用語の解説 障害者優先調達推進法

用語の解説

障害者優先調達推進法

1.成立までの道のり

 2013年4月1日,国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(障害者優先調達推進法)が施行された。
 本条11条,附則4条の短い法律であるが,フレーズ毎に「等」がついており,幅広く中身の濃いものになっている。「とうとうできたか」と感慨にふける関係者もいる程,長い道のりであった。
 全国社会就労センター協議会(セルプ協)の組織結成は1977年であるが,当初から官公需の優先発注の制度化を訴えてきた。その始まりは,78~79年に行ったアメリカの官公需優先発注制度であるジャヴィッツ・ワグナー・オーディ法(JWOD法)の研究にある。1996年,2006年の2度,JWOD法による共同受注の中央組織であるNISHへ調査団を派遣,日本における官公需の共同受注に関する立法に向けてのさまざまな提言を行なってきた。
 こうした努力等も背景にわが国でも,2008年に議員立法をめざし通称「ハート購入法」が国会に提出されたが,成立には至らず,その後こう着状態が続いた。障害者制度改革の議論が続く中,2011年の暮れ,突然動き出した。各政党への集中的な陳情活動を重ね,2012年3月末には与党の民主党の関係議員と法案の最終調整を行うに至った。
 いずれにしても長年にわたる諸先輩の活動の積み重ねと,大きくは障害者制度改革という流れの中で,2012年6月20日,障害者総合支援法と同一日に,ハート購入法あらため障害者優先調達推進法(優先調達推進法)が全会一致,可決成立した。

2.課題のいくつか

 この法律は,国等に障害者就労施設等から物品等を優先的に調達する努力義務を課し,そこで就労する障害者の自立の促進に資することを目的としている。また,民需の喚起も法律の中に織り込まれている。法律が動き始めるのは,国の基本方針の策定,公表による。
 セルプ協は基本方針の策定にあたり,いくつかの要望を行なっている。その中の最重要と位置付けた共同受注窓口と基準該当就労継続支援B型事業所としての生保・社会事業授産施設を障害者就労施設としてみなすことができないかという2点については,2013年2月25日の主管課長会議において,そのように扱う旨の説明がなされた。
 この法律が真に有効なものとなるためには,多くの課題をクリアしていかなければならない。
 何よりも安定した仕事の確保により,16万人超と最も利用所の多い就労継続支援B型の利用者の工賃を引上げなければならないという関係者の強い決意とそのための不断の努力である。
 次に,共同して取り組むための共同受注窓口の整備と強化である。現在の都道府県単位のセルプセンターの多くは脆弱な財政状態となっており,共同受注窓口としての機能を果たすには不十分である。
 さらに情報提供の発信体制である。初年度は国により基礎的データが収集され,都道府県のホームページ等で発信されることになったが,更新が求められることになる。
 その他,品質の向上,納期の厳守等さまざまな課題があるが,焦らず,渋らず,じっくりと課題解決を図っていきたい。官公需は国が,年間約7兆円,地方公共団体が約12兆円あり,セルプ協関係事業所は年間40億円程度で,全体の0.02%にすぎない。0を1つ消すくらいの思いで取り組み,法の目的である障害者就労施設等で働く障害者の自立の促進につなげていきたい。

(近藤正臣/全国社会就労センター協議会会長)


主題・副題:リハビリテーション研究 第155号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第155号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第43巻第1号(通巻155号) 48頁

発行月日:2013年6月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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