特集/専門職 リハビリテーションセンターにおけるソーシャルワーカー;個人的所見

特集/専門職

リハビリテーションセンターにおけるソーシャルワーカー;個人的所見

A Social Worker in a Rehabilitation Center : Personal Observations

Alice Moore

新井由紀*

 リハビリテーションにおけるソーシャルワーカーの役割については、さまざまなグループや人々が検討を重ねてきた。ここでは興味のある方は書き留めておかれたいかと思うが、それらの中の2つだけを資料として参考にしている。1957年にNSAW医療ソーシャルワーク部の医療ソーシャルワーク実務審議会(The Commission on Medical Social Work Practice of the National Association of Social Workers, Medical Social Work Section)がリハビリテーションにおける医療ソーシャルワーカーに関する小委員会の報告(Report of Subcommittee on the Medical Social Worker in Rehabilitation)を発表した。この報告書はソーシャルワーカーにとって、すぐれた手引きを提供している。

 1960年にシカゴ大学で、リハビリテーションにおけるソーシャルワークの実践(The Practice of Social Work in Rehabilitation )についてのワークショップが行われた。そこでは、スタッフの中にソーシャルワーカーが唯ひとりしかいないような状況に多くの関心が向けられ、ここでもソーシャルワーカーに関する貴重な提案がなされている。

入院手続

 ハートフォード・リハビリテーションセンターでは、同センターへの入院の患者は全員ソーシャルサービス課が審査を行って決める。この施設が患者のニーズに合っているかどうか、患者自身とその家族と共に検討した上で決めること、そしてそうと決まった場合には、その患者がここでのサービスを利用出来るよう準備することを欠かしてはならない。この施設が適当でない場合にはすぐに適切な施設へ紹介する。

 患者は身体的機能の回復、可能な作業能力を見つけ出すこと、作業のための耐久力をつけること、或いは保護雇用といった特定のサービスを求めてセンターを訪れる。正式には患者は全て担当医か関係機関の紹介によることとされているが、しばしば患者自身又は、家族の意志でやってくる。そのような場合、患者は自分の目標を達成するために必要なステップ、施設でのいろいろなサービスとその目的、そして彼のために働く多くの専門家が揃ってはいるけれども、目標を達成するのは患者自身の努力によるのであることをあまりよく理解していない。

 患者とその家族は、多くはそれまで苦労の時期を過してきて、不安になっている。彼らは今、試練の未知の局面に踏み入ろうとしているのである。非常事態、或いは一般的な教育の課程を終えて“今度は何が起きるのだろう?”という疑問に直面している。

 ここでまず患者達の問題の解決のために彼ら自身にはどのような資源があるか、この機関、この地域にはどのような資源が用意されているかを吟味する。診断のための慎重な調査、目標の明確化、施設で行われている種々なサービスの説明、そして大事小事を含めた数々の細い事柄の処理は、この時点では時間のかかることのようであるが、患者、その家族、そしてスタッフにとっても、後に時間の節約、フラストレーションの回避につながる。リハビリテーション施設においては、ソーシャルワーカーはこの仕事をチームの一員として行う。いろいろな分野の専門家がおり、患者の現状をあるがままにとらえて判定し、センターではこの患者のためにどのようなプログラムを提供出来るか評価する上で協力してくれる。

 ハートフォード・リハビリテーションセンターでは、いろいろな課のスーパーバイザーが毎週会合を開き、新しいケースについて検討する。この会合で各ケースについて担当となったケースワーカーがあらかじめ準備した概要をソーシャルサービス課のスーパーバイザーである私が紹介する。この概要には、患者の身分証明事項の他に、次のことがらが含まれている。患者の障害、その起きた時期、これまでに受けた治療、患者の機能にどのような影響を与えているか、簡単な生い立ち、障害が起きる以前と現在における患者の家族の中での役割、患者や家族がこの入院申込みをどのように理解しているか、この申込みは誰がどのような理由で行ったか、さらに調査が必要と思われることやプログラムについての提案。これを聞いている他の課のスーパーバイザーらは、患者の状態、目標、入院の要請が妥当であるかどうかについて質問をしたり、意見を述べたりする。

 チームはすでにケースについての概観を得ているので、患者の入院前に開かれる治療計画をたてるための会合(判定会議 Preadmission Clinic)ではメンバー全員がケースの事実事項を承知しており、その患者の総合的な回復のために自分の課が役に立つと考えられる計画を出せるよう準備が出来ている。

