特集/自立生活 米国リハビリテーション総合的サービス及び発達障害に関する改正法(1978)

特集/自立生活

米国リハビリテーション総合的サービス及び発達障害に関する改正法(1978)

第7章 自立生活のための総合的サービス

A節 総合的サービス

 (目的)

第701条 本章の目的は、(第1章に基づく“職業リハビリテーションサービスの補助金”への追補として)各州による、障害者の現在及び将来のニーズを満たすべく構成された“自立生活のための総合的サービス”の実施を援助するための補助金について規定することである。

 この場合の「障害者」とは、「その障害(disabilities)が非常に重度なため、現在のところ就労の可能性が無いが、しかし、“自立して生活し、かつ機能することを可能にするような職業リハビリテーションサービス”から利益を得るであろうと思われる人々」をいうものである。

 (対象たり得る資格)

第702条 本章に基づくサービスは、就労し又はこれを継続する能力や家庭や地域社会で自立して機能する能力がその障害の重度さの故に著しく制限されているために、就労する能力又は家庭や地域社会で自立して機能する能力をかなりの程度改善するのに、他の人に対する職業リハビリテーション又は総合リハビリテーションサービスに要するよりも、幾分多くの費用と期間を必要とするような人に対し、提供される。本節に基づくサービスは、本法の他の規定によるサービスを受けていない人に対し優先される。

 (b) 本章の目的に照らし、“自立生活のための総合的サービス”という用語は、(第1章において定義したように)適正な職業リハビリテーションサービス及びその他の障害者が家庭や地域社会内で自立して生活する能力を培い、適当な場合就労しこれを維持するようなすべてのサービスを意味するものである。

 このようなサービスは、以下のものを含む。

・カウンセリングサービス(心理学的、心理療法的サービス及び類似のサービスを含む)

・本条の目的にかなう住宅(障害者に役立つよう、適切な設備を備え、また改造を施したもの)

・適切な就労斡旋

・移動

・介護

・身体上のリハビリテーション

・治療

・補装具、自助具

・健康維持

・レクリエーション活動

・就労年齢前児童のためのサービス(理学療法、言語・コミュニケーション能力の開発及び育児サービスを含む)

・これらに類するサービス事業の援助を受ける障害者のニーズを、将来減少せしめるような適切な予防的サービス

(配分金)

第703条 (a)(1) 第705条の規定に基づいて総合的サービス計画を承認された各州は、本条に基づく配分金の実行に当たって各年度に支出される総額の中から、全国総人口に対する当該州の人口の比率と同率にあたる配分を受ける権利を有する。

 また、(2)に規定する地域を除いて、以下の規定に基づく各州への配分金は、20万ドル又は当該年度における配分金総額の300分の1以上のいずれか多い方の額とする。なお、本条に基づく配分金が20万ドル又は当該年度総額の300分の1未満の額の州に対しては、2つの額の多い方の額まで増額されるものとする。

 (2) 本項の実施に当たっては、グァム、アメリカ、サモア、ヴァージン諸島、北マリアナ諸島及び太平洋地域の信託統治の諸島は州と見なされることなく、かつ、それぞれは当該年度における本条の施行のための総額の800分の1以上に相当する額の配分を受けるものとする。

 (b) 第(1)項に基づき各州への配分金を増額せしめる場合又は第(2)項に基づき配分金を交付する場合に必要とする資金は、第(1)項に規定する州以外の州への配分金を均等比率で減額することにより調達されるものとする。しかしこのような調整により、このような残余の州への配分金が20万ドル以下または本条の実行にあたり配分が行われる当該の年度における総額の300分の1以下になることは避けなければならない。

 (c) 局長*が、当該年度におけるある州への配分金がその州により本章の目的の遂行のために運用されていないと判定するときはいつでも、そのような資金を本条の目的を遂行するために、局長が当該年度間に追加資金を活用することができると認める他の州の使用に供することができるものとする。

 なお、前記の規定に従って当該年度において、ある州が使用できるいかなる資金も、本条の実施に当たっては、その年度におけるその州の配分金(本条の前記の規定に基づいて決定された通りの)の増額と見なされる。

