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特集/障害の定義

「障害」の概念と評価

―諸外国との比較調査から―

佐藤忠*

 1991年の身体障害者実態調査によれば、わが国の18歳以上の在宅の身体障害者は272万人とされ前回調査(1987年)に比して、31万人(13%)増加しており、従来の重度化・高齢化傾向に加え内部障害及びその後遺症を含む機能障害の相対的増加がみられる。

 これら障害者の態様の変化に加え、その社会への参加活動の活発化とニーズの多様化は「障害者」の概念や障害等級に基づくサービスの差に影響を与える「障害程度」の評価方式に関するさまざまな問題等を指摘するに至っている。

 そこで、本稿ではわが国とは異なる概念や程度評価方式を採る国の状況を把握するとともに、対照的な評価方式を同一症例に適用することにより、その相違について若干の考察を試みた。

Ⅰ.「障害者」の概念

 わが国の身体障害者法による障害者の定義及びその障害程度評価は法施行以来、身体ないし身体機能の障害に着目し、一定の基準に基き医師が診断し行政的措置たる認定に至るシステムになっているが、基準の根底にimpairment(身体機能の損傷)とdisability(損傷による能力の障害)の重視があることが特徴である。

 松本によれば、「本法による福祉の措置は、一定程度以上の障害を有する者に対して平等に行われるべき性質のものであるが、障害程度の認定に当たっては、相当に専門的な知識を要するものであり、従って、個々の措置を行うに際して一々障害の調査を行っていては到底その煩に耐えず、且つ公平を期することができない…(略)」とされ、措置の平等と評価の客観性・専門性及びその公平性を担保する方途としてimpairmentの状態をもって障害の程度を評価することとなった経緯がうかがえる。

 これに対して、近年、障害とその程度はむしろ日常生活活動(ADL)の支障や「生活の質(QOL)」の状態等によって評価すべきであるとの観点から、現在の法的な「障害者の概念」やその「程度評価方式」を見直す必要を指摘する声もあがっている。

 このような背景を踏まえ、身体障害者福祉基本問題検討委員会は、1983年、ADL等による評価について、「日常生活能力そのものが本人の意欲、環境による条件などに左右されるものであるうえ、その評価も評価者の主観によって異なることがあると考えられるので、これをすべての障害者について評価基準として採用することは時期尚早と考える」として、一部を除き、今後の専門的研究課題としている。

 いずれにしても、これについては、何のための概念規定や評価であるかとう根本的な問題をはじめ、その規定や程度評価法が、

・法の目的・手段に合致したものであるか

・法に基く福祉の措置の平等・公平性が保たれる十分な客観性を有したものであるか

という観点から十分に研究する必要があろう。

 ここで、後述する主要国における定義等を見つつ「障害」ないしは「障害者」の基本概念を整理してみると、概ね次のように分類される。

(a) 日常生活動作を基本とするもの

 Activity of Daily Living(ADL)やInstrumental Activity of Daily Living(IADL)を調査の基準とするもので、アメリカのCensus及びNational Health Interview Survey(NHIS)、Survey of Income and Program Participation において採用している(IADL は Census では使用なし)。

(b) 就労または労働能力を基本とするもの

 Work Disabilityを調査の基準とするものでアメリカのCurrent Population Survey(CPS)において採用している。

(c) 活動の制限を基準とするもの

 Activity Limitation(AL)を調査の基準とするものでカナダのHealth and Activity Limitations Survey(HALS)において採用している。

(d) 障害の程度を指数化し、基準としたもの

 Grad der Behinderung(GdB)を障害程度評価の基準として定めているもので、ドイツの障害者法(Schwerbehindertengezetz;SchwbG)において採用している。

 上記のように、「障害」の捉え方は法律や調査によって多様であり、当然のことながらその「程度」の評価・測定の方式も大きく異なる。

 これらの相違は、その法律や調査が意図するものによって生じるもので、ある程度やむをえないことであろうが、その場合でも、障害の定義や評価法の、法や調査の目的との一致とともに、相互が異ならざるを得ない必然性について十分に検証しておくことが必要である。

Ⅱ.主要国における「障害者」の定義と実態

 ここで、先に挙げた諸国の法律や調査に見られる障害者の概念・定義及び障害程度の評価法について概観する。

 なお、国による事情の違いや入手した資料の制約等により、全てが同一レベルにおいて論じられるものではないこと、更に、ここで使用した資料が必ずしもその国の全てを示すものとは言い難いことであることをお断りしておく。

