(資料5)当事者と地域住民のための要援護者支援リーフレット
~所沢市版~
障害のある人と周囲の人の
災害時の備え
1.断水と帰宅困難を想定します
人口34 万人の所沢市で想定されている大きな災害は立川断層地震です。所沢市地域防災計画による被害予想は、全壊1,272棟、死者119名、焼失危険予測2,725棟、1日後避難者37,000名、断水人口108,000名(冬18時発生の場合)、所沢市への帰宅困難者は74,000名(夏12時発生の場合)です。
一番、発生確率が高いのは断水、停電、ガス停止、二番目は帰宅困難ではないかと考え、これらに対する家庭での対策例を紹介します。備蓄は2週間分あると安心です。
2.断水に備えて
- 風呂の水はためておいて、炊き直すときに入れ替えます。トイレの排水や掃除に使えます。
- 飲み水は1日3Lの備蓄が勧められています。
- 水道水の保存の目安は3?5日です。
- 食器を洗えないので、ラップをかけて使います。
3.簡易トイレ(便袋)の準備を
- 水洗トイレは断水しても、水を入れてバーを押せば流れます。ただし、電気スイッチ式やマンションで排水に電気を使っている場合は、停電すると流れません。
- 排泄物を減らして流れやすくするために、紙は流さずに、別の袋に捨てます。
- 便器に中が見難いビニール袋を二重に入れて、新聞紙、猫砂あるいは凝固剤で大便を取り出します。市販の簡易トイレもあります。
- 災害時には、大便は燃えるゴミとして捨てられる場合があります。ゴミ回収車でビニール袋が破れると衛生上問題ですから、破れないように、中身がわかるように区別します。回収されるまでの臭い対策のためにポリバケツなどで保管します。
4.停電・ガス停止に対する備え
- 電池式ラジオ、電池式携帯電話充電機、補聴器電池
- 懐中電灯、ランタン、ヘッドランプ、太陽光ランプ
- 石油ストーブ、ホカロン、石油、ガソリン
- お風呂がわかせないのでウエットティッシュ
- カセットコンロで料理
- 煮炊きが最小限ですむ食材を備蓄
- 電気を必要とする医療機器のために自家発電装置と燃料やそれがある場所の確認
- 冷蔵庫の生ものは腐る前に料理して食べる
5.買い物・配給・移動の注意
- 薬の備蓄と処方箋
- 買い物に手助けが必要な場合は、ご近所に助けを求めます。たとえば、自動販売機や塀が倒れたり、道に亀裂が入ったり、いつもと違う移動方法になると、車椅子の人、荷物が持てない人、目が見えない人、待って並ぶのが苦手な人、見守りが必要な人がいる家庭では、買い物や物資の入手が難しくなります。
- 列に並ぶ時には、案内の掲示(聴覚障害、発達障害)、列の場所と移動状況を誘導して知らせることも有効です(視覚障害、知的障害)。訓練の時に希望を地域の人に知らせます。
6.身を守る
- 家具は固定し、地震・竜巻の時に、家の中で安全な場所を確認し、移動できるようにします。
- 地震の時は頭を守り、室内でも靴やスリッパをはき、割れたガラスに注意します。
- エレベーターは使わずに移動します。エレベーターの中にいたら、近い階でおります。
7.外出中に被災したら
- 家族との連絡方法を複数練習しておきます。171、メール、ツイッターなどです。
【外出する時】
- 1~3日分の薬と、処方箋を持ち歩きます。
- 笛、コミュニケーションカードを持ち歩きます。
- 長時間、電車に乗る前にはトイレをすませる習慣にします。
- 一晩くらいはすごせる安全な場所の確保を考えます。
- 外出中に大地震、火事、雷、津波が来たら、どこにどう逃げるか考える習慣にします。
【介助者と外出する時】
- 災害時に何を依頼したいか、できるかを確認しておきます。
【家族が帰れない時】
- 家に残された人(子ども)が、困った時に相談にいける近所の人を事前に決め、準備しておきます。
8.近所づきあい
- 家が倒壊したり、火事の時に、一番、早く助けてもらえるのは隣人です。直接に助けてもらうばかりでなく、助けを呼びに行ってもらうこともできます。
- 困っていることを書いて、隣人に避難所や災害本部に持って行ってもらうことで、支援を得られる仕組みができるとよいと考えます。
- 外出中に自宅で災害が発生した場合には、玄関の裏やポストの中に外出中である表示があると、支援者は安否確認が早く出来ます。
