特集/リハビリテーションにおける技術 高度技術社会にかける障害者の解放

特集/リハビリテーションにおける技術

高度技術社会にかける障害者の解放

―コンピューター技術の利用―

The Liceration of Disabled Persons in a Technological Society:Access to Computer Technology

E.JANE BURKHEAD, Ph.D. *
JAMES P.SAMPSON, Jr., Ph.D. **
BRIAN T.McMAHON, Ph.D. ***
服部兼敏 ****

 いつでも障害者が自由に利用できる環境は、リハビリテーション運動の永年の主要課題である。建築物、交通機関、公園や娯楽施設にあった障碍の除去にみられるように、リハビリテーションにおいては、早くから啓蒙が行われ、手がつけられていた領域では、それなりの成果が見られている。しかし障害者の機会を創造しようとするにあたって、大きな障碍として実際に目の前に立ち塞がる前に、どのような障碍に対待しなくてはならないか見とおし予測すべき時に来ている。たぶん障碍除去への努力を向けるべき次の前線は、コンピューター技術に関わるものであろう。

 過去15年をみるとコンピューターは、少し挙げただけでも、身体機能の代行、認知再訓練、教育、職業探求と意思決定、就業計画、および雇用といったリハビリテーションのプロセスの様々な局面の向上のために応用され、リハビリテーション専門家や障害者によって用いられる、ますます日常的な資源となって来ている。コンピューター技術の利用の急速な展開は、リハビリテーションというプロセスに適したソフトウェアの開発、そして例えば小型化や低価格化、演算速度の向上、また使い易さといったコンピューター・ハードウェアの進歩の成果である。マイクロ・コンピューターは、大型の汎用計算機に付いて回った通信回線やタイム・シェアリングといったアクセス上の問題から使用者を解放してくれた。コンピュータ-技術を直接障害者がアクセスできるようにすることは、現在の建築上の障碍物を無くすことと同じくらいに、将来の障害者の究極的な同等化にとって一寸足りともいい加減にできないほど重要なものとして考えられよう。

 コンピューター技術を完全に利用するについての障碍を取上げるといろいろなものがでてくる。まず、Halletによってよく描写されているコンピューターを操作することにともなった頑固な迷信や恐れという、変化を拒否する人間の保守性という厄介な問題がある。第2に、星の数ほどたくさんあるアプリケーション・ソフトの中から適当なソフトウェアを選択するという難しい仕事がある。第3に、秘密にしておくべきクライエントの記録を不当に引出すとか、特定のシステムをクライエントが無茶苦茶に使うといった犯罪的行為もある。総体としてみれば、十分良く検討したうえで慎重に設置を図っていけば問題は解決できよう。

 コンピューターを利用できるようにするために越えなくてはならないハードルとして、人間的な要素がまだ残っている。たとえば、今日のリハビリテーション場面でコンピューターを優先的に利用するのは、リハビリテーションの実務家や管理者であって、リハビリテーションのクライエントではない。McMahon、Burkhead、およびSampsonは以下のように述べている。

 「リハビリテーションの専門家たちが持っている信念とは、コンピューター技術のクライエントによる利用は、クライエントとコンピューターの両方を理解している、十分な技能を持った専門家によって指導されねばならないというものである。これから導き出される誤ったひとつの結論は、カウンセラーひとりひとりが、システムの操作運用のエキスパートにならねばならないというものである。しかし、悪い例としてあげられるこれよりさらに危険な推論は、障害を持つクライエントは、自分独りでコンピューターを動かす能力などないとする、今日でも一部の専門家のなかに見られる障害者に対する偏見である、著者ら以外にも同じ問題を指摘している者がいる(McDanie1、DeLoach & Greer)。」

 著者らは、クライエントが自分独りでコンピューター技術を活用することは、ある種のアプリケーション・ソフトウェアの質を向上し、クライエントが彼らの未来への道程を確かなものとすることになることを提言する。

