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コラム 1

次に予想される大規模災害に備えて
~宮城県における活動と知的障害分野における災害救助法の適用から考える~

JDF宮城 会長
宮城県身体障害者福祉協会 会長
森 正義(気仙沼市在住)

 

 「宮城県行政の対応、障害者団体の動きを、全国の自治体や障害者団体が注目している」と、行政を励まし、自分たちを叱咤激励して、2年が過ぎようとしている。

「JDF宮城」の設立

 宮城県内では、JDF第二次報告会(2012年3月1日)の8日後、「JDF宮城」を設立した。この組織は「被災障害者を支援するみやぎの会」を継承する現地主体の団体で「JDFみやぎ支援センター」機能を継続している。60以上の団体が参集している。

 JDFの名を冠した理由は、次に予想される大規模災害時も、障害者団体が「一致結束して、JDFとして支援してほしい」との願いが込められている。

南海トラフ巨大地震や首都直下地震への備え

 2013年3月中旬に愛媛県内3箇所で開催する、県障害者防災対策セミナーでの講師依頼があった。県は「災害時障害者支援の手引き」を作成し、障害当事者の対応(自助)と支援者の配慮(共助)の意識啓発を願う。5月には、埼玉県に出向き、高齢者施設で話す。2月には、JDF宮城の株木孝尚事務局長が高知県に出向いている。

支援者は災害時、緊急調査に入る態勢を

 宮澤賢治の「雨ニモマケズ」の中に、「行ッテソノ束ヲ負ヒ」の言葉がある。災害支援は「行くこと」が重要である。「行ッテ」自分たちの目で、緊急事態を把握する。必要な援助は何かを見極めるために、支援団体の視点で現地を確認する。緊急調査チームはその後も、対策本部や現地本部に入って、陣頭指揮を執ることができる人が望ましい。

 幸い、そのような人物が、知的障害分野で宮城県に入った。記録集『東日本大震災の記録 どう決断しどう行動したか-福祉現場・葛藤の果てに-』(宮城県知的障害者福祉協会、123頁、平成24年12月)によると、東京都発達障害支援協会(145会員施設)の柴田洋弥理事長(現在は政策顧問)をはじめとするチームである。「阪神」での経験を活かし、「東日本」では、「次に予想される大規模災害」のために、道を開いてくださった。

知的・発達障害分野における災害救助法の適用

 宮城県保健福祉部は「東日本大震災―保健福祉部災害対応・支援活動の記録」(341頁、平成24年12月)をネットに掲載した。 そこには、災害救助法に基づく医療に係る費用弁償についての資料が掲載されており、DMAT(災害派遣医療チーム)などが、39件、約3億7千万円を求償していた。

 そのとき、私は障害分野において、福祉避難所や施設間派遣(社会福祉施設に対する介護職員等の派遣)の災害救助費の求償実績を知りたいと思った。

 驚くべきことに、先の記録集を読むと、宮城県知的障害者福祉協会(宮知福協)と「障害児、知的障害、発達障害者関係団体災害対策連絡協議会」に、災害救助費が支出されている。

 宮知福協(会員92施設、利用者4,500人、職員約1,000人)の大半が被害に遭い、宮城県は介護職員等派遣の受入調整を宮知福協に委託し、12道県市13団体から県内12施設および対策本部に、約1年間、支援員732人、延べ4,714人を派遣した。さらに、対策本部に派遣された他県の連絡調整員についても適用、現地採用の対策本部人件費にも適用した。

 国の通知では「人件費は派遣要請施設が介護サービス費等から支払うのが原則」だが、「人件費は派遣元施設が負担」で乗り切った。

 柴田氏は「東京で大災害が起こったら、これが役立つ」と語る。また念押しで「厚労省がこういう職員派遣に災害救助費を適用するのは今回が初めて」「災害救助費の適用を今後の大災害の時の職員派遣の前例にしたいと、初めから考えていた」と語る。

 宮城県介護職員等派遣事業経費は、およそ交通費1,604万円、宿泊費1,056万円、人件費26万円で、総額は約2,687万円であった。

“DDAT”(災害派遣障害者支援チーム)の設置を

 私の職場である特養は38日間、避難所になり、ゆえに、避難所運営管理責任を担い、災害救助費求償事務も経験した。4つの事業所が全壊し、訪問看護の建物は流失した。看護師はDMATをサポートした。今回、DMATは救命ではなく、在宅診療が中心だったからだ。災害救助費で交代派遣のDMAT、それに対し、現地の看護師は、40時間労働を超勤し、実質上、無休・無給状態が続いた。日本公衆衛生協会の調査によると、DMAT派遣は気仙沼が最多の支援を受けた。(12月末まで、719チーム、2,859人)

 最後に、私の提言を記したい。次に起こる大規模災害は、「阪神」や「東日本」より、さらに衝撃的な事態になることが予想される。だから、JDFは、

1. "DDAT"(災害派遣障害者支援チーム)を設置し、緊急派遣や追加継続派遣を、JDFの立場からも総合的にオペレーション(支援行動)すること。

2. 災害対策法制(予防、応急、復旧・復興)を熟知し、活用(災害救助法の適用)し、運用改善を提言し、新しいシステムを提案していくこと。

3. ICT(情報通信技術)を駆使して、災害時支援の情報共有を確立し、大規模災害が懸念されている地域の要援護者支援のために、英知を集めること。

 身体障害や精神障害、難病関係については、紙面の都合上、詳述できなかったが、JDF宮城の交流をとおして、課題と教訓が浮き彫りになっている。