特集/地域リハ 地域リハビリテーションの報酬体系のあり方を探る

地域リハビリテーションの報酬体系のあり方を探る

藤原茂 *

はじめに

 診療体系をめぐる理論があちらこちらで起こっている。その一つ、与党医療保険制度改革協議会が提示した「診療報酬体系の見直しの論点」では、「出来高払い制」について「患者の症状に応じた医療サービスの提供が可能であり残すべきである」とする一方、「包括制・定額制(以下マルメ)」については、「粗診の可能性の指摘と医療内容についての行政上のチェックができない」と指摘している。リハビリの診療報酬体系を語る上では、急性期・回復期・維持期の各期に応じたあり方を議論すべきであるが、紙面の都合上、地域リハビリテーションの維持期リハ、それも訪問サービスの個々に焦点をあてて述べたい。

1.在宅訪問リハは何人可能か

 リハ関連の診療報酬体系は、一日取り扱い人数規制と時間規制(複雑40分・簡単20分)によって過剰診療をコントロールしてきた。訪問リハには時間と人数に関する規定がない。果たして1日に何人の訪問が可能かについて調査した(表1)。

(表1) 訪問リハの所要時間
(協力病院及び施設) 松山リハビリテーション病院・済生会山口病院・山口リハビリ病院・ウエルケア重信
単位(分) 1 10 11 12 13 14 15 16
移動手配準備・携帯具準備ほか 0 5 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
施設駐車場へ移動 1.5 3 1 1.5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
移動時間 25 10 30 10 30 7 10 20 3 5 15 20 10 7 3 15
移動距離 (㎞) 13 5 20 4 10 20 4 6 10 3 7 8 4 3 1 6
患者A宅駐車に要する時間 1 1   1 1 1 1 1 1 1 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5
駐車場より患者A居室までの移動 1 3 0.5 1 1 1 1 1 1 0.5 0.5 1 0.5 1 0.5
挨拶・時候の話題 5 3 1 15★ 80 55 65 55 60 80 40 60 60 60 40 50
前回よりの状態確認 5 5 0.5 10★
本日のリハ内容確認 0 2 0.5 0★
正味リハ時間 40 20 30 60★
次回の予定確認を含む終了後の会話 15 5 1 10★ 10 10 5 5 3 5 10 10 10 10 10 10
患者A居室より駐車場へ移動 1 3 0.5 1★ 1 1 1 1 1 0.5 0.5 1 0.5 0.5 1 0.5
移動時間 20 10 15 8 15   7 10 40 30   10   5 25  
移動距離 (㎞) 8 5 10 3 7 3 3 12 10 6 2 0.5
患者B宅駐車に要する時間 2 1 0.1 1 1 1 1 1 1 0.5 0.5 0.5
駐車場より、患者B居室までの移動 2 3 0.25 1 1 1 1 1 1 0.5 0.5  
挨拶・時候の話題 5 3 0.5 5 50 50 50 90 80 50 40 40
前回よりの状態確認 10 5 0.25 10
本日のリハ内容確認 5 2 0.25 0
正味リハ時間 60 20 30 40
次回の予定確認を含む終了後の会話 20 5 1.25 10 5 25 10 5 5 10   10 10
患者B居室より、駐車場へ移動 2 3 0.25 1 1   1 1 1 0.5   0.5 0.5
移動時間 30 10 30 8 25 7 3 15 30 20 15 15 4 10 20 15
移動距離 (㎞) 20 5 20 3 7 20 1 6 10   7 7 10 3 10 6
施設駐車場車庫入れ・車両記録記入 3 5 1 1.5 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
駐車場より、デスクまでの移動 3 3 1 2
一息入れる 5 3 0 5 10 5 10 10 5 10 5 10 5 10 10 5
記録(2人分) 5 5 14 10
その他管理業務 報告   5                            