 現在我々のセンターでは、選別されたケースのみ家庭訪問を行っている。主に時間と距離の都合でケースを選ぶ。将来、スタッフの人数がそろった時には、家庭訪問はこの調査には欠かせない部分となろう。患者は自分の家での方が、より気楽に自分の目標や期待を述べることが出来るし、彼をとりまく雰囲気もその場でいち早く察することが出来る。

 判定会議ではソーシャルワーカーは他のチームメンバーと同様に、自分のたてた仮の治療計画を発表する用意をしておく。物理療法や言語療法と同じく、全ての患者がケースワークのサービスが必要というわけではない。

 センターには幅広い治療の設備が整えられている。それぞれの患者にとって最良の治療方法、或いは患者のニードに応えられる方法が決まるまで、いろいろな治療の技術が加えられたり、切り捨てられていく。昔からの患者とワーカーの1対1の関係は、現在でも最優先されて行われている。定期的に集中してケースワークを行う場合もあり、又プログラムの変更や予期しなかった事態が起きて必要な時にだけ行うケースもある。ソーシャルワーカーが直接患者と会って仕事をするのではなく、その患者を扱っている他のスタッフのコンサルタントとしての役目をすることもある。

チームワーク

 治療計画とその進行を検討する会合(Planning Session)をたびたび開いて、患者の治療プログラムが、その個人に合ったものであるか、そして相互につながりのあるサービスの間のバランスが保たれているかを確認することが必要である。チームの各メンバーはプログラム全体の中で起きていることと平行して進みよりよい効果をあげるために必要ならば、柔軟にこれに自分の計画を適応させていくようにしなければならない。

 ソーシャルワーカーにはチームのメンバーとして二重の役割がある。ソーシャルワーカーとしての役割をもつ一方、患者のプログラム全体の調整役でもある。訓練と経験により、患者のニードと目標について総体的な見方をとる。計画されたプログラムが、患者にとってよりよい社会的機能をもたらすものか否かについて気をつけて見なくてはいけない。

 多くの場合、患者はこのプランニングセッションには出席しない。ソーシャルワーカーが患者の代弁者であり、そして後には、患者に対してチームの通訳でもある。何故チームの一番重要なメンバーが、このプランニングセッションに出席していないのか? これにはいろいろな説明がある。このような話し合いでは必ず専門用語が使われる。とりあげる内容によっては患者にとってグループの中で議論するには耐え難くつらいことがある。最も可能性のある計画についても、もしチームの中に反対する人がいて、患者がこれを聞けば確信をゆるがすことになる。

 患者がこの会合に出席する場合には、よいタイミングを選ぶこと、適当な会合の場所を設定すること、十分に時間のある落ち着いた雰囲気(患者が十分かつ公正な発言の機会を与えられていると感じられるように)、議論の材料を気をつけて選び、計画準備すること。この計画は時間のかかることであるが、実行された場合には、患者の参加が効果的な役割を果たしてきた。

 ソーシャルワーカーは患者の人間としての尊厳、自己決定の権利、そして向上の能力を信じていることから、当然患者の参加を擁護する立場をとる一方、現実には用心深く注意してそのための計画をたてなくてはならないことを認識している。

コミュニケーション

 チームの有能なメンバーであるためには、ソーシャルワーカーはコミュニケーションとグループ力学(Group Dynamics)について理解しておく必要がある。最近ではソーシャルワーカーの専門教育の中で、この2つの技術により深い関心が向けられている。我々の多くは断片的に、そして試行錯誤で学んでこなければならなかった。イリノイ大学でのグループ力学のワークショップに参加したスタッフメンバーのひとりは、そこで得てきた知識や経験を皆に伝えてくれた。

 ソーシャルワーカーは言葉でも文章でも人と意志の交流をはかる時に、冗長で仮説的になる傾向がある。最近センターでは、2つの理由から書く技術をのばすことに力を入れている。各ケースについて紹介してきた医師や機関に毎月報告書を送る。長々しい報告を書いていると貴重な時間が費やされてしまう上に、忙しい人々にそれを読むことを期待するのは、負担を強いることになる。ソーシャルワーカーは報告書の口述の書き取りを怠ることでは有名である。その遅れのためにチーム全員の報告書の出来上りを滞らせて、それを送ること、つまり患者に対して責任ある医師や機関にその患者の治療の経過を知らせる目的を果たさないことになる。入院経過、そして退院時の記録のためのアウトラインを作成した。これを一年間試してみたところ、記録はもっと書き易くなり、あまり遅れることも少なくなった。進歩である。

