用語の解説 OSCE(オスキー) 特別な教育ニーズ(Special educational needs)

用語の解説

OSCE(オスキー)

 客観的臨床能力試験:Objective Structured Clinical Examinationの略。
 1975年にイギリスのHarden RMらによって紹介された,臨床能力評価法である。OSCEは,筆記試験では評価できない技術,態度を客観的に評価できるとされ,カナダでは医師国家試験にも取り入れられている。我が国では,医学部はもとより,藤田保健衛生大学,群馬大学,茨城県立医療大学,首都大学東京など,多くの理学療法・作業療法養成校(以下,養成校)でも実施されるようになってきた。
 OSCEは,ステーションと呼ばれる小部屋に採点者,模擬患者を配置し,受験者(学生)が各小部屋をローテーションしていく形で実施される。各ステーションで出題される課題には「シナリオ」が準備されており,受験者はそのシナリオに従い,模擬患者に対して出題された課題を遂行する。採点者は,各課題の採点マニュアルに従い,学生の課題遂行時における技術,態度を採点する。
 養成校におけるOSCEは,臨床実習前に実施しているところが多い。課題は,医療面接,関節可動域テスト,徒手筋力検査,血圧・脈拍測定などの検査・測定技法が多い。また,物理療法,歩行訓練,移乗訓練など,治療的内容まで実施している養成校もある。各ステーションの受験時間は5または10分で,1回のOSCEで準備するステーション数は3?5カ所と,養成校によって異なる。模擬患者は,養成校教員,大学院生,模擬患者協会の参画などで,採点者は養成校教員や臨床実習指導者が行っている。つまり,養成校におけるOSCEは,各養成校が独自のスタイルで実施しており統一性がないため,信頼性が保証されていないのが現状である。
 今後,養成校間でOSCE課題内容の統一化が成され,さらに,臨床実習指導者と養成校教員が共同で学生指導をするための「共通教材」として,その利用が期待されている。

(河野光伸/岐阜保健短期大学教授)

特別な教育ニーズ(Special educational needs)

 英国のウォーノック委員会報告(1978年)では,これまでの障害児教育のあり方を全般的にわたり,審議し数多くの勧告を行った。その中で従来の障害のカテゴリーの廃止と「特別な教育ニーズ」という概念を導入し,これまでの特別教育制度を大きく変革した。この背景には従来の分類形態は,障害児は皆,単一の能力障害をもつと仮定していること,一人ひとりの子どものニーズの医学的,心理学的,教育的および社会的諸側面を一挙に記述することは容易ではないことなどをあげている。そして必要な勧告のうち,実現に当たり立法措置が必要なものについては,1981年教育法が制定された。最近の1996年教育法312条においては「特別な教育措置を要する学習上の困難(learning difficulty)をもつ子どもは特別な教育的ニードを持つ」とし,学習困難を有する子どもとは以下のように説明している。
 (a)同年齢の大多数の子どもよりも明らかに大きな学習上の困難を抱えていたり,(b)当該地方当局の管轄区域内で同年齢の子どものために学校で一般に用意されている種類の教育施設,設備の使用を妨げるような障害をもち,(c)義務教育年齢以下で特別な教育的措置がとられなかった場合,上記(a)または(b)の状態になることが予想される子どもたちである。この語のもつ意味は,心身に障害をもつ子どもたちのほか,学習 に重大な困難をもつ者とか行動上に問題をもつ子どもたちをも含めた広範な用語となっている。
 英国では特殊教育の調整に関し責任を負う教師として「特別な教育ニーズ・コーディネーター(Special educational needs coordinator[SENCO])を置いている。小規模の学校では校長もしくは教頭が,大規模校では「特別な教育ニーズ調整チーム」とか「学習支援チーム」といった教師のチームが当たっている。早期教育段階でも,保育所,プレーグループにおいて,
・特別な教育ニーズをもつ子どもたちに関し,両親や専門家との連絡を確実に行う。
・適切なIEP(個別の教育プログラム)を確保する。
・特別な教育ニードをもつ子どもに関する適切 な情報の収集,最新データの確保などを行う。
こととしている。

(小鴨英夫/淑徳大学名誉教授)


主題・副題:リハビリテーション研究 第147号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第147号」

発行者・出版社:財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第41巻第1号(通巻147号) 44頁

発行月日:2011年6月1日

文献に関する問い合わせ:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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