(配分金の州への交付)

第704条 (a) 第703条に基づくある年度の各州に対する配分金から、州は第705条の規定により承認された州計画に基づいて当該年度間に債務負担した連邦政府負担分の経費を交付されるものとする。

 このような交付は、(既になされた過大又は過小の交付の所要の調整の後に)前払い又は精算払いにより、かつ局長が定める分割払い等の条件により行われる。

 (b)(1) 各年度のいかなる州に関する連邦政府の負担分も、第705条の規定に準拠して承認された州計画に基づいて当該州が債務負担した経費の90%とする。

 (2) 本条に基づく配分金によって援助された事業に係る費用のうち、連邦政府の負担しない分については、現物により給付されても差し支えない。

 (3) いかなる州に関する連邦政府負担分の決定を行うに当たっても、各州による政策的再区分によって支出された経費は、局長の定める規則に基づき、その州による支出と見なされる。

(州計画)

第705条 (a) 本節に基づく補助を受ける適格性を得るためには、州は、重度障害者に対する自立生活のための総合的サービスの実施に関する、3か年にわたる州計画を局長に提出するものとする。

 また、局長の要請するところにより、必要に応じて計画に各年度毎に修正を加えるものとする。

 なお、ここでいう計画は、次のことを行うものとする。

 (1) 本節に基づいて財源措置が講ぜられた事業計画の管理執行に当たる機関となる、当該州における担当部局を明らかにすること。

 (2) 州は重度障害者に対する総合的サービスを行うため(例えば地方的・地域的センター、ハーフウェイ・ハウス(中間施設)、入所者退所後対策など)の広範な様々な方法を研究・検討し、かつ、最も実行可能性があり、また有意義な施設収容に代るサービスを提供することを表示すること。

 (3)(A) 本節に基づいて重度障害者に提供される自立生活のための総合的サービスの特質、考え方及びその程度を説明し、かつ、本章のB節に基づく資金の配分に関する州の目標と計画の明細を記すこと。

 (B) 本章の本節及びB節に基づいて援助されるサービスの提供との関連で使用される諸施設は、通常「建築上の障害に関する法律(1968年)」として知られる1968年8月12日公布の法律の規定に合致したものであることの十分な証明を示すこと。

 (4) 次の事項についての証明を示すこと。

 (A) 第102条の求めに合致する個人別に作成されたリハビリテーションプログラムは、本節の規定に基づいて実施される自立生活のための総合的サービスを受ける適格性ある個々の障害者のために順次充実されるであろうこと。

 (B) これらのサービスが、それぞれのリハビリテーションプログラムに従ってなされるであろうこと。

 (C) これらのプログラムは、当該障害者個人別に作成されるリハビリテーションプログラム、リハビリテーション計画又は教育プログラム(本法第102条、「発達障害者援護事業と施設建築に関する法律」第112条それに「全障害児の教育に関する法律(1975)」第612条(4)と第614条(a)(5)の条項に基づいて求められる)と調整されること。

 (5) 州は、本章の規定に基づいて援助される個人について、その進歩状況の定期的な評価を行わせ、そのような個人に提供されるサービスについてその継続、修正又は停止すべきか否かを決定することの保証を表示すること。

 (6) 重度障害者のための総合的サービスの規定に関し、都市部及び地方部の貧困地域に対して技術的援助の提供について特別の努力を行うことの保証を与え、かつその努力について明記すること。

 (7) 障害者が州計画を進展させることに実質的役割を果すことの保証を与えること。

 (8) 局長が、本(8)号の実施に当たり、州が本条に基づいて支出さるべく求められた資金を実際に活用する可能性がないと、その州から提出された証拠に基づいて、判断し、本号の適用除外を行った場合を除いては、本節に基づいて州に受取られた資金の20%以上が、地方の公共的機関及び民間の非営利団体による自立生活サービスの運営を補助するのに使用されることの保証を与えること。

 (9) 局長の求めるところにより所定の様式で所定の手続きに従って提出される資料その他の資料を掲載すること。

 (b) 局長は(a)項に基づいて提出された州計画を受理した後、速やかにその計画の承認又は非承認を決定すること。また、局長は、州計画が本条の目的と求めるところに合致すると判断した場合、その計画を承認するものとする。

