用語の解説 成年後見制度

用語の解説

成年後見制度

成年後見制度は、痴呆の高齢者や知的・精神的な障害を有する人を、法的に保護する制度と言えます。現行法では、民法の禁治産・準禁治産制度がこの役割を担ってきました。しかし、100年以上前にできた制度のため、現代の高齢化社会の進展や高齢者や障害を有する人への権利擁護の要請には十分応えきれず、多くの問題点が指摘されていました。

法務省も1995年より法制審議会で禁治産制度の見直しと新たな成年後見制度の検討を開始し、今年1月ようやく要綱案を決定し、今国会での民法改正、そして来年四月の施行が予定されています。同じく来年4月に発足する介護保険制度が、改正に大きな影響を与えたと言えます。

現行の禁治産制度の問題点は、多々指摘されています。主要な点としては、①本人の利益を保護する制度でありながら、第三者との取引関係の安定を重視した結果、一度禁治産宣告を受けると一律的に法律行為が制限され(後見人の取消、各種欠格条項による資格取得制限など)、本人の意思や決定が一切反映されないこと②保護する内容が、財産管理に重点が置かれ、医療・保健・福祉サービスの申し込みや契約などの身上監護の必要性が十分に位置付けられていないこと③夫婦の場合は、後見人が配偶者に限定されていたり、法人が後見人になれることが明記されていないこと④現行制度は、手続きが複雑で、費用がかかり、また戸籍にも記載されるなど、利便性に欠けること、などが挙げられます。

今回の改正案では、こうした問題に対して、本人の自己決定権の尊重と本人保護の理念の調和、利便性・弾力性の高い制度運用を実現する観点から、大きな前進をもたらすものと言えます。改正のポイントは、①現行の二類型に加えて、軽度の痴呆・知的障害・精神障害を有する人を対象として(対象の拡大)、保護の内容および対象行為の範囲を当事者の申し立てに委ねる新しい保護類型として「補助類型」を新設したこと ②現行の二類型も、名称を「保佐類型」「後見類型」に変更し、本人の保護の必要性に応じて弾力的な運用ができるようにしたこと(日用品の購入などは本人の判断に委ねるなど) ③「任意後見制度」を制度化し、保護を必要とする以前に、本人が信頼できる人を後見人とし、任意後見人を監督する「任意後見監督人」を創設したこと ④成年後見人の身上監護への配慮義務に関する一般規定を創設 ⑤配偶者法定後見人を廃止、複数成年後見人制度を導入、法人成年後見人制度の明文化 ⑥戸籍への記載を廃止し、代わりに登記制度の新設、などが提案されています。

今後の課題としては、多数の法律に残存する欠格条項などの法的問題に加え、運用面としては、権利擁護に携わるマンパワーの育成、制度利用に伴う費用負担の問題など、施行を目前にして差し迫った問題が山積されています。

(岩崎晋也/法政大学大原社会問題研究所)


主題・副題:リハビリテーション研究 第98号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第98号」

発行者・出版社:財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:98号 1~30頁

発行月日:1999年4月20日

文献に関する問い合わせ:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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