特集/重度障害者の職業リハビリテーション 共同作業所の現状と将来

特集/重度障害者の職業リハビリテーション

共同作業所の現状と将来

鈴木清覚

 はじめに

 今日、障害者問題をめぐるもっとも大きな課題は、国際障害者年の“完全参加と平等”のテーマにも示されるように、障害者の1人ひとりが国民として、社会の一員として、社会の中で人間らしく働き生活していくための制度的保障を築きあげていくことである。

 しかし、今日、多くの障害者にあっては毎年労働省において発表される、雇用状況に示されるように一般就労が困難であることはもとより、障害の重いことや、成人施設の不足のなかで、施設入所さえもできない現状のもとにおかれている。

 重度障害者の多くは、家族をはじめかぎられた人間関係のもとで、さみしい在宅生活を余儀なくされている。こうした障害者、家族の切実なねがいは“友だちがほしい”“たとえ安い給料でも働き、社会とかかわり人間らしく生きたい”といった声が全国各地で叫ばれている。

 こうした障害者の要求、ねがいの中にはたいへん多面的な内容が含まれている。

○人間としての当然の成長や発達の保障

○生活を支える経済的な所得の保障

○住む場所である住宅の保障

○健康の増進、障害の軽減と克服

○スポーツや文化にかかわる要求

などである。

 このような要求の切実さは、3年前の「養護学校義務制実施」によっていよいよ切実なものとなってきている。なぜなら、これまで社会の片隅で家族の庇護のもとで細々と生きてきた、場合によっては短命で終わる一生を余儀なくされてきた重度障害者が公教育という陽の当たる場に導き出され、この人々の問題を社会問題へと大きく発展させることになったからである。

 そして、学校教育と連続する、卒業後の問題、成人障害者の労働と生活の保障をきわだった大きな問題とし、その解決策を私たちの前に強く求める動きとなってきている。しかも、これは全体からすればまだ始まったばかりだと考えられる。今後一層大きな問題となってくるのではなかろうかと予想される。

 私たちの共同作業所づくりの運動はこれらの施策の現状と障害者の置かれている現実をもとに、障害者、家族のねがいをもとに、こうしたねがいに一歩でも応えていこうという民間サイドから自主的なとりくみとして、発展させてきている。

(1)無認可小規模作業所の現状

 国の身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法による授産施設、福祉工場などの制度にのらない無認可作業所、小規模授産施設、共同作業所など様々な名称で存在するこれらの障害者の働く場、訓練の場は全国各地につくられてきている。

 昭和56年10月1日時点において、厚生省児童家庭局障害福祉課の調査によれば表1に示されるように、638か所となっている。しかし、この調査は厚生省が都道府県で掌握している数にもとづいての調査であり、都道府県に掌握されていないものも一定か所数あり、関係者の中ではその数は800か所前後はあるであろうと言われている。
 

表1 厚生省・児童家庭局の調査結果〈小規模通所施設の調査結果について〉
(昭和56年10月1日現在) 厚生省・児童家庭局障害福祉課調べ
   か所数 対象者別か所数 定員規模別 建物の状況 助成の形態
精薄関係 身障関係 その他 1人~10人 11人~19人 20人以上 定員の定めなし 専用 一部専用 併用 都道府県単独 市町村単独 都道府県・市町村両者 地方自治体の助成なし
北海道 19 7 6 6 2 3 3 11 8 7 4   5 10 4
青森 2 1   1   2     1   1       2
岩手 2 2         2   1   1     2  
宮城 6 5 1    

4

  2 4 2     3 2 1
秋田 2 2           2 2     1   1  
山形 7 4   3   3   4 4 1 2   1 6  
福島 7 5   2 2 4   1 4 3     1 6  
茨城 17 3 3 11     2 15 12 4 1   3 10 4
栃木 12 6 1 5 4 6 1 1 6 4 2     10 2
群馬 5 1   4 4 1     3 2       5  
埼玉 14 8 1 5   8 6   11 3   1   12 1
千葉 14 9   5   6 8   10 2 2 5 2 6 1
東京 132 75 21 36   16 25 91 53 52 27 63 7 62  
神奈川 41 8 8 25 25     16 23 17 1 10   31  
新潟 12 6 1 5 1 9 2  

