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用語の解説

バリアフリー・コンフリクト

 バリアフリーな社会が整備されつつある。その一方で,バリアフリー化が浸透したことにより,特定の障害のためのバリアフリー化が他の障害のある人や障害のない人にとっての新しいバリアとなる問題が生まれている。例えば,点字ブロックにより,車いす利用者が移動しにくくなり,それに高齢者がつまずくこともある。また,段差の解消が白杖使用者の手がかりを奪うといったケースもある。残念ながら,こういったバリアフリー化によるコンフリクトの多くは十分議論されていないのが現状である。
 このバリアフリー・コンフリクトが生じる背景には,一部の街づくりを除いて,異種の障害間での擦り合わせの機会は少なく,障害のない人もそこに積極的に介入することが難しい点にある。様々な関係者の合意形成が不十分なまま,マニュアルに基づいてバリアフリー化が進んでいるのが現状であり,今後,バリアフリー・コンフリクトがさらに顕在化する可能性がある。
 これまでは支援技術が高価で性能も十分とは言えなかったため,障害のある人がテクノロジーを利用して機能を高めるよりも,環境をバリアフリー化することの方が彼らの生活の自立度を高める上で有効であった。しかし,今日では,障害機能をテクノロジーで補助・代替することがある程度可能になってきている。例えば,全盲の人がカメラやGPSで周囲に何があるか確認できるソフトウェアが開発され,電動車いすを用いれば,多少の段差なら問題なく移動できるようになってきている。こういった支援技術の活用と合わせることで,コンフリクトの少ない柔軟なバリアフリー社会の構築が可能になる。
 バリアの少ない社会の実現は障害の有無にかかわらず,すべての人にとって重要な課題である。障害ではなく困難を抱えるという視点で言えば,障害を超えて認識を共有し,議論の場が生まれるはずである。バリアフリー・コンフリクトは,次のバリアフリーを議論する契機となるものである。

(中邑賢龍/東京大学先端科学技術研究センター教授)

消防法施行令別表第一(6)項ロ

 建物は,用途や規模,収容人員等に応じて防火規制を受ける。不特定多数や自力避難困難者が利用する建物を,消防法では「防火対象物」,建築基準法では「特殊建築物」と呼んで一般住宅等と区別し,用途区分別に各種の対策が求められる。社会福祉施設等は消防法施行令別表第一において,(6)項ロおよび,ハに区分される。
 平成18年大村市で起こった認知症高齢者GH火災を契機とする法改正(平成21年4月施行)では,従来の(6)項ロが(6)項ロ(著しく自力避難が困難な者を抱える)と新設された(6)項ハ(その他)に分けられ,(6)項ロのスプリンクラー設置義務が延床面積275m2以上へと拡大された。平成25年3月の法改正により,現在は(6)項ハの軽費老人ホームや小規模多機能型居宅介護事業所等が,平成27年4月から(6)項ロに区分変更される。加えて,平成25年2月に長崎市で起きた認知症高齢者GH火災を受け,スプリンクラーを(6)項ロのすべてに原則として義務付ける法改正作業が進行中である。
 賃貸物件や共同住宅の一部を使用する場合など,消防設備の設置工事が認められない事態が懸念される。また,別表に明記されないものについては各地の消防本部に判断が任されており,ファミリーホームや保育ママなど乳幼児対象施設も含めて用途判断の運用強化も予想されている。消防設備強化にとどまらず,訓練方法や人的支援等の見直しを含めた効果的かつ合理的な対応が必要である。
 社会的に注目される火災のつど,特定建物用途の規制強化が繰り返されているが,火災による死者発生の9割が集中する住宅防火の遅れも課題である。福祉分野における脱施設の流れに対応して,国民の生活基盤となる住宅の防火性能の底上げをはかり,高齢者の居宅介護や障害者の地域移行が進む現状を踏まえた防火性能評価の標準化や建築基準法も含めた対策の総合化に向けた本格的な議論が求められる。

(大西一嘉/神戸大学大学院工学研究科建築学専攻准教授)


主題・副題:リハビリテーション研究 第156号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第156号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第43巻第2号(通巻156号) 48頁

発行月日:2013年9月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523