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JDF東日本大震災被災障がい者支援いわて本部報告

JDF東日本大震災被災障がい者支援いわて本部

 

 JDF東日本大震災被災障がい者支援いわて本部(以下、JDFいわて)のスタートは2011(平成23)年9月22日と被災地三県の中でかなり遅いものだった。

 日本障害者フォーラム(以下、JDF)より、被災地三県の一体的支援取り組みのために、震災発生1か月後には来県のうえ活動の打診を受けていたが、その時点で県内では岩手県社会福祉協議会の障がい者福祉協議会の下に、多くの民間障がい者団体とその支援組織がプロジェクトチームをスタートさせ、さらにその後は「東日本大震災障がい者支援活動推進プラットフォーム会議」(以下、プラットフォーム)として再編され活動を実施していた。(68ページ参照)

 その後 JDFいわての事務局を担当することとなる、岩手県身体障害者福祉協会(以下県身障協)もこのプラットフォームに参加していることもあり、さらには県身障協自体の組織再建が急務の状況ということなどから、JDFいわての設立まで時間を要した。しかし、昨年(2011年)の10. 28 JDF大フォーラムへの参加等を通じ、被災地三県の支援を多くの団体との連携しながら一体として取り組むことは、今後の活動にとって大きな意味を持つとの認識を深め、岩手県内の多くの障がい者団体と支援組織の協力のもと、20を超える団体の参加を得て、JDFいわてを開設した。

 県内では既に多くの団体が連携を取りながら支援活動は継続していたので、それらの活動は当然尊重し、さらに構成団体独自の活動も継続していくことも相互に確認しながらも、JDFいわては県内の情報共有化のためのセンターとしての機能を果たしていくことを重点に、各団体との調整を実施していった。

 このように、県内の支援組織は相互に連携しながら展開していたが、震災から1年経過し緊急支援は一段落しながらも、地域間格差や長期の視点での活動の必要性が構成団体から提言されてきた。

 岩手県は行政組織の中枢が内陸に集中しており、沿岸地域の支援には時間的制約がありその解決のためにも、沿岸の各都市を中心に支援センターが組織されている。

 それが、被災地障がい者センターみやこ、被災地障がい者センターかまいし、被災地障がい者センターおおふなとであり、その地域の現状に合わせた活動が行なわれている。

 しかし、沿岸都市の中で陸前高田市には障がい者関係の支援センターがなく、障がい者が通院、買物等の日常生活そのものに大変な時間と労力の制約を受けていること等が報告され、JDFいわてとして拠点を構えていくこととし、24年4月19日、「JDFいわて支援センター」の開設に至った。

 この開設に至る間、23年11月にJDFいわての本部会議で支援センターの設置が承認されてからは、24年2月~3月には陸前高田市との打ち合せを重ね、「JDFいわて支援センター」事業計画や調査活動等に対する協力要請を確認してきた。

 その結果、センター開設に伴い、地元陸前高田市の全面的な理解と協力をいただくことになり、特に障がい者の実態把握に必要な情報提供を受けるうえでの覚え書きの取り決めなども行われた。このような理解と協力は「障がい者支援」の今後の取り組みに大きな意味を持つものと確信している。

 この報告は、JDFいわての取り組みの活動報告とはするものの、岩手における障がい者支援活動のほんの一部に過ぎないことをご理解をいただきたいと思う。

 未會有の大災害に対する障がい者支援は、当然ながら国や地方自治体の総合的対策の中で行なわれるべきことであり、障がい当事者や支援団体の活動はそれを補完し、必要な視点について提言し、点検し、必要があれば積極的に担っていくことも大切である。

 岩手県の障がい者支援は、まさにこの視点に立った活動が原点になっているものと思う。それと同時に、JDFいわて設立までの経過でより以上に感じたことは、被災地三県の支援の取り組みを一体的に推進することに対する、JDFの果たすべき役割の重要性である。

 今後はJDFいわてに参加した多くの団体の個別の活動を、相互に尊重しながらの支援活動とともに、これから長期にわたるであろう各機関の復興計画と取り組みに対する提言、中でも、「災害時要援護者対策」、「障がい者災害対応マニュアル」に障がい当事者の意見を反映させるなどの活動を推進していくことが必要と考えている。

 そして何より重要なことは、障がい当事者の自立と組織の再建強化であることは言うまでもない。JDFが障害者制度改革の推進等の取り組みを通じて培ってきた幅広い連携を、地域でも活かせるように、またその連携を各都道府県にも広めていけるように、今後ともその役割に期待したい。

JDFいわて支援センターの活動について

 日本障害フォーラム(JDF)は、2011年9月22日に「JDF被災障がい者支援いわて本部」を設置し、2012年4月17日には「JDFいわて支援センター」を陸前高田市に開設した。

 支援センターでは、市の行政、市・県内外の関係団体、諸機関、支援事業所などと連携しながら、次の活動を行っている。

1.障害者等の生活支援

  • 移動支援(通院、買い物等含む)、日中・余暇活動支援、同行介助等の直接的な支援活動を行っている。
  • 特に緊急性のあるものや、公的支援でカバーしきれないニーズに対応している。
  • 障害者手帳の有無に関わらず、幅広い方を対象としている。(子ども、家族、高齢者等を含む)
  • 活動の中で明らかになったニーズを、地域の行政、社協、障害者支援事業所等の社会資源につないでいる。