11

  1     12  
富山 10 3   7 3 2 5   1 7 2   2 8  
石川 10 8   2 2 2 1 5 5 3 2 3   7  
福井 5     5 4 1     5       1 3 1
山梨                                
長野 5 2   3   4   1 4 1       5  
岐阜 16 5 3 8 2 4 5 5 9 3 4   1 15  
静岡 21 11 1 9 7 1 3 10 15 4 2     19 2
愛知 18      18 8 4 6   18         18  
三重 13 4 5 4   1   12 9 4       13  
滋賀 21 4 1 16 5 2   14 14 4 3 1   17 3
京都 15 2 1 12 3 3 9   14 1       15  
大阪 44 29 7 8 6 5 4 29 18 25 1   4 39 1
兵庫 27 16 6 5 6 2 4 15 14 13   1 7 12 7
奈良 4 4           4 4         4  
和歌山 7 1   6       7 6 1       7  
鳥取                              
島根 6 4   2     5 1 4 2       4 2
岡山 5 1 2 2     2 3 3   2 1 2 2  
広島 7 4 1 2 1   3 3 4 2 1   2 4 1
山口 13 4 2 7 11 2     6 5 2 1   12  
徳島                               
香川 3     3   1 1 1 3         2 1
愛媛 1     1     1     1       1
高知 1   1         1 1        

1

 
福岡 13 5 5 3 2 1 1 9 8 2 3 2 4 1 6
佐賀 1 1       1     1         1  
長崎 6 5   1   4 2   3 2 1   2 4  
熊本 3 3       1 2   2   1     2 1
大分 5 5       3 1 1 2 3     1 4  
宮崎 1     1     1   1         1
鹿児島 8 7 1 1 4   3 7 1     1 6 1
沖縄                               
おもな都市 札幌 5 3 1 1 1   2 2 1   4   4   1
横浜 12 6 6         12 5 7       12  
川崎 4 2 2         4 1 3       4  
名古屋 5     5 5       5         5  
京都 5 4 1     3 1 1 4 1   4   1
大阪 15 7 8 15 8 7 15
神戸 4 1 3     1 3   2   2   2   2
広島 3       3     3   2 1       3  
北九州 3 1 2     1 1 1 2   1   2   1
福岡 1   1         1 1         1
合計 638 294 102 242 105 115 114 304 365 192 81 89 76 424 49

 ここに示された無認可の障害者の働く施設の数はそれ自身、大変大きな重みをもって日本の障害者問題に迫っている。

 例えば、身体障害者福祉法にもとづく、身体障害者授産施設、重度身体障害者授産施設、福社工場、あるいは、精神薄弱者福祉法にもとづく、精神薄弱者授産施設は同じ昭和56年度でみると表2に示すとおり447か所であり、制度にもとづく施設数よりも、無認可の障害者の働く施設がその数を上まわっている現実が存在している。

 

表2
施設の種類 施設数
(ヶ所)
定員
(名)
現員
(名)
身体障害者授産施設 81 4,327 3,735
身体障害者通所授産施設 16 385 273
重度身体障害者授産施設 87 5,322 4,950
身体障害者福祉工場 19 1,055 970
小  計 203 11,089 9,928
精神薄弱者授産施設(収容) 113 7,697 7,371
精神薄弱者授産施設(通所) 131 4,589 4,158
小  計 244 12,286 11,529
合  計 447 23,375 21,457

(昭和56年10月1日現在)

 利用者でいえばこうした、無認可障害者作業所の詳しい調査がされていないので確実な数ではないが、およそ1万名を越えているものと考えられる。つまり、制度にもとづく授産施設・福祉工場の利用者21,457名に比して、その半数にも当たる人々が現実に無認可施設を利用していることになる。

 この800か所前後におよぶ無認可小規模作業所の内容について少し分析をしてみる。

 まず、これらの作業所の設立および運営主体をみると、およそ、都道府県、市町村の設立および運営によるものがこのうち4分の1近く存在している。次に多いものに、障害者の親の団体、主に全日本育成会、手をつなぐ親の会によるものが約半数近く存在している。残りの4分の1が共同作業所を中心とする関係者(親、教師、職員市民の代表など……)の協力によって運営されているものと考えられる。

