用語の解説 ADA ME

用語の解説

ADA

 米国で1990年7月26日に制定された法律 Americans with Disabilities of Act 1990(公法101-336)の略称。直訳すれば「障害をもつアメリカ国民法」であるが、その内容を意訳して「障害者差別禁止法」などとも訳されている。

 ADAの基本的な意義は、①1964年公民権法の水準が障害者を対象として実現されたこと、②従来、障害者の公民権法的存在であったリハビリテーション法504条の適用範囲が民間機関や企業にまで拡大されたことの二点にある。

 主な内容は、①雇用における有資格障害者に対する差別の禁止と「必要な配慮」の義務付け、②州や交通機関を含む公共サービスにおける差別の禁止とアクセスの保障、③民間の事業体により運営されている、不特定多数が集まる場所における差別の禁止とアクセスの保障、④聴覚障害者の用いる電話(TDD)に対する電話会社によるリレーサービスの義務付けの四点である。

 その対象者には、身体障害者、精神薄弱者や精神障害者、あるいは、エイズ・ウィルス感染者も含まれている。

 ADAは、障害者の「独立宣言」あるいは「奴隷解放宣言」などともいわれているが、ADAは内容により発効時期が異なるためその完全な実現には時間を要することが予想される。しかし、この法律が全画的に施行されれば、米国の障害者に機会の平等とバリアー・フリーな社会が保障されることとなる。

(久保耕造)

 

ME

 医用電子工学(Medical Electronics)の略だが、電子工学に限定しないという意味から医用工学(Medical Engineering)の略であるとすることも多い。工学の理論・技術を医療分野に応用し、計測・診断・治療の新たな方法を開発しようとする学問領域又はその技術を指す。広義には生物工学を含むこともある。

 このME技術の成果として作られた機器をME機器とよぶ。例えば、電子血圧計や電子体温計のように家庭内で使用されるものから心電図や各種CT(コンピュータトモグラフィ)などの病院内で計測を行う診断装置まで広く使用されている。また治療用機器についても、レーザーメスなどのように直接治療するための機器だけではなく、人工臓器や義肢、ペースメーカーなどの身体機能を代行・補助する機器もME技術の成果である。このように現在の医療はME技術に大きく依存している。

 MEは医学と工学の境界領域であるために、ME技術者やME機器の使用者には幅広い知識と経験が必要とされる。ME機器の誤まった使用は重大事故につながりかねない。そのため臨床工学技士国家資格を制定し、ME機器の使用に一定の制限を設けている。

 MEはコンピュータ、センサ、新素材、情報などの最先端技術を取り入れている。今後も産業技術の進歩とともに、より一層の発展が期待される。

(手嶋教之)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1990年12月(第66号)31頁

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