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用語の解説

障害者虐待防止法について―高齢者虐待防止法,児童虐待防止法と比較しながら―

1. 障害者虐待防止法の概要

 障害者虐待防止法(障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律)は,2011年6月に成立した。既に法制化されていた「児童虐待防止法」,「DV(ドメスティック・バイオレンス)防止法」,「高齢者虐待防止法」の対象から外れる障害者についても,虐待を防止し,救済する手立てが構築されたことになる。
 同法は,障害者に対する虐待の禁止,国等の責務,障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置,養護者に対する支援のための措置等を定めている。
 「障害者」とは,障害者基本法に規定する者であり,「障害者虐待」とは,(1)養護者による虐待,(2)障害者福祉施設従事者等による虐待,(3)使用者による虐待と類型化している。(2)と(3)は,これまでの障害者福祉サービスや障害者雇用において,障害者の人権が侵害されてきた歴史を背景にしている。特に,使用者による虐待は,他の虐待防止法制にはない特徴である。虐待の種類は,要約すると(1)身体的虐待,(2)性的虐待,(3)精神的虐待,(4)放置(ネグレクト),(5)経済的虐待となる。
 虐待防止施策としては,障害者虐待に係る国,地方公共団体の責務を規定し,関係機関による障害者虐待の早期発見に関する努力義務を規定している。
 実際の虐待防止では,養護者又は障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は市町村に,使用者による場合と思われる障害者を発見した者は市町村又は都道府県に,それぞれ速やかに通報しなければならないこととされている。通報がなされた場合には,障害者の一時保護,障害者福祉施設の業務等の適正な運営の確保,都道府県労働局への報告等及び養護者の負担軽減のための支援措置等が行われる。
 さらに,市町村や都道府県の関連部局又は施設に「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障害者権利擁護センター」としての機能を持たせることも定められている。施行は2012年10月1日からである。

2. 児童虐待防止法,高齢者虐待防止法との比較から

 虐待防止法制の中で,初めに制定されたのは,1999年の児童虐待防止法である。同法では,児童虐待を,保護者(親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護するもの)が監護する18歳未満の児童について行う,(1)身体的虐待,(2)性的虐待,(3)精神的虐待,(4)放置(ネグレクト)とするとともに,保護者の配偶者によるドメスティック・バイオレンスが児童の目前で行われることや,保護者以外の同居人による同様の行為や保護者としての監護を著しく怠ることも虐待にあたると規定している。同法は,制定後に改正が加えられ,現在では,児童相談所の立入調査に関しては,親の同意が得られない場合には一定の手順を踏んだあと,裁判所の許可を得て強制立入できるといった権限強化が図られている。
 高齢者虐待防止法は,2005年に制定された。65歳以上の高齢者が対象。「国民は,高齢者虐待の防止,養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに,国又は地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止,養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければならない。」(第4条)と規定している。また,特別養護老人ホーム,介護老人保健施設,有料老人ホーム等の高齢者福祉・介護施設等における虐待の防止もその特徴といえる。虐待の種類は,障害者虐待防止法と同様である。養護者や親族のみならず,養・介護施設の従事者が高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得る経済的虐待は,一定の財産や年金収入のある高齢者にとって発生しやすいものと認識される必要があろう。
 障害者虐待は,児童,高齢者に比べて,事業所も含む幅の広い場で発生する。換言すれば,ライフステージに応じて常にその発生リスクがあることになる。学校や医療機関等における障害者に対する虐待の防止の体制については,今回の防止法では十分に規定していないことから,今後,児童・高齢者の虐待防止法の見直しの状況を踏まえて検討を加えることが同法の附則にも示されている。

(朝日雅也/埼玉県立大学教授)


主題・副題:リハビリテーション研究 第151号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第151号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第42巻第1号(通巻151号) 48頁

発行月日:2012年6月1日

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公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
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