 次に、これらの作業所の障害者の利用人員の規模でいえば、平均的には10人前後であるといわれているが、小さなものでは、アパートの一室を借りて、とりあえず「一人ぼっちではなく、友だちと交流し、社会に役だつ仕事を」と2人3人の規模のところから、大きなところでは、30名を越えるという、通所の認可施設の規模より大きなものがある。

 それでは、なぜ、このような多くの無認可小規模作業所が存在してきているのかという問題である。これは、おそらく、日本における、障害者問題史とその施設づくりの歴史上かつてなかったほどの大きなうねりとなって発展しつつある。しかもその多くは、公的(国・地方自治体)なものよりもはるかに多く障害者、家族、関係者による民間の自主的な努力によって生みだされ、運営されている。それは公的なものにあっても、背景には障害者、家族、関係者の切実なねがいが行政を突き動かして、これらの作業所を設立させてきているものと考えられる。

 この無認可作業所の動きをつくり出している原因として、一般的に指摘されるように、今日障害者、家族、関係者のおかれている現状、そのもとでのニードに行政施策の貧困と遅れがあるといわれている。それは、授産施設等の量・質両面における貧困とたち遅れである。この指摘自身は事実であり、今年からはじまる国際障害者年10年の行動計画の中でも緊急の整備、拡充が切実に求められており、重点課題となってきている。

 しかし、この行政施策の貧困と遅れという問題は長く存在しつづけてきていることであり、今日はじまった問題ではない。無認可小規模作業所の設立の時期をみると、1970年代の前半からはじまり、今日まで発展しふえつづけてきていることが特徴的であり、この10年間余の間に活発に急速なとりくみが開始されたものである。

 つまり、この動きを支えている2点目の大きな要因として、障害者福祉をめぐる根本のところで障害者のニードの変化とその考え方(思想)の変化があり、その主体者ともいうべき障害者家族と関係者の自主的で集団的な問題解決への力量の育ちが指摘できよう。これらの変化を生みだす大きな契機となったのは、1960年代後半から関係者によって活発にとりくまれてきた障害児の教育権保障をめざす運動であり、1979年「養護学校義務制実施」である。

 日本における障害者、家族の多くはこれまで日本のなかで支配的であった、慈善的恩恵的な受身の福祉に決別し、権利の主体者として、問題の自主的で能動的な福祉のあり方を追求しつつある。

 それは、狭い家庭の中でじっと堪え忍ぶ生活のあり方から、困難を共有する人々と手をたずさえ新たな道を切り拓くために多くの人々に自らのねがいを主張し、社会的、公的な責任を追求する運動に立ち上りつつある。

 これらの動向は国際障害者年の一連の国連における決議に示される問題の考え方とそのよびかけによって一層勇気づけられるものとなった。

 3点目に指摘したいことは、増大する無認可小規模作業所の運営を通して、既存の障害者施設への根強い批判が含まれていることである。とりわけ、障害者の施設での生活とその処偶のあり方をめぐってである。

 無認可小規模作業所の今後の方向性、発展をどう考えるのかとの議論を通して、必ず出てくる議論の特徴の1つとして、“困難ではあるがこのまま無認可で運営をつづけていきたい”との声である。

 この主張には、多様な内容が含まれている。そのいくつかの特徴ある主張をとりあげてみると次のようなものがある。

 制度にのった施設においては「障害者に対して形式的で冷たく、人間的な心のかよった処偶がなされていない」。無認可の施設では「親や家族、職員も一生懸命になってみんなで努力し合うが認可施設となると、これらの関係者があなたまかせになり、協力が弱くなってしまう」。無認可施設においては「制度や規則に縛られることなく、伸び伸びと、いろいろな障害者がその種別を越えて地域にねざしたことができる」といった制度面への批判などである。

 これらの主張は現状の施設のあり方に対する見方が一方的であったり、部分的であったりはするが、しかし、現実の施設のあり方のある側面を反映したものであり、無認可小規模作業所の関係者が、現状の施設のあり方への批判とともに、新しい創造をしようと決意を込めてとりくんでいることは明らかである。

(2)共同作業所とはなにか

 これまで、無認可小規模作業一般について述べてきたが、次に共同作業所とはなにかについて述べたい。

 共同作業所についてはいろいろな理解がなされている。例えば「制度にのらない障害者の働く小規模授産施設である」「障害者の施設づくりの運動用語である」などである。これらは私たち関係者からすればいずれも正しくない。この問いに答える前に少し共同作業所の歴史的な発展について述べる。

