オーストラリア統計局(ABS)が行った障害者と高齢者についての調査から、1981年以来、オーストラリアにおける障害者および障害により社会的不利を被っている人の数が非常に増えていることが分かった。 |
オーストラリア統計局は2月21日に1988年調査の予備結果を発表した。
主な障害のタイプ |
在 宅 | 保健施設 | 合 計 | ||||||
男 | 女 |
総数 |
男 | 女 |
総数 |
男 | 女 |
総数 |
|
精神障害 (精薄、変性、学習障害を除く) |
74.8 | 89.3 | 164.1 | 8.5 | 17.5 | 26.0 |
83.3 |
106.7 | 190.1 |
精薄、脳損傷による精神変性、 学習障害および特定の発達遅滞 |
56.6 | 28.1 | 84.7 | 9.3 | 18.3 | 27.6 |
65.9 |
46.4 |
112.3 |
精神障害の合計 |
131.4 | 117.4 | 248.8 | 17.8 | 35.8 | 53.6 |
149.2 |
153.2 |
302.4 |
視覚障害 |
50.1 |
55.7 |
105.7 |
2.4 |
7.6 | 9.9 | 52.4 | 63.2 | 115.7 |
聴覚障害 |
207.3 |
132.6 |
339.9 |
2.1 |
3.7 | 5.8 | 209.4 | 136.3 | 345.7 |
神経障害 |
75.0 |
66.1 |
141.1 |
8.0 |
14.0 | 22.0 | 83.1 | 80.1 | 163.1 |
循環器障害 | 140.6 |
118.9 |
259.9 | 5.8 | 14.2 | 20.0 | 146.4 | 133.0 | 279.4 |
呼吸器障害 | 124.0 |
86.0 |
210.0 | 2.6 | 2.5 | 5.1 | 126.5 | 88.5 | 215.1 |
筋骨格組織と結合組織の疾患 | 293.2 | 363.2 | 656.4 | 5.6 | 21.9 | 27.5 | 298.8 | 385.1 | 683.9 |
その他の病気と症状 | 227.6 | 194.9 |
422.5 |
9.0 | 19.5 | 28.5 | 236.6 | 214.4 | 451.0 |
身体障害の合計 |
1,117.9 | 1,017.3 | 2,135.2 | 35.4 |
83.4 |
118.8 | 1,153.3 | 1,100.7 | 2,254.0 |
合 計 |
1,244.5 | 1,132.4 | 2,376.9 | 51.0 |
115.1 |
166.1 | 1,295.5 | 1,247.5 | 2,543.0 |
精神と身体の両方の症状がある人は表の精神障害の両方に示したが合計には1人として数えられている。
この調査は多くの点で1981年の障害者調査と共通しており、さらに高齢者に関するデータ、介護者の視点からのデータも含まれている。
1988年調査から次のことが推定される。オーストラリアでは、全人口の15.6%に相当する254万3,000人の人が障害をもっている。障害の発生率は年齢と共に著しく増加している。5歳以下の幼児では3.3%に障害がある一方、75歳以上は63.5%が障害者である。障害者人口の約84%、つまり212万4,100人(オーストラリア全人口の13%)が社会的不利を受けているという結果が出ている。
これに対し、1981年の障害者調査では、障害者は全人口の13.2%で、そのうち社会的不利を受けているのは8.2%にすぎなかった。障害者とは、失明や失聴といった6ヵ月以上継続する12の機能または能力障害のうち一つ以上をもつとされる人で、社会的不利を受けている人とは、障害者になって5年以上で、その障害のために身の回りのこと、移動、言葉による伝達、学校教育、また雇用がある程度制限される人である。
障害者と確認された人は、1981年から1988年の間に、60万800人増えている。統計局は、この増加の約55%は全人口の数と構成の変化、つまり自然増加と高齢化によるものと述べ、残りの45%は、主にIYDP(国際障害者年)とその後の影響により障害と社会的不利に対する地域の人々の態度や認識が変化してきたためであると推定している。
障害と同時に社会的不利を受けている人の数の増加はさらに顕著である。つまり、全人口に対する割合が、1981年の8.6%から1988年には13.0%に増えている。実数では85万9,400人の増加である。増加の大半は重度よりも中、軽度のグループに見られることにも注目すべきである。また、態度や認識の変化は、社会的不利の有無や程度を決める根拠となる「ニード」および「困難」をどう受けとめるかに影響している可能性もある。さらに、エイドを使用していること、あるいは200mの歩行や階段の昇降ができないということを軽度の社会的不利を受けていると判断する基準にしているため、障害者のためのエイドが大幅に普及してきたことが、軽度の社会的不利を受けている人の増加につながった可能性もあると見ている。
おそらく、障害問題にたずさわっている人々の最初の印象は、この統計は事実を反映していないのではないかというものだったろう。つまり、実際には数字に示されているような障害者や社会的不利を受けている人の増加はなく、態度その他の要素がこのような大きな数字の変化をもたらしたのだといったものであろう。もし実数に変化があるとすれば、それは高度技術により未熟児や事故による脳や脊髄に損傷のある若者が生存することで重度のカテゴリーにおける増加である。このような仮説は裏付けられていないようである。表は障害のタイプを示し。図はオーストラリアの人口の全体、障害のある人とその障害により社会的不利を受けている人の割合を示している。
障害者と障害の程度により社会的不利を受けている人の数と割合
オーストラリア 1988
(ACROD newsletter,March 1989)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1990年3月(第63号)30頁・31頁