特集/自立生活 自立生活の諸問題

特集/自立生活

自立生活の諸問題

Issues in Independent Living

Owen Dailey,M.S. Denise G.Tate,Ph.D. William D.Frey Ph.D.

中島 和*

Ⅰ 序

 重度障害者に対する自立生活援助の必要性は、現行法に明確に表わされている。公法95-602リハビリテーション総合的サービス及び発達障害に関する改正法(1978)の意義の1つは「自立生活のための総合的サービス」を取り入れたことである(公法95-602第7章)。第7章の目的は、自立生活活動に総合的サービスを提供する州に対し経済援助を行うことにある。総合的サービスは現状では雇用の可能性が無く、かつ自立して生活するために必要な技術を持たない重度障害者のニードに応じるために立案されたものである。

 1978年改正法の通過に伴ない、自立生活サービス規定に関する問題が多数浮かびあがってきた。これは2つの基本的問題に集約される。第1は、自立生活の概念規定の難しさである。現行の法律及び文献における多様な解釈を分析し、異なる定義の中に共通性を見出す必要がある。サービスの対象、自立生活計画やセンターに期待される成果、責任性及び評価の基準、サービスの運営及び財源の割り当てが、新リハビリテーション法の中で検討を必要とする点である。

 本論で取り上げた第2の基本的問題は、働くことを望んでいる重度障害者の意欲を喪失させるという問題である。これは雇用を自立生活の付加的側面と考えている人々にも同じく重要問題である。

Ⅱ 自立生活の定義

 自立生活は最近の文献で、さまざまに定義されている。

 「就労を目前の目標としない障害者に対するサービスであり、従来職業リハビリテーションにより提供されていたサービスを越える、生活の質の向上のための援助である」

 「意志決定及び日常活動における他人への依存を最小限にするための方策を選択することによって、自己の生活を管理することである。これには自分の事を処理すること、地域の日々の生活に参加すること、一連の社会的役割を果たすこと、及び自己決定と他人への心理的物理的依存を最小限に抑えることにつながる意志決定が含まれる。自立は相対的な概念であり、各人がそれぞれに定義することが可能である」

 この2つの概念化の間に見られる相違は、この概念の発展推移を示すと同時に、自立生活運動にかかわる立場による利害と考え方の違いも反映している。自立生活概念は、コンシューマー団体、専門家団体、及び公立・民間のリハビリテーション機関が長く主張してきたものである。コンシューマーは、自立生活を心理過程、自己の生活の管理、意志決定の能力及び全社会活動への統合として広義にとらえている。

 立法行政担当者は自立生活を、職業的性格を持つ目標以外の目標を持つ人々に対する実務的サービスとして定義している。したがって職業的可能性のある人は職業リハビリテーションの対象者に、職業的可能性のない人は自立生活サービスの対象に、と分類する傾向がある。

 法律の上では、自立生活の概念は何回か変化している。この概念は最初は、施設ケアの必要性を重視する医学モデルの形をとった。

 第2段階では、自立生活は職業的可能性が明確でない重度障害者に対する、職業リハビリテーション規定によるサービスを重視しはじめた。1965年職業リハビリテーション法などの法律は、評価を拡大する規定によって、この種の自立生活を認めた。障害者並びに老齢者に対する住宅供給の必要性は、1964年公営住宅法で言及されている。さらにまた、1968年連邦建築障害(除去)に関する法及び1970年都市大量輸送法改正にも、議会の法的見解は明らかである。1972年には議会はH.R.8395の可決により1965年職業リハビリテーション法の改正をはかり、職業的目標が不可能とみなされる人々に対し、自立生活サービスを供給することにした。この法案に対してニクソン大統領は、職業リハビリテーション・プログラムが職業という目的からはずれ、不明確な医療及び福祉を目的とすることになるという理由で、2回拒否権を発動している。この議会、行政間の行詰まり打開のため、妥協がなされ、1973年リハビリテーション法が誕生した。議会は自立生活プログラムの法制化を認めず、代りに行政は重度障害者のニードの総合調査を行うことになった。