 共同作業所の出発は1969年の名古屋の“ゆたか共同作業所”にはじまっている。当時、名古屋市においては全国的にそうであったように、順次、知恵おくれの人々の「特殊学級」の設置がすすめられ、比較的障害の軽い人びとの教育がとりくみはじめられた。しかし、卒業期を迎え、高度経済成長期でもあり比較的就労の機会にめぐまれていたにもかかわらず、障害の軽い人びとは別として、中・重度といわれる知恵おくれの人びとにとっては一般企業への就労は困難であり、入所すべき施設も少なく、多くのこれらの人びとは在宅生活を余儀なくされていた。このような状況のもとにあっても“給料は安くともなんとか他の人と同じように働く場を”との障害者、家族のねがいをもとに、親と学校の教師が中心となり、とりくみがはじめられ、1968年3月に企業の一角にジャズドラムの組立作業を中心に知恵おくれの人びとの働く名古屋グッドウィル工場が誕生した。

 当時の関係者の中においては「この子らが仕事をすることは困難であるのではないか」「この子らを働かせるのは無理ではないか」など中・重度の知恵おくれの人びとへの労働保障についていえば不安や否定する声が強い影響をもっていた状況にあった。しかし、この事業に参加した大学の研究者や若い指導員は“成人期の障害者にあって働くことを通してこそ人間的なゆたかな成長や発達が実現できる”“働くなかで社会人として成長できるのではないか”との主張にもとづき、知恵おくれの人々の集団的な労働と生活へのとりくみをすすめ、若い指導員集団はなんらの公的な援助のない中で、仕事を通して工賃を得ることのみが工場を守り、自らの生活を支える糧という状況のもとで安い給料と長時間労働にもかかわらず、エネルギッシュに献身的な実践を展開した。

 1年後、親会社の倒産という事態に遭遇するがこの1年間のとりくみは“この子らの働く場をなんとしてもつぶさないで”“柱1本持ちよってこの子らの働く工場を建てよう”との親の確信を生みだし、ひろく地域住民、市民に訴え協力の輪がひろがる中で“ゆたか共同作業所”が誕生したのである。

 こうして多くの人々の協力をもとに誕生した“ゆたか共同作業所”は関係者の自主的な努力によって名実ともに“障害者を主人公”にした実践と運営を展開する。しかし、公的な援助のない中で、日本経済が高度成長の活況から低成長へと翳りを示し、1971年に押しよせたドルショックなどの不況を受け、下請作業の工賃収入を主な運営財源としていた私たちの作業所にあって、その存続さえも危ぶまれる状況となった。多くの障害者団体の協力のもとに、愛知県名古屋市への陳情をくり返し、1972年2月に行政の理解を得、その指導のもとに社会福祉法人ゆたか福祉会を設立し、精神薄弱者通所施設「ゆたか作業所」として、新たな出発をする。

 しかし、“ゆたか”のようなところで働きたいとの障害者、家族の声は一層大きなものとなり、また、制度に適合することによって、対象が精神薄弱者のみに限定された状況のもとで、当初から追求されてきた“地域のなかですべての障害者が力を合わせて働く場を”新しい段階で追求する場として、2番目の作業所として“みのり共同作業所”がその年の4月に出発している。この“ゆたか、みのり”のとりくみはその後全国的な研究会などで交流され、普及されるなかで、重度障害者の学校卒業後の進路、成人期の対策において、ぬけ道のない暗い状況にあって、関係者の自主的な努力と運動によって問題を解決できるというひと筋の光明を示すものとなり、全国各地で共同作業所づくりがはじめられる。

 全国的な運動の高まるなかで、各地から「経験交流をしたい」「全国で共通した課題での統一した運動をすすめたい」との声が強まり、1977年8月名古屋において、16か所(6都府県)の共同作業所の関係者約90名が参加して「共同作業所全国連絡会」(共作連)が結成された。

 共作連結成後のこの数年間に全国各地においてつぎつぎに共同作業所は設立され、全国的に大きなうねりとなってこの運動は発展し、発足当初の19か所の作業所は今日140か所(28都道府県)を越える作業所施設が参加する連絡会へと飛躍的な発展をとげてきている。これらの作業所、施設に働き生活する障害者は2,100名を超え、援助する職員は540名にも及んでいる(1982年10月)。

