特集/重度障害者の職業リハビリテーション 移行プロジェクト―重度精神薄弱者のための一般雇用サービス

特集/重度障害者の職業リハビリテーション

移行プロジェクト―重度精神薄弱者のための一般雇用サービス

Project Transition: Competitive Employment Service for the Severely Handicapped Mentally Retarded.

W. Grant Revell, Jr. *

Sue Arnold **

Brenda Taylor ***

Sheri Zaity-Blotuer ****

斉藤 加余子*****

 移行プロジェクトとは重度精神薄弱者と雇用者の双方にサービスを提供することを目的とした一般雇用プログラムである。生産的・一般的雇用を遂行できる精神薄弱者が活動センターや保護ワークショップなどの保護訓練・助成金付雇用プログラムから脱け出して、一般雇用に移行するための手段を提供する。さらには、雇用者にも実質的サービスを提供する。この種のサービスとしては具体的に、信頼できる労働者の雇用現場での確認と訓練、有資格の将来性ある被雇用者の新規採用率の高い職場への配置、障害労働者を雇用するための連邦政府特定職種税金貸付(The Federal Targeted Job Tax Credit)などがある。

 移行プロジェクトはバージニア州リハビリテーション局とFairfax-Falls教会地域社会精神衛生・精神薄弱サービス委員会が協同で行っている。資金は地方CETA助成金から供給を受けている。初年度当初は16名の重度精神薄弱者を助成金なしの一般雇用内に就職させ、継続させることを目標とした。しかし、同じ年度内に、この目標を拡大し、20名を就職させることになった。この拡大目標は完全に達成され、20名が初年度に移行プロジェクトを通じて地域社会を基盤とする一般雇用に就職し、その後も継続して働いている。さらには別の6名のプロジェクト訓練受講者が年度末に、プロジェクトスタッフの監督の下に地域社会内で働くようになった。

 移行プロジェクトは当初、精神薄弱者を対象とした地域社会を基盤とする社会適応訓練サービスを強化する目的で州政府機関と地方機関が行った協同作業の一環として始まった。プロジェクトの恩恵を受ける利用者の大半は、かつて保護工場や活動センターの利用者であったり、その利用資格を持つ者達である。初年度に就職に成功した20名の年齢は18歳から37歳までである。全員、第一の障害として精神薄弱をもつ。中にはかなりの身体障害をもつ者もいる。また、精神薄弱者を対象とする州立訓練センターから地域社会に復帰したばかりの者もいた。

 保護雇用と作業活動センターは大部分の重度精神薄弱者にとって必要であり、重要な就業の場である。しかしかつての施設入居者が数多く地域社会に復帰し、精神薄弱者の特殊教育プログラム内に職業教育を含めることが強調されるにつれ、ワークショップ訓練の場と雇用の場を求める声が高まり、今現在与えられている機会では不足するようになってきた。移行プロジェクトのスタッフは、精神薄弱労働者に一般雇用と保護雇用の両方の機会を拡大して提供し、保護工場に向く者には保護工場の門戸を開放し、プロジェクト利用者には完全な普通雇用を提供することを強調している。この一般雇用を主張する根本理由は、保護雇用では得られない賃金、所得、特別給付が一般雇用には存在し、精神薄弱者の地域社会内での統合や認識も得られるなど、いくつかの要因に基づくものである。

 賃金と所得と特別給付

 米国労働省は保護工場の運営に関する総合研究に資金を提供した。この研究の一環として、作業活動センターおよび保護工場の利用者の1976年度の賃金および所得に関する調査が行われた。

表1 平均所得月額 (ドル)
所得源 正規プログラム保護工場 作業活動センター 訓練・評価プログラム
全利用者平均 243 102 134
所得(賃金)補助を受けない利用者 204 31 63
賃金と所得補助を受ける利用者 282 176 201

 出典:米国労働省保護工場研究、第Ⅱ巻、付録表37、1979.

 表1に示す正規作業プログラム、作業活動プログラムおよび訓練・評価プログラムにおける平均所得月額は1976年の低所得月額水準の239ドルを下回っている。3種のプログラムともに、利用者が所得補助を受けていてさえも、低所得月額水準にようやく達するか、かなり下回っているかのいずれかである。

表2 利用者の平均時間給
利用者の種類 1973年 1976年 増加率
作業活動センター利用者 .34ドル .43ドル 26%
訓練・評価プログラム利用者 .63   .82   30 
正規プログラム利用者 1.40   1.54   10 
最低時間給 1.60   2.30   44 

 出典:米国労働省保護工場研究、第Ⅱ巻、付録表30、1979.

