特集/重度障害者の介護 成人障害者介護人の職業満足度に影響を与えている要因

特集/重度障害者の介護

成人障害者介護人の職業満足度に影響を与えている要因

Selected Factors Influencing Job Satisfaction of Attendants of Physically Disabled Adults

Madelyn Stelmach*

Jan Postma**

Steven Goldstein***

Katherine F. Shepard Ph. D.****

小野 有紀子 訳*****

 施設ケアに対応してもう一つの選択として自立生活の形態をとる身体障害者が増えてきている。過去10年の間に、様々な団体が、自立生活を可能にする住居や交通手段、そして自宅での援助サービスにおいて必要とされる変革を擁護してきている。身体障害者が自立して生活する機会を与える最も決定的なサービスの一つは、身のまわりの世話や家事を援助する介護人の存在である。介護サービスは、しばしば自立生活の成功のための要件と見られている。しかしながら介護人として働く人々や、彼らの仕事に対する満足度についての研究は、あまりなされていない。

 今日文献にみられる障害者のニーズについての様々な記述的調査は、自立生活のための介護サービスの根本的重要性を認めている。しかしサービスは、保健専門家のかかわりの様々なレベルの違いにより、州ごとに異なっている。だがその種類にかかわりなく、介護サービスに関する報告は、障害者又は保健ケアの専門家の見地からのものである。

 介護従事者は高校・大学生、精神薄弱者、他の身体障害者、労働力へと戻った年輩の婦人、家族、友人などを含む様々な人たちによって構成されている。障害者や保健専門家たちからあげられた“良い介護人”の特徴は、進んで学ぼうという意欲のあること、指示に従う能力のあること、信頼できること、柔軟性、気さくな人柄、そして最少の報酬のために一生懸命喜んで働くことを含む。Hutchinsらは、介護人との面接から集められたデータを用いたはじめての研究の中で、成人身体障害者のために働く介護人の態度について述べた。

 介護人を維持することは困難であるという、多くの障害者によって語られた経験からこの研究が必要となった。職業に対する満足度についてのこの文献の包括的調査は、職業に対する不満足度と職業変更の間に、矛盾のない、ポジティブな関係を見い出している。しかしながら、職業に対する満足度の研究は、1人1人の個人的な違いによって特徴づけられる仕事の状態に焦点をあてているのではない。この研究の目的は介護人の職業に対する満足度に影響を与えるかもしれない成人身体障害者に対する介護職に独特の要因を見きわめることである。これにより、介護職の必要性への理解を深め、その結果として、職業に対する満足度を増加させ、転職者を減少する効果的な調停役となるかもしれない。

調査の方法

サンプル集団

 調査者は、サンフランシスコ湾地域の介護職を希望する人の為に職の照会を行っている9つの公立、そして私立の機関とコンタクトをとった。これらの機関は介護人として働く人々の名前を調査者に提供してくれた。156人と電話でコンタクトをとり、そしてその結果として32の面接を行った。それに加えて、8つの面接が、調査者の個人的なつきあいを通じて知った者との間で行われた。面接をするにあたって、各介護人は、いくつかの条件を満たしていなくてはならない。つまり、少なくとも2週間以上、障害者に雇われており、現在、身辺介護(入浴・トイレ介助・着脱・食事・移動)を少なくとも週5時間行っていなくてはならない。仕事の調整は障害者自身によってなされていなくてはならず、介護人は、その仕事によって賃金を受けとっており、かつその障害者の家族であってはならない。

方法と手順

 3種類のデータ収集法が使われた。第一に、デモグラフィックデータが介護人によって報告され面接調査者によって記録された。それには、介護人の年齢、性別、扶養者の数、以前の介護の仕事の回数、現在の職の長さ、週につき働いている時間、仕事の契約の種類、学生の身分か、その他の職業をもっているかが含まれた。介護人から得られた、障害者に関するデータには年齢、性別、学生か職業人か、障害の状態、一週につき必要な介護時間数、そして並行して使っている介護人の数が含まれた。

