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障害者インクルーシブな防災に関するアジア太平洋会議

H26.4.22 藤本副市長あいさつ

皆様、若葉が美しい季節に、杜の都仙台にお越しいただき、歓迎いたします。

また、本日の会議を仙台で開催いただいたことに、感謝申し上げますとともに、東日本大震災発生時から現在に至るまで、国内外の皆様から多大なるご支援をいただきましたことに、あらためて御礼申し上げます。

未曾有の大震災は、多くの尊い命を奪い、私たちの生活や故郷の風景も一変させてしまいました。仙台では約1,000人の方が亡くなり、今もなお行方不明の方もいらっしゃいます。また、津波により沿岸部の農地や集落が大きな被害を受けたばかりでなく、内陸部の丘陵地においても、がけ崩れなど宅地に深刻な被害があり、仙台市全体で約25万棟を超える建物が被害を受けました。本日の会場である、せんだいメディアテークにおきましても、天井の落下など大きな被害を受けました。

街中を見れば何の被害もなかったかのように見えますが、現在も、仙台の東側の津波の被害を受けた地域は、農地の復旧や区画整理が進んできてはいるものの更地が広がっている状態であり、約9,000世帯の方々が仮設住宅で生活されております。

仙台市では、震災からの復興を図るために、2011年から2015年までの5年間を期間とした「仙台市震災復興計画」を策定し、取り組みを進めてまいりました。計画期間も残すところ2年となりましたが、防災集団移転先への転居や復興公営住宅の入居などが段階的に始まっており、震災により大きな被害を受けられた方々が、ようやく復興を実感できるようになってきたところです。生活再建に向けた復興の歩みを着実に、そして、その速度を一層あげつつ、被災された方々に寄り添いながら進めていくことが重要であると考えているところでございます。

震災を通じて、私たちが大きな課題として学んだことの一つに、災害時における支援を必要とする方々への対応の不十分さがあります。震災前から、災害が発生した時の障害のある方々への対応として、「災害時要援護者登録制度」を設けておりましたが、登録されている方も少なく、今回の震災が非常に広域的な災害であったことや、通信の不通、行政のマンパワー不足などもあり、安否確認に相当の日数を要しました。

また、地域の避難所に行っても、聴覚障害や、精神障害、発達障害など、見た目にはわかりづらい障害のある方は、必要な情報や支援を受けることができなかったり、周囲の理解を得られず、やむなく避難所から自宅に戻らざるを得なかったなどのお話をうかがい、災害等非常時における支援体制の不十分さや、行政の「公助」で支援の全てを担うことが困難であることを痛感したところでございます。

これらをふまえ、本市においては、防災対策の基本である「地域防災計画」の改定とともに、「仙台市災害時要援護者避難支援プラン」を策定し、障害や高齢などにより、災害時に支援が必要となる方々、災害時要援護者にも配慮した防災体制の整備を進めております。

このプランの中では、災害時要援護者自身にも普段から災害に備えていただく「自助」と、地域住民による助け合いである「共助」を基本としながら、要援護者への情報伝達や避難支援体制を整備することを位置づけました。

さらに、地域での支援体制の整備を進めるにあたり、「要援護者情報登録制度」を見直し、登録された要援護者の方の情報を、これまで提供されていなかった町内会等にも提供し、地域住民による助け合いの仕組み「共助」の仕組みづくりに生かしていただくことにしているところでございます。

国において改正された災害対策基本法において、自力避難が難しい方を災害時要援護者名簿として登録し、災害時に支援者等にその情報を提供することなどが市町村の義務とされましたが、本市の取り組みは法改正に先立つものです。

折しも、我が国においては、いわゆる障害者差別解消法の成立、そして、障害者の権利に関する条約の批准と、国や地方行政だけでなく、市民レベルで、障害のある方が障害を理由として社会から排除されることなく、地域の中で生活できる社会づくりに向けて取り組むことが求められています。

本市におきましても、障害者差別解消法の2016年4月施行にあわせて、本市独自の条例を制定し、障害のある方もない方も、安心・安全に地域で暮らすことができる社会の実現を推進したいと考えているところであり、地域が主体的に要援護者への災害時における支援を考えるということは、まさに、障害がある方もない方にも安心・安全な社会づくりにつながるものと確信しております。

来年の3月には、「第3回国連防災世界会議」が仙台市で開催されます。本市といたしましては、「国連防災世界会議」の開催を通して、震災から学んだ貴重な経験や教訓を世界の皆様方と共有し、「これから」の防災・減災のために貢献していくことこそ、被災地最大の都市である仙台市の使命であると考えております。

本日の会議は、「第3回国連防災世界会議」において策定される「国際行動枠組」に対して、障害者と防災に関する取り組みについて提言することを目的としているとお聞きしております。本日ご参加の皆様のご議論が、これからの防災・減災の推進に大きな貢献をされることを期待するものであります。

さて、仙台・東北は、今、大変美しい季節を迎えております。本日おいでいただいた皆様には、ぜひ、会場周辺や仙台市近郊にも足を延ばしていただき、春の芽吹きにあふれ、復興に向けて力強く歩んでいる仙台・東北の姿を体感していただければ幸いです。

最後になりましたが、会議開催にご尽力された、関係各位の皆様のご発展とご健勝を祈念し、私の挨拶といたします。

2014年4月22日
仙台市長 奥山 恵美子