 保護工場利用者の賃金所得に関する第二の問題点は賃金の潜在増加率についてである。表2は1973年と1676年における利用者の所得を大まかに比較したものである。

 注目すべきことは、最低時間給が$1.60から$2.30に増加しているのに対し、利用者の時間給は同率では増加していないという点である。いってみれば、正規作業プログラムを含む保護工場プログラムを通じて得られる所得の平均や増加率では、利用者は、政府や地域社会や家族による所得補助に経済的に依存したまま放置されているようなものである。そのうえ労働省の調査によれば、保護工場内被雇用者のうち、一般雇用内被雇用者が通常受け取る特別給付を受け取っているのは、ほんのわずかである。また、たとえ受け取っていても、定期休暇と病気休暇に関する特別給付に限られているのが、ほとんどであった。

 地域社会内での統合

 保護工場プログラムに参加する重度精神薄弱者には、限られてはいるが地域社会内での統合の機会が与えられている。労働省が資金供給した保護工場研究の第1回調査によれば、調査年度(1972年~1973年)内の保護工場プログラム総利用者の12%が一般雇用内に就職している(労働省、1979.p.39)。しかし保護工場のプログラムの内容の違いによって、その就職状況は異なり、訓練・評価プログラムでは19%と高く、作業活動センターは7%と低い。正規ワークショッププログラムもしくは訓練・評価プログラムから一般雇用内に就職した利用者の大半は、プログラムに参加した期間が6か月以内であった。

 労働省の研究調査が算定した一般雇用就職率は、別に行われた各種のワークショップ研究の調査結果と同じである。Greenleigh調査によれば、抽出した400か所の工場に籍を置く利用者の13%が1974年1年間に一般雇用内に就職している(Greenleigh、1975)。重度障害者のための全国工業組織(NISH)の職業配置研究によれば、1977年度に82か所の抽出保護工場に籍を置いた利用者の15.11%が一般雇用内に就職している(Perlman、1978)。これらの調査結果から、保護工場プログラムに参加すれば、一般雇用レベルに達する機会が与えられ、保護されると、結論づけできる。しかし6か月以上プログラムに参加していると、その機会が限られてくることも、同時に明らかになった。

 移行プロジェクトの一般雇用の根本理由の1つにあげられる地域社会内での統合とは、職業的に向上する機会が与えられることだけでなく、健常者とともに社会の本流に参加する機会も与えられることを意味する。障害者は保護工場の主要労働力である。保護工場利用者に支払われる平均賃金から、その生産性を推定し、職場の同僚のほとんどが標準以下の生産性をもつ障害者であってみれば、競争レベルの作業速度と技能を身につけることは難しい。保護工場に多くみられる、競争作業経験の不足と一般雇用内への職業紹介の重要性についての認識不足は、一般雇用内に就職可能な精神薄弱者を地域社会内労働力の中に統合することを、大きくはばむ結果となっている。

 精神薄弱者についての社会認識

 独立した特殊教育プログラムや成人ワークショッププログラムは重度精神薄弱者を健常者社会の本流から隔絶することになる。この隔絶のためになおさら精神薄弱者は競争レベルでの生産活動を習得することは不可能だという認識が強まってしまう。そして精神薄弱者の長期雇用や所得に関しては、連邦政府、州政府、地方政府の財政援助にますます依存することになる。

 1979年の保護工場利用者に関する労働省調査によれば、賃金以外に受け取る所得補助の平均額は月$150であった(労働省、1979)。この所得補助の大部分はSSIとSSDIが支給している。また労働省の第1期調査年度に保護工場に支払われた年間支給額の平均は保護工場を利用する精神薄弱者1人当たり$1,348であった(労働省、1979)。1979年1年間にバージニア州の正規保護工場が保護雇用の代償として請求した年間支給額は利用者1人当たり$1,200から$4,300の間であった。

 精神薄弱者の保護雇用を継続するのに必要な保護工場プログラムに支払われる助成金や所得補助などの財政援助は、実質的な援助である。継続して財政コストがかかるため、重度精神薄弱者が生産性と非生産性の境い目に位置する人々であることを地域社会は認識せざるをえない。これまで保護訓練と保護雇用を受けてきた人々を一般雇用内に配置すれば、これらの人々は税金利用者から納税者の立場に転換する。一般雇用は、これらの人々に潜在した生産性を身につけさせ、これまで家族も地域社会も考え及ばなかった自立性をも身につけさせることができる。