 共同作業所の特徴である“共同”の意味について私たちは今日全国的なとりくみと本流を通して次のような理念をこめて使っている。

 ①共同募金運動の精神に示されるように、障害者を主人公とし、関係者みんなの力を合わせて作業所を守り育てていこうとのことであり、各地の作業所運営の中で関係者の“共同財産”“共同責任”がくりかえし強調されてきたのはこの精神を貫き民主主義的な運営を実現するためである。さらには、作業所を通して、障害者問題について地域住民をはじめ多くの人々の理解の協力の輪をひろげ、そこに支えられたものとして発展させていこうとする決意である。

 ②障害のあれこれの種別(身体障害者、精神薄弱者、精神障害者など)にこだわるのでなくこれらの人々が地域の中で共に助け合い力を合わせて、働き育ち合っていこうとの決意である。ここには今日実践をくぐることで詳細に検討しなければならないいくつかの課題はあるものの、障害者のおかれている実態からしても、国連における国際障害者年の決議の理念からしてもこの主張の正しさは明らかである。

共作連加盟作業所は表3に示されるように、障害の種別を超えた実践を勢力的にすすめつつある。

表3 共作連加盟作業所における入所者実態

表3 共作連加盟作業所における入所者実態

 ③作業所に働く障害者と職員の関係において、“仲間”という呼称によく表現されているように、単なる施設の“利用者”であったり、福祉サービスの“対象者”としてではなく、障害者と職員が対等な人格を有し、作業所を共に築きあげていく同志として協力し合う仲間として位置づけてとりくみをすすめていこうとの決意である。

 以上のような共同の意味をもとに、共作連においては1981年9月におこなわれた第4回の総会において下記のような綱領的な文章“わたしたちのめざすもの”を決議している。

わたしたちのめざすもの

 共同作業所全国連絡会は、障害者の「働きたい」というねがいを実現するため、全国各地で自主的にくり広げられてきた作業所づくり運動関係者の熱意と、全国的な交流をもとめる声の高まりの中で、1977年8月に結成された連絡会です。

 共同作業所全国連絡会は、障害者の「働く権利」を軸として諸権利の保障をねがう、多くの良識ある人々と手をたずさえ、作業所づくり運動をすすめてきました。

 共同作業所全国連絡会に参加するそれぞれの作業所では、労働を軸に成人障害者のゆたかな生活と発達の実現をめざした実践を積み重ね、そのとりくみをいっそう前進させるために、障害者、関係者の要求および創意を大切にした運営に努力してきました。

 1.わたしたちは、すべての障害者1人ひとりが、主人公として精一杯働き、人間としてたくましくゆたかな人生を築くことをめざし実践をすすめます。

 2.わたしたちは、障害者関係者の1人ひとりが大切にされる討論をもとに、共同の事業として民主的運営をすすめます。

 3.わたしたちは、地域のすべての人々の理解と協力をもとに、障害者の権利保障運動の一翼を担って、これを発展させつつ、作業所づくり運動をすすめます。

 4.わたしたちは、実践・事業・運動の未来を切り拓くため、全国の教訓から学ぶとともに、さまざまな科学や技術の成果から学び、創造的に作業所づくり運動をすすめます。

 5.こうしたとりくみを発展させるために、わたしたちは共同作業所全国連絡会に結集し、団結を強め前進します。

(3) 共同作業所の今後の課題

 共同作業所をはじめ、無認可小規模授産施設はこの10年間にも満たない短期間に、その数と内容において、急速な拡大と発展をとげつつある。それは、日本における障害者および関係者のおかれている実情を顕著に示すものであり、同時に、日本における自主的な民間サイドでのとりくみとして、障害者施設づくりの歴史においてかつてなかったことであり、大きな歴史の峰を築きつつあるといえる。

 しかし、これらの共同作業所などの今後と発展と前途を考える時、そこには多くの困難が横たわっている。

 それは日本と世界の経済の停滞と強く結びつき、国、地方自治体の財政危機と行政改革の中での“福祉の見直し”“福祉切り捨て”の施策の動向である。

 さらに内部にあっては、作業所の運営と維持にとって常に高い困難となっている財政問題である。

 ここへの援助については現在国(厚生省)のレベルにあっては「精神薄弱者通所援護事業」によって全日本精神薄弱者育成会を通して1か所70万円で104か所に援助がなされてはいるが、これは先に述べた実情からすれば、その額と件数においてきわめて不十分なものである。