 我々のスタッフは皆寛大なので言葉の交流ではそのような重圧は感じたことはない。緊密な仕事上のつながりのおかげで、言葉の上で生じた誤解は簡単に訂正出来る。私は文章を使ってのコミュニケーションを向上させたら仕事の分野も必然的にもっと進歩するであろうと強く確信している。

実験室の設定

 患者の治療計画をたてていく上で、いろいろな分野のチームメンバーがいてソーシャルワーカーを手伝う他に、センターにはケースワークインタビューで話し合われたことを実地に試してみる実験室がととのえられている。人にとって人生の経験が最良の師となる。この実験室を使ったプログラムで、いろいろな経験を複製したり、真似てみることが出来る。特に柔軟性のあるスタッフである場合に、人間の行動には必ず動機があると真に確信しているソーシャルワーカーにとっては、実験室は実際に行動している患者を観察出来る稀な機会である。

 結果としては、他の設定におけるよりも、ケースワークインタビューにおけるテンポの方がしばしば速く、精神科のコンサルタントの指導や忠告のもとに行うテクニックはより直接的である。ソーシャルワーカーとコンサルタントが患者についての知識をふまえて観察した行動を検討する時に、ソーシャルワーカーは患者の精神的な立場を理解し、患者の話した言葉よりも感情の波をとらえるようにすれば間違いはない。

 ケースによってはこの実験室の経験が患者にとって必要な、或いは患者が反応を示す重要な治療法となる場合がある。ソーシャルワーカーはこのことを敏感に見きわめなくてはならない。患者のニードに従って気軽にしかも敏感に注意をはらってその状況に入ったり出たりすること。

セミナー

 従来の患者とワーカーの1対1の関係以外のものが必要になる場合がある。精神薄弱の患者と仕事をしていた初めの頃、患者個人との面接は患者の防御の姿勢や不機嫌をつのらせたり、傷つけたり、当惑させる結果になるように思われた。この患者のグループの多くは仕事の世界で要求されることを知らないか、理解していないことは明らかであった。そこで講義の時間(Seminar Session―意図してこのように名づけた)をプログラムに加えた。

 このセミナーセッションでは人が働く理由、仕事の社会について実際的、具体的情報、作業中の行動、仕事に応募する方法などがとり上げられた。

 この時間は主に教育的なものであるが、いかに多くの精神薄弱者達が以前の個人的な応接の時間では否定していたような問題を仲間同志で解決していったかを知り、喜び、感嘆したものである。

 プログラムにこのようなセミナーセッションを加え、さらにこの時間に参加するグループの枠を広げて、働いたことのない、或いは短期間の否定的な雇用の経験しかない若い患者達全員を含めることにした。

社会的経験

 セミナーセッションを通して、若い患者の多くが身体障害、精神障害、又はその両方をもつ人とともに彼らの発達や成長を促す社会的経験に乏しいことが明らかになった。このグループの目標が雇用であることから、いろいろな職場への訪問見学を企画した。地域の社交グループやクラブに積極的に参加することを勧めた。しかし彼らは社会的に遅れており、多くの場合、同じ年頃の健常者との交流で困難な、困惑した経験をしているので、再び人前に出ることを好まない。

 The Greater Hartford Association for Retarded Children Inc.(グレーター・ハートフォード精神薄弱児協会)と、その時 The Conneticut Society for Crippled Children and Adults Inc.(コネチカット肢体不自由児・者協会)のレクリエーションコンサルタントのテッドファビアンがスポンサーとなり、私が監督指導にあたった精神薄弱の青少年に社会的技能の基本を教育することが必要であるか否かを決定する公開実験的な企画があった。

 そのプログラムの成果に最も関心をもっている保護者団体が Hartford Jewish Community Center(ハートフォード・ユダヤ地域センター)に働きかけて、継続されることになった。

 精神薄弱の青少年達は常に隔離されているべきでないが、彼らは自分が何をするべきかわかって安心している時にのみ、人と交流をもつことが出来る。我々は身体障害をもつ青少年や成人にも同様のことが必要であると感じ、このプログラムを延長する計画を検討している。現在のところは場所、スタッフ、センターの方針、財政の都合で公開実験の企画以上のことは出来ない。我々がこのニードに応える効果的な方法を実験証明したら、地域の機関がプログラムのこの部分を肩代りしてくれるよう願っている。大抵の人が仕事と私生活をかなり切り離しているが、そうすることは患者のためにも有益であると思われる。センターでレクリエーションプログラムが行われた時、その翌日精神薄弱の青年にとって遊びと仕事の行動を分けることが困難であった。彼にとってはプログラムが今度は他の施設に移った方が容易なのである。