 職業訓練・雇用モデル

 移行プロジェクトの訓練・雇用モデルでは専門の職場コーディネーターを活用して、精神薄弱者に職業訓練と職業教育を提供する。このモデルの主要素は、Project Employabilityに掲載されたDr. Paul Wehmanとそのスタッフの研究(Wehman & Hill, 1979; Wehman, 1981)の中で取り上げられている。このモデルは、保護雇用内で精神薄弱者の生産性をかなりの程度、向上させるための訓練方法と同種のものである(Bellamy, 1979)。

 この雇用モデルは、作業経験や現場訓練など従来の移行訓練サービスとは異なった、次のような特徴をもつ:(a)プロジェクト資金は職業開発、職業紹介および就業継続の分野で専門スタッフによる援助を提供する目的に使われる、(b)プロジェクト資金は利用者の賃金補助を目的に使われることはない、(c)プロジェクト・コーディネータ-は職業開発者であり、プロジェクト内の利用者照会者であり、また利用者の雇用準備に必要な援助サービスの調整者でもある、(d)プロジェクト職場コーディネーターは、プロジェクト・コーディネーターと協力して、職業準備の整った利用者に適した職業に配置する、(e)職場コーディネーターは雇用者と訓練受講者の双方に対して、訓練期間中、職業必要条件が満たされ、就業継続に必要な技能が習得できることを保証する。まずはじめに、プロジェクト・スタッフが作業現場で訓練受講者を監督して上記の必要条件が満たされることを保証し、その後は訓練期間が終わるまで徐々に監督体制を弱めて必要最小限にしていく。しかし週単位か、必要とあればそれ以上の回数、継続して追跡を行い、訓練が継続して行われることを保証する。

 職業コーディネーターはプロジェクトの要素として最も重要なもので、コーディネーターと利用者との関係がプロジェクト成功の鍵となる。職業コーディネーターは役割モデルであり、利用者の支援者である。そして利用者とその家族、それに雇用者やリハビリテーション専門家に対し、新たな可能性と目標を示すことにより、建設的な変化と向上のための手段を提供している。

 移行プロジェクト特有の要素としては、就職前オリエンテーション法がある。プロジェクト利用者の大半はワークショップ訓練の経験はあるが、非保護下での作業経験はほとんどない。このような人々を一般雇用内に就職させるうえで最も困難な面は、彼らが直面する急激な作業上の変化と人間関係の難しさに対する援助の方法である。プロジェクト利用者に、直面するこのような就職時の障害を取り除く機会を提供するため、アレクサンドリア市にあるホテル・ホリデー・インの経営陣は、就職前オリエンテーションの場として調理場や家事部門、管理部門を利用することを認めてくれた。

 このホテルでの就職前オリエンテーションは最高2週間まで続けられる。この訓練期間中一緒に働く一般の労働者にとっては貴重な移行経験となる。特殊な商業分野に利用者を就職させる場合は、プロジェクトスタッフがチエックする。訓練受講者が一般雇用の環境内で、通勤など、正規の作業時間を守れる可能性を、プロジェクトスタッフは実地に調査して、就職前に職業に関連する問題点を取り除く。

 利用者を就職させる際の重要な要素として通勤輸送の問題がある。職場コーディネーターは体系化されたバス訓練法を使って、利用者に1人で通勤できる方法を教える。初めは、スタッフが訓練受講者について、バスを乗降する。受講者が1人で正しく乗降できる能力がついたあとは、徐々に通勤介助を減らして、最後には、まったくの介助なしにする。就職後は、乗用車の相乗り利用など別の輸送手段に利用者を参加させる努力をする。しかし、雇用者はあくまで、プロジェクト利用者が自分1人で通勤できる能力を持ち、それに必要な援助は自分でまかなうことを保証される。

 移行プロジェクト・モデルのもう一つの重要な要素は職務分析である。利用者を就職先に照会する前に、職業コーディネーターは被雇用者の職務遂行に影響を及ぼす仕事場での実際の仕事内容、作業環境、作業手当などの諸条件を分析する。