連絡

3
  2
総所要時間 268 150 165 216 239 96 190 178 218 257 133 183 118 160 169 117
続き
単位(分) 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
移動手配準備・携帯具準備ほか 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0
施設駐車場へ移動 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 1.5 1 1 1
移動時間 3 20 15 10 25 20 10 30 25 20 30 5 10 30 20 10
移動距離 (㎞) 1 8 7 3 12 7 3 12 7 8 13 3 7 16 7 3.5
患者A宅駐車に要する時間 0.5 0.5 0.5 1 0.5 1 1 1 1 1 1 1 1 2 3 2
駐車場より患者A居室までの移動 0.5 0.5 1 0.5 0.5 1 1 1 1 0.5 1.5 2 1 0.5 2 1
挨拶・時候の話題 45 40 50 60 60 40 80 60 60 50 5 5 10 80 60 50
前回よりの状態確認 10 3 10
本日のリハ内容確認 0 2 0
正味リハ時間 40 50 50
次回の予定確認を含む終了後の会話 20 20 5 10 10 5 10 15 10 10 20 5 15 10 15 10
患者A居室より駐車場へ移動 0.5 0.5

1

0.5 0.5 1 1 1 1

0.5

1.5 2 1 0.5 2

1

移動時間 &3160; 20 15 5       2   20   15        
移動距離 (㎞) 10 7 1 0.5 1 15
患者B宅駐車に要する時間 0.5 0.5 0.5 1 0.5 1
駐車場より、患者B居室までの移動 0.5 1 0.5 1 0.5 2
挨拶・時候の話題 60 40 50 55 50 1
前回よりの状態確認  1
本日のリハ内容確認 2
正味リハ時間 45

次回の予定確認を含む終了後の会話

5

5 10 10 5 2
患者B居室より、駐車場へ移動 3 1 0.5 1 0.5 2
移動時間

3

5 3 10 25 20 10 35 25 2 30 15 10 30 20 10
移動距離 (㎞) 1 2 1 4 12 7 3 12.5 7 1 13 10 7 16 7 3.5
施設駐車場車庫入れ・車両記録記入 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1.5 3 3 2 2 2
駐車場より、デスクまでの移動 2.0 3 3
一息入れる 5 10 10

10

10 5 5 10 5         5 5 5
記録(2人分) 5 3 5
その他管理業務 報告                                

連絡

 
総所要時間 98 199 164 181 156 118 144 239 156 194 181 203 155 191 161 124

★は、同時に祖母と娘婿の2名を同じ時間帯に行ったものである。

1.施設駐車場へ移動:常に生活をしている部屋から駐車場までの移動及び、車両への乗り込み時間

  **アンケートで未記入のものは、一律1分として記載

2.「施設駐車場車庫入れ・車両記録記入」「駐車場より、デスクまでの移動」

  **アンケートで未記入のものは、併せて一律2分として記載

a.訪問リハ業務細目(表2) 

 午前(午後)半日の訪問リハ業務細目を25項目設定し各所要時間を調べた。用紙は連続2人(3人)訪問用の2種類とし、4人以上の場合は両用紙を組み合わせて使用した。

(表2) 連続2人訪問する場合の業務手順と細目
(1) 出かける前の準備(カルテ・伝票の用意・携帯具等の手配・電話ほか)
(2) 病院駐車場への移動
(3) 最初の訪問A宅への移動
(4) A宅駐車確保
(5) 駐車場から患者A居室までの移動
(6) 挨拶、時候の話題等リハ実施前のコミュニケーション(家族の療養相談等)
(7) 前回よりの状態確認(バイタルチェック)
(8) 本日のリハビリ内容確認(インフォームド・コンセント)
(9) リハ実施
(10) 次回の予定確認含む終了後の会話、挨拶
(11) 患者A居室より、駐車場へ移動
(12) 2番目の訪問先、B宅までの移動
(13) B宅駐車場確保
(14) 駐車場から患者B居室までの移動
(15) 挨拶、時候の話題等リハ実施前のコミュニケーション(家族の療養相談等)
(16) 前回よりの状態確認(バイタルチェック)
(17) 本日のリハ内容確認(インフォームド・コンセント)
(18) リハ実施
(19) 次回の予定確認含む終了後の会話、挨拶
(20) 患者B居室より、駐車場へ移動
(21) 病院(施設)までの移動
(22) 病院駐車場車庫入れ、車両記録記入等
(23) 駐車場より自分のデスクまでの移動
(24) 一息入れる
(25) 記録その他管理業務(報告、連絡)