1.アメリカ

 雇用・教育・医療・住宅対策等をはじめ、現在のアメリカの法体系の中で、障害者に関連するものは数十にのぼるであろう。

 個別の法律への言及は個別の議論に譲るとして、ここでは、近年話題となったADA(Americans with Disabilities Act,1990)と、アメリカの代表的な調査における概念等についてみてみる。

 ADAでは、4,300万人の国民が身体的・精神的に何らかの障害を有しているとしているが、これら数値の明確な根拠は見当たらず、「障害者」は(a)個人の主たる生活活動の1つ以上を著しく制限する身体的・精神的機能障害、(b)そのような機能障害の経歴があること、及び(c)そのような機能障害をもつとみなされること、とされており、この定義は現在でもアメリカのリハビリテーション政策の重要な位置を占めるRebabilitation Act(1973)に準拠したもので、最も包括的なものであるといえる。

 法律の性格上、障害の評価等に関する詳細な記述がないので、以下で、アメリカの各種調査における定義や評価方式等についてみてみたい。

(1) Census(1990)

 U.S.Bureau of Censusによる15歳以上の国民サンプル調査であり、概要は以下の通り。

① 職業上の障害

 過去6ヵ月以上にわたり、身体的・精神的またはその他の健康上の問題があった者、及びその程度について調べて、以下に分類。

(a)非重度障害者:1つまたはいくつかの職務上の制限があった。

(b)重度障害者:障害のために退職した。

② 日常生活上の障害

 過去6ヵ月以上にわたり健康上の理由から以下のような日常生活上の困難が続いているかについて調査。

(a) 屋外での移動の困難

 買い物や病院へ行くための1人での外出

(b) 自己の身辺管理上の困難

 入浴・衣服の着脱・屋内での移動等自己の身辺管理に必要な行動

(2) National Health Interview Survey (NHIS,1990)

 National Center for Health Statistics;NCHS)による16~69歳の国民サンプル調査で、概要は以下の通り。

① 職業上の障害とその程度

(a) 重度の職業上の障害

ア.就労や職業上支障となる障害や健康上の問題があるか。

(b) 非重度の職業上の障害

ア.障害や健康上の問題のために、1つまたはいくつかの行動上の制限があるか。

② 日常生活上の障害

 5歳以上の国民を対象とし、日常生活上の障害について以下の通り調査。

(a) ADL(Activities of Daily Living)のレベルで介助を必要とする者

 障害又は健康上の理由により、食事・入浴・衣服の着脱・屋内の移動等の主要な活動に際して介助を必要とするか。

(b) IADL(Instrumental Activities of Daily Living)のレベルで介助を必要とする障害または健康上の理由により、家事・必要な業務(作業)・買物及び外出等に際して介助を必要とするか。

(c) 何らかの介助を必要とする者

   上記(a)または(b)に該当する者

なお、1989年のNHISでは、活動上の制限(Activity Limitation)として、年齢階層別に次のような主要な活動(major activity)の評価基準を設定している。

ア.5歳以下;普通の子供の遊びができるか

イ.5―17歳;学生生活ができるか

ウ.18―69歳;働くことや家族のための家事ができるか

エ.69歳以上;自立した生活ができるか(入浴・買物・衣服の着脱・食事その他の活動が第三者の助けなしにできるか)

 これらに関する回答から、(ア)これらの活動ができない場合(イ)できたとしても、特定活動または、ある程度の困難がある場合とに分類し、前者を「重度の障害」とみなす。

 なお、1989年調査における結果は次の通り。

a.在宅者で「主要な活動(major activity)の制限」があるとされる者の総数 34,339,000人
b.上記の内「重度」

9,985,000人

c.同「中程度」 13,151,000人
d.同「軽度」 10,959,000人
e.その他、施設入所

2,000,000人

(3) Survey of Income and Program Participation(SIPP)

 U.S.Bureau of Censusによる15歳以上の国民サンプル調査で、概要は以下の通りである。

(a) 機能上の制限(Functional Limitation)に関する以下の事項

ア.矯正下における通常の新聞文字の読み

イ.普通の会話の聞こえ

ウ.話されていることの理解

エ.10ポンドの食品袋の持上げ・運搬

オ.3ブロック(1/4マイル)の歩行

カ.休みなしでの階段の昇り

キ.屋外での自立(単独)歩行

ク.屋内での自立(単独)歩行

ケ.ベットでの自立起床・就床

 上記の行動について、1)困難があるか 2)全てのことができないか、または、第三者の助けを必要とするか、を回答させ、後者の場合を「重度の障害」とみなす。

  