 第2に、8つの自由解答式の質問からなる標準面接表が、介護人から、仕事に関連するすべてのデータを引き出すために使われた(表1)。

表1 職業満足度に関係する要因を確かめるため面接で、調査者によって使われた質問
1.どこで、又は誰から、あなたが介護している障害者の障害についての知識を得ましたか?
2.どこで、又は誰から、あなたが現在行っている特殊な仕事や技術について、訓練を受けましたか?
3.あなたの賃金や諸手当は、保健関係の組織でこの種の仕事をしている人と比べた時、どの程度平等ですか?
4.あなたは、自分の仕事に関しての情緒的な支えのために何かの団体、又は特別な個人にたよっていますか。
5.あなたは、どのようにして、自分のしている仕事が、その障害者にとって価値のあるものだと知りましたか?
6.この仕事をしていて、どんな事で自分は価値のある仕事をしていると感じますか?
7.あなたの仕事に関して、最も好きな点3つをあげるとしたら何ですか?
8.あなたの仕事に関してあまり好きでない点を3つあげるとしたら何ですか?
自由解答式の調査質問が、解答者によって与えられた情報をよりはっきりさせるために使われた。典型的な調査質問は、「もっとそれについて私に教えて下さい」「もっとくわしくそれを説明して下さい」「何かとくに、あなたがのべたいことがありますか?」などを含む。

 第3に、介護人によって、職業満足度が、2つの評価スケールに記録され、ロックの“職業満足度行動傾向面接表(ATIS)”の修正されたものが、全体的な職業に対する態度を見きわめるために用いられた(表2)。二つ目のスケールは、調査者により作成された5項目の自己評価スケール(SRS)である。介護人はたとえば“あなたの仕事について考えた時、あなたは”と聞かれた時、5:とても満足している、4:いくらか満足している、3:中間、2:少し不満足、1:とても不満足の中から一つを選び出すように指示される。

表2
非常にしばしば しばしば ときどき まれに 決まってない
1.朝起きた時、あなたは、仕事に行きたいと感じますか?
2.仕事を探すことになった時、同じ種の仕事を選ぶと思いますか?
3.今までに、もう永久にこの仕事をやめようと感じたことはありますか?
4.仕事をしている時、どこか他の所にいってしまいたいと感じたことがありますか?
5.あなたは、たとえ超過の賃金なしでも、超過勤務をしたいと感じたことがありますか?
6.あなたは、あなたと同じような興味をもち、同じような教育レベルの友人に、自分の現在の仕事をすすめたいですか?
7.仕事に向かう途中、仕事に行くかわりにどこか別の所へ行ってしまいたいと感じたことがありますか?
8.あなたは仕事が楽しくて、家に帰りたくないと感じることがありますか?
9.あなたは休暇をとるために仕事を休むのに気がすすまないことがありますか?
10.あなたは今までに、違う仕事を探したいと思ったことがありますか?

 3人の調査者が、基本的な面接技術の訓練を受けた。パイロット・スタディ(N=3)が、用語を定め、面接技術を練習し、コード略をはっきりさせるために行われた。調査者は各々同じ事項について面接を行い、82%の評価信頼度を確保し、それからデータの結果を比較した。この手順は、80%の評価信頼度が保たれるのを確実にするため、データ収集の半ばまで、くり返された(N=2)。

データのコード化と記録

 面接の間に出てきた、各話題に対する特殊な解答は、面接官によって手書きで記録された。それから、各話題ごとに解答の分類がなされた。2人の研究助手が、分類により生のデータを処理する訓練を調査者より受けた。