b. 訪問リハビリ所要時間

 表2の25項目を直接業務・情報収集・移動・管理業務の4分野に振り分け、該当する業務細目番号と調査結果(平均所要時間)を示す(表3)。

(表3)
  該当細目番号 平均時間
移動 2・3・4・5・11・12・13・14・20・21・22・23 48.5
情報収集 6・10・15・19 13.9
直接業務 7・8・9・16・17・18 101.3
管理業務 1・24・25 8.7

訪問平均時間は以下の通りであった(表4)。

(表4)
1人/半日実施の場合 142.7分
1人/半日実施の場合 188.1分

 調査結果から半日2件、1日4件実施がMAXであることが判った(1軒で2ケース実施の表1の4のケースは例外とする)。

 移動・情報収集の時間的な違いがケースごとにあっても、「人数規定」や「時間規定」は設ける必要なく、おのずと半日2件・1日4件MAXに落ち着く。ならば、マルメにしても出来高払いでも大差ないではないかと言う声が起きそうである。果たしてそうなのか、以下に考えていきたい。

2.状態レベルとサービス量の比例・反比例

 冒頭に紹介した与党医療保険制度改革協議会は「患者の状態に応じた医療サービスの提供」を果たすのには「出来高払いがよい」という。それを在宅リハサービスと障害レベルとの関係で見てみよう。

 リハメニューを「基本動作」(寝返り、起きあがり、立ち上がり)、「移動動作」、「ADL」と「高次神経関連動作」の4つに大別した。この4つのサービスと要介護状態区分とのバリエーションを一覧にしてみた。(図1) 

(図1)

(図1)p26

 障害レベルに応じたリハサービス提供のポイントは個々の矢印のどことどこを結び、その線の太さはどうか(重点化)と、どの順に行うか(優先化)が肝心なのである。訪問の都度こうしたサービス選択を実施していく過程こそ地域リハの原理原点であり、個々一つずつサービスが単独ではなく連携して提供されなければ効果的でない。確実にそれぞれのサービスを実施させることが肝心である。そのためには、出来高払いが適していると私も主張したい。

 過酷な介護を必要とするレベル(要介護状態区分度5)より、要中等度介護(同2)や要重度介護(同3)(同4)のような介護度が弱いレベルの方がリハビリ必要度が高いことが、図1から推定出来る。介護サービスはリハビリと異なり、重度化するほど介護量を必要とし、軽度になるほど少ないというように「障害レベルとサービス量が比例する」のである。こういう場合はマルメでその質を補うことが十分可能である。リハビリの場合は反比例とまではいかずとも、比例しないことは確かである。利用者にとっては内容と量(時間)が決められたサービスを必要量供給でき、行政側にとってはサービス内容の量と質のコントロールを要求しやすい方式、すなわち「出来高払い」が適切であると考える。

3.在宅リハビリの比重差

 在宅リハから始まり期間が長期化して、リハ・サービスの内容・量とも鈍化(パターン化)し、遂にマンネリ化していくことが通常のプロセスである。そこにはリハの必要度の違い(比重差)がある。在宅生活開始直後から一定期間、家族や患者は家庭環境に適応すべく様々な努力をし、生活様式の再学習(確認)や生活リズムに即したADLの自立方法(家族援助方法)を実践、展開する。療法士にも患者の直接指導や家族、ヘルパー、訪問看護婦等との情報交換や対策相談確認業務といった内容がこの時期に集中して要求される。

 在宅開始以後からマンネリ化するまでの期間をリハの比重差を考慮し、4つに分けることを提案する。

①「在宅復帰早期訪問リハ」(開始1ケ月まで)

