特集/アジア・太平洋地域のリハビリテーション パプア・ニューギニア

特集/アジア・太平洋地域のリハビリテーション

パプア・ニューギニア

Gei Illagi

 他の発展途上の国々と同じく、パプア・ニューギニアは、障害者に対するサービスに関しては、まだ未熟な段階にいる。しかし、ここ数年の間にかなりの発展をとげてきている。

 1978年に、国内障害者委員会が設立されたが、その目的は次のとおりである。

1 政府、及び障害者関係団体に対し、リハビリテーションと障害者の社会統合についての方針の系統化を勧告する。

2 政府に、障害の予防についての方針の系統化を勧め、必要なところでそのようなプログラムを設立組織し、推進援助を行う。

3 障害に関する、情報収集システムを開発する。

4 障害予防、リハビリテーション、そして統合に関するサービスと資料についての記録と、その維持。

5 サービスの合理的、協力的発展を確実にするために、すべての障害関連グループの調整機関として機能する。

6 障害に関する、国立の情報・資料センターを運営する。

7 常に障害者の権利を援護する。

 委員会は、保健、教育、住宅・都市開発、労働、地域、家庭サービスなど、政府各省からの代表と、5人の障害者の代表、障害者関係団体からの5人の代表、そして地域からの2人の代表により構成されている。

 次のような機関が、パプア・ニューギニアにおける障害者関連機関である。

・セント・ジョン盲人協会

・チェシャイア・ホーム

・赤十字特殊教育センター

・ポートモレスビイ・シェルタードワークショップ

・ラエ・シェルタードワークショップ

・ラエ障害者ホーム

・パプア・ニューギニア障害児協会

・パプア・ニューギニア障害者スポーツ協会

・パプア・ニューギニアリハビリテーションセンター

 以上の障害者関連機関の内のいくつかが、リハビリテーションに関して、彼らが持つ問題点とその解決法についての報告を行っている。次のものはそれらの報告の抜粋である。

 ポートモレスビィ・シェルタードワークショップ

 新しい技術の指導を行うことの出来る、訓練を受けた人材の必要性と、ワークショップとして経済的に自力でやっていけるよう、現在の市場を拡大する必要がある。障害者の雇用に関しては、障害者雇用の可能性を持つ雇用主の教育が必要だが、失業率の高い国において、それはむずかしい。多くの組織において、輸送交通が大きな問題となっている。輸送交通手段がないために、一般就労をあきらめなくてはならない障害者が沢山いる。ワークショップにおける、十分に訓練された経営は、訓練の面においても経済的な面においても、大変重要である。

 チェシャイア・ホーム

 チェシャイア・ホームでは、現在、1人1人の子供のニーズを評価し、個々の子供に合った特別な訓練を行う、6か月間の訓練プログラムを実施している。子供の親も、村にある家に戻ってから、どのようにこの訓練を続けるかを学ぶためにこのプログラムの最後の数週間に参加する。このホームの持つ最も大きな問題は、漫性的な財政難と、何年も前にこのホームに預けられて、今では青年となっている、他に行き場のない子供の問題である。とうの昔に身内とのコンタクトはなくなってしまっているこれらの青年たちが、残りの人生を有意義に過ごすことが出来るような、独自のプログラムを持つ成人センターが必要である。これらの青年のほとんどが、重度の心身障害者である。

 ラエ障害者ホーム

 このプロジェクトは、ラエ病院に入院している障害者―この内何人かは長期に入院している―を援助するために設立された。彼らのほとんどが、半身マヒか、四肢マヒである。ここは自宅へ戻る前のハーフウェイハウスであるが、多くの場合彼らには、村へ戻ろうという意欲はあまりなく、又その人の住む村が、僻地で、そこに保健施設や救急の際の輸送手段などない場合は、戻ることはあまり有効とは言えないかもしれない。

 赤十字特殊教育センター

 赤十字特殊教育センターは、継続的な財源、パプア・ニューギニア内の特殊教育教師の適切な教育、適切な補助具、他の機関との調整と障害者のサービスの発展のための計画的なアプローチの必要性と、障害者の訓練とケアに、その家族全員と地域社会が、かかわる必要性を訴えている。

 パプア・ニューギニア障害児協会及び学校

 ここでは、他と同じように、熟練のスタッフと継続的な財源の必要性を述べている。この協会は、現在わずか1か所のセンターを経営しているだけだが、これを国内中に拡げることを希望している。現在のところ、彼らの基金は、主として海外からの補助金、寄付、基金集めのイベントによってまかなわれている。海外からの補助金は、毎年保証されているわけではないが、協会は、政府が将来、教師の給料を支払う責任を持ってくれることを希望している。パプア・ニューギニアの多くの特殊教育のグループが、政府が特殊教育学校を国内教育システムの一員として、肯定的に認めてくれるよう期待している。

 病院における、訓練を受けた人材の必要性

 理学療法と作業療法―理学療法と作業療法は、患者の入院期間を短縮し、家庭や職場に戻って地域での再統合に向けてふみ出すための援助を行う。現在のところ、パプア・ニューギニア全土にわずか3人の理学療法士と、2人の作業療法士がいるのみで、これらの人はすべて、海外からの技術者である。完璧な訓練を受けている、パプア・ニューギニア人の理学療法士、作業療法士はおらず、パプア・ニューギニア国内に、これら2つの重要なリハビリテーション・ワーカーを育てるための教育体制を作り上げることがきわめて重要である。現在、3人の学生が、理学教育を受けるために海外に留学しているが、学生が、卒業後の仕事と関連した状況の中で教育を受けることのできるよう、国内における教育体制をスタートすることが必要である。

 医療関連職員―リハビリテーション医療の分野における、パプア・ニューギニア人職員の教育、及び一般の医療専門職の間での障害者に対する興味を促進することが必要である。又、脊髄損傷患者の看護についての訓練を受けた看護婦も必要である。

 リハビリテーションは、外科医、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー、看護婦を含む総合的なチームアプローチが行われる時、最も効果的となる。しかし現在のところ、訓練を受けた人材が不足しており、中央病院に脊損部門がないために、これを実行してゆくことは困難である。障害を持つ患者は、現在のところ、様々な医師のもと、あちこちの病棟に散在しており、かつほとんどの病棟が車イスの利用に適していない。現状では、主要な病院においても、歩行器や松葉杖などの補助器具を製作する設備はない。国内にたった1か所、義肢などの製作を行う工場があるが、それらの値段はひどく高い。リハビリテーションチームは、患者の退院後のフォローアップを確実にするためにも必要である。

 結論

 このように、我々のリハビリテーションのニーズは、金品による物質的なものだけでなく、多分もっと重要なのは、教育を受けた人材とその訓練が将来彼らの配置される仕事に関連づけられるように、国内で行われることである。又、乏しい人材と財源の重複使用をさけ、それを最大限に利用するための総合的なアプローチが必要である。社会における障害者の価値と役割について、雇用主、一般大衆そして障害者自身を教育する必要が大である。

(小野有紀子訳)

*パプアニューギニア国内障害者委員会議長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1983年11月(第44号)41頁~43頁

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