 同じように問題なのは、障害者の一部にある自助具や改造ディバイスの利用に対するネガティブな反応である。コンピューター技術を利用可能にしてくれるディバイス以外にも、車椅子、義肢、盲導犬、手話の利用、あるいはそれを使用すれば障害者だとすぐわかってしまう品物や行動が拒否されるものに含まれていたということは、歴史を振り返るまでもない。これらの望ましくない態度を変容するのに個人カウンセリングがしばしば用いられはしたが、改造ディバイスを使わせようとする者は、次の原則を心に留めておくべきであろう。

「1)人工的な器具を使わないで機能を高める、あるいはこのような器具の必要性を最小限にするためのすべての努力が払われるべきである。標準的な機材の改造は、障害者がその標準的な機材をどう扱うかを学べない場合を除いては避けるべきである。

 2)ある人のために処方されたディバイスの評価は、少なくとも3つの基準に基づいてなされるべきである。

 a)対象となった問題場面におけるその人の身体機能

 b)そのディバイスを用いることへのその人の心理的反応

 c)そのディバイス自体の性能

 仮りに2人が同一タイプで同程度の障害を持っていたとしても、一方の人にうまく働いてももう一方の人には役に立たないことがあるので、個人個人に対して対応することは原則の1つである。」

 この論文の重要な論点のひとつである最後の問題とは、障害者が独りでコンピューター技術を利用できるようにする改造ディバイスや補助具などありはしないと最初から考えることである。この領域の本当の障碍は、改造ディバイスの有無とは関係が無さそうである。もしもコンピューターを障害者が使えるようにするこのようなディバイスが、いちいち優れた研究上の発見とみなされるならば、このようなディバイスに対する実務家の愚直さは、単にリハビリテーション専門家というものが研究を適切に利用していないという、昔からある問題がまた頭をのぞかせたということに過ぎない。この問題はBoltonによって簡潔に述べられている。

「事実、たいへんな金とエネルギーが注ぎ込まれた研究プロジェクトがリハビリテーションの実務の向上に明らかな影響をおよぼしているとする証拠はまったく僅かなものである。」

 胸躍らせ、また[溢]れるほどにある技術的選択の渦巻く中で研究の利用ということに問題を投げかけるのは、実務家の知識の不足と保守性であることがわかる。たしかに、改造ディバイスや自助具が不足しているということはない。この論文の残りの部分は、実務と将来の研究に向けての提言に加え、コンピューター技術利用における改造ディバイスの役割、これらのディバイスの開発、タイプ、解説、そして改造ディバイスの分類に費やされる。

コンピューター技術の利用における改造ディバイスの役割

 障害者がコンピューターを不自由なく使えるようにする改造ディバイスの開発は、研究者、実務家、そして消費者(consumer)によって第一優先順位が与えられているとみられている。日常生活のすべての面におけるコンピューター技術の普及を考えるに、この技術を障害を持つ人達が用いるための方法を早く何とかしなくてはならないという焦りは驚くにあたらない。コンピューターは教育、就労、銀行などの日常業務へと隅々まで導入されている。この技術を利用するためのディバイスなくしては、障害者はさらに社会の本流から取り残されてしまう。Vanderheidenは、障害者の機能を向上するコンピューター技術のほぼ無限の可能性を認めはするが、同時に彼は、「コンピューターは、障害者が障害者と健常者との間のギャップを埋める手助けをするよりむしろ新しい障碍物を作り上げ、このギャップを拡げてしまう可能性が極めて強い」と強調している。障害者が我々の技術指向性社会の完全なる参加者となり、そしてコンピューターがこの参加への障碍とならないようにするために、標準的なハードウェアやソフトウェアを利用できるようにすることが不可欠である。上記の点は、婦人や経済的な困窮者にも当てはまる可能性がある。

 社会全体として問題を捉えた場合だけでなく、コンピューターの利用はかなり個人的な、また感情的なレベルにおいても重要である。Papertによって指摘されているように、重度の身体障害を持つ個人は、彼らの身体的制約によって、また時折周囲をハッとさせてしまうような彼らの動作によって、他人からしてもらう、他人に依存的な役割をしばしば負わさせる。教育場面や職業場面で彼らが健常な仲間と同じ働きをするためには、同じ機材を独りで使えることが自己意識に好ましい刺激となる。Papertは、LOGO言語を用いて「現実の生活」の中では体験できない空間的な操作を行ったり、他の知的な活動を行ったりする重度障害者は、彼らの自己意識が大きく延びているのを見たと記している。他人の助けなくして何かをやり遂げる能力は、障害者の有能な個人としての自己観念を強めることになる。