②「在宅復帰開始集中リハ」(同、3ケ月まで)

③「在宅復帰開始後リハ」 (同、6ケ月まで)

④「在宅訪問リハ」 (同、6ケ月越えて)

 現行の診療報酬体系では「発症からの期間」「入院からの期間」の別により1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月等々の設定があるように、「在宅家庭復帰開始からの期間」設定があってもしかるべきである。①から③までは出来高払いとし、④をマルメではどうだろうか。

4.《マンネリ》こそ《ベスト》である

 ここに24時間ホームヘルパーの「日勤帯・夜間早朝帯での実施業務内容」がある(図2)。サービス利用(実施)人数が多い項目は必要度が高いと解釈すると、全26項目中リハは日勤帯では19番目、夜間早朝帯では20番目という結果となる。パターン化した(在宅が長期化した)場合は、リハ要求より「身辺ケア・家事援助」のような目先困ることが優先される現実がある。それでも適度にリハサービスが実施されればよいが、無視されると機能維持にブレーキが掛かる。維持に必要な最低限のリハ(内容と回数)を制度として補償するよう提案したい。そうしなければ機能ダウンペースが早まり(強まり)、結果的に介護保険費や医療費を使ってしまうことになる。

 具体的に2つの提案をしたい。1つ目はマンネリ化した後の長期継続リハは「マルメ」で、最低週1回を保障する体制にすること。2つ目は「リハ検診」を義務化することである。ガン検診のようなイメージで定期的(約6ヶ月ごと)に機能評価とリハメニューのチェックを行うのである。マンネリ状態の維持を図ることこそ素晴らしいリハgoalだと声を大にしたい。

図2 日勤態の訪問で実施したことと夜間・早朝で実施したことの比較

図2 日勤態の訪問で実施したことと夜間・早朝で実施したことの比較

5.金が無ければ在宅リハは受けられないか?

 ケアプランでリハが必要となっても総経費がいくらかかるかという現実が立ちはだかる。そこで、どのくらい在宅サービスに金がかかるかを見てみよう。まず、各在宅サービスの時間単価をやや強引に引き出し、モデルサービスケースを提示してそのサービス総額を計算してみよう。金が無ければリハは受けられない時代になりはしないだろうか。どのくらいあればいいのか。考えていく材料を提供しよう。

a.サービス単価設定

 各単価設定については関連細目の中で最も高い金額を選択し、1時間相当額を勤務時間(8時間)で除した(以下全て一の位を四捨五入)。

① ホームヘルプサービス

 居宅生活支援事業のホームヘルプサービス事業費一般基準の中の非常勤職員時給額を通常の単価とし、早朝夜間巡回の場合は事業委託基準の1時間当たりの単価をピックアップした。

身体介護中心業務
(介護型)

家事援助中心業務
(家事型)

通常     1,390円/時     920円/時
早朝・夜間等 2,640円/時 1,780円/時

② デイサービス

 デイサービスセンター(併設型)のA型(重介護)では、標準利用数一日15人に対して、運営費3,621万円が支給される。そこで年間標準延べ利用者数を出し、1人1日単純利用単価を以下の計算式で割り出す。単純とは「痴呆性老人加算」「単独型加算」「利用人数加算」等を要しない規模・内容という意味である。

年間延べ標準利用者数=

15人(標準利用者数)×6(日/週)×50(週)

単純1人1日利用単価=

運営事業費÷年間延べ標準利用者数

デイサービスの利用単価は、次のようになる。

1,341円(1日6時間利用の場合)

2,012円(1日4時間利用の場合)

③ ショートステイ

 老人短期入所運営事業費の「家族の介護を受けている場合」で、「老人短期入所施設」に「社会的理由」で利用する最高額(1日9,320円)を採用する。これを24時間で除すと388円となる。これに食費自己負担分(800円)、痴呆老人加算(790円)を合算したものをショートステイ利用単価とする。