 この職務分析は雇用者に大変好評で、精神薄弱者がこれまで勤めたことのなかった組織内での職務を確認するのに役立つこともしばしばある。このように職務分析は配置に関する貴重な資料を提供しているが、それ以上に重要なのは、分析を通じて雇用者とプロジェクトスタッフとの間に信頼関係が生まれることである。

 職務分析の結果、精神薄弱者向きの雇用機会特に事務部門での雇用機会が新たに見つかった。首都ワシントン地区には事務職が多く、その大半はタイプや速記の技術を必要としないものである。職務分析法を使って、これらの事務職を分析し、連邦政府機関と協力して、我々は事務訓練の場を新たに設けた。

 職業訓練・雇用モデルの要素の最後のものとして、利用者の支援者である職業コーディネーターの役割があげられる。プロジェクトに参加する重度精神薄弱者は競争レベルでの職務遂行に必要な条件を自から満たした経験がほとんどなく、その一方で、非障害の被雇用者や共に働く可能性のある労働者の側にも障害者と共に過ごした経験があまりない。職場コーディネーターは支援者の役割を担って、利用者が職場の人々との交際の仕方を学ぶ手助けをし、雇用者や共に働く人々には精神薄弱者に効果のある訓練法を教え、それぞれの職務に特有の作業内容に無理なく移行させる。職場コーディネーターは就職前準備、通勤訓練、競争レベルのスピードと技能の現場での開発、社交技術の援助を支援者の立場で行い、重度精神薄弱者に効果のある職業配置方法を作りあげる。

 雇用者の恩典

 職場コーディネーターは利用者の訓練期間中、雇用者に対しても重要なサービスを提供する。雇用者は全員、特定職種税金貸付を利用でき、州立職業リハビリテーション機関であるリハビリテーション局が認定する障害者1人につき、初年度賃金の50パーセント、$6,000までを貸付け、第2年度には45パーセントを貸付けてもらえる。プロジェクト利用者は全員、リハビリテーション局から障害者として認定される。

 移行プロジェクトはその他にもいくつかの雇用者サービスを提供している。

1.有資格労働者を確認して、要員として確保し、欠員の起きやすい職務に長期間つかせる。

2.中央から体系的職業開発方法を提供。

3.職場訓練資源を提供して、雇用者が障害者従業員の訓練に費やす時間を大幅に縮少する。

4.現場教育資源を提供して、雇用者と職場の同僚が、雇用上のハンディキャップをもつ障害者の積極性と生産性を理解する手助けをする。

5.助成金付き雇用プログラムの形での税金援助を拡大する必要性を減ずる。

 オリエンテーションの場となっているホテル・ホリデー・インの食料・飲料責任者であるBruce Summer氏は移行プロジェクト諮問委員会委員もつとめている。彼は移行プロジェクトを強く支持し、精神薄弱者に職を提供することは有益な雇用行為であると主張している。

 そして「我々の業界では、信頼できる人材を得るのは大変難しい。働く能力のある精神薄弱者も多いし、彼らはなかなか良い働き手だ。」とSummer氏は言っている。

 ホリデー・インの副社長であるDon Gates氏も、プロジェクト利用者の作業能力を高く評価している。

 そして「精神薄弱者に向く仕事は、どんな職場にもある。彼らには成功しようという気持ちがあり、プライドもある。成功はすばらしい。自らそれを認めようが認めまいが、誰にでも成功したいという気持ちがある。たいていの人にとって、成功とは百万長者になることであろう。しかし成功とは、これまで誰もやれなかった職務をずっと続けられる能力をもてるようになることである人もいる。」と述べている。

 対費用効果

 移行プロジェクトの初年度支出は$77,694であった。この予算額は主に運営費と人件費である。プロジェクト資金は利用者の賃金補助には使われていない。初年度に移行プロジェクトが職業紹介に成功した20名に要したコストは1人当たり平均$3,885であった。

 対費用効果を論ずるにあたり、いくつかの点に注目する必要がある。

1.プロジェクトを通じて就職した利用者は全員保護工場雇用の経験者か、その資格をもつ者であった。一般雇用内への就職により、プロジェクト利用者は、保護雇用に対する地域社会や政府の経済援助の受給者リストに載らなくなる。保護雇用サービスのプロジェクトを求める待機者リストにも載らなくなり、一般雇用への就職は地域社会に保護雇用助成の拡大を求める圧力を減ずる。

