加から締め出す物理的社会的障壁をつくりあげてきたのである。建物及び交通機関は、多くの障害者にとって使用不能のものがほとんどである。情報及び美は、視覚、聴覚あるいは理解力に障害のある人々には手が届かない。人間の交りの暖かみは、身体あるいは精神能力が一般の人と違っている児童もしくは成人には与えられていない。教育、生産的雇用、公的サービス、レクリエーション及びその他の人間活動は、多くの障害者を拒絶している。あるいは隔離された状態においてのみ可能としている。最重度の障害者は自立生活ができる見込みはないとみなされ、全面的に無視されている。あるいは人格の発達の援助や生活の質の向上への努力が十分と言えないながらなされている。

 今日、障害者を地域社会の生活から隔てている障壁を除去する知識・技術はあり、いかなる国にも適用が可能である。いかなる国においてもすべての施設や制度をすべての国民に開放することは可能である。政治に往々にして欠けているものはこれらを実現するために必要な政策を示し実行に移す政治的意志である。この挑戦に応じ得ない国は、その真の価値を実現することはできないのである。

 貧困と戦争は障害を生じる原因となるばかりでなく、障害の予防とリハビリテーションに必要な資源の確保にも影響を与える。したがって、この憲章の目的実現のためには、世界資源のより公平な分配、及び理性と協力に基づく国家関係が必要である。

 この新しい10年にあたり、障害の発生を減らし、障害者の権利が尊重され障害者の安全参加が歓迎される社会づくりを、すべての国の目標としなければならない。1980年代憲章はこの目的で発表されるものである。障害に対する社会の態度及び障害者問題に対する社会の対応の根本的改革が、憲章の目標達成には不可欠である。次にかかげる目標は、すべて等しく重要であり、優先順位は同等である。

 すべての国において、できる限り多種の障害を予防する施策を開始すること、及びすべての家族、すべての個人に必要な予防サービスが行きわたることを保障すること。

 すべての障害者及びすべての障害者をもつ家族に、障害により生ずる不利を軽減するために必要とするリハビリテーション・サービス及びその他の援助・支持を受けられることを保障し、かついかなる人にも社会での完全な生活と建設的役割を可能にすること。

 地域社会生活のあらゆる面での障害者の最大限の統合と参加を確保するため必要なあらゆる方策をとること。

障害者について、障害者の可能性について、障害について、障害の予防と治療についての情報を広め、これらの問題及びすべての社会におけるこれらの問題の重要性についての認識を高めること。

 各国はこの憲章に明らかにされた原則に基づき各国の情況に鑑み、これらの目標達成のための総合的国内計画をたてるよう勧告する。国内計画には国民生活のすべての分野を含むべきであり、またあらゆる国内開発計画に優先的に組みこむべきである。

 これらの目的のために、各国政府は政府首脳もしくは政府に対し責任のある障害者担当大臣もしくは同格の担当者を置き、国内計画の作成及び実行の調整を指揮することが必要である。この担当者を補佐する機関として、すべての政府関係省庁代表と障害者団体、民間団体及び専門職団体の代表から成る国内諮問機関が必要である。

 80年代憲章は人類が障害者であるか否かにかかわらずあらゆる人の権利と責任を守り、育てていくことを可能にする方策についてコンセンサスを明らかにしたものである。

 この憲章は1980年6月26日、カナダ・マニトバ州ウィニペッグで開催された第14回世界会議での討論を経て、国際障害者リハビリテーション協会総会で承認を得、国際障害者年に向けて世界に発表するものである。

80年代憲章(構成)

前文

基本概念(1~6)

4目標及びその一般原則(7~58)

国内活動勧告(59~64)

国際協力(65~66)

80年代行動目標

 地域社会レベルの目標

 国家レベルの目標

 世界レベルの目標

(中島 和・訳)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1980年12月(第35号)19頁~21頁

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