- 助け合える関係が、緊急時に役立ちます。近くに自宅のカギを預けられる人がいると安心です。
- ただし、お互いに、自分と家族が優先で、無理をしません。
9.避難所での生活の準備(平時に)
- 避難所の場所を確認します。市役所の「防災ガイド」が読めなければ、ヘルパーや通訳者に読んでもらったり、ボランティアに音声化を依頼します。
- 避難所に行ってみます。ヘルパーや通訳者に同行や説明を頼みます。
- 地域の民生委員さんや町内会長さんに、避難時の支援者の心当たりを相談します。民生委員さん、町内会長さんの連絡先は、市役所に聞くとわかります。
- 町内会に入っていなくても避難所は利用できますが、避難訓練の案内が来ないことがあります。避難訓練や地域のイベントに参加して、避難所の環境を確認します。地域の人にもニーズを知ってもらいます。
- 災害時には、避難所の受付で、どんな配慮を受けたいか申し出ます。事前に整理して、カードに書いておくと安心です。災害時に、突然、要求しても対応してもらえないので、訓練の時に相談します。
- 希望通りの配慮が受けられないこともあります。できそうなことを事前に相談します。
- 避難所に宿泊しなくなった時には、行き先を簡単で良いので伝えます。「家に戻る」「市外の知人の家に行く」などわかると、避難所に無駄な支援を手配せずにすみます。
- 避難所での生活を予測して、必要な準備をします。自分が手伝えることも考えます。
【参考資料】
1. 東京都帰宅困難者ハンドブック
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/kitaku_portal/tmg/pdf/kitakuhandbook.pdf
2.東京都心身障害者福祉センター(2012.12)
http://www.fukushihoken.metro.actokyo.jp/shinsho/saigai/saigaimanual/menofujiyuu.html
3. 東京都震災復興マニュアル
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/tmg/restoration.html
4. セイフティネットプロジェクト横浜
http://www.yokohamashakyo.jp/siencenter/safetynet/safetynet.html
【製作】
厚生労働科学研究「障害者の防災対策とまちづくりに関する研究」(研究代表者:北村弥生 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 kitamura-yayoi@rehab.go.jp)
~災害等緊急時の避難所における~
障害のある人の支援
大震災時に被災地では3から10日程度は外部からの支援が入り難いと言われています。そこで、避難所設営での配慮と近隣の方に知っていただきたい支援方法を紹介します。
1. 入り口・通路を確保する
- 車椅子での侵入には幅90cmが必要。方向を変えるにはさらに幅が必要。
- 視覚障害者は入り口に靴があるとつまずきます。
2. 何が必要か聞く・伝える
- 受付で必要な配慮を申し出てもらい、災害本部に連絡します。受付名簿に配慮の選択肢があると便利です。また、訓練の時に、どうしてほしいか、何ができるかを相談しておきます。
- 一般的な支援方法はありますが、個人差や好みがあります。何をしてほしいか、何ができるかを、お互いに率直に言えること、できないときにはどうしたらいいか一緒に考えることが大事です。
- 支援を必要としている人は黄色、支援できる人は緑のバンダナをつける統一をしている地域もあります。支援が欲しいときだけ色紙を振るルールのも有効です。
3.移動の手引き3.移動の手引き
- 車椅子については、階段にスロープをつけます。10cm程度の段差は傾けて持ち上げられます。
- 下り坂は後ろ向きに降りると落下しません。
- エレベーターが使えないときは、手動車椅子は2~4人で持ち上げられます。電動車椅子は押すと壊れることがあり、100Kg以上になるので持ち上げるのは危険です。
