用語の解説 ポスト・ポリオ症候群 ILO第159号条約

用語の解説

ポスト・ポリオ症候群

 ポリオに罹患して手足の麻痺を生じると、その後病気が回復しても筋力低下などの麻痺が後遺症として残存する。近年、ポリオの後遺症が罹患後十年から数十年を経過して悪化し始め、全身的な症状(疲れやすい、息切れがする)、筋肉や骨関節の症状(筋肉が細くなる、力が弱くなる、筋肉に痛みが出る、関節の変形や痛みが出る)などが出現することが知られるようになってきた。このようにポリオ罹患後相当期間を経過して生じる新たな機能障害のことをポスト・ポリオ症侯群(ポリオ後症侯群、post-polio syndrome)と呼び、これらの症例で見られる筋萎縮のことを、ポリオ後遅発性進行性筋萎縮症ということがある。

 ポスト・ポリオ症侯群の発症の原因として、ポリオで障害されている末梢神経の先端部は加齢現象や過用(手足の使い過ぎ)により崩壊しやすく、廃用(手足を使わないでいると生じる筋萎縮など)があると軽度の運動や作業によっても過用を生じやすい、などの機序が想定されている。そのため、ポリオ既往者は強い運動を少数回行うよりも、低負荷の運動を休憩を入れながら多数回行う方が安全である。日頃より適切な日常生活の活動性を維持し、廃用を防止するとともに過用に注意することか大切である。また、軽量で正しく作製された装具、杖、車いすを効果的に使用すれば負荷を軽減することができる。この病態に該当する症例は相当な数になると予想され、十分注意を払う必要がある。

(蜂須賀研二/産業医科大学リハビリテーション医学教室)

ILO第159号条約

 国際労働機関(ILO)第159号条約(障害者の職業リハビリテーションおよび雇用に関する条約)は、1981年の国際障害者年および国連・障害者の十年(1983-1992年)がテーマとする「完全参加と平等」を踏まえ、1983年のILO第69回総会において第168号勧告(障害者の職業リハビリテーションおよび雇用に関する勧告)とともに採択された。同勧告は、1955年のILO第99号勧告(障害者の職業リハビリテーションに関する勧告)を補足するものである。

 同条約は、すべての種類の障害者が適当な職業(employment)に就き、これを継続し、およびその職業において向上することかできるようにし、それによって障害者の社会への統合または再統合を促進するため、職業リハビリテーションおよび雇用に関する措置をとること等について規定している。

 同条約の批准に伴い、わが国では「障害者の雇用の促進等に関する法律」の一部改正(1992年5月)等により、従来身体障害者とくらべ対応か遅れていた精神薄弱者および精神障害者への職業リハビリテーションおよび雇用対策の強化がはかられた。

 しかし、今後わが国においてすべての種類の障害者の雇用を質・量とも大きく改善するには、厚生行政サイドでの福祉的就労等も含め、総合的な「職業リハビリテーションおよび雇用政策の策定と実施、ならびにその定期的検討」(同条約第2条)が、代表的な労使団体および障害者団体との協議のもとに、すすめられなければならない。

(松井亮輔/障害者職業総合センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年1月(第74号)45頁

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