 この概念の第3段階は、1973年リハビリテーション法の通過により訪れた。73年法は重度障害者に対する「総合的リハビリテーションサービス」が含まれている。脱施設化、家族及び介助者への依存の軽減、家事の自立及び地域内の移動の確保が強調された。同法第5章は障害者の法制上の権利を新たに拡大した。501条及び503条は、連邦政府及び連邦政府と契約を有する団体の障害者雇用について、肯定的行動(affirmative action)を命じている。502条は建築交通応諾委員会の設置を定めている。504条は連邦政府の財政援助を受けているすべての計画及び活動における障害を理由とした差別を禁止している。

 第4段階では自立生活の概念は、援助の分配過程への参加に意欲を燃やしたコンシューマーの影響を受ける。これは1973年リハビリテーション法の1974年の改正に反映した。この改定により障害者のホワイトハウス会議の規定が設けられ、また、障害者を職業的可能性だけでなく、日常生活活動全体としてとらえるべきであるという考え方が強調された。

 第5段階が現在であるが、これは1959年に始まった自立生活援助に対する法的根拠獲得のための努力の蓄積の結果である。重度障害者に対する総合的サービスの法的規定及び自立生活のモデルに関心が向けられている。1978年法(公法95-602)は、公法93-112、1973年リハビリテーション法の改正及び公法94-103発達障害援助及び施設建設法で構成されている。他の法律の自立生活の規定と比して違いは、1978年法が現行の発達障害法から導かれた「権利」概念を含んでいることである。

 公法95-602により、1973年リハビリテーション法は多くの点で改正されたが、その中に第7章自立生活のための総合的サービスが含まれている。しかしこの法律では、自立生活の概念の明瞭な定義はなされていない。第7章701条に述べられている提供される援助の内容及び援助の目的から定義を推論するしかない。701条では、自立生活サービスは障害が重度であるために現状では雇用の可能性はないが、職業リハビリテーション・サービスにより自立して生活していくことが可能になる人々の現在及び将来のニードに応ずるために計画されたものであると述べられている。

 新法の701条を通じて定義されている自立生活概念と同様に、サービス規定に関連するその他の問題点も多く生じている。

1. 対象者たり得る資格の基準

 702条では、自立生活サービスの対象者を、重い障害のために従来の職業リハビリテーション・サービスを受けられない人と規定している。しかしながら、割り当てられた資金量から見ると(1979会計年度は8千万ドル)、自立生活サービスを申請するすべての人のニードが必要に応じて十分に満たされることはあり得ない。誰が先にサービスを受けるべきか優先順位を決める必要がある。したがって、サービスの有資格者とサービスを受けられる者との概念上の区別が可能である。公法95-602の自立生活サービス規定に関する国民会議でこの問題が論じられた時には、新法の他の規定によるサービスの対象とならない人が、このサービスに第1優先順位があり、第2優先順位は新法の他の部分で十分なサービスが受けられない人とすることに合意が成立している。

 新法はまた「就労する能力又は家庭や地域社会で自立して機能する能力のかなりの程度の改善」が見込まれる人々に対しサービスを行うものとすると述べている。この記述から生ずる重要な問題は、可能性の評価方法及びかなりの程度の改善の測定方法の決定が困難なことである。既成のことばで改善の可能性を扱おうとすれば、ただでさえ混乱している自立生活の定義をますます難しいものにし、障害を増すばかりである。定義に直接関連する問題は、クライエントがかなりの程度の改善を示さなければ、サービス停止になるということである。サービスの継続が自立生活能力のかなりの程度の改善をもたらさなくとも、サービスの停止が自立生活を営む能力をかなりの程度に減退させることはある。

2. 期待される成果

 概念の解釈から生ずるもう1つの問題は、自立生活計画及びセンターにおいて個人に期待される成果の問題である。もし生産性が期待される成果であるとすれば、どう定義されるであろうか。収入の得られる雇用の他の定義がありうるか。公法95-602を検討すると、この疑問に対する解答は、はなはだあやしいものになってくる。法律は第7章の資金は、第1章によるサービスが受けられない場合のみ提供されると規定している。しかし、一方で自立生活のための総合的サービスには第1章に規定されている職業リハビリテーションの中の適切なものを含むと定義している。さらに自立生活サービスは適切な雇用の確保と維持を目的として行うこともできる。このように、第7章は一方で雇用が可能な目標とならない人々を対象にしていながら、第7章の資金は雇用の確保並びに維持を望む人々にも利用可能である。