 職業探求や職業的意思決定といった、サービスの提供に用いられるコンピューターを利用できるようにすることは、特に障害を持つ個人のリハビリテーション・プロセスにとってたいへん良い影響を与える。クライエントとカウンセラーによるリハビリテーション計画の共同管理は、以前からずっとリハビリテーションにおいてそうあるべきだとされた原理であった。クライエントはゴールを設定し、このゴールを達成するについて最大限の責任を負うものだと考えるように促されている。職業探求活動に自分の力で取り組む力は、この責任を持つという意識、そして生活の他の場面でも自立してやってゆけるという気持ちを助長する。

改造ディバイスの開発

 改造ディバイスや他の技術の開発の過程で障害を持つ消費者(consumer)を含める必要性は、何人もの消費者や研究者によって強調されている。Shworlesは、消費者が解決すべき問題としてでなく、問題の解決者として扱われること、つまり特定の技術の有用性を判断する場合や、さらにまた研究や開発を続ける必要があるかを決定するにあたって消費者の視点、価値、感覚が考慮されるべきことと主張する。合衆国のリハビリテーション工学・研究・訓練センターを訪ねたオーストラリアのある専門家は、彼が見学した研究開発はかなりの場合障害者の生活実態に根ざしたものでなく、むしろ研究者の興味から出て来たものだと述べた。この専門家はオーストラリアヘ戻ってからの彼の行動計画には以下の指針が含まれるべきであると報告した。

 1)障害者のニーズの事前評価

 2)可能ならば現在ある技術の改善したものの利用

 3)障害者のニーズに基づいた新しい製品の開発

 学校場面において、障害児がコンピューターを活用できるようにするための器具の開発についてのDeschによる解説のなかに、同様のプロセスが図示されている。生徒の能力やニーズを基にして、現在あるディバイスが選択されるか、改造されるか、あるいはまた新たに機材が開発される。BehrmannとLehmは、コンピューターシステムを開発するにあたって利用者能力、開発の目標、そして利用可能な技術を比較検討する理論的にも体系だったシステマティック・アプローチを提言している。システム理論と人間工学の研究を応用することで、彼らは、技術的手法の利用が考えられている場面で応用可能なように、障害者のためのニーズ分析・システム開発法(Handicapped User's Method for Analyzing Needs-System Development;HUMAN-SD)と呼ばれるモデルを開発している。このモデルは、対象となった障害者の潜在能力と能力的限界とを今あるハードウェアとソフトウェアと対比させるように作られている。このHUMAN-SDには5つの段階ないし階層、すなわち要求課題の分析、機能の分析、課題(task)の分析、インターフェイスの分析、そして実地場面での評価が含まれている。それぞれの段階の最後には、将来そのシステムを使用する人間に対して、この提案されたシステムを詳述する計画書が渡される。消費者の参加を最大限保障する一方で、この計画書があれば、その使用者はそのシステムの計画、製造、およびテストを続行するあるいは中止するについて、十分情報を得た上で決定を行うことができるようになる。このようなシステマティック・アプローチは、コンピューターを利用できるようにする改造ディバイスの開発に有効であるようにみえる。

改造ディバイスのタイプと仕様

 障害者がコンピューターを利用できるようにするための改造ディバイスを開発するにあたって、研究者や製品開発者は2つのアプローチを用いた。それは、特別仕様・改造ソフトウェア・アプローチ、そして入出力ルーティン変更アプローチ(transparent access approach)である。特別仕様・改造ソフトウェア・アプローチは、ジョイスティックやライトベンといった簡単なディバイスを用いてコンピューターの制御を行えるように、特定のコンピューターのソフトウェアの改造を必要とするものである。通常、制御用のディバイスが追加される唯一のハードウェアである。しかしながら、ディバイスとコンピューター本体とのデータの受け渡しを行うハンドラー・プログラムは、コントロール・ディバイスからの入力をコンピューター本体が受け取れるように、またディバイスを利用するための特殊な画面表示を行えるように書かれていなくてはならない。そして標準ソフトウェア・パッケージはハンドラー・プログラムと接続できるように変更されていなくてはならない。このアプローチの一例としてNRCのScreen Writerというパッケージがあげられる。