1,978円/時間

④ 老人デイケア

 老人デイケア料(1,028点)〈6時間以上〉を算定根拠とする。6時間実施で計算。

1,713円/時間となる。

⑤ 訪問リハビリ

 ア.訪問看護ステーションから出向く場合

 訪問看護ステーションでは、「訪問看護基本療養費(5,300円)」と、「訪問看護管理療養費」「情報提供療養費」「ターミナルケア療養費」、さらに24時間連絡体制等々の加算がある。医療法人近森会「訪問看護ステーションちかもり」での平均単価は、9,300~9,500円、熊本機能病院訪問看護ステーションでは、9,261円となっており、この2例から平均単価を9,300円とした。

 表3の1人半日142.7分実施より時間換算すると9,300(円)÷142.7(分)×60(分)=3,791円/時となる。

 イ.病院・診療所から出向く場合

 病院・診療所における訪問リハ単価は、看護ステーションより安いのは明白だ。診療報酬項目、「在宅訪問(寝たきり老人訪問)リハ指導管理料(5,300円)」のみである。

 5,300(円)÷142.7(分)×60(分)=2,228円/時

 同じ訪問リハを行う中で訪問看護ステーションから出向いた方がよくなる矛盾は、地域リハセンター・訪問リハステーション構想が具体的になった折りに当然解決されるべきであろう。

 以上の時間単位の額を一覧にする(表5)。

(表5)
在宅サービス名 1時間当たりの額
ホームヘルプ身体介護中心業務 (介護型) 通 常 1,390円
早朝・夜間等 2,640円
ホームヘルプ家事援助中心業務 (家事型) 通 常 920円
早朝・夜間等 1,780円
デイサービス 1日6時間利用 1,341円
1日4時間利用 2,012円
ショートステイ (24時間) 1,978円
老人デイケア (6時間) 1,713円
訪問リハ 訪問看護ステーションから 3,791円
病院・診療所から 2,228円

⑥ 医学的管理

 月1回の診療所からのかかりつけ機能を想定し、「寝たきり老人在宅総合診療料:2,600点」があるので(院外処方箋を交付しない場合)、「寝たきり老人訪問診療料:820点」を単価とする。その他24時間連続加算などあるが含まないこととする。ただし、老人訪問看護ステーションに訪問看護の指示書を交付し「老人訪問看護指示料:300点」加算を入れる。よって上記の3つ分の合計で、月1回37,200円になる。

 こうした作業の中でも明らかなように現状では①から③までの項目は「マルメ」であるため、単価設定する作業に苦心した。それに比し、④⑤は「出来高払い」であるため、単純明解であった。「マルメ」は直接の単価が利用者に見えにくく「出来高払い」は白日の下にさらされる特徴がある。サービス単価が高いか安いか、判断材料を利用者に提供すべきだ。「出来高払い」はそれに適した方法であると思う。

b.在宅サービス、総額でおいくら?

 単価表を基に、長期在宅モデルケースとして平成8年度版厚生白書に掲載された(P128)「要介護高齢者に対するサービスモデル」(図3)のケアプランの経費を算出した(表6)。

図3 厚生白書のモデルケースの積算
Ⅱ    自分で寝返りをすることはできるが、日常生活行動には介護を必要とし、療養上の管理を必要とするケース。要介護高齢者が一人暮らしの場合。
項目 高齢者の状態 対応するサービス
寝返り 自分で寝返りをすることができる。  
移動 主にベッド上、居室内に限られる。 デイサービスにより外出し老人同士、介護スタッフと交流を行う。
摂食 なんとか自分でできる。  
排泄 半介護を要する。 ヘルパーにより毎日3回の排泄支援を行う。(デイ通所日除く)
着脱 半介護を要する。 ヘルパーにより朝・夜に着替の支援を行う。
入浴 半介護を要する。 デイサービスにより週3回の入浴、外出等を行う。
調理 困難 ヘルパーの週15回の援助に合わせて適宜行う。
掃除等 困難
疾病 療養上の管理を要する。 週1回の訪問看護等により療養・衛生上の管理を行う。
家族   例えば体調が悪く居宅生活が困難なときには、2か月に1回1週間程度のショートステイを行う。
その他生活全般   週1回はヘルパーによる援助が行われ、そのうち月1回は訪問看護婦、ヘルパー、必要な場合にはソーシャルワーカー、保健婦などによる居室での話し合いが行われる。
 老人および家族に対するその他のケア、孤立や家族関係の調整等の諸問題につき市町村のソーシャルワーク、NPO等との連携による生活全般の支援が行われる。