 このことから先に論じた対象者たり得る資格の問題にもう1つ問題点が加えられることになる。つまり現状で職業的目標が可能な人も第7章の下で補足的サービスの受給資格をもつのだろうか。

3. 責任性と評価

 評価・責任性の問題から、2つの問題点が提起される。第1はセンターの提供する自立生活計画あるいはサービスの最良の評価方法は何かということである。第2はこのプログラムあるいはセンターは、誰に対して責任があるのか、すなわちコンシューマーに対してか、資金を提供する組織に対してかということである。

3.1. 責任性

 自立生活へのコンシューマーの参加は、本論文を書くにあたり調べた文献全体を通じて最も話題となっていた問題のひとつである。コンシューマー管理の傾向が強い自立生活センターが、自立生活サービス規定の重要なモデルと考えられている。第7章に独立したB節を設けたこの法律は、自立生活センターを障害者のニードに応じたサービス提供に重要なものとして認めている。711条C項では、「障害者がセンターの方針及び運営について実質的に関与すること、及び当該センターに雇用されることを保証すること」とうたっている。しかしながらコンシューマーの政策決定集団の中での役割、及びセンターの管理に関する責任については明確ではない。自立生活センターはコンシューマー指向であるべきながら、B節に基づく主たる認可機関は州職業リハビリテーション機関である。このような混乱した状況から予想される結果は、州機関の指示と自立生活センターのコンシューマー指向の目標の衝突の可能性である。

 責任性の問題は規定の自立生活サービスに許されている財源とも密接な関係をもつ。公法95-602(1979)の自立生活サービス規則に関する国民会議の出席者は、コンシューマー中心の委員会または、グループを州レベルに設け、B節に関する資金への各センターからの申請及び要求の審査にあたるよう提案した。

3.2. 評価

 自立生活プログラムにどのレベルの財源があてられていても、あるいは1プロジェクトとして運営されている場合または州の職業リハビリテーション機関の中の重度障害者に対するサービス分配システムとして完全に組込まれている場合でも、自立生活プログラムの評価要素は必要である。しかしながら評価方法を選択する場合、自立生活技術の習得度を測る基準の決定が問題となろう。費用便益分析法(cost-benefit analysis)は、測定できる物的利益のない自立生活には利用できないという主張もあり、また何らかの概念操作により利益を測定する評価方法を主張する人もいる(例えば、自己の生活の管理度は、介護サービスに対する支払小切手を書く能力で示すことができる。)

4. 予算の割り当て

 公法95-602による自立生活サービスの予算は1979年が8千万ドル、1980年が1億5千万ドルである。各州は最低20万ドル、または総額の300分の1の割り当てがある。しかしながら、この新法は予算のA節とB節の事業の振り分け方、あるいは各州間の配分について明確でない。さらに予算に関連する問題として、A節に基づく補助金申請を審査する委員会へのコンシューマーの参加問題がある。705条(a)(8)によれば、A節の規定に基づき受けた予算の最低20%は、地方公共団体及び非営利団体の自立生活サービスに対する補助金として取置かねばならない。この規定に関わる問題点としては、補助金申請を審査する委員会の構成は、コンシューマーを中心にするのか、州機関職員あるいは他のリハビリテーション職員が中心となるのかという点である。

5. サービスの組織化

 サービスの組織化並びに提供に関連した問題としては、サービスの分配基準があげられる。誰が何を提供するのか。明らかに州機関が提供できるサービスも何種類かある(たとえばカウンセリングや職業斡旋など)。これらは通常、州機関が提供しているサービスである。また、特に仲間によるカウンセリングや権利擁護サービスなど、他の営業機関から自立生活サービスを購入することも考えられる選択である。サービスの効率、利用のしやすさ及び利用者の好みは、すべてこの問題に関連して考慮すべきことである。