 Vanderheidenは、特別仕様・改造ソフトウェア・アプローチには3つの重大な問題があると述べている。

 1)企業上の都合で、改造を行うのに必要なオペレーション・システムやパッケージのソースコードが通常企業側から供給されることはない。

 2)プログラムを書いたり、修正したりする費用が馬鹿にならない。

 3)ソフトウェアは、しょっちゅう改訂されるか新しいプログラムが発売されて陳腐化するので、新しいバージョンが出る度にそれぞれのバージョンに合わせてその都度ソフトウェアを修正して標準ソフトウェアに合わせるのは事実上不可能である。

 ソフトウェア・アプローチは、一定の範囲内で応用するには有用かもしれないが、多くの障害者が用いるコンピューターのソフトウェアの大半を使えるようにする手段としては受け入れるのが難しい。

 入出力ルーティン変更アプローチ(transparent access approach)は、データ入力における通常の、また一般に広く使用されている方法とは違った方法を用いて入力してもコンピューターは感知しないような仕方で、コンピューターへの特別な入力ができる特別なディバイスを用いることを意味する。ハードウェアを追加したり、ハードウェアを改造したりすることは、完全なる入出力ルーティン変更を行うために不可欠である。これらのハードウェアを組み込むことは費用のかかることかもしれないが、この方法は障害者が標準仕様のソフトウェアを用いることができるために、良い方法であるとして広まって来ている。

 Vanderheidenは、入出力ルーティン変更アプローチにおける4つのタイプを解説している。

1)直接改造キーボード(Direct Keyboard Modification)

 このタイプのアクセス法は、当然のように機械的ないし電子・機械的な改造を要する。この例として、キーボード上につける穴空きキー・カバー、シフトキーを操作するための重り、そして補助キーがある。

2)キーボード信号発生機(Electric Keyboard Emulation)

 キーボードの回路とコンピューター本体の回路の間に、コンピューターに内蔵されるように据え付けられるモジュールは、特別なディバイスからの入力を受け取り、ちょうど通常のキーボードから入った信号をコンピューターが受け取るように、コンピューターに直接信号を送り込む。変更型キーボードや呼気スイッチ、スキャンニング・ディスプレイ、頭に付けたビーム発生機から光センサーにビームを当てて入力するヘッドボインター、モールス・コード、視線が固定されると信号を発生する視線センサー、そしてその他の指示機を用いた特殊なコミュニケーション補助具は、キーボード信号発生機に利用できる入力ディバイスの例である。VanderheidenとDeschは、障害者が信号発生機によってアクセスできるようになっている教室に設置された標準型のコンピューターに、自分専用の入力ディバイスを差込むようになる可能性を示唆する。

3)デュアル・コンピューター・アプローチ(Dual Computer Approach)

 デュアル・コンピューター・アプローチは、上記の電子的キーボード信号発生技法を拡張したものである。キーボード信号発生機を動かす特別なコミュニケーション補助具を用いる代りに、このアプローチは、標準仕様のコンピューター2台の一方を「特殊目的のコンピューター」としてまたもう一方を「標準仕様のコンピューター」として用いる。第1のコンピューターは、特別なインターフェイス・ソフトウェアを走らせ、利用者独自のニーズに適合した特殊な作業を行う。この第1のコンピューターからの出力は、キーボード信号発生機を通して、標準仕様のソフトウェアを走らせる第2のコンピューターに送り込まれる。Vanderheidenは、これは現時点においてはしばしば最も柔軟で、簡単で、かつ廉価なアプローチであると結論する。(この先3ないし5年のうちに市場に出てくる予定の新しいオペレーティング・システムは、これらのオペレーティング・システムが並行処理されるようになったソフトウェアや入れ子になったソフトウェアを走らせるような能力を持つようになる結果、機械そのものとしては同一のコンピューターの中に両方のコンピューターを備えるのを可能としてしまう。)MODKeyboardは、第1のコンピューターがダイナミック・スクリーン・ディスプレイを持ったデュアル・コンピューターである。