 ATISの10項目は、1から5の段階上に得点が記録された。質問は肯定的に又は否定的に書かれているので、否定的質問の得点は、逆に置きかえられた。得点は次の3つのカテゴリー、つまり1.0-2.5=不満足、2.6-3.4=中間、3.5-5.0=満足、の内の1つに類別された。同様に、SRSに対する答えも、1又は2=不満足、3=中間、4又は5=満足の3つの得点カテゴリーに分けられた。

結果

 サンフランシスコ湾周辺地域に住む40人の介護人が、面接を受けた。彼らの73%は女性、27%は男性で年齢層は18歳から65歳、その内53%が年齢30歳以下で、27%が学生であった。62%が他の仕事をもっており、その内の67%は、他にも介護の仕事をしていた。全体の20%が扶養者をかかえており、それは全員女性であった。現在の職における雇用期間の長さは、2週間から3年で、52%が20週以上働いており、その半数が、1年かそれ以上働いていた。介護人として初めて仕事をした人は、少なくとも以前に5回の介護職の経験のある人の45%に比べて、32%であった(表3)。

表3 サンプル介護人のデモグラフィックデータ(N=40)
年齢 介護人の数 性別 扶養者の数(人) 介護者の経験数(回) 介護人としての経験時間(時間)
1~2 3~4 1~2 3~4 5以上 1~19 20~100 100以上
20歳以下          
20~24歳        
25~29歳 10 10        
30~34歳      
35~39歳              
40歳以上      
40 11 29 32 13 18 13   25 25
(%) (100) (27) (73) (80) (15) (5) (32) (15) (8) (45) (32)   (5) (63)
年齢 現在の職をどれ位の期間やっているか(週) 週あたりの時間数(時間) 学生? 他に職業があるか?
2~4 5~12 13~20 21~51 52以上 5~9 10~14 15以上 はい いいえ はい いいえ
20歳以下      
20~24歳  
25~29歳  
30~34歳    
35~39歳          
40歳以上  
10 11 25 11 29 25 15
(%) (15) (18) (15) (25) (27) (20) (18) (65) (27) (73) (62) (38)

障害者のプロフィール

 これらの介護人に介護されている障害者は、55%が男性で、45%が女性、年齢層は18歳から82歳で、70%が30歳かそれ以上であった。32%が学生、30%はパートタイムか、フルタイムかで雇用されている。各障害者が必要とする介護時間数の幅は最低の週10時間から1日24時間までで、大多数が、週25時間かそれ以上を必要としている。68%の障害者が複数の介護人を必要としており、その内52%が2人、33%が3人から4人、15%が5人かそれ以上の介護人を必要としている(表4)。

表4 サンプル介護人から介護を受けている障害者のデモグラフィックデータ(N=40)
介護人からの報告によるもの

障  害

障害者の数

性別

年  齢(歳)

学 生?

18~20 21~24 25~29 30~34 35~39 40以上 はい いいえ
脊椎損傷 22 16 14
脳性マヒ    
ポリオ            
関節炎        
その他        
40 22 18 10 13 13 27
(%) (100) (55) (45) (2) (15) (13) (25) (13) (32) (32) (68)

障  害

職をもっているか? 介護の必要な時間(週あたり) 介護人の数(時間)
はい いいえ 10~14 15~19 20~24 25~ 3~4 5~
脊椎損傷 14   14 10
脳性マヒ          
ポリオ    
関節炎    
その他  
12 18 10 23 13 14
(%) (30) (70) (7) (10) (25) (58) (32) (35) (23) (10)

