社会リハビリテーション概念の一考察

社会リハビリテーション概念の一考察

―─RI社会委員会の研究課程の一到達点に立って考える─―

小島蓉子*

はじめに

 国際障害者リハビリテーション協会(RI)の専門委員会の1つである社会委員会は1961年に構成され、23年を経て今日に至っている。

 以来社会委員会は、一般的なソーシャル・プランニングや社会保障問題のような制度的なものから、偏見と差別や性や家族の問題に至る広範な問題を論議してきた。

 とりわけ、社会委員会が組織された当初から、追求し続けて来たことは、各国でそれぞれの意味をもつ「ソーシャル・リハビリテーション」なるものに、世界の合意の得られる一定の概念と枠組を打ち出そうと試みたことである。

 そのためにRIの社会委員会は、国連とその専門機関の社会リハビリテーション研究と歩調を合わせて、専門的見解を提示し、共にいくつかの共同作業の成果を上げても来たのである。

 その主なものを年次別に紹介すると次の様になる。

 1969年、ダブリンでの第11回RI世界会議に於る委員会の席上、社会リハビリテーションの概念について各国メンバーと協議。

 1969年には、WHOが障害者の生活環境問題を指摘。

 1972年、シドニーに於る第12回RI世界会議の際、各専門委員会でリハビリテーションのガイドラインをめぐる討議をした結果、社会リハビリテーションとしては、環境整備がその主な使命であるとして、環境問題にせまる5つの視点が確認された。それらが後の国連の行動計画にも影響を与えた環境の5側面である。つまり、それらが

*物理的環境

*経済的環境

*社会・文化的環境

*心理的及び経済的環境というものである

 1976年には、ILOが、職業リハビリテーションの完全実施のためには、いかに社会リハビリテーションの支えが必要であるかを公式に要請するに至った。この背後には、世界経済の行きづまりと職業リハビリテーションの限界が、対象の重度化によって顕在化し始めたことを暗示している。社会リハビリテーションが提供する支持条件によらざれば、1970年代後半以降の職業リハビリテーションは政策として機能することがむづかしくなったものと言えよう。

 同、1976年には、国際連合が、エキスパート委員会を開いて、物理的環境を中心とする世界の運動の方向性を確認した。それには、RI社会委員会の北欧グループや、社会主義国のリハビリテーション専門家が活発に参加した。

 この間ヨーロッパ共同体(Council of Europe)は、リハビリテーションの社会的側面に関して、1975年と1981年の2回にヨーロッパ関係者による会合をひらき、社会リハビリテーションの課題について検討して来ている。

 1982年の春、フィンランドの社会委員会はエキスパート会議をもった。

 1982年10月には、チェコスロバキアの首都プラハにおける社会委員会のヨーロッパグループ会議を持ち、①社会保障、②住宅と交通、③IYDP各国動向の報告、④社会リハビリテーションの概念、⑤今後の活動計画などが論議した。

 1983年6月に、社会委員会のヨーロッパ地域会議がフィンランドのテンペラ大学で開催され、引きつづき、「社会リハビリテーションの概念」が、V.ニエミ氏らを中心に話し合われている。

 1983年6月フィンランドの社会委員会有志は、テンペラ大学会議の課題としての「社会リハビリテーションの概念」を話し合った。

 その報告書の内容が、フィンランド、リュウマチリハビリテーション病院の、心理学者パーコー・キビニエミ(Pirko Kiviniem)女史よりリスボンの第15回RI世界会議の際の社会委員会ビジネス会議で報告されている。

 以下示すものは、以上の様な背景を持って成生された「社会リハビリテーション」に関する北欧グループの見解のまとめである。

 

表1 一般的な意味での社会リハビリテーション

 ▼環境と相手との相互作用(インターアクション)の中での個人の能力の成長

 ▼リハビリティーと作り変えられた社会から成る統合されてよく機能する全体像を創造すること

表2 社会リハビリテーションは障害を持った個人にとって特別な意味での学習を意味する

 ▼律と自信をもち、参加し、かつ住民たるの自覚をもち、家族の一員として機能し、ワーカーの一人として機能すること

表3 表社会リハビリティーにおける方策(measures)の例

 1.次のものを用いての学習

 ▼住宅と交通サービス

 ▼個人的介助とホームヘルプ

 2.実際場面に作業療法の考え方を応用すること

 3.社会機能の学習のためのコースに参加すること

 4.社会機能の質を達成するために特別の一時的援助を受け、かつ活用すること

表4 異なるリハビリテーション分野との関係

表4 異なるリハビリテーション分野との関係

参考文献 略

日本女子大学


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1985年3月(第48号)39頁~40頁

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