 

具体的なサービス量

(1)ホームヘルプサービス 週15回訪問 7時間40分/週
(2)デイサービス 週3回通所 18時間/週
(3)訪問看護 週1回訪問  
(4)ショートステイ 2か月1回入所 7日間

 

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図3(続)

モデル月(30日)を以下に設定し、白書のサービス量を便宜的に修正する
白書記載内容

修正した内容 

ホームヘルプサービス ホームヘルプサービス
週15回・7時間40分/週 〈介護型〉月 金 日、午後
87.5分/毎回 ・ 262.5分/週
〈家事型〉水、 午後
87.5分/毎回 ・ 87.5分/週
〈介護型〉月水金日朝・毎日夕
10分/毎日 ・ 110/週・
デイサービス  デイケアと並列に記載されているので読み替えてデイケアにて算定
週3回通所 18時間/週 
月・火曜 各5回
水・木・金・土・日曜 各4回

(表6)
サービス内容 実施数 延時間 単価 総計
ホームヘルプ(介護型) 13 1,137.5 1,390 26,352
ホームヘルプ(家事型) 4 350  920  5,367
巡回ヘルプ(介護型) 47 470 2,640 20,680
デイサービス 13 78 1,341 104,598
訪問看護 9   9,300 83,700
医学的管理 1   37,200
総    経    費  277,897

 もしこの経費に、週1回(月4回)訪問リハを加えるとすれば、以下のようになる。

  単価 追加額 追加後の総計合計
ステーションからの訪問 9,300 37,200 315,097
病院・診療所からの訪問 5,300 21,200 299,097

 おおよそ一人30万円の金額が毎月かかる。介護保険支給額との差が自己負担となるわけであるから、問われるのは、施設サービス不足はもとよりサービス単価による、サービス選択先と量(回数)である。「貧乏人は麦を食え」といった時代のように、「貧乏人はリハを受けるな」というのであろうか。大変なことである。「出来高払い」と「マルメ方式」のそれぞれの利点を活用し、国民がこぞって安心した機能維持を在宅で果たせるようにしなければならない。

 

 地域リハにおいては「リハの比重別」の「集中期間設定」による「出来高払い」と、「リハ検診」と「長期継続リハをマルメの中に義務化」することを提案した。これによって、リハが介護費・医療費抑制の重責を果たせるものであると強く信じる。

おわりに

 この原稿依頼を受けた直後、厚生省が平成8年度事業として大急ぎで計画したケアマネジャー養成指導者研修(高齢者ケアサービス体制整備支援研修ケアマネジメント論研修)に急きょ参加した。席上、白澤政和教授(大阪市立大学教授)は「サービスメニューの発掘、利用者の自己選択、現実的に対応していくこと、これこそコーディネーションである。ケアマネジャーたる者、入る金を視野においてプランを立てるな。はじめにプランありき」と強調された。

 自己選択と現実的対応が強調されるほど金の問題を明確にしなければならない。リハは目に見えるサービスとして確実に利用者の眼前に示されなければならない。報酬体系のあり方が、早急に幅広い論議を経て煮詰められなければならない。

 

 この論文を書き上げるために、伊藤隆夫RPT(近森病院在宅総合ケアセンター)、毛利雅英OTR(ウエルケア重信)、沖野紀雄RPT(済生会山口総合病院)と以前の同僚山口リハ病院の中山敏江RPT・築地信之OTRに感謝申し上げたい。

〈参考文献〉 略

*山口コ・メディカル学院


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1997年5月(第91号)23頁~31頁

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