用語の解説 SDGs(持続可能な開発目標)

用語の解説

 

SDGs(持続可能な開発目標)

SDGsとは

 SDGsとはSustainable Development Goalsの略称で,日本語では持続可能な開発目標と訳される,2016年から2030年までに国際的に取り組む世界共通の目標のことである。
 2015年9月25日,国連では持続可能な開発サミットが開かれ「我々の世界を変革する:持続可能な開発のためのアジェンダ」(Transforming Our World : 2030 Agenda for Sustainable Development)(以降アジェンダ2030)がそれまでのミレニア開発目標(MDGs)の後継として採択された。アジェンダ2030は,序文,宣言,持続可能な開発目標(SDGs),実施手段,フォローアップ・レビューで構成されており,SDGsの中で17のゴールと169のターゲット,232の指標が掲げられている。
 MDGsでは8つの目標と21のターゲットおよび60の指標が掲げられた。目標とは,1.貧困・飢餓の撲滅,2.初等教育,3.女性の地位向上,4.乳幼児,5.妊産婦,6.疾病,7.環境,8.連携促進である。MDGsの達成状況について,国連は1日1.25ドル以下で暮らす極度の貧困状態の人は,全体では2010年に半減された,と報告している。しかし,アフリカなどではまだ貧困削減は進んでいないことなどから課題が残されていた。
 MDGsでは途上国の状況改善に先進国が協力してきたが,SDGsの特徴の一つは,世界の課題は途上国でも先進国でも共通しているという普遍性が示されていることである。また持続可能な開発の実施では,開発,社会,環境の3つの側面を調和させることが重要であると示された。それらを達成するためのゴールとターゲットはそれぞれ関連しており,理念は「誰も取り残さないこと」である。SDGsの包括的な視点は,5つのPで示されている。人々(People),地球(Planet),繁栄(Prosperity),平和(Peace),パートナーシップ(Partnership)である。SDGsの達成では,より平和で包括的な社会を約束している。SDGsの大きな目的は貧困撲滅であり,地球環境が持続し,人々の暮らしがより良いものへと変革することを目指している。
 SDGsの実施は各国国内で国の事情に沿って行われる。日本国内では2016年5月20日の閣議決定により内閣に総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が置かれた。2016年12月22日には国内実施指針が発表され,8つの優先課題(①あらゆる人々の活躍,②健康・長寿の達成,③成長市場の創出,地域活性化,科学技術イノベーション,④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備,⑤省・再生可能エネルギー,気候変動対策,循環型社会,⑥生物多様性,森林,海洋等の環境の保全,⑦平和と安全・安心社会の実現,⑧SDGs実施推進の体制と手段),と具体的施策が示された。

SDGsと障害

 MDGsでは障害に言及されていなかった。しかし国連は2010年MDGs達成に関する政府高官会合で,MDGsの達成に関する政策や行動においては障害のある人に焦点を当てなくてはならないという決議を採択した。2015年9月23日には国連サミットで,「前進:2015年とそれ以降における障害が組み込まれた開発課題」というテーマで,「障害と開発に関する国連総会政府高官会合」が開かれ,MDGs後の開発目標では障害を含めることが採択された。障害はSDGsの17のゴールのうち4か所で明確に含まれている(ゴール4.質の高い教育,8.ディーセント・ワークと経済発展,10.格差の是正,11.持続可能なまちづくり,17.目標達成に向けたパートナーシップ)。また,序文の中で,支援を必要とする人たち(vulnerable people)には,子ども,若者,HIV/とエイズと共に生きる人々,高齢者,先住民,難民などにならび,障害者が含まれることが明記されている。国内実施指針では,障害は一億総活躍社会の実現,教育で取り上げている。SDGsの実施により世界共通で取り組む目標に障害がしっかり位置づけられ,障害の主流化に向けて他分野との連携の機会をもつようになるであろう。

(上野 悦子/公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会)

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