面接の結果

 これら介護人を雇っている障害者自身が、彼らのもつ障害についての情報の出所として最も多く挙げられている(77%)。と同時に、この職業に必要とされる特殊な仕事や技術についての情報の出所となっている(85%)。表5と6が、介護人の解答の概要である。保健の専門家は、特殊技術訓練の拠り所として30%の介護人に挙げられたが、障害についての知識の出所としては、わずか8%の人が挙げただけだった。文献や資料を読むこともまた、27%の介護人にとって障害というものについての知識を得る手段となっている。コースや授業などをとることも、障害について学ぶ手段の1つとして挙げられ(30%)同時に特殊な技術について訓練する場となっている(22%)。仕事に関しての情緒面での援助を必要とする時、45%が自分の友人に援助を求めると述べている(表7)。ほとんどの介護人(80%)は、自分の仕事が価値のあるものだと言うことを障害者の言葉による表現で知り、又、42%がお金、贈り物又は好意的な態度により、彼らの仕事が価値のあるものということを知った(表8)。面接を受けた65%の介護人が、介護の仕事は社会的に有益であると考えていた。他人を助けるというニー ドを果たすことと自分の仕事への誇りも又、それぞれ、47%と42%に挙げられていた(表9)。

表5 “どこで、あるいは誰からあなたが介護している障害者の障害についての知識を得ましたか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ(N=40)
返答
その障害者自身 77
クラスや講演 30
文献、資料をよむこと  27
以前の職場で 17
他の障害者 17
保健関係の専門家 8
その障害者の家族 5
以前の介護人 5

 

表6 “どこで、又は誰から、あなたが現在行っている、特殊な仕事や技術について訓練を受けましたか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ(N=40)
返答
その障害者自身 85
以前の職の経験 42
保険関係の専門家  30
クラスや講演 22
その障害者の家族 12
以前の介護人 5

 

表7 “あなたは、自分の仕事に関しての情緒的な支えのために、何かの団体、又は特別な個人に頼っていますか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ
返答
友人 45
誰でもない 22
その障害者自身 22
他の介護人 17
自分の家族 17
保健関係の専門家  15
機関の職員 12
他の障害者 7

 

表8 “あなたは、どのようにして、自分のしている仕事が、その障害者にとって価値のあるものだと知りましたか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ
返答
その障害者の口頭での表現 80
障害者からの特別の礼金、贈り物や好意 42
仕事に関する決断における介護人のかかわり  37
障害者との友情 30
この仕事の困難さに対する障害者の気持ち 27
障害者の介護人への信頼 12

 

表9 “この仕事をしていて、どんな事で、自分は価値のある仕事をしていると感じますか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ
返答
この仕事は社会的に有益である 65
この仕事は、他の人を助けるという自分のニードをみたす  47
自分の仕事への誇り 42
この仕事は自分の個人としての価値をはっきりさせる 35
この仕事は、障害者との友情を生みだす 25
この仕事は、介護人の障害者に対する態度をかえた 15

 調査者は、賃金報酬についての特別な情報は、いくつかの理由により収集しなかった。第1に、これらの介護人の大多数が、健康ケア組織で、同じような仕事をしている人々に支払われている賃金報酬を知らなかった。第2に、介護人のほとんどが、時間給払いであったが、何人かは、月給払いであった。第3に、何人かの介護人は自分の賃金報酬を面接官に打ちあけないことを望んだ。第4に、何人かの介護人は、労災補償などのような受ける権利のあったかもしれない給付について知らなかった。

 面接の中で、介護人は、自分の仕事に関して最も好きな3つの要因(ポジティブ)を述べるようにいわれ、又同じく、もっとも好きでない要因(ネガティブ)を述べるように言われた(表10、11)。もっとも多く挙げられたポジティブな要因は、“価値のある仕事をしている、満足のいく時間的スケジュールをもてる、そして障害者との友情”である。介護人の38%が、自分の仕事のポジティブな面として仕事の時間的スケジュールを挙げており、同数の人が又、それをネガティブな面として挙げている。賃金報酬は、30%の人に、ネガティブな要因として挙げられているが、12%は、それをポジティブな要因として挙げている。

表10 “あなたの仕事に関して、最も好きな点3つをあげるとしたら何ですか”という質間に対する介護人の返答のパーセンテージ
返答
この仕事は有益で、他者と社会を援助する  50
仕事の時間的スケジュールの面 38
障害者との友情 35
1対1という仕事の状態 23
介護人の職業的目的に貢献する 15
賃金と手当 12
介護人自身の幸運に感謝している 8