ファミリーカウンセリング

 ファミリーカウンセリングも患者とその家族の問題解決のための効果的な方法とされてきた。我々の患者は多くの場合必然的に、身体的、精神的、そして社会的に家族に依存している。この依存が最近始まったような場合、家族は患者のために必要な計画について話し合うことを嫌ったり、ためらったりする。患者が理解しなかったり、拒絶されたと感じることをおそれるからである。家族の全員が問題を現実的に話し合うようにしなければ、事態は行詰まり、どのような計画も実行不可能になる。それを行うには多くの場合関心をもち、しかも客観的な見方の出来る第三者の存在が必要である。

グループカウンセリング

 グループカウンセリングは精神薄弱の青年の親達や最近では病気や事故の結果復職出来ない男子の患者のグループに対して行われてきた。同じような問題をもつ人達から支持され、力づけられることにより、現実の事態と将来の計画をより速やかに受け容れることが出来るのである。我々は将来このサービスをもっと拡げていきたいと思っている。

 グループの形で行うことには多くの利点があるが、完全に1対1の患者とワーカーの関係にとってかわるものではない。もちろん、患者のニーズによって治療の方法が決定されるのであるが、ケースワークに適さない患者のために、このグループカウンセリングの方法が手がかりにならないか、もっと厳密に検討してみるべきである。

社会―心理的要素を強調

 我々のソーシャル・サービス課の影響であろうと思うが、センターでは社会―心理的要素により強い関心が向けられてきている。このために我々も貢献してきたが、センターに職業適応プログラムのためにやってきた精神障害から回復したばかりの数人の患者を含め、重症の精神的、社会的問題をもった患者が入院してきたためである。

 最近まで心理療法は必要の都度、外部に委託してきたが、パートタイムの心理学士が我々のスタッフに加わった。月に2、3回の精神科のコンサルテーションがもたれている。これらのことは患者へのサービスを向上させ、患者のプログラム全体に対する我々の仕事の貢献度をより高いものにしている。

ケースの終了と地域の参加

 患者の治療の目標が達成された時、プログラムの終了は極めてスムーズに運ぶ。目標を果たすことが不可能な場合は、スタッフにとっても、患者や家族にとっても退院は難しい問題になる。これはよく患者のニーズに応える資源が地域にととのえられていないためにおこり、又時には患者やその家族が現実の事態に直面する力がないためということもある。資源が不足している場合、ソーシャルワーカーはそのことについて機関の管理者に知らせるべきである。現存のニーズに応えるために、このことを地域に通告したり、既存のプログラムを拡充することが出来るのは、役員会であり、管理者なのである。ソーシャルワーカーの地域活動も役員会や管理者の支持が必要である。

役に立つ要素

 ソーシャルサービス課の役割はその機関の運営管理、役員、そして課の人材によって決まる。仕事はし易くなる。ここでは管理者も役員会もリハビリテーションの目標に対して真に責任をもって対している。そのため、方針や手順の改善のための忠告も心を開いて聞いてくれるし、プログラムの変更についての提案も考慮してくれる。地域における未解決のニーズに対してよく気をつけていて、それらの解決の計画のために機関として役に立てる方法を勧告するのである。

 このタイプの管理者や役員会の下には、関心の深い、柔軟性のあるスタッフが集まる。リハビリテーションの分野への関心、彼らの目標を達成するための方法や手段を追求していく熱意、そして実際には同じものであるが、ソーシャルワークの方法や手段の追求への熱意を築き上げる。連鎖反応が起きて、熱心な柔軟性のあるスタッフは、一般の人々の興味と理解、そしてソーシャルワークへの関心を促すことになる。そしてソーシャルワーカーの仕事はやり易く、より楽しいものになるのである。

 どのようなプログラムを提供出来るかは住んでいる地域によって大きく影響される。専門家と一般の人々が十分な情報をもち、関心をもっていることが、サービスを設け、維持し、拡充していくためには必要である。

困難な要素

 先に述べた数々のことがらを気をつけて処理しなくてはならない。ソーシャルワーカーは訓練により、計画を履行することを学んでいる。注意深く計画の履行が達成出来るような手順をたて、その中でいずれの役割を自分が受け持ち、そして何を他のスタッフのメンバーや訓練を受けたボランティアに委託するべきか見きわめる。

