用語の解説 Transitional Employment 通級学級

用語の解説

Transitional Employment

 Transitional Employmentは、一般に過渡的雇用と訳されている。

 この過渡的雇用はニューヨークにあるファウンテンハウスにおいて1957年に考案され、その後、米国だけでなく全世界に広がっている精神障害者の社会復帰を目指したひとつのプログラムである。

 精神障害者が地域でフルタイムで就職することは大変困難であることから、地域の一般企業の中に職場を準備し、まず、パートタイムで短期間(通常、週20時間、6ヵ月)、簡単な仕事で何ヵ所か、働く体験をすることによって、職業生活への適応性を高めようというものである。つまり、過渡的雇用は、実際の仕事の場で実際の作業を行い、最低賃金以上の給料を事業主から直接得る機会を提供するものである。

 通常、まる1日の仕事を2人のメンバー(精神障害者)が分担し、それぞれが半日ずつ働き、残りの時間をクラブハウスの日常の運営に当てる。次第にその労働時間を増加していくことにより、実社会のストレスへの耐性を強めていく。

 メンバーの誰かが病気になったりして仕事に行けなくなっても、他のメンバーかスタッフが代行することで、その仕事が遂行されることを企業に対して保証する。

 過渡的雇用の基本には、本人の働きたいという意志が最も重要であること、前の職場での成功・失敗は無関係であること、が据えられており、いくつかの過渡的雇用を経験してから一般雇用をかちとっているメンバーが大勢いるという。

(高木美子/障害者職業総合センター)

 

通級学級

 アメリカにおいて1970年代からリソース・ルームといわれる方式が視覚障害児教育のための治療教室として始まり、その後に難聴児の教育にも取り入れられるようになった。心身障害児が一般の小・中学校の通常の学級に在籍して大部分の学習を普通児とともに行いながら、障害のために特別な指導を必要とする学習内容についてはリソース・ルームで教育を受ける。「特別指導室方式」または「資料室方式」(この教室には、教育的・治療的指導を行うためにさまざまな教育機器や資料が整えられ、専門教師が配置されている)とも呼ばれている。

 わが国では平成5年度から「通級学級」方式が制度化されることとなった。通級の概念としては、各教科等の指導は主として通常の学級で受けながら、心身の障害の状態等に応じた特別な指導を特殊学級で受けることとしてとらえ、さらに特殊学級の担当教員が各学校を巡回して必要な指導を行う場合(巡回指導)等についても、通級の一形態として考えるのが適当であるとしている(通級学級に関する調査研究協力者会議)。このように通級制は巡回指導を含めたリソース・ルーム方式の制度化と考えてよいであろう。

 通級による指導が適切とされるのは通常の学級において学習するのが適切であるが、一部障害に応じた特別な指導を行うことが必要な者である。障害の種類としては、言語障害、難聴、弱視、情緒障害のほか、肢体不自由、病弱・身体虚弱の一部、精神薄弱については原則として、固定式の特殊学級における指導が適切であるとしている。この方式は、統合教育への推進という意味からも注目される。

(小鴨英夫/淑徳大学)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年3月(第75号)41頁

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