 この機構は、CRT上にキーボードが図形表示され、表示された文字や語、慣用句、コンピューターのコマンドが選択できるようになっていて、これらを追加したりして、CRT上に表示されたキーボードを利用者が変更できるようになっている。このようにして利用者は、コンピューターをよりうまく働かせるようになる。遠隔光学ボインター・システム(Long Range Optical Pointer system)は、ヘッドボインター手法を用い、ダイナミック・ディスプレイ機構を持つ別の例である。

4)疑似デュアルCPUアプローチ(Pseudo Dual CPU Approach)

 Vanderheidenによれば、

「これらの技法のあるものは、メモリーのあまり頻繁に用いられることのない部分に収めてある特別なソフトウェアのルーティンの形をとる。オペレーティング・システムにある特殊なボインターは、通常のキーボード用のサービス・ルーティンに替えて特殊なルーティンをコンピューターがアクセスするようにリセットされる。」

 Vanderheidenは、ディスプレイ表示の音声出力、音声入力ターミナル、そして1接点型および2接点型のモールス信号機、時間設定型スキャンニング機構、ステップ設定型スキャンニング、拡大キーボード、そしてゲーム用バドルといったディバイスでAppleコンピューターをコントロールできるようにする改造ファームウェア・カード(Adaptive Firmware Card)を動かすプログラムを例に挙げている。

 文献中に議論されている他の改造用ディバイスは、図1に解説されている。説明をよりはっきりさせるために、ディバイスはそのディバイスが最も有効に働く障害(運動、視覚、ないし聴覚)のタイプによって分類されている。この文献に掲載されているほとんどの論文に技術的データの解説がないからといって、Vanderheidenの図式に従っての分類を認めるわけにはいかない。この検討論文は、コンピューターにアクセスするための改造ディバイスだけに関して特に選ばれた参考文献に焦点をあてたもので、すべての改造ディバイスに焦点をあてたものではないことに注目されたい。

図1 改造ディバイス
名称と内容 参考資料
運動障害 1.特殊仕様の遠隔操作用キーボードSHIFT、CONTROL、REPEATキーのキー・スイッチのラッチ・スイッチ化、穴あきキーボード・カバー、ジョイスティックないしスイッチの2重化 Graystone(1982)
2.拡張キーボード Graystone(1982)
3.磁気ボインターと磁気感知キーボード Desch(1982)
4.14キー+4キー型キーボード LeCavaller, Valghan, & Wimp(1982)
5.PASE(カーソルの方向・速度が自由に変更できるCRT画面スキャンニング型システム、ライトボインター、ジョイスティック、指を曲げたり、手首を面に押しつけたり、息を吸ったり、吹きつけたりすることで操作する空気圧コントロールによる入力) Gaddis(1982)
6.VBLS(教育場面における音声入力システム) Horn & Scott(1979)
7.TEXTWRITER(音声入力による作文、編集、および印刷装置) Serota(1984)
8.EXPRESSシリーズ(光学ヘッドボインター、通常型ヘッドボインター、ロッキング型レバーによってコンピューターのコントロールを行うシステム) Taber(1981)
9.その他の入力ディバイス
 a.頭で操作するジョイスティック Desch(1984)
 b.感圧盤、ゲーム用バドル、リーフ・スイッチ LeCavaller et al(1982)
 c.音声による始動、モールス符号、顎および足による制御 Rizer(1984)
視覚障害 1.BRAILLE-EDIT(文字、語、ないしファイル全体の音声出力ができるワードプロセッサー) Holladay(1984)
2.Text Talker(画面表示の音声出力) Moyles & Newell(1982)
3.Versa Braille(点字を打ち、表示し、そしてカセットテープに点字を記録するボータブルな機械で、プリンターを動かし、マイクロ・コンピューターのターミナルとして働き、ないし汎用機の端末として機能する) Moore(1984)

聴覚障害

1.耳掛型補聴器に接続する音響機材 Dugdale & Vogel(1978)
2.画面への接触を光の点滅で、スクリーンヘの指の接触を知らせる装置 Dugdale & Vogel(1978)

 