 ソーシャルサービスの仕事の性格上、又このセンターではソーシャルサービス課が患者の最初の受け付けを行うので、ソーシャルワーカーは他の課に比べて担当のケースの数を調整することが難しい。新しいケースはすぐに入院が必要であるか、或いは補欠人名簿にのせるかを決める前にひとつひとつ評価を受けた上で適正な優先順位がつけられる。さらにソーシャルワークのスタッフは他のサービスが終了した後でも、患者が地域にもどって安定するまで、サービスを継続する場合が多いことも、困難の原因のひとつとなっている。ケースが紹介されてきた段階では、多くの場合そのケースに必要な活動や時間を決めることは不可能である。

 ソーシャルワーカーにとって一番困難なことは、チームの人間関係、コミュニケーション、そして患者のために設定された特定の、具体的な目標のために共に仕事をしていくことである。

 リハビリテーションチームの専門家の数は多く、さらに増えている。これらの専門家の多くは、障害の心理学、社会的な面について、そしてそれらがプログラムにどのような影響を与えるかについての知識の程度がまちまちである。ソーシャルワーカーは自分の専門家としての知識や能力に確信をもち、且つそれぞれの専門家の患者に対する役割を尊重し、理解しなくてはならない。ケースワークの概念に徹底していれば、いろいろな提案や意見への妥協を認めるか、拒否するか速やかにすることが出来る。ソーシャルワーカーは自己を脅やかされたり、防御的になることなく、チームのスタッフと共に患者を共有しなくてはならない。

 患者中心の形をとることにより、チームワークはソーシャルワーカーにとって容易な気楽なものになる。チーム全体の目標を患者のための効果的なプログラムの計画とする。自己を意識したり、地位を求めようとすると我々自身の目標をくじくことになってしまう。

 ソーシャルワーカーに要求される人間関係を築く能力と感情の調子を感じとる能力はチームのメンバーとして仕事をする上でも、チーム仲間として交流する上でも、非常に貴重な助けとなる。しかし鋭敏で、有能なワーカーが自分の仕事のあらゆる面を調整しておかなかったためにプランニングセッションでひとつ計画をすっかりこわしてしまうこともある。

 リハビリテーション施設において、患者の最終的目標を達成するためのプログラムの概要を記す時に、多くの場合一連の方法や目標を設定する。これらの方法が実際的且つ具体的な性質をもつこと―これが究極の目標を決めるのである―が、ソーシャルワーカーにとって応々にして扱いにくい。多くのソーシャルワーカーはもっと全般的な目標に調子を合わせてしまう。ソーシャルワーカーが計画の背後の論理を理解し、その計画が現実に根ざしたものであることを確信し、そして患者の感情の動きに敏感に仕事をすれば、その計画は意味をもち、実行可能なものとなる。ソーシャルワーカーは特に目標達成のための要素が明確でない時、患者自身の力が及ばない時に、自分自身の感情にとらわれたり、患者との一体感が過度になることがある。そのような時、建設的に患者やその家族と共に協力して、患者のニーズや治療計画を現実的に評価する代わりに、自分があたかも世界を敵にしての患者の擁護者であるかのように行動するワーカーがある。このような事態はちょうどその時に患者のニーズに応える資源が不十分か全くない場合によく起きる。ワーカーは目前のニーズだけを見つめ、それを将来実現の方向へ持っていける人にどのような形で知らせるかについての配慮をしていない。彼女は自分がさらに大きな地域の治療的共同体の一部であるということを忘れてしまっているのである。

 ここに述べた種々の困難な問題はソーシャルワーカーにのみかかわるものではないことを取り急ぎ指摘しておく。チームの各メンバーは各自の分野の専門家としての、そしてチームの一員として、それぞれ異なる知識と能力を備えている。このような設定の中で仕事をするためには、各自がある程度自分の自治権を譲歩し、しかもどのような信念と考え方は守らなくてはならないかを確信をもって認識していなくてはならない。各自が明確にそして簡潔に意志を通じあう方法を学ばなくてはならない。患者の治療プログラムの計画をすすめていく上で、安定した、有能な、そして聡明なチームと共に仕事をすることは価値ある経験であり、働きがいのあることである。

(Rehabilitation Literature,1962,23,330-337)

参考文献 略

*身体障害者雇用促進協会嘱託


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1981年11月(第38号)11頁~17頁

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