 

表11 “あなたの仕事に関してあまり好きでない点を3つあげるとしたら何ですか”という質問に対する介護人の返答のパーセンテージ
返答
仕事の時間的スケジュールの面 38
賃金と手当 30
介護人に対する障害者の態度 17
排便、排尿の世話 13
第三者からの給料の支払いの遅れ  10
不十分な訓練/又は指導 10
障害者のふるまい 6

職業満足度スケール

 満足度スケールに対する答えで、ほとんどの介護人が自分の仕事に満足しているということがわかった。ATIS職業満足度スケールからの結果は、満足している(55%)、中立(35%)、不満足(10%)である。SRSから出た結果は、満足している(87%)、中立(8%)、不満足(5%)であった。これら2つのスケールの間にある、ピアソンの積率相関係数は有意であった(r=80、p≦0.1)。相関関係が高い故に、ATISスケール、それはより広い分布を示していたのだが、尚その後の分析に使われた。カイ二乗分析が、増加した職業満足度に関係する要因を見つけるためになされた。さして重要でないとされた要因は、“介護人が現在の職を続けている期間の長さ”、“障害者と介護人との友情”、“お金を受けとること”そして“障害者からの好意や贈り物”であった。又、満足度の高い介護人と、彼らの以前にやった介護職の数の間に大きな関係があった。5回か、それ以上の経験をもつ人は、以前にまったく経験のなかった人に比べるとより満足していた(x=5.1、p≦0.5)。一週に、総計25時間以下の介護を必要とする障害者と働く介護人は、週に25時間あるいはそれ以上の介護を 必要とする障害者と働く介護人よりもより満足していた(x=3.86、p≦0.5)。

討議

職業満足度

 介護人の仕事に対する満足度に影響しうる介護職に独特の要因を見きわめることが、この研究の目的であった。この2つの満足度スケールを使うと、介護人のわずか8~10%が、不満足を表わしているにすぎない。面接を受けた介護人のサンプルは、満足しているか中立かの傾向にあったので職業不満度に関係する要因を見きわめるのは不可能だった。何故、この様に多くの人が満足をしているのかというのにはいろいろの理由が挙げられるであろう。第1に、面接のために介護人のリストを使った機関の職員は、かたよった母集団を選んだかもしれないということ。第2に、現在雇用されている介護人だけが面接を受けた、つまりこれは、仕事に不満足でやめたかもしれない人を明らかに除外していたと言える。第3に、進んで面接を受けた介護人は、自身の仕事により大きな興味をもつ傾向にあったかもしれないし、それ故、より満足していたのかもしれない。

デモグラフィック・データ

 “典型的”な介護人ついて語るのは可能ではない。介護職は、あらゆる年齢層によって、そして女性が大多数をしめてはいるが男女両方によってなされている。学生も、学生でない人もが介護人として雇われている。何人かの介護人は、分割時間交代制をしており、その他の介護人は、雇い主の所に住みこんでいる。これらの発見は、Mc-GwinnとHutchinsの両者によって示されたいろいろな種類の人が介護職を行っているという点を支持している。

 介護人のたった5%が以前に5回かそれ以上の介護職経験をしているのがわかったHutchinsの研究に比べて、この現在の研究では、45%の人が、以前にその量の介護職経験をしている。この違いの理由と言えるかもしれないものが述べられている。第1に面接を受けた介護人の55%が、機関の照会を通じて職を見つけており、より仕事を得るチャンスがあるということ。第2に、サンフランシスコ湾周辺地域は、障害者人口が多く、それ故に、多くの介護職の機会があるということ。5回かそれ以上、過去に介護職の経験のある介護人は、以前に経験のない人に比べて、確かにより満足している(p≦0.5)。この研究から、経験が増加すると、仕事に対する満足度が増加する結果となるとか、満足している人が、同じ種類の仕事を続けるかどうかを決定することはできない。