(b) ADLレベルでの介助の必要性に関する事項

ア.入浴

イ.衣服の着脱

ウ.トイレの使用

エ.移動

オ.排泄

カ.食事

(注)「移動」は、ベットからの起床/就床、椅子の腰かけ等

(c) IADL(ADLレベルを超えたより複雑な行動)のレベルで介助の必要性に関する事項

ア.家計の管理

イ.食事の準備

ウ.旅行

エ.買物

オ.家事

カ.電話の使用

キ.医薬品の使用

 なお、1984年度の本調査における結果は次の通りである。(15歳以上)

 

a.日常生活活動上何らかの「機能障害」を有する者 37,304,000人
b.上記の内「重度の障害」とされる者 13,537,000人

2.ドイツ

 ドイツにおける障害者対策はリハビリテーション給付の調整に関する法律をはじめ、各種手当制度等が複雑に関連しあって機能しているが、なかでも最も中核的かつ障害評価に関しても体系的であろうと思われる重度障害者法等を中心にみてみる。

(1) Schwerbehindertengesetz(SchwbG;1986,重度障害者法)

 本法において、障害者とは「身体・精神・情緒の障害により、障害の程度がすくなくとも50%以上の者であって、ドイツ連邦内に住み、かつ常時居住すべき住居があり、更に連邦内で雇用されている者」とし、1986年以前までは上記「減退の程度」をMdE(Minderung der Erwerbsfahigkeit)として「生計能力の減衰」をもって示していたが、1986年以降、これをGdB(Grad der Behinderung)すなわち「障害の程度」と置き換えて使用している。

 GdBの決定は、「重度障害法と同一基準による社会補償法に基づく医学的評価のための基準」(1983)に拠って行われるが、同基準は10から100までを10段階に区切られており、障害の程度に対応して決定されたGdBは援護サービスの受給者証である障害者カードに記される。

 なお、上記の重度障害者(GdB;50以上)とされない場合でも、障害者と「みなされる」として障害保険、社会補償給付等の裁定を根拠とされる。

(2) 社会援助法(Bundessozialhilfegesetz)

 法の対象者は、次の各号またはその恐れのある者(詳細は「医学的評価のための基準」による。)

ア.四肢の欠損または機能障害、歩行能力の一時的でない重大な損傷

イ.障害が重度である奇形。脊柱湾曲

ウ.視力・聴力・話す力の一時的でない重大な損傷

エ.精神・情緒の重大な障害

 連邦内各州によって障害者の実態把握等が若干異なり、詳細を含めて総括した情報が入手困難であったこと、および障害者の概念が、GdBではあるとは言え、その基本はMdEと大差ないところから一般的な比較は困難であるが、連邦政府労働社会省によれば、障害者数は以下の通りである。

「ドイツ連邦内において生活し、居住の場を有しているか、または雇用されている者で、その障害の程度が50%以上であるが故に、重度障害者法に基づく援護を希望する者」で、

 a.雇用されている者   約842,000人

 b.雇用されていない者  約120,900人

とされている。(1990年)

3.カナダ

 カナダには障害者のためだけの特別な法律はないが、Statistics Canadaによって1983年にCanadian Health and Disability Surveyがおこなわれたのをはじめ、1987年と1991年にはHealth and Activity Limitation Survey(HALS)が実施されているので、ここで、HALSをもとにカナダの状況をみてみる。

(1) Health and Activity Limitation Survey(HALS)

 Statistics Canadaによる全国民に対する調査で、「活動の制限の状況」の把握をねらいとしているところから、その評価の基準はImpairmentの状態ではなく、その結果としての活動(Activity)を主としている。

① 調査の目的

  以下に関するデータの収集を目的とする。

(a) 障害の実態及び程度

(b) 家庭生活/雇用/教育/屋内行動/移動/経済/レクリエーションに関して本人が被る障害

(c) 福祉機器使用状況及びニーズ

(d) 障害に起因する支出

② 調査の構成

・成人用(15歳以上)

ア.基本的事項

イ.福祉機器、医療等のサービス

ウ.日常生活活動

エ.教育

オ.雇用

カ.移動

キ.屋内での行動

ク.レクリエーション及び生活状況

ケ.経済的状況

・児童用(14歳以下)