- 車椅子が使えない坂道や高層階では、おぶいひもや担架を用意しておくと安心です 人工呼吸器等を使っていると、機器を接続したまま移動するために、さらに人数が必要になります。何人で、どうやって移動するのがよいのかは、事前に考えておきます。その場で考えるのは難しいです。
- 視覚障害者には、一歩先を歩き、肘か肩に手を置いてもらいます。手や白杖(はくじょう)を引っ張るのは危険です。白杖は前方に障害物がないかどうかを確認するために使いますので、音をたてたり、左右に大きく振ることもあり、使い方は人によって違います。ガイドが女性の場合は身長差があったり、肘をもつと胸に触れてしまうことがあるので、肩に手を置くことも多いです。
- 多動の場合には、しっかりと手をつないで歩きます。
4.案内・説明
- アナウンスは画用紙等に書いて掲示します。聴覚障害だけでなく、1回で聞き取れなかったり、その場にいなかったり、記憶し難い人にも有効です。
- 逆に、文字を読むのが苦手で音声や絵の説明がよい人もいます。視覚障害の人、外国人、子ども、知的障害や発達障害の人等です。
- 視覚障害の人への場所の案内は同行するか、壁伝い壁やロープ等の目印を用意します。前の人の肩やひじに手をかけておくと、列が動いたことがわかります。
5.トイレ・ベッドなど
- トイレに行くのに、視覚障害の人は案内が、車椅子の人は通路の確保が必要です。
- いつもと違うトイレの使い方は練習が必要です。絵や文章での説明(聴覚障害者,知的障害者,外国人)、または、口頭での説明(視覚障害者、知的障害者)が有効です。
- 車椅子の人や高齢者は和式トイレが使い難いので、洋式便座カバーや介助が助かります。仮設トイレにも洋式はあります。
- 車椅子ではトイレの個室にスペースがいります。出入り口の補助もいる場合があります。また、入り口の段差にはスロープが要ります。
- 視覚障害の人には、どのトイレが開いているかの案内が要ります。
- キャンプ用のベッド、携帯式エアマットも褥瘡予防に有効です。
6. 介助・手話通訳・家事代行
- 被害が大きい場合には、被災地在住の支援者は支援する余裕がなくなります。他県の行政や組織を介して経験豊かな支援者の派遣を得られるように事前の協定や、被災時の依頼準備をします。
- 被災時には、通常の業務を超えた環境の変化や心理的な動揺への対応も求められ、支援者には技量と保障が必要です。
- 地域で通常活動しているボランティアは、災害時にできること、保障や謝礼、指令系統をあらかじめ確認します。
- 経験豊かな支援者の派遣が得られるまでの間、避難所で住民同士が助け合うには、事前の準備が必要です。
- 環境が変わると移動が難しい車椅子、視覚障害、障害児や乳幼児のいる家庭には、専門的な支援だけでなく、配給物の運搬、買い物を含めた家事・保育の代行が役立ちます。
7.間仕切り・個室
- 体育館での生活は誰にとっても苦痛ですが、音、光、環境の変化に特に敏感な人には間仕切りや個室が有効です。テントでも代用できます。
- 高齢者のオムツ交換、排泄障害の人の排泄、女性の着替えや授乳にも間仕切りや個室は有効です。
8.食事
- 避難所生活では体調を崩すことも多く、おかゆが役立ちます。
- 流動食、アレルギー食、食物や食事方法へのこだわりがある場合は、各自で備蓄をするとともに、受付で申し出たり、事前に対策を相談します。
【参考資料】
1. 東京都帰宅困難者ハンドブック
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/kitaku_portal/tmg/pdf/kitakuhandbook.pdf
2. セイフティネットプロジェクト横浜
http://www.yokohamashakyo.jp/siencenter/safetynet/safetynet.html
3.東京都心身障害者福祉センター(2012.12)
http://www.fukushihoken.metro.actokyo.jp/shinsho/saigai/saigaimanual/menofujiyuu.html
【製作】
