用語の解説 障害程度区分から障害支援区分へ

用語の解説

障害程度区分から障害支援区分へ

1.障害支援区分の施行に至る経緯

 障害者自立支援法における「障害程度区分」については,知的障害や精神障害について,コンピュータによる一次判定で低く判定される傾向があり,市町村審査会による二次判定で引き上げられる割合が高いことから,その特性を反映できていないのではないか,との課題が指摘されていた。
 こうした背景を踏まえ,2012年6月に成立した障害者総合支援法において,「障害程度区分」については,障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す「障害支援区分」に改め,2014年4月から施行することとされた。
 厚生労働省では,障害者総合支援法の成立以降,約200市町村の協力の下,「障害程度区分」の実績データを収集し,知的障害及び精神障害における二次判定での引き上げ要因を検証するとともに,約100市町村の協力の下,検証結果を踏まえ構築した「障害支援区分への見直し(案)」に基づく認定調査や市町村審査会による審査判定を試行的に実施した。
 以上の経緯を経て,試行的事業の結果を踏まえ修正した「障害支援区分への見直し(案)」が,2013年11月の第53回社会保障審議会障害者部会において了承され,2014年1月23日に障害支援区分の審査判定基準に関する省令が公布された。

2.認定調査項目の見直し

(1)認定調査項目の追加・統合・削除

 障害支援区分の認定調査項目は,知的障害や精神障害等の特性をより反映させるため,新たに「健康・栄養管理」「危険の認識」「読み書き」「感覚過敏・感覚鈍麻」「集団への不適応」「多飲水・過飲水」の6項目を追加した。
 また,認定調査時における調査対象者や認定調査員の負担軽減を図るため,障害程度区分の認定調査項目において,評価が重複する項目等を統合(14項目→7項目)・削除(25項目)することで,障害支援区分の認定調査項目を80項目とした。

(2)判断基準の見直し

 認定調査において確認する動作等について,「できたりできなかったりする場合」の判断基準を「より頻回な状況」から「できない状況」に変更することにより,調査対象者の「支援が必要な状況」を一次判定(コンピュータ判定)で評価する仕組みとした。
 また,「できない状況」に基づく判断は,運動機能の低下に限らず,「知的・精神・発達障害による意欲低下や多動等といった行動上の障害」や「内部障害や難病等による筋力低下や易疲労感」等によって「できない場合」や,「自宅以外等の慣れていない状況や初めての場所」では「できない場合」を含めて判断するとともに,その頻度等については,「特記事項」に記載することにより,市町村審査会による二次判定で評価する。

3.新たな判定式(コンピュータ判定式)の構築

 新たな判定式(コンピュータ判定式)の構築に当たっては,障害程度区分において,二次判定での引き上げ要因となっていた項目を全国一律のコンピュータ判定(一次判定)に組み込むことで,二次判定で引き上げる割合の地域差の解消を図った。
 具体的には,「行動障害及び精神面に関する認定調査項目」の結果と,医師意見書における「てんかん・精神障害の機能評価・麻痺・拘縮」の記載内容が一次判定の評価に組み込まれた。
 なお,新たな判定式は,平成21年度から23年度の実績データを踏まえ,調査対象者と同じ状態像にある者の最終結果(二次判定結果)に“より近い”区分が一次判定結果として算出される仕組みとなっている。

4.施行後の実施状況の把握

 障害支援区分の認定調査及び審査判定は,2014年4月以降に申請のあった事例から順次開始されており,厚生労働省では,施行当初の実施状況を把握するため,同年7月を目途に,各市町村に対して施行後3月間(2014年4月~6月)における障害支援区分の認定データの報告を依頼し,報告されたデータを集計・分析することで,全国的な実施状況を把握することとしている。

(増田岳史/厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課障害支援区分係長)


主題・副題:リハビリテーション研究 第159号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第159号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第44巻第1号(通巻159号) 48頁

発行月日:2014年6月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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