 地方自治体においては共同作業所などの活発な運動の成果を反映して着実な前進がある。1981年6月に日本福祉大学秦研究室の調査によれば、表4にみられるように、全国57の都道府県、特別指定都市において48自治体(84%)で補助金制度が確立されている。

 共同作業所における、もっとも緊急で切実な問題は国をはじめとした公的な承認をめざす補助金制度の確定である。

表4 無認可小規模授産施設等に関する補助金制度についてのアンケート調査結果
日本福祉大学 秦安雄研究室(昭和56年6月30日実施)

〈政令指定都市〉
 項目

都市名
〈問1〉
補助金制度が
ある○
ない×
〈問2〉
検討中○
予定無×
〈問3〉
対象障害種別
〈問4〉
交付先対象
〈問5〉
補助金額と算定方法
〈問6〉
昭和55年度
補助件数合計
補助金額総額
〈問7〉
実施開始年度
備 考
札幌   心身障害者 運営団体 ①身体障害者1か所
・5~10名未満(100万を限度額)
・10名以上20名未満(140万を限度額)
②精神薄弱者
・5~20名以下(140万を限度額)
①2か所 200万円
②1ヶ所 140万円
56年4月 ・札幌市心身障害者小規模授産事業補助要綱
横浜 心身障害者 (財団法人)横浜市住宅障害児援護協会が実施する運営費助成事業に対し本市が補助を行っている。 無記入 10件 3,208万円 52年10月 ・財団法人横浜市在宅障害児援護協会障害者地域作業所運営費等補助事業要綱
川崎 心身障害者 運営団体 1作業所当たり運営費として月額80,000円
人件費として指導員1人当たり10~15万円
5件 4,800万円 53年4月 ・心身障害者小規模作業訓練会事業補助要綱
名古屋 心身障害者 運営団体 年額1か所
 3,038,400円
3件 9,115,200円 53年4月   
京都 心身障害者 運営団体 月額1人 32,000円
重度加算 8,000円
5件 1,777万円 53年4月 ・京都市心身障害者通所援護事業補助要綱
大阪 心身障害者 育成会府肢体不自由児協会 備品費 84,000~200,000円
運営費 763,000~1,250,000円(年額1か所)
14件 1,702万円 52年10月 ・障害者福祉作業センター運営費補助要綱
神戸 心身障害者 運営団体 検討中    56年4月   
広島 心身障害者 運営団体 ・月額1人15,000円(利用人員3人以上20人未満)2か所1,515,000円
・利用人員が原則として20人の場合 *14
なし 56年4月 ・広島市心身障害者通所事業費補助金交付要綱
・広島市心身障害者就労促進事業費補助金交付要綱
北九州 身体障害者のみ 運営団体 年額1か所 277万円 1件 2,561,000円 50年12月   
福岡 × 無記入               

