リハビリテーション研究(第95号) NO.8 用語の解説 注意欠陥・多動性障害(ADHD) 言語聴覚士

用語の解説

 

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

 落ち着きがなく、じっとしていられないとか、注意を継続することができないといった症状を示す子どもたちを「注意欠陥障害(Attention Deficit Disorder):ADD」として、1980年米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き(DSW-Ⅲ)」に記載された。ADDの基本症状は「不注意」、「衝動性」、「多動性」の3つからなり、多動性を伴う場合と伴わない場合に分けられていた。その後、1987年の改訂(DSW-Ⅲ-R)、1994年のDSW-Ⅳでは多動性を伴うADDのみがADHDとして位置づけられ、「注意欠陥・多動性障害」とされた。
 ADHD(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)の基本症状は、「不注意」、「多動性」と「衝動性」で、これらの症状の組み合わせから混合型、不注意優勢型、多動性-衝動性優勢型に分類されている。診断のために用いられる基本症状は、「不注意」に関連したグループ(9項目)と多動性-衝動性のグループ(多動性6項目と衝動性3項目)の症状のうち6つが6か月以上持続していること、このほか、これらの症状が7歳末満に存在していること、二つ以上の状況(例えば、学校、家庭)において存在すること、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在することなどの規定を満たす場合にADHDと診断される。
 1995年のアメリカ議会年次報告の中でも、特殊教育対象児童生徒(6~21歳)の中に、注意欠陥障害を有すると認められる者の増加が指摘されている(リハビリテーション研究No.93、21ページ参照)。
  

(小鴨英夫/淑徳大学教授)

 

言語聴覚士

 言語障害、コミュニケーション機能に障害をもつ者に適切な検査、診断、治療を施す専門家を言語療法士とよんでいる。これらの人々は病院や福祉関係の諸機関に勤務しているが、名称は言語治療士、聴能言語士、スピーチ・セラピスト等、さまぎまで統一されていない。
 また、教育の分野では、言語障害児のための特殊学級で言語治療の教員が治療指導を行っている。
 養成も、大学や国立身体障害者リハビリテーションセンター学院内に聴能言語専門職員養成課程が設置されているが、免許資格制度はなかった。このたぴ「言語聴覚士の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もっと医療の普及及び向上に寄与することを目的とする」として、「言語聴覚士法」が制定された(平成9年12月19日公布)。この法律では、「言語聴覚士」とは、厚生大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能または聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査および助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいっている(第2条)。
 そして、免許については、言語聴覚士になろうとする者は、言語聴覚士国家試験に合格し、厚生大臣の免許を受けなければならないこと(第3条)、試験は言語聴覚士として必要な知識および技能について行うこととし、毎年一回以上、厚生大臣が行うこととしている。このほか、業務、罰則が規定されている。
 

 (小鴨英夫/淑徳大学教授)


主題・副題:

リハビリテーション研究 第95号
 

掲載雑誌名:

ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第95号」
 

発行者・出版社:

財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
 

号数・頁数:

95号 36頁
 

発行月日:

西暦 1998年7月8日
 

文献に関する問い合わせ:

財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

menu