Ⅲ 労働意欲阻害

 自立生活に関する法律的関心にかかわるもう1つの重要な問題は、労働意欲阻害の問題である。労働意欲阻害の問題の理解を深めるために、アメリカで利用できる所得補償プログラム及びその障害者の生活への影響について手短かに述べる。

 一般的に所得給付受給資格があれば、医療給付及び社会給付も資格があることが多い。社会保障障害保険(Social Security Disability Insurance,SSDI)及び補足保障保険(Supplemental Security Insurance,SSI)が、我国の障害者に対する2大所得補償プログラムである。両者とも社会福祉局が運営している。SSDIは社会保障の保険料で賄われるのに対し、SSIは一般税収入で支払われる。

 SSDIでは、身体的もしくは精神的機能障害のために実質的な収入の得られる仕事ができない場合を障害者とみなす。機能障害は最低12か月以上継続する見込みまたは死に至ることが見込まれることが必要である。SSDIの給付を受けるためには一般に障害が生じた時点で、期間10年のうち5年の社会保障払込みが必要である。たとえ、本人の元の仕事が不可能となっても、他の実質的収入を得られる仕事ができる場合は、受給資格はないと見なされる。SSDIによる給付月額は、114.30ドルから632.90ドルの範囲である。給付額は社会保障適用中の一定期間の平均収入による。給付は障害発生後満6か月から開始される。

 SSIは、SSDIと異り、受給までの待機期間がない。場合によっては、SSDIの給付開始までの6か月間、SSIの支給を受けられる障害者もある。障害者の定義は、SSDIと同じである。社会保障加入雇用期間が短かくSSDI受給資格がない障害者、及びSSDI給付額が州のSSI支給水準よりも低い場合、SSIの受給資格がある。障害者の資産及び他の収入も、SSI支給決定に際し考慮される。SSIの金銭給付額は、各州毎に、また障害者の生活状態により異る。

 所得補償給付の受給資格がある場合、メディケア(Medicare)もしくはメディケイド(Medicaid)の受給権もある。メディケアは、SSDI受給者に対する医療扶助制度であり、メディケイドは、公的扶助(SSI)受給者に対する医療扶助制度である。メディケアを受けるためには、障害者の場合、障害を生じた時から約24か月の待機期間がある。

 メディケアの24か月の待機期間を全廃した場合、1974年の障害労働者調査を元に計算すると1980年の障害者に掛るメディケアの費用は約48%増加するであろうと予測されている。待機期間を12か月に短縮した場合は、メディケア費用の増加は12%と予測される。

 24か月の待機期間の全廃もしくは短縮する方法として、2通りの財政上の道がある。1つは社会保障税率のアップである。この方法の効果としては、実際障害者となる人はかなり少ないにもかかわらず、メディケア障害給付受給の可能性のあるすべての人に、さらにかかる経済的負担を分散することである。もう1つの方法は、メディケアにさらにかかる費用を一般税収入で賄う道である。この方法は経済的負担を受給資格にかかわりなく収入のレベルに応じて分担する点でより進歩的である

 待機期間の廃止または短縮の政策決定にあたって、現在メディケア非適用の影響を受ける障害者数がわかれば役立つはずである。問題はそのようなデータが入手できないことである。こうしたデータの欠陥は、受給障害者の医学リハビリテーション・ニード、早期介入により得られうる利益、及び障害者の早期治療・リハビリテーションにかかる正味の費用を割り出すことを困難にしている。

 これら給付は、すなわちメディケア、メディケイド、SSDI及びSSIを受給している障害者に直接付随する問題が労働意欲阻害である。問題を要約すれば、働く意志はあるが、給付を打ち切られるため経済的に働けないSSDIもしくはSSIを受給している障害者の問題である。重度障害者の受給者の場合、医療扶助の必要、補助機器の使用、移動手段の利用、住宅など、現行の給付規定に影響されている。多くの場合、受給障害者が仕事をして稼げるであろう額は、SSDIもしくはSSIの給付額と同額かそれ以下である。

