用語の解説 精神保健福祉士

用語の解説

精神保健福祉士

平成9年12月に成立した「精神保健福祉士法」により、平成11年1月第1回の国家試験が実施され、4,338名の精神保健福祉士が誕生した。この職種の誕生の背景には、わが国の精神障害者の長期入院や社会的入院の問題が指摘され、精神障害者の社会復帰を促進することが緊急の課題となっていた。この法律成立までは、無資格の精神科ソーシャルワーカー(PSW)として、社会福祉の立場から、精神障害者の生活上のさまざまな問題を解決するために関わってきた。

精神保健福祉士は名称独占の資格で、その業務内容は、社会復帰に関する相談に応じること、社会復帰に関する助言や指導を行うこと、日常生活への適応のために必要な訓練等の援助を行うことである。業務の対象は、医学的ケアを必要とする精神症状が安定していない社会復帰の途上にある精神障害者や、精神症状がある程度安定した地域生活を送っている精神障害者である。前者には、その疾病に配慮しながら、医療を受ける際に生じる社会・経済的問題を軽減・解消するための援助や、社会復帰のための相談、助言、指導及び日常生活への適応のための訓練や援助を行う。後者については、社会生活を営む上でのハンディキャップの除去や軽減のための支援を中心とする。

社会福祉士との違いについては、社会福祉士が身体または精神の障害がある人、つまり「障害者」を対象に福祉に関する相談業務を行うが、精神保健福祉士は保健医療と福祉にまたがる分野をその専門領域として、病気と障害を併せもつ「傷病者」であり「障害者」である精神障害者を対象とする。

医師や医療関係職種との関係については、「医師その他の医療関係者との連携を保ち、精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない」と規定されている。この「指導」は医師の「指示」に比べると拘束力は弱く、「指導」の内容の賛否については精神保健福祉士の専門職としての判断に任されている。このような主治医の指導という位置づけは、これまでの医療関係職種の国家資格にはない新しい考え方である。

精神保健福祉士の受験資格を得るには11の形態が定められており、大学、短大、養成施設において、精神医学、精神保健学、精神科リハビリテーション学、精神保健福祉論をはじめとする16科目の指定科目を修めなければならない。なお、平成15年3月31日までは、受験資格の特例が定められており、5年の実務経験など条件を満たし厚生省指定の講習課程を修了した者には、受験資格が与えられている。

精神保健福祉士は、精神障害者や家族などの権利を擁護する立場にあり、両者との信頼のもとに業務が進められ、職種として高い倫理性が求められている。今後、保健、医療、福祉にわたる総合的な視点から精神障害者の社会復帰・社会参加が促進することを期待したい。

(里村恵子/都立保健科学大学)


主題・副題:リハビリテーション研究 第99号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第99号」

発行者・出版社:財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:99号 1~41頁

発行月日:西暦 1999年8月20日

文献に関する問い合わせ:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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