特集/世界のリハビリテーション 『比較リハビリテーション研究会』の成果

特集/世界のリハビリテーション

『比較リハビリテーション研究会』の成果

――世界のリハビリテーションを学ぶ集いから――

その1

小島蓉子*

 1988年、世界リハビリテーション会議が我国で開催される運びとなった。リハビリテーション分野の国際化に伴い、斯界の関係者たちの世界各国のリハビリテーション実践に寄せる関心は高まっている。

 世界のリハビリテーションについて書かれたものには、医療情報を中心とした『世界のリハビリテーション』(二木立、上田敏共著、昭和55年医歯薬出版)が著されていることは周知の通りであろう。しかし各国のリハビリテーションを1ケースずつとりあげて総合的な立場から見たグローバルなリハビリテーションの国際比較研究は、今だ試みられていない。

 昭和54年に厚生省の委託を受けた筆者は、社会リハビリテーションの国際比較調査をデンマーク、スウェーデン、イギリス、オランダ、ドイツ、ベルギー、チェコスロバキア、オーストラリア、カナダ、アメリカ合衆国の10ヵ国に対して行った研究報告書を提示した。しかし限定されたサンプルでもあり、未だその結果は公刊される機会もなく今日に至った。そこで、それらを基礎資料として、更に研究を重ねようと、世界のリハビリテーションに興味を持つ23人の同志が、昭和58年より日本女子大学を会場に集まる機会を持った。以来隔月に研究集会を持ち、相互に研究発表を行って今日に至っている。

 国際比較研究の意義は第1に自国のリハビリテ-ション実践を世界の実践に照らして批判的に見ることにより、自国の位置付けと特質が明確化されることである。第2は、他の国の実践モデルを学ぶことにより、我が国の問題を克服すべきビジョンが与えられることである。第3は、自国の実践や政策の傾向がどの様な結果を生むのかという予測を先進諸国の研究から持つことができるということである。第4は、先進国のみならず、様々の発展段階をもつ国々を研究することにより、我が国の国際社会への責任と課題に目覚めさせられるということである。

 国際比較研究の方法については、比較教育社会学の手法によるところが多い。文献調査のみならず研究対象となる国を直接訪ねて、援助を提供する側と受ける側とを直接観察することが最も望ましいことであるが、それが不可能な場合でも、文献の精読や、法律、通達、統計、そして機関誌やサーキュラーに至るまでを細かく取り上げて、それを体系的に整理しながら、一国のリハビリテーションの全面的な理解に達しようとする。その際リサーチャーは、特定の国に持っているプラス(偏好)及びマイナス(坊主僧けりゃ袈裟まで憎い式の)の偏見から自由にならなければできない課題であり、公正な国際感覚が知識以前に必要とされる研究領域である。

 幸いリハビリテーション研究誌より、比較リハビリテーション研究会の研究成果を発表する機会が与えられたので、発表の準備ができたチームから、順次本誌に御登場いただくことになった。

*日本女子大学


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1985年3月(第48号)2頁

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