厚生労働科学研究「障害者の防災対策とまちづくりに関する研究」(研究代表者:北村弥生 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 kitamura-yayoi@rehab.go.jp)
障害のある人の支援
~在宅の場合~
ライフラインが止まっても、環境の整った家に留まることも有効です。そこで、近隣や避難所の人に知っていただきたい在宅の要援護者への支援方法を紹介します。
1.出口確保・片付け
- 家具が散乱すると、屋内でも車いすや視覚障害の人は、動けません。片付けの手伝いが必要です。
- まず、家の中で何に困っているか、見に来てください。
2.何が必要か聞く・伝える
- 一般的な支援方法はありますが、個人差や好みがあります。何をしてほしいか、何ができるかを、お互いに率直に言えること、できないときにはどうしたらいいか一緒に考えることが大事です。
- 避難所に行ったことを黄色マグネットで知らせる方法がありますが、「家で支援を必要としていること」を知らせる印(赤いマグネット等)を考えておきましょう。
- 「困っていること」を書いてもらい、避難所まで隣人が持って行き、災害本部に支援者や物資の手配を依頼する仕組みも有効です。東京都のヘルプカードは参考になります。避難所は地域の災害支援センターとして機能することが求められます。
- 「お互い様」の一声で、遠慮が和らぎます。
3.情報
- 外に出られないと、外の様子がわかりません。外の様子を伝えたり、避難所で支援物質が充足したら運んでもらえると助かります。
- 聴覚障害の人には、広報車や防災無線の音、テレビの放送等を伝えます。
- 道の様子が変わった場合は、視覚障害や移動が難しい人に伝えて、安全な道を選んだり、外出を避けます。
- 印刷物での連絡は、読み上げたり、録音したり、図にしたり、解説したりすることも役立ちます。
- 役所、支援組織、ボランティア組織に、在宅の要援護者がいることを伝えます。
4.運搬
- エレベーターが使えないと、ゴミ出しや買い物にも手伝いが必要になります。
5.トイレ
- トイレの使い方等災害時の特殊な対応は、文字や絵で示して伝えると聴覚障害や知的障害の人は助かります。視覚障害の人には、物を触りながら口頭で説明します。
- 排泄物を各自で回収したり捨てる場合には、視覚障害の人、車椅子の人、知的障害の人は手助けがいる場合があります。
6.サービス
- 平時に派遣されているヘルパーや事業所・学校が使えなくなると、サービスの代行が必要です。近所の人や臨時のボランティアが介助・通訳・家事・保育等を代行します。
- 被害が大きい場合には、被災地在住の支援者は支援する余裕がなくなります。他県の行政や組織を介して経験豊かな支援者の派遣を得られるように事前の協定や、被災時の依頼準備が有効です。
- 被災時には、通常の業務を超えた環境の変化や心理的な動揺への対応も求められますので、支援者に技量と保障が必要です。経験豊かな支援者の派遣が得られるまでの間、地域でどんな助け合いができるかも、事前の準備がよければ充実します。
- 災害のために片付けや事務手続き等追加される用事をする間の保育や送迎も助かります。
- ライフラインが止まっていない家で、洗濯、入浴、休憩をお手伝いいただけるのもありがたいです。
【参考資料】
1. 東京都帰宅困難者ハンドブック
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/kitaku_portal/tmg/pdf/kitakuhandbook.pdf
2. セイフティネットプロジェクト横浜
http://www.yokohamashakyo.jp/siencenter/safetynet/safetynet.html
3.東京都心身障害者福祉センター
http://www.fukushihoken.metro.actokyo.jp/shinsho/saigai/saigaimanual/menofujiyuu.html
【製作】
厚生労働科学研究「障害者の防災対策とまちづくりに関する研究」(研究代表者:北村弥生 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 kitamura-yayoi@rehab.go.jp)