 * ◎今回調査で、新しく制度が確立したところ

    項目

都道府県別
〈問1〉
補助金制度が
ある○
ない×
〈問2〉
検討中○
予定無×
〈問3〉
対象障害種別
〈問4〉
交付先対象
〈問5〉
補助金額と算定方法
〈問6〉
昭和55年度
補助件数合計
補助金額総額
〈問7〉
実施開始年度
備 考
北海道 × 心身障害者 市町村 年額1か所 100万円
100万円のうち(道は2分の1を市町村に補助)
8件 400万円 55年4月 *1 ・心身障害者福祉対策振興事業補助要綱
青森 × ×
岩手 心身障害者 手をつなぐ親の会 年額1か所 70万円 2件 140万円 54年4月 ・昭和56年度精神薄弱者通所援護事業費補助事業実施要領
宮城 原則として18歳以上の精神薄弱者 市町村 年額1か所 30万円 2件 60万円 51年11月 ・心身障害者通所援護事業実施要綱
・心身障害者通所援護事業費補助金交付要綱
秋田 精神薄弱者のみ 運営団体 燃料費1か所 18万円
職員研修費 1人年5,000円
38万円
1件 17万円 55年4月   
山形 心身障害者 市町村 *2 3件 199.8万円 55年4月 ・心身障害者通所小規模作業所助成事業補助金交付要綱
福島 精神薄弱者のみ 市町村 (月額10万円×年間設置延月数×2分の1) 6件 300万円 54年4月 ・福島県精神薄弱者小規模通所授産事業費補助金交付要綱
茨城 心身障害者 市町村 年額1か所 623.1万円 9件 5,445万円 53年10月 ・在宅心身障害者社会適応訓練事業費補助金交付要綱
栃木 心身障害者 市町村 *3 6件 1,277万円 52年1月 ・心身障害者小規模通所療育授産事業実施要綱
・心身障害者小規模通所療育授産事業費補助金要綱
埼玉 心身障害者 市町村 年額1か所 276万円
基準額(1施設当り)
運営費 534万円
初年度設備費 50万円(補助率2分の1)
14件 3,244万円 53年4月 ・心身障害者小規模通所授産事業費補助金交付要綱
千葉 精神薄弱者のみ 市町村 年額基準額 655万円
補助率2分の1
事務費 505万円
事業費 150万円
11件 53年4月 ・在宅精神薄弱者福祉作業所運営費
・補助金交付要綱
東京 ①精薄弱者
②心身障害者
①手をつなぐ親の会
②市町村
*4 *4 ①41年12月
②45年4月
*5
①精神薄弱者授産指導事業
②心身障害児者通所訓練事業
神奈川 心身障害者
内部障害者
市町村 補助基本額(限度額500万円)×2分の1
市町村支出額×2分の1
最高限度額250万円
34件 5,642万円 52年4月 ・障害者地域作業指導事業実施要領
・在宅障害者福祉対策推進事業補助金交付要綱
群馬 心身障害者 市町村 *6 6件 951万円 48年4月
*7
・障害者福祉作業所運営費補助金交付要綱
新潟 心身障害者 市町村 市町村補助額×2分の1
補助限度額 100万円
11件 2,893.7万円
(県1,065万円)
(市町村1,828.7万円)
52年4月 ・心身障害者通所援護事業県費補助金交付要綱
富山     心身障害者 市町村
手をつなぐ親の会
年額1か所 1,290万円(県 2分の1補助) 8件 5,160万円 54年4月   
石川 心身障害者 ①手をつなぐ親の会
②設置主体である市町村
①年額1か所 35万円
②事業費×2分の1 1,918千円
①9件180万円 他に現物給付
②9件 270万円
53年4月   
福井 心身障害者 市町村 年額1か所 246万円 5件 985万円
ただし1件は55年度中2か月実施
53年4月 ・心身障害児(者)小規模通所訓練事業実施要綱
山梨 × ×
長野 心身障害者 市町村
手をつなぐ親の会
月額
2万円×利用定員(15人限度)×運営月数×2分の1
3件 230万円 53年4月   
岐阜 心身障害者 市町村に補助
 実施主体は市町村に限る。ただし運営を民間団体に委託できる。
年額1か所 180万円(うち県2分の1補助) 11件 1,680万円 53年10月 ・岐阜県地域福祉活動促進事業補助金交付規則実施細則
静岡 心身障害者 市町村 A型(10人未満)
 年額1か所   1,295万円
B型(10人以上)
 年額1か所
  1,942万円
15件 816万円 52年4月
愛知 心身障害者 市町村 1人目
 1か所年額
  1,728千円
2人目
 1か所年額   1,128千円 
 県3分の1補助
20件 1,020万円 50年4月 ・心身障害者地域療育事業費補助金交付要綱
三重 心身障害者 市町村 月額1人 8,000円 延882件 3,087万円 53年4月 *9
滋賀 心身障害者 市町村 年額1か所 75万円
月額1人 3万円
17件 1,653万円 53年4月 ・滋賀県障害者共同作業所入所事業費補助金交付要綱
京都 心身障害者 市町村 基本分月額1人 31,000円
重度加算1人 7,500円