 本法第101条の、(b)、(c)及び(d)項の規定は、本条に従って、局長に提出されたいかなる州計画にも適用されるものであり、また、本条の実施に関するものを除き、これらの項におけるすべての長官への付託は、局長への付託と見なされる。

B節 自立生活センター

(補助制度の制定)

第711条 (a) 局長は(c)項(2)号に規定するサービスを行う機関である「自立生活センター」の設立及び運営を行うため、第705条に基づく州計画の実行にあたる各州担当部局に対し補助することができる。

 (b) 本条に基づくいかなる補助も、そのための申請が局長に提出され、かつ、局長により承認されなければ行われ得ない。

 局長は補助申請が次の各号の条件を満たさなければ、これを承認してはならない。

 (1) 州の担当部局が補助により交付された資金を(c)項に従って使用する保証を包含すること。

 (2) 局長の求めるところにより、その他の情報を包含し、かつ所定の様式により、所定の手続きに従って提出されるべきこと。

 (c) 公共機関または非営利機関・団体による補助の申請は、下記のとおりとする。

 (1) 障害者がセンターの方針及び運営について実質的に関与すること、及び当該センターに雇用されることを保証すること。

 (2) 補助を受ける自立生活センターは、障害者に対し、次に掲げる適切な諸サービスを含む、組合せからなる自立生活諸サービスを提供することの保証を包含すること。

 (A) 障害者が特別なリハビリテーションサービスを必要とするか否かについて決定するための初期的カウンセリング

 (B) 介護に関する他機関への移送及びカウンセリング

 (C) 法的及び経済的な権利並びに特典についてのカウンセリング及び介護サービス

 (D) 自立生活のための技術指導、カウンセリング及び訓練(必要な器具の維持と就職活動に関する訓練、治療の必要性とそのプログラムに関するカウンセリング、視覚障害者と聴覚障害者のための特別プログラムを含む)

 (E) 住居と移動手段に関する他機関への移送と援助

 (F) 適切な住居、利用し易い移動手段その他の支援的サービスを鑑定するための調査、案内その他の活動

 (G) 健康管理

 (H) 障害者仲間によるカウンセリング

 (I) 地域集団生活の手配

 (J) 地域社会での生活と地域社会活動への参加に必要な教育及び訓練

 (K) 個人別の、及び集団的な、社会活動及びレクリエーション活動

 (L) 障害者の生活の自立性、生産性及び品性を高めるために実質的に役立つ、資金、訓練、カウンセリング・サービスその他の援助を行うような各種事業

 (M) 介護及び介護者の訓練

 (N) その他本章の規定上必要と考えられ、かつ矛盾しないサービス

 (3) 局長の求めるところにより、その他の情報を包含し、かつ所定の様式により所定の手続きに従って提出されるべきこと。

 (d) 本条に基づき、各年度において局長が、州の担当部局からの申請受付の開始後6か月以内にある州の担当部局がその申請を未だ提出していない場合には、局長は本条に基づく補助の申請を当該州内の地方公共機関又は民間非営利団体から受付けることができる。

 局長は、この申請を受付けた後、そのような機関又は団体に対し本条の(c)項(2)号に掲げるサービスを提供する自立生活センターの設立するに当たって、補助を行うことができる。

C節 盲老人のための自立生活サービス

(サービス事業の構成)

第721条 (a) 局長は盲老人に対し自立生活サービスを行ういかなる州の担当部局に対しても補助を行うことができる。

 このサービスは盲老人のニードに一層対応できるようにすることにより、盲老人がその視覚障害に適応することを援助するよう構成されるものである。

 なお、このサービスは次に掲げるものを含むものとする。

 (1) 視覚障害の矯正に役立つサービス(例えば、(A)アウトリーチサービス(ケースの掘り起こし)(B)ビジュアルスクリーニング (C)予防、矯正及び失明しつつある眼の状態の緩和のための手術又は治療の処置 (D)これに伴う入院措置)