 調査者たちは又、一週につき、計25時間以下の介護を必要とする障害者と働いている介護人は、明らかに、一週につき25時間又はそれ以上の介護を必要とする障害者と働く介護人よりも、より満足していることを発見した(p≦0.5)。3つの理由が、この違いを説明できるであろう。第1により多い介護の時間を必要とする障害者は、しばしば、より複雑な肉体的、精神的ニーズを持っている。第2に、これらの人々の為に働いている介護人は、自分の希望するよりより長く働くことを要求されるかもしれない。第3に、これらの障害者は複数の介護人を使っているかもしれず、従って、個々の介護人に彼らの仕事が価値のあるものであると表わすことが少ないかもしれない(表8)。

面接

 障害者たち自身が、障害についての、又職業的訓練についての情報の出所である。保健専門家はこの2つの分野の双方において低い所に位置している。これらの発見は、保健専門家でなく障害者に彼ら自身の医療的、個人的ニードに対する管理責任をもつようにさせるという自立生活運動の原理を反映している。保健専門家は、介護サービスに対する様々な見通しと、これらのサービスを提供するための公的な責任を持っている。今回の調査者は、保健専門家のもっとも重要な役目は、障害者を自分の介護人の指導、教育そして訓練のために準備させることであると示唆している。

 もっとも多く挙げられた介護人のポジティブな構成要因は、社会的に有益で自分自身報いられる仕事をする機会であるということである。この高い水準での介護人の中の、社会的・個人的利他主義は確かにそれ自体重要である。何故他の要因(たとえば低いレベルの賃金、雇用保障の不足や低い職業身分など)が、多くの介護人によって第1に重要なものと見なされていないのかもまた、指摘される点であろう。

 障害者との友情は、価値ある仕事をしているしるしとして、そしてこの職業の主要なポジティブな構成要因の1つとして特に挙げられている。これらの調査結果は、Hutchinsの研究のものと同様のものである。友情は、身体障害者のために介護人によってなされる身のまわりの世話などの、独特の1対1の関係の結果かもしれない。

 時間的スケジュールは、非常に種々様々な構成分子の1つである。面接を受けた介護人によって述べられたスケジュールの重要な点は、時間の融通性、分割時間交代制の仕事スケジュール、パートタイムの仕事、そして休日や緊急時、休暇のための交代者のいることであった。これらスケジュールの面の重要な点は、各介護者により様々である。それぞれ個人の状態は各人違うので、介護人と障害者双方が、はじめにお互いのスケジュールのニードを理解し合うことが大切である。

結論

 質の高い介護サービスは、もし自立生活が身体障害成人にとっての現実的選択であるなら必要である。この研究は、介護の仕事をしている種々多様の人々についてを明示している。面接を受けた介護人の多くが満足をしていたが、サンプルの片よりがあり得るこの調査結果から、一般論を述べるべきではないだろう。調査者は、介護人の増大する仕事への満足度に相互関係をもつ2つの要因を発見した。つまり、自分の仕事により満足している介護人は以前に、5件かそれ以上の介護の仕事をしたことのある人であり、現在、必要とする総計の介護時間が、25時間以下の障害者に雇われている人である。面接のデータは、介護人の教育と訓練の源泉は障害者自身であることを映し出している。介護サービス、仕事に対する満足度、そして転職に影響をおよぼす他の要因を見きわめるために、さらに今後の研究が必要とされるであろう。

(Rehabilitation Litenature May-June, 1981, vol.42. No. 5-6)

参考文献 略

*Ralph K. Davies Medical Center 理学療法士
**Dav'd Karp Associates コンサルタント
***Fairmont Hospital 理学療法士
****Stanford University School of Medicine 助教授
*****日本障害者リハビリテーション協会


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1982年11月(第41号)45頁~52頁

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