用語の解説 ピア・カウンセリング 第3セクター

用語の解説

ピア・カウンセリング

 ピア・カウンセリングとは、仲間同志によるカウンセリングという意味である。ピア・カウンセリングの発祥の地はアメリカで、1970年代初めに、アルコール中毒患者同志の間で、中毒から解放されるために、互いに支えあい励ましあっていく方法として生まれたものである。その後アメリカ全土に障害者自立生活センターが数多く生まれていく中で、ピア・カウンセリングは事業の重要な柱の一つとしてとり組まれるようになった。ここでは障害者が同じ障害をもつ人に対してカウンセリングを行うもので、カウンセラーとなる人は、障害者のロールモデルとなる人で、一定のトレーニング(話を聞く訓練など)を積んだ人が当たる。

 ピア・カウンセリングの目指すものは障害者の自立生活を援助していくもので、そのために障害者が自己を受容し、自己信頼に満ち困難にたち向かっていけるよう精神面のサポートをすること、また自立生活上で必要な情報、社会資源の提供なども行う。何よりも大切とされていることは、相談する人もカウンセラーとなる人も対等な関係であるということである。

 日本の中でこの言葉が浸透してきたのは、1988年、八王子のヒューマンケア協会(自立生活センター)が初めて全国の障害者に呼びかけ、集中講座を開催し、そのノウハウを伝えて、その後各地で講座が持たれるようになってからのことである。

(野上温子/八王子ヒューマンケア協会)

 

第3セクター

 一般には、官民共同出資で設立された事業体を意味する。本来は公共部門で行うべき事業に、民間部門の資金や経営ノウハウを積極的に活用するために、考え出された方式である。公共部門でも民間部門でもない、第3の部門(セクター)ということで、この名が付いた。この方式は、地域開発や都市開発で用いられることが多いが、読者には旧国鉄から運営を引き継いだ第3セクター方式の地方交通線が比較的なじみ深いかもしれない。

 障害者雇用の分野でも、重度身体障害者や精神薄弱者の雇用の促進を目的に、この方式が導入されている。地方自治体と民間企業が、共同出資して重度障害者多数雇用事業所や精神薄弱者のための能力開発センターを設立・運営している。労働省と日本障害者雇用促進協会では、身体障害者雇用納付金制度に基づく助成金などによって、第3セクター方式による障害者雇用企業の育成に力を入れている。昭和56年の吉備松下㈱(岡山県ほか地元2町と松下電器産業㈱が資本金5,000万円で設立した電子機器組立加工企業)を第1号に、これまでに全国に20ヵ所の第3セクター方式による事業所、能力開発センターが誕生している。それらの業務内容は、ソフトウェア開発や各種データ入力などコンピュータ関係と、電子部品や機械部品の組立加工が多い。

 また、高齢社会が本格化する中で、官民共同出資の事業体による高齢者のための新しい地域開発プロジェクトも出現している。今後、福祉やリハビリテーションの分野でも、第3セクター方式による事業の進展が予想される。

(岡田伸一/障害者職業総合センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1992年4月(第71号)43頁

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