 (2) 矯正眼鏡等視覚補助器具の給付

 (3) 盲老人がより行動し易く、また自身で身辺処理することが可能となるよう援助するためのサービスや器具類の給付

 (4) 歩行訓練、点字指導、その他盲老人のその視覚障害への適応に役立つようなサービスと器具の給付

 (5) 付添案内サービス、朗読サービス及び移動

 (6) その他、盲人が日常生活を営むのに役立つ、支援的サービス又はリハビリテーション教育サービスを含む適切なサービス

 (b) 本条に基づくいかなる補助も、そのための申請が、局長の求める情報を包含して局長に提出され、かつ局長により承認されなければ行われ得ない。

 また、局長は申請が本章第705条に基づく自立生活サービスの州計画に、(a)項に規定するサービスに関する新しい方法や解決策を州担当部局が盛込む努力をする旨の保証を含むのでなければ、これを承認しないことができる。

 (c) 本条に基づいて州の担当部局が受けた資金は、公共機関又は民間の非営利団体が、次に掲げることを行うのに補助するために使用されて差し支えない。

 (1) 盲老人に対するサービスの改善又は充実、並びにこのような障害者の問題に対する公衆の理解の改善の一助となる活動の運営すること。

 (2) 本条(a)項の規定に従って盲老人に対し自立生活サービスを提供すること。

 (d) 本条の目的に照らし、「盲老人」という用語は、55歳以上の者で、その重度視覚障害が有給の雇用に就くのに著しく困難ならしめるが、自立生活の目標には合致するような者を意味する。

D節 一般規定

 (個人の権利の保護と唱道)

第731条 (a) 局長は州が重度障害者の権利を保護し、かつ唱道する組織を設立することに補助することができる。

 本条に基づく補助を受ける資格を備えるためには、州は、局長に対し、本条に基づいてなされた補助によって設立された組織が、当該州内において本章に基づいてサービスを受けている個人の権利の保護を保証する法的、行政的及びその他の対策を遂行する権能を持つことの証明を提出しなければならない。

 (b) 本条に基づくいかなる補助も、そのための申請が、局長が規則において定めるところにより、所定の情報を包含し、かつ所定の様式と手続きに従って局長に提出されるのでなければ、行われ得ない。

(障害者の雇用)

第732条 本章に基づく援助を行う条件として、長官は、補助を受ける者が、資格ある障害者の採用と雇用の拡大に肯定的な行動をとることを求めるものとする。

 その場合の雇用条件は、(1)州のリハビリテーション機関やリハビリテーション施設 (2)連邦との契約者及びその再契約者(下請け先)による雇用をつかさどる本法律の規定において障害者の雇用に関して求めるところと同じ条件とする。

E節 承認

(経費支出の承認)

第741条 本章のA、B及びC節の規定の執行に当たっては、1979年9月30日の年度末までに8,000万ドルを、1980年9月30日の年度末までに1億5,000万ドルを、1981年9月30日の年度末までに2億ドルを、また1982年9月30日の年度末までに必要となるであろうこのような金額の支出を承認する。

 (b) 本条に基づき支出承認のなされた総額から、本章のC節の規定の執行に当たっては、本章A節の第1分節の規定の執行に当たって用いる額の10%を超えない範囲で用いることができるものとする。

 (c)(1) 本章D節の執行に当たっては、1979年9月30日末及びそれに続く3年の各年度末までに然るべき金額が必要であろうものとして充当されることが承認されるものとする。しかしながらいかなる場合においてもその金額は1979年9月30日の年度末までには600万ドルを、1980年9月30日の年度末までには750万ドルを、1981年9月30日の年度末までには900万ドルを超過してはならない。

 (2) 合衆国連邦法令集第18章の第1913条の規定は、本(c)項の規定に基づいて承認されるすべての金額に対して適用されるものとする。

訳者ことわり serviceはすべてサービスとした。日本の役所用語で言えば援護事業ともでもいうべきところであろうが、このような用語は一般的でもないし、assistanceとも見分けがつかないからである。

(厚生省社会局更生課訳)

*局長=保健教育福祉省のリハビリテーション・サービス局長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1981年3月(第36号)5頁~8頁

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