障害者等の移動支援

 この間、行ってきた実績は下表のとおりである。

 公共交通の復旧がいまだ十分でないため、移動手段に困り通院もままならない方が数多くいる。陸前高田市では、中心地から離れていてもJRの駅まで移動できれば通院が可能であったが、それもなくなり、通院の大半を占める県立大船渡病院へは、タクシーを使えば1度の通院で往復1万円から1万5千円程かかり、とても年金生活者が支払える金額ではない。

 そのため、本人や家族はもとより、近隣の住人や、居宅介護事業所からも多くの支援要請が入る。

 しかしながら、センターのスタッフや車両の対応能力には限界があるため、交通費が払えない方や家族などの支援が受けられない方など、緊急性の高い場合に優先的に支援を行っている。

 また地域のケアマネージャー等を通じての依頼もあるが、この場合、介護保険を申請中であったり、要支援でヘルパーが使えない方、生活保護世帯や非課税世帯の方への支援を原則としている。

 ただし、相談時にその方の置かれた環境が見えない場合も多く、その場合の支援要請はSOSであると考え、いったんお受けすることにしている。そして、初回訪問時に状況を確認し必要な支援につなげることができる場合は、関係機関につなぐことにしている。

〈2012年12月 追記〉

生活支援の利用状況について

 生活支援の利用者は1日平均7名14件の利用となっている。この数字は夏期に県外からの支援員が継続的に入っていたときと変わりはないが、複数の利用者をまとめて支援をする等、効率化を図りながらの支援となっている。

 支援内容は、主に通院の移動支援で、その他、陸前高田市の関係機関の要請により通学の支援を行っている。

 限られたスタッフ体制の範囲内で活動を行い、通院等を優先させている状況である。

今後について

 陸前高田市と、情報交換ならびに今後のあり方について定期的に協議を行いながら生活支援をしていくことになった。

支援要請でフォーマルなサービスで対応できうるものは関係機関につなぎながら、そこで対応できないインフォーマルな部分を、JDFが支援したデータを基に、今後行政として制度設計を行っていき、当センターでそれらを実証実験的に行いながら、今後につなげるとの協議をしている。

 障害者高齢者
 通院買い物その他合計通院買い物その他合計
4月63918005858
5月2573769604248
6月3263573504449
7月571539111106869
8月7611341211902746
合計19642154392310239270

2012年4月~8月31日までの支援件数662件

2.陸前高田市における障害者訪問調査

 日本障害フォーラム(JDF)では、陸前高田市の要請を受け、2012年7月~11月まで、市内の障害者の全件訪問調査を行った。

 その第一次報告(速報)を、戸羽太市長に対し、2012年1月11日に、陸前高田市仮庁舎にて行っている。

障害者訪問調査第一次報告(速報)

【調査について】

 陸前高田市では、障害者の状況について、2011年7月に保健師の全戸訪問による確認や、2012年1月に障害者手帳所持者の安否確認などを行っている。しかし、所在を含めたその後の実態は不明であったので、その生活状況と、今後の災害時要援護者への登録希望などを含めた状況把握が求められた。市とJDFが懇談を行う中で、このことを目的とした訪問調査の要請が市から寄せられ、今回の調査を実施することとなった。

(1)目的

 被災から1年余が経過した時点での障害者等の実態を把握し、訪問調査の中で把握したニーズを行政や関係機関と共有しながら対応し解決していく。目的は、第一に、緊急のニーズ把握を行う、第二に今後の復興を含めた障害者行政の基礎資料とする、第三に今後の障害者の防災計画作成の基礎資料とすることである。

(2)調査主体 日本障害フォーラム(JDF)

※実施にあたっては、陸前高田市、いわて障がい福祉復興支援センター(気仙圏域センター)等と連携・協力を行った。

(3)調査期間 2012年7月6日~11月12日(予備調査を含む)
(4)調査対象 陸前高田市の障害者手帳所持者と自立支援医療利用者 1,357人

※訪問調査による面談者数 1,021人

(5)調査方法 個別訪問による対面調査
(6)主な調査項目について

 調査の視点は、大きく分けて、①震災以降の避難の状況、②現在の生活状況とニーズ、③災害発生時の今後の対応、の3点である。

(7)調査の実施について

 全国から派遣されたJDF関係者(調査員)、JDFいわて支援センタースタッフ、いわて障がい福祉復興支援センター(気仙圏域センター)からの協力者で調査チームを編成し、原則として1チーム2名で訪問調査を行っています。1クール1週間の交代制で、調査従事者は、のべ531人(うち、復興支援センター職員105人、JDF調査員426人)。

(8)調査結果の概要(単純集計・速報値)

※その後、調査結果の最終報告が出されています。
 「支援を必要とする人の被災時における支援に関する実態調査」報告(概要)
http://www.dinf.ne.jp/doc/JDF/iwate/20140318_report.html

障害者の状況について訪問調査

障害者の状況について訪問調査

3.今後の展望 - 地域に残る資源づくり

 支援センターの活動の目的は、いまなお緊急に必要とされる被災障害者等の支援を行うとともに、支援活動を通じて、地域の障害者団体、支援事業所、関係機関等と連携を行うことで、今後の長期にわたる復興に向け、障害者を支援する社会資源が地域でより豊かに根づくよう貢献することにある。

 今後の活動においては、生活支援のデータや調査結果を基に、障害のある方や高齢者が地域で暮らすにはどのようにしたらよいかという点で市と協議を重ね、現行の障がい福祉サービスや介護福祉サービスでは補えない部分を行政とともに作り上げていくことを確認している。

 最終的には「支援センター」としての活動が終息したあとにも、これらの連携を通じて構築したネットワークや、サービス、人材等の資源が、地域の方に使いやすい形で残せるような活動を行っていきたいと考えている。