 現行の社会保障運用法では、障害者が雇用について12か月たつとSSDIの支給が打ち切られる。12か月間とは9か月の試用期間とさらに3か月の給付期間である。障害を実質的な収入を得られる仕事ができない状態と定義しているため、仕事に戻った瞬間に、実質的収入を得られる仕事ができると立証したことになる。試用期間あるいは自立準備期間も、避けられない給付の停止を遅らせているにすぎない。

 この労働意欲阻害を防止または減少させる本質的な方法は2通りある。第1は障害の定義の変更または修正であり、第2は試用期間もしくは自立準備期間の延長である。

 障害者の労働意欲を阻害しているもう1つの要素は「払い過ぎ」である。「払い過ぎ」の理解のために次の例を考えていただきたい。

 「SSDI受給資格のある受傷者がいる。1回目の手術は成功しなかった。数か月後、第2回目の手術が行われた。第2回目の手術の結果、医師はこの患者は申し分のない状態であると宣し、患者の医療は打ち切られた。しかし、仕事に戻ってみると、医学的な支障が出てきたため患者は医療を求めた。一方、障害決定機関は、要求を受け、この人の検査の予定をきめた。しかし、数か月前(第2回手術後)にサインされた医療打ち切りの申請書が見つかり、その後も給付を受けていたことがわかった。この障害者は政府から打ち切り申請後に支払われた全額の払い戻しを要求された」

 こうした状況は、返すお金のない多くの重度障害者には大変厳しいものである。

 制度間の矛盾、たとえばSSDIとSSIの間の矛盾も、もう1つの労働意欲阻害の要因である。前述のように、SSDI受給者は、障害発生後24か月までメディケアの受給ができない。さらに必要な書類が整うまでに5か月かかり都合待機期間は2年半近くになる。リハビリテーション的ケアが必要な人にとって、このような長い待機期間は、経済的、身体的、精神的障害の原因となる。また障害発生後すぐの2、3週間のリハビリテーション的治療は、心理的にも身体的にも最大の効果が期待できる。さらに問題なのは、1度障害者が記録から消されると、もう1度給付を受けるにはまた2年待たねばならないことである。

 これに比して、SSI受給者の場合メディケイド受給までの待機期間はない。給付は障害の生じた時から開始され、障害に関連した医療の場合は2か月までさかのぼって給付を受けられる。

 18歳から21歳のSSI受給者の場合、若干の問題がある。通常、障害が無ければ、18歳になると家族の被扶養者とみなされない。したがってこの場合、受給資格がある。しかし18歳から21歳までの障害者が、職業訓練を受けるために学校に通いたいと望んでも、たとえこの訓練が経済的自立度を高めると予測されても給付を受けられない。

 SSIが労働意欲喪失につながるもう1点は、「勤労所得」と「非勤労所得」の違いである。この点については、次の例で説明される。

 ある人はSSIの給付を150.00ドル受けているが、これでは経済的自立に十分ではない。そこで制限があるにもかかわらず、この人は経済的自立度を高めるためパート・タイムの仕事で収入を得たいと考えた。しかし結局のところこれは全く利益をもたらさない。もしこの人が就労により月65.00ドルを越える収入を得た場合、2ドル稼ぐごとにSSIの給付額が1ドルずつ減額されるのである。

 SSIが実施される以前は、SSDIを受給している障害者は、保護雇用ならば働いて収入を得られることが認められ、そのような収入はその人の試験雇用期間とみなされなかった。しかし現行法では、このような所得も「勤労所得」とみなされ、その結果前述の例と同様になる。

 収入を得ることにより生じる意欲喪失は、所得審査を伴う金銭的医療及び福祉給付の場合の給付が打ち切られない所得の範囲を広くしない限り避けられない。狭い範囲の勤労所得に対し給付を段階的に減額させようと考えている医療及び福祉改革者を当惑させているのはこの問題である。しかもこの問題は障害を理由とするSSI受給者ばかりでなく、すべてのSSI受給者にもかかわる問題である。

参考文献 略

*日本障害者リハビリテーション協会


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1981年3月(第36号)9頁~14頁

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