ア.基本的事項

イ.教育

ウ.移動

エ.屋内での行動

オ.身体的活動、生活状況

カ.経済状況

  

 なお、調査の中でスクリーニングに該当する基本事項(成人用 Section A)の構成等は以下の通りである。

・設問

 

聞き取りの制限 (聴覚障害) 2問
見え方の制限 (視覚障害) 2問
会話の制限 (言語障害) 1問
身体的動作の制限 (肢体不自由) 12問
移動の制限 (下肢機能) 5問
巧緻動作の制限 (上肢機能) 4問
体幹保持等の制限 (体幹機能) 3問
生活の場での制限   4問

33問

・障害程度のスケール

 各事項について

 ア.全く不可能な場合    2点

 イ.部分的には可能な場合 1点

 ウ.障害(制限)がない場合 0点

・障害程度のスケール

 上記得点の合計により、以下に区分する。

 ア.4点以下 軽度の障害

 イ.5―10点 中程度の障害

 ウ.11点以上 重度の障害

 なお、やや古いが、入手している最も詳細な調査結果(1987年)による障害者数及び障害程度の割合は以下の通りである。

 

a.重度の障害

543,510人

(19.5%)
b.中程度の障害

964,880人

(34.5%)
c.軽度の障害 1,276,160人 (46.0%)

Ⅲ.障害程度評価の臨床的比較

 これまでみてきたように、「障害」の概念やその程度評価法式は各国の実状・調査の目的等によって極めて多様である。

 ここで、Impairmentに重点をおく日本とDisabilityを重視したカナダの調査(HALS)との障害程度評価方式を同一症例に適用し、その特徴等を比較してみる。

 比較に際しては、対象を肢体障害に限定し、程度評価については、便宜的に日本の身障等級1・2級を重度、3・4級を中程度、5・6級を軽度とした。

 なお、HALSの調査項目は、休みなし歩行・階段昇降・荷物を持った移動・ベッドでの起床及び就床等であり、先に紹介したアメリカのSIPPと類似したものである。

〔症例比較〕

 〈症例 1〉 32歳 女性 「両大腿切断」

歩行:義足及び両松葉杖にて50m可能

階段昇降:かろうじて可能

家庭、職場でやや制約あり、

スポーツも可

*評価

 日 本:1級(重度)

 カナダ:11点(重度)

 〈症例 2〉 45歳 男性

「右下腿切断、左大腿切断」

歩行:義足をつけて200m可能

階段昇降:かろうじて可能

家庭、職場でやや制約あり

スポーツは不能だがレジャーは可

*評価

 日 本:2級(重度)

 カナダ:7点(中程度)

 〈症例 3〉 35歳 男性 「右下腿切断」

歩行:1㎞可能

階段昇降:可能

家庭、職場でやや制約あり

スポーツも可能だがやや制約あり

*評価

 日 本:4級(中程度)

 カナダ:3点(軽度)

 〈症例 4〉 26歳 男性

「脊髄損傷、T7完全」

「両下肢機能全廃」

起立・歩行:不能

階段昇降:不能

車椅子でのADLは自立してるが家庭・職場でやや制約あり

スポーツも可能だが、やや制約あり

*評価

 日 本:1級(重度)

 カナダ:13点(重度)

 〈症例 5〉 65歳 男性

「脊髄損傷、T10不全」

「両下肢機能の著しい障害」

起立:20分

歩行:30m(杖を要す)

階段昇降:杖と手すりでなんとか可能

スポーツ不能

*評価

 日 本:2級(重度)

 カナダ:9点(中程度)

 〈症例 6〉 68歳 男性

「脳梗塞、右片麻痺」

「右上下肢機能全廃」

起立:30分

歩行:200m(杖及び短下肢装具使用)

発症を機に退職

スポーツ不能

*評価

 日 本:1級(重度)

 カナダ:15点(重度)

 〈症例 7〉 20歳 男性

「頭部外傷、右片麻痺」

「右上下肢機能の著しい障害」

歩行:200m(杖及び短下肢装具使用)

階段昇降:手すりがあれば可能

学校:退学(通学の能力はある)

旅行:可能

*評価

 日 本:3級(中程度)

 カナダ:7点(中程度)