56年度より職能技術者導入
1人日額 4,000円 100日を限度
15か所の作業所
23市町村に対し3,166万円
51年4月 ・京都府心身障害者共同作業所入所訓練事業費補助金交付要綱
大阪 心身障害者 市町村 年額1か所 200万円 29件(22市町村)2,776万円 53年4月 ・大阪府簡易心身障害者通所授産事業運営補助金交付要綱
兵庫 ①精神薄弱者のみ②在宅心身障害者(児) ①運営団体
②市町村
①{(初日在籍延人員×5,000円)十20,000円×12か月}×2分の1
②施設整備費・施設改造費について基準額の3分の2
①12件 526万円
②2件 570万円
①55年4月
②52年4月
*10
奈良 精神薄弱者 市町村社会福祉協議会 年額1か所 
県300万円+市50~130万円
3件 390万円(県合計)+110万円(市合計) 54年4月 ・奈良県精神薄弱者通所援護事業補助金交付要綱
和歌山 心身障害者 市町村 年額1か所 100万円 7件 280万円 54年4月   
鳥取 × ×                   
島根 精神薄弱者のみ 市町村 年額1か所 80万円 4件 320万円 53年 ・精神薄弱者小規模授産事業費補助金交付要綱
岡山 心身障害者 市町村 ①年額1か所 25万円
②年額1か所 288.3万円
1件 12.5万円 ①52年4月
②56年4月
①地域共同作業所(団体)地域福祉対策事業費補助金交付要綱
②精神薄弱者通所作業訓練事業
広島 心身障害者 市町村
福祉事務所
就労促進事業月額1人 15,000円
通所事業 *11
2件 751万円
促進事業延 476人
 2,380千円  単価1人月
 5,000円
53年4月 ・心身障害者就労促進事業費補助交付要綱54年4月より
・心身障害児(者)通園(所)事業費補助交付要綱
山口 心身障害者 市町村 年額1か所 3,363千円(県2分の1)
開設初年度のみ
 初度調弁 150千円
11件 13,243千円 50年4月 ・心身障害者福祉作業所設置運営事業補助金交付要綱
徳島 × ×                  
香川 心身障害者 市町 市町の行う授産事業(市町が団体に委託可)×2分の1に要する経費 限度額 70万円 2件 120万円(1件あたり限度額60万円) 55年4月 ・心身障害者小規模通所授産事業補助金交付要綱
愛媛 × ×                  
高知 × × 身体障害者のみ 高知県身体障害者連合会を通して補助    2件 119万円 54年4月 ・55年度心身障害者福祉作業所設備整備事業費補助金交付要綱
福岡 精神薄弱者のみ 福岡県精神薄弱者育成会 年額1か所 30万円 5件 150万円 54年4月 ・福岡県精神薄弱者小規模通所援護事業県費補助金交付要綱
佐賀 × ×                    
長崎 心身障害者 運営団体 年額1か所 70万円 2件 140万円 55年4月 ・長崎県心身障害者通所援護事業実施要綱
熊本 精神薄弱者のみ 手をつなぐ親の会 年額1か所 70万円 2件 140万円 52年4月 ・精神薄弱者通所援護事業助成補助金交付要綱
大分 精神薄弱者のみ 手をつなぐ親の会 年額1か所 210万円 2件 280万円 53年3月   
宮崎 精神薄弱者のみ 手をつなぐ親の会 年額1か所 70万円 0件 *12 56年6月 ・精神薄弱者通所援護事業補助金交付要綱
鹿児島 精神薄弱者のみ 手をつなぐ親の会 年額1か所 72.5万円 4件 290万円補助金先
 県精神薄弱者育成会
53年4月    
沖縄 ×
*13
                    

 * ◎今回調査で新しく制度が確立したところ

 次にもう少し長期の国際障害者年10年の展望に立ってこの分野の今後の課題を整理すれば次の4点に大きく要約できる。

 第1には現行の身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法のように障害種別ごとにおこなわれているタテ割りの行政施策のあり方を改善し、精神障害者を含む、総合的で整合性のある障害者福祉法を確立することである。

 第2には重度障害者の労働を権利として保障していくために不可欠となる保護雇用制度を確立していくことである。

 第3には重度重複の障害者が地域のなかで働き生活していくための手厚いケアを保障するシステムと施設をつくり、関連する諸制度を新たな立法化も含め前進させることである。

 第4には以上の内容を構築する実践と運動を強め発展させていくことが私たち関係者に求められている。

共同作業所全国連絡会委員長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1983年3月(第42号)2頁~13頁

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