2.プロジェクト訓練受講者が一般雇用に就職する前、保護雇用から受け取っていた賃金以外の所得は主にSSIから支給された。移行プロジェクトを通じて就職できた者は全員、最低賃金以上の賃金を受け、さらには競争レベルの雇用に伴なう特別給付も受けている。就職に成功した者のほとんどは、今ではSSIの受給者ではない。

3.精神薄弱者を対象とする従来の職業紹介方法は、サービスプログラムや賃金補助プログラムから資金を供給されて行われた。現場訓練プログラムと公共サービス雇用紹介がその主な例で、いずれも主に連邦政府が賃金を補助している。しかし移行プロジェクトの訓練受講者の賃金は就職第1日目から雇用者が全額支払う。移行プロジェクトを通じて職業準備をし、職業紹介の援助を受ける場合、プロジェクト資金が利用者の賃金補助に使われたり訓練サービス料として支払われることはない。

 一言でいえば、プロジェクトが初年度の職業紹介に要したコスト1人当たり$3,885は、この職業紹介によって節約できた税金と補助金の額に相当する。これまで保護雇用機会や所得補助など数多くの障害者給付を受け、家族に対しても経済援助を受けてきた者が助成金を受けない納税者の立場に転換したのである。彼らが一般雇用で働き続ければ、職業紹介に要した実質コストも減少し続ける。移行プロジェクトが採り入れた職業紹介モデルのコスト回収率の長期間維持に成功した例についてはProject Employability(Wehman & Hell, 1980)の第2年度論文の中で紹介されている。

 終 章

 移行プロジェクトが初年度の職業紹介に成功したことによって、サービスを受ける側もサービス自体にも大きな変化がみられ、拡大に向けて努力が払われるようになった。プロジェクトの第2年度目標は38名の重度精神薄弱者を完全競争雇用に配置し、就業を継続させることにある。主たる後援者の二番目に位置するCETAはアレクサンドリア市のプロジェクト開始にあたり資金援助を拡大して、Fairfax-Fall教会内で継続される予定である。

 移行プロジェクトの初年度には食品サービス業、台所設備業種および一般家事関連業種が主に取り上げられた。これらの業種についての就職前オリエンテーションはアレキサンドリアのホリデー・インで行われ、利用者についての非常に貴重な評価がなされ、職業準備の機会が提供された。現在、国防総省の海軍運営センター(Naval Operation Center)を就職前オリエンテーションの場とする予定がある。ここでは主に事務職を訓練する予定である。事務職の内容としては、ファイル、マイクロフィッシュ、品質管理などがある。また、国防総省の維持管理部門にも職業機会がみつかる予定である。第2年度には地方病院での就職前オリエンテーションも開発する計画がある。

 移行プロジェクトが就職前オリエンテーションの場を開発して、数もふえ、取り上げる業種もふえるにつれて、重複障害者にサービスを提供することが重要視されるようになった。現在、精神薄弱者だけでなく、主に脳性マヒによる身体障害をもつ聴覚障害者などの機能障害者にもプロジェクトを通じてサービスが受けられるようになりつつある。利用者グループを引き続き拡大し、目標とする業種を拡大する計画が現在ある。

 プロジェクトスタッフが現在、強調している究極的な援助サービスとはボランティアの支援者を開発して、重度精神薄弱者が自らを長期的に地域社会内へ統合できるよう援助することである。移行プロジェクトがボランティアの支援者を見つけ出した成功例としては、30歳の聴覚障害者の例がある。この人はプロジェクトを通じて現在一般雇用内で働いている。しかし、この人はコミュニケーションする技術を自ら学び、両親にも覚えてもらい、自立生活技術(特に地域社会オリエンテーション)を学ぶために手助けが必要であった。この手助けをしてくれたのがボランティアの支援者であった。

 移行プロジェクトの初年度の成果は大変すばらしい。第2年度初めから開始された、職業紹介目標の拡大やサービス不提供地域の拡大や職業機会の数の拡大のための努力によって、プロジェクトは重度精神薄弱者の職業紹介ニードを満たそうとしている。プロジェクトの全体目標は引き続き、訓練受講者を競争レベルの助成金なしの雇用内に完全統合することである。

(Journal of Rehab. Jan.-March 1982)

参考文献 略

*バージニア州リハビリテーション局

**同上

***同上

****同上

*****翻訳家


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1983年3月(第42号)31頁~37頁

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