 〈症例 8〉 23歳 男性

「左腕神経叢麻痺」

「左上肢機能全廃」

歩行・階段昇降:可能(問題なし)

就業もスポーツも可

*評価

 日 本:2級(重度)

 カナダ:7点(中程度)

 〈症例 9〉 55歳 男性

「左上腕骨骨折後肩関節拘縮」

「左肩関節軽度の機能障害」

左肩関節:可動域 90度、筋力5

*評価

 日 本:該当しない(7級)

 カナダ:3点(軽度)

 〈症例 10〉 60歳 女性

「閉塞性動脈硬化症による右足趾壊死」

「右足趾の全てを欠く」

歩行:100m

起立:10分

旅行、レジャーに制約あり

*評価

 日 本:該当しない(7級)

 カナダ:4点(軽度)

 以上の10症例をまとめると次のようになる。

日・加の障害程度の比較
疾患 (級) (点)
両大腿切断 (1) (11)
下腿+大腿切断 (2) (7)
下腿切断 (4) (3)
脊髄損傷 (1) (13)
脊髄損傷 (2) (9)
脳梗塞 (1) (15)
頭部外傷 (3) (7)
腕神経叢麻痺 (2) (7)
骨折後肩拘縮 (7) (3)
10 閉塞性動脈硬化 (7) (4)

(注)重:重度  中:中程度

   軽:軽度  非:非該当

 比較結果をみると、日本方式(身障法による評価方式)とHALS方式に若干のズレがあることが分かる。

 まず、症例1・4・6・7では同程度の評価がなされるが、症例2・3・5・8ではImpairment重視の日本方式の方が、Disability重視のHALS方式より障害の程度がより重度に表現され、逆に、症例9・10のように日本では障害者に該当しないものが、HALSでは軽度の障害があるものとして認められる。

 これをより詳細に検討してみると、症例1・4・6のようなより重度の障害では、日本でもHALSでも重度の障害として位置づけられるが、症例2・3・5・8のようにImpairmentレベルのほうがDisabilityより、障害の程度がより重度に表現されることがわかる。これは補装具等の使用により、Disabilityレベルの障害がかなりの程度軽減され、その状態で評価されるためであろう。たとえば、症例2・3のような切断の場合、義足の進歩によりDisabilityレベルでの障害の程度は歩行という点でかなり軽減されると考えられる。

 他方、症例9・10のように、Impairmentレベルでは軽度の障害(障害者としては該当しない)であっても、Disabilityレベルで障害者として包括されるケースもでてくる。

 上の結果から、次のようなことが指摘されよう。

① Impairmentレベルで重度のものはいずれも同程度に「重度」とされる(日本方式の方がやや重度に評価する傾向がある)。

② 補装具装着などリハビリテーション効果がHALS方式の方が顕著に評価される(impairmentは重症でも行動の可能性が高ければ軽度に評価される)。

(例)大腿切断でも、義足を付けて歩ければHALS方式では比較的軽度に評価されるが、日本では「大腿以下がない」ということ(impairment)が重視されるため、比較的重度に評価される。

③ 損傷の程度は軽度でも、行動が不便であればHALS方式の方がより重度に評価される。

(例)日本では級外(7級)程度でも、生活に少しでも不便があればHALS方式では「障害者」となる。

④ 「障害者」であるか「どの程度の障害があるか」は、その観点によって異なるものの、基本的には重大な身体機能の欠損(Impairment)は重大な「行動上の制限」を伴うところから「重度」の障害については、双方ともほぼ同様の評価がなされる。

Ⅳ おわりに

 今回調査から得たものを総括すれば、「障害者」の概念とその「障害程度の評価」すなわち「障害」をどのレベルでみるかは、その法律なり調査なりの目的によって決まるものであり、公表された数字は単純に比較できるものでなく、その前提が重要であること。さらに、日本(身障法)の現行評価方式にはリハビリテーション効果が反映されにくく、法の趣旨を含めてそのシステムが検討されてもよい時期であろうことなどが言える。

 いずれにしても、今後、障害者の概念や評価方式等を検討する際は、その目的を過不足なく満たす方法であるか否かを基本的視点として臨むことが重要であろう。

*         *         *

 調査及び執筆にあたり、厚生省社会・援護局寺島彰専門官からは資料の提供を、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院木村博光医師には症例比較の労を提供賜った。誌面をかりて両氏にお礼を申し上げる。

〈参考文献〉 略

国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1995年3月(第83号)14頁~21頁