改造ディバイスの分類

 文献には、改造ディバイスについて主だった2つの分類体系が見られる。CrimandoとGodleyは、機能・形態障害のタイプによってディバイスを分類した、他方、Vanderheidenは前述のようにシステムのタイプに基づく図式を提案した。これらの分類は、入手可能なディバイスのタイプを理解するには有用であるが、最適なディバイスを捜している障害者を助けようとする実務家にとっては、機能上の制約に基づいた図式のほうがより有益であろう。例えば、指と手の強さと可動性に制約がある人と働く場合、実務家は運動障害に関わるすべてのディバイスではなく、これらの欠損を補うディバイスについての情報を必要とする。フロリダにおける職業的身体能力(Job Related Physical Capacities;JRPC)プロジェクトは、この方式によって改造ディバイスを分類しようとしている。Szeto、TingleとCronkは、障害者のニーズに相応しい改造ディバイスを選ぶ簡単な機能別分類を用いる補助用ディバイスについての情報の自動提供(Automated Retrieval of Information on Assistive Devices;ARIAD)という別のプロジェクトを説明している。

結論と提言

 この論文で実際に示されたように、障害者がコンピューターにアクセスできるようにする改造ディバイスは、現在では掃いて捨てるほどある。最重度の運動および感覚障害を持つ個人は、現在ある技術を用いてコンピューターを操作することができる。しかしながら、障害を持つ多くの人々にとってコンピューター技術へのアクセスは、以前として制約されたものであり、アクセスを完全なものにするには幾多の障害(例えば、消費者や専門家の態度や入手可能なディバイスについての情報を得ることの難しさ)が残っている。リハビリテーション専門家は、技術の世界をアクセスできるようにするのに、それこそ障害者と一緒になって先頭をきる努力をする責任がある。このアクセスなくしては、機能に欠けるところのない一員として社会に統合されることは困難であろうし、おそらくは障害を持つ多くの人々にとっては不可能であろう。

 技術へのアクセスを高めるという目標について、実践や研究に対して次の勧告がなされている。

1.改造ディバイスの開発者は、改造ディバイスについての情報を収集し、配布するためにABLEDATAといった中核的な資料・情報交換センターをもっと活用すべきである。

2.消費者は、ABLEDATAといった資料・情報交換センターを専門家がそうしているのと同じように直接利用すべきである。

3.資料・情報交換センターは、ディバイスが適合するような機能的限界を基にして改造ディバイスについての情報を分類すべきである。こうすれば、消費者や専門家は彼らの状況に最も当てはまった改造ディバイスについての情報を得ることができる。

4.障害者集団の75パーセントがコンピューターをアクセスできるような改造ディバイスを見つけ出すことを目的に研究は実施されなくてはならない。

5.障害者集団の75パーセントがコンピューターをアクセスできるようになる改造ディバイスは、障害者にサービスを提供する教育や援護機関という場面において利用できるようになるべきである。

6.障害者によって改造ディバイスがもっと受入れられるようにすることを目的として、改造ディバイスの使用について障害者を教育するために複合訓練教材が開発されるべきである。含まれるべき内容は、技術の将来的可能性についての予測、技術を用いることに関する問題点、技術の利用についての誤解、そして改造ディバイスの使いかたのデモンストレーションである。

7.リハビリテーション専門家のための(使用前と使用中の)訓練は、彼らにそのタイプ、有効性、そして改造ディバイスの使用例を知らせるように作られるべきである。

8.技術の進歩につれてその改善が改造ディバイスの利用に導入されるように、改造ディバイスの研究と開発は継続されなければならない。

9.改造ディバイスの開発は、障害を持つ消費者のニーズに根ざしていなくてはならない。消費者のニーズを考慮に入れてあるべきモデルが、BehrmannとLahmによって作られている。

10.リハビリテーションの専門家は、改造ディバイスについての雇用者の理解を深めるようにし、職業場面においてそれらの役割が大きくなるようにすべきである。

(Rehabilitation Literature,July-Aug., 1986,vol.47,No.7-8)

参考文献 略

*Associate professor in the Department of Human Services and Studies at The Florida State University
**同上
***Executive director of the Waterford Center for Rehabilitation
****国立身体障害者リハビリテーションセンター